2006年11月11日
【店舗数:214】【そば食:383】
東京都渋谷区神山町
そばがき、焼き海苔、田舎せいろ、清酒(田酒)
この日は、NHKホールでN響の定期演奏会を楽しむことになっていた。昼下がりからの開演なので、それまでどこかでお昼ご飯を食べる余裕がある。
こういうとき、間違っても「さくら水産で500円ランチ」などに走ってはいけない。クラシックを聞きに行く日は、その会場につく前から既にイベントは始まっている。やはり、それなりのものを食べないと。
どぜうを食べるのはちょっと違うよな、では恋文食堂でロールキャベツでも、なんてあれこれ思案してみたのだが、そういえば最近蕎麦を食べていないぞ、蕎麦を。蕎麦屋にしよう。
確かNHKの裏口におくむらという有名なお蕎麦屋さんがあったはずだ。そこに行ってみよう。
雨の中、渋谷駅から井の頭通りをどんどん歩いていく。ごみごみした雑踏の中を通り抜けていくと、だんだんと喧噪が後ろへと消えていく。ほぅ、と一息つくと目の前には霧に煙るNHK放送センターのビルが。駅からここまで歩いてくるのに10分近く。あともう少し歩かなくてはいけない。なかなかに交通の便が悪い。
NHK放送センター西口の道路挟んで斜め正面に、目指していたおくむらを発見。すごくシンプルな店構えで、うっかり素通りしてしまいそうだ。
看板と暖簾がなかったら、普通の民家という風情。周囲の風景に馴染みまくっている。埃の積もった食品サンプルがガラスショーケースに飾られていてもおかしくないが、さすがにそんなお店ではなかった。
早速入店してみる。
13時半過ぎに訪れたということもあり、店内はお客さんゼロ。
通路を挟んでお座敷席とテーブル席に分かれる、シンプルなインテリアだ。
しばらくくつろいでいたらお客さんが何名か来たが、地元の常連さんとおぼしきお爺様だったり、NHKの職員かな?と思えるマスコミ風な人だったり、なかなか客層が面白い。
まずはお酒を所望する。
ビール(中ビン)、東北泉、田酒、神亀、出羽桜・一耕、ねぶた、四季桜・初花、白鹿・蝶辛がラインナップされている。
清酒は、「特別純米酒」「純米酒」「本醸造」とカテゴリ分けされて記載されていた。吟醸酒は置いていない。
では早速、ビールください。
・・・いや、それは却下。一人称で却下だ。こういう渋い店だと、どうもビールを飲む気にはなれない。やっぱり清酒でしょう。田酒をいただく。
おや。
アテとして出てきたのは見慣れない「何か」だ。よく見るとこれ、カラスミではないか。軽くあぶって、半生状態で供している。
一口かじり、酒を飲む。
ううむ、これは非常に良い組み合わせだ。思わず唸ってしまった。がるる。
がるると唸ったのはうそだが、いずれにせよこれは酒が進むったらありゃしない。からすみ独特の深い味わいと塩気が舌にまとわりつく禁断の昼下がり。それを清酒で洗い流す爽快感。なかなかにエロい味わいなんであるよ。
もともと昼酒という、一般常識からするとちょっとお行儀の悪いことをやっているわけで、そんななかこんなエロいことしちゃってると、ますますうれし恥ずかし気分になって思わず「てへっ」と首をすくめてしまう。
カラスミって高級食材なんだけど、お酒とセットでこんなの出しちゃっていいのかね。
カラスミに圧倒されつつお酒を飲んでいたのだが、時間差でそばがきが届けられた。そうだった、そばがきを注文していたんだっけ。
このお店の酒肴はいたってシンプル。お品書きにあるのは焼のり、板わさ、厚焼玉子、月見芋、鴨汁、天麩羅、そばがきだけだ。いずれも渋い。渋すぎる。若い腹ぺこキッズには絶対に受け入れられない構成と言える。
はっはっは諸君、お店でおなかいっぱいになろうなんて思っちゃいけない。そんなことをやっていたらいくらお金があっても足りない。あくまでも酒のつまみと考えないと。
とはいうものの、やっぱりある程度はおなかを膨らませたいというやんちゃ気分がまだ自分には残っているので、比較的腹に溜まるそばがきを頼んだ次第で。この微妙に揺れる乙女心が我ながら愛しい。
そばがきは、蕎麦の香りがほんのりと漂うなかはむはむと噛みしめることができるのがうれしい。
どのタイミングで醤油を垂らそうかしらん、と考えつつ、結局何もつけないまま半分くらいを食べた。醤油を垂らすと、ぼんやりとしている味がきりっとひきしまるからこれはこれでおいしい。
おいしさの勢いが余ってお酒をもう一合追加注文してしまった。これからコンサートなのに、演奏中寝るぞオイ。
ついでにも注文。
漆塗りの器に入れられた海苔が登場。コンビニおにぎりの海苔みたいに、不自然にぱりぱりしすぎていない、しっとりとつややかとした、でもぱりっとした海苔だ。
今日は外が雨なので、のんびり食べていたら海苔が柔らかくなってきてしまった。いかん、少々ペースアップ。
連れが遅れてやってきた。
連れが頼んだのはせいろそば800円。
アップで写すとこんな感じ。
なかなかなボリューム感だ。土地柄、「値段が高くて量が少ない」お店なのかと思っていたのだがそれは違っていた。
ちなみに大盛りにすると400円増しなんだそうだが、どれくらいの量になるのだろう。
若干星粉を入れているようで、麺のところどころに黒い粒が見える。
自分で頼んだのは、対比の意味もあって田舎せいろ850円。
ノーマルせいろと比べて見るからに太い、食いでのありそうな麺。これを「すする」と窒息してしまいそうだ。おとなしく「かじる」のが良さそう。
・・・と、なぜ蕎麦の味について全く言及が無いかというと、覚えていないんですねこれが。
NHK交響楽団の演奏会も素晴らしゅうございました。でも、これもほとんど記憶が無い。
えーと、この日の記憶の大半を占めているもの。
夕食に食べた、「小肥羊(しゃおふぇいやん)」の火鍋。中国No.1火鍋チェーン店らしいのだが、このたび晴れて渋谷に日本一号店をオープンさせたとのことで訪問してみたのだった。この鍋があまりに印象深くて、その結果お昼に食べた繊細な蕎麦の香りも記憶も一度に吹き飛ばしてしまったのだった。あー。
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