うどん食べ歩き

[7軒目 山内うどん 仲多度郡まんのう町]

ディープな讃岐うどん食べ歩きは続く。「山あいの集落に忽然と現れたさりげない絶品うどん」の谷川米穀店を後にしたわれわれは、次なるお店「山内うどん」に向かった。

 山内うどんの看板

商売というのは、そもそも売る相手(お客)がいるから成立する。客が欲しくないものを売っても売れないし、客が居ないところで立派な商品を並べても売れない。

しかし、われわれはこれまで、「何でこんなところに?」といううどん店に出逢ってきた。讃岐うどんブームの今でこそ行列が目に付くが、ブームに火が付くまではどうしてたんだろう、と首をひねるような場所にもお店はあった。

でも、そうはいってもそれらのお店は「集落の片隅」だったりした。地元民相手に細々とビジネス・・・いや、横文字は似合わないな、商い、を続けていればなんとか食べて行けたのだろう。

今回訪れる「山内うどん」は、そういう理解の範疇を超えたところにある。地元の人でもあまり通らんじゃろ、という脇道に入り込み、さらに、地元の人でも行ってみようと思わんじゃろ、という山に分け入ったところにそのお店があるというのだ。

既に僕らはこのお店について予備知識があるからなんとかなるが、偶然このお店に遭遇した人の驚愕たるや相当なものだったに違いない。このあたりは、讃岐うどんのバイブル「恐るべきさぬきうどん」に色鮮やかにしたためられている。活き活きとその驚きが語られている名文なので、以下に一部を引用しよう。

麺通団顧問のH氏(42才・某社の営業室長)が、とんでもない店を発見したと報告してきた。

「俺な、たいがい怪しい店行ってきたけど、あんなすごいとこにある店は知らんわ。仲南の山の中や。道路からは絶対見えん。建物自体が見えん。山しかみえん。」

と言ったあと、しばらく考え込んだH氏はこう言った。

「営業する気あるんやろか。」

<中略>

「ちょっと、どんな店なんですか。」
「とにかくすごい。あれは見つからんで。」
「いや、それはええですから、うどんの味とか・・・」
「うどんか?うまい。けどあれはわからんとこにある。」
「わかりました。いっぺん行ってきますのでほな道順教えてください。」
「とにかく山の中や。見えん。もういっぺん行け言われても行けんわ。ひょっとしたらもうないんちゃうか?」

私は一瞬”タヌキが経営しているのか”と思ったが、そんなこともまさかあるまい。しかしあまりに情報が少なすぎるので、そのまま行けずじまいで時は過ぎていった。

この文章を読んで、血湧き肉躍らない人がいようか?いるまい。・・・こういうのに燃えるのって、男だけだろうな。現実を直視できる女性は「そんな山奥までうどん食べに行かなくていいんじゃないのー」って言いそうだ。いや、まったくごもっとも。でも、こういう「秘宝探し」なシチュエーションは男が愛してやまないのですよ。

土讃本線と並行している県道197号線を走る。まず、最初の関門である「脇道」とやらに正しく分岐しないとたどり着けない。「いいか、看板一つ見落とすなよ」と、運転に集中しているドライバー以外は窓の外を注視だ。さすがに、踏切がないと土讃線を乗り越えることはできないはず。いいか、踏切を見落とすなよ相棒。がってんだ相棒。土讃線黒川駅まで行ったら行き過ぎだからな、その場合は折り返すぞ。

視力がアフリカのマサイ族に匹敵するのではないか、というくらい遠距離を凝視し続けてしばらく進むと、おお、踏切のむこう側にぼろい看板で「うどん」と書いてあるのを発見。「ここだー、曲がれー」。強引に車を左折させる。

よく読むと、確かに看板の文字の他に小さく「純手打」「山内」「←左100m」の文字が。これで間違いない。

事前情報が豊富だと、案外あっけない。車中では「よかった、無事見つかった」という安ど感の方が強かった。情報通信の発展も良し悪しだな、上記「恐るべきさぬきうどん」に書かれているような仰天っぷりは味わえなかった。当たり前だけど。逆に、「なんだ、踏切から100mかよ。近いじゃん」なんてナメた事を言う始末。いやいや、でも冷静になって周囲を見たまえ、うどん店どころか民家もろくずっぽない地帯だぞ、ここ。

隠遁生活か?

蕎麦屋でも人が訪れるのを拒むかのごとくな店はあるが、それは地元のそば粉と水に惚れ込みました、なんていうご主人がマニアック(言い方が悪いな、真摯に訂正)の場合だ。うどん店でも同じことがあるのだろうか?でも、客単価が全然違う食べ物だしなあ。隠遁生活でやっていけるのだろうか。そもそも、讃岐うどんのほとんどはオーストラリア産の小麦粉(讃岐うどん用に品種改良したもの)を使っていると聞くし。晴耕雨読ならぬ、晴饂飩雨饂飩だろうか。

踏切を渡ってしばらく進むと、山というか丘が左手に迫ってきた。その法面をブロック塀にしてあるのだが、あー、「純手打うどん ←すぐ上」という看板が貼り付けてあるよ。←の先には、普通じゃ「地理に不慣れな人が、道に迷って紛れ込んでしまう」ことすらありえん狭い道が。「腹減ったなー」という人がたまたまこの看板の横を通り過ぎても、「・・・うどん店があるって看板があるけど、いくらなんでもうそだろ。もう潰れてるかもしれん」と素通りするに違いない。それくらい、怪しい山道だ。

それにしても、「純手打」であることに拘りがあるようだ。先ほどの看板も、今回の看板も両方書いてある。なんだか、こういう書き方してると商売っ気があるように感じる。「他店は機械打ちだけど、ウチはホントの手打ちだよ!ぜひおいで!」と言っているかのようだ。でも、どう考えても商売っ気ないだろ、というシチュエーション。よくわからん。

山の上にうどん屋

さすがに丘(山?)の上に駐車スペースをたくさん確保するのは難しかったのか、「←すぐ上」看板の前に広い駐車スペースが確保されていた。こういうところは讃岐うどんブームにちゃんと対応してるんだな。まあ、路駐なんてされたら一発ですれ違い困難になる道だから、お店の対応はとてもスムーズ。

情報によると、駐車場のキャパシティは50台だとか。こんな山奥で50台かよ。ちょっとした「道の駅」並の駐車スペースじゃないか。なんちゅー山奥だ。

なんだか、寺社詣りに向かうような敬虔な気持ちになりながら丘を上る車道を歩く。木々が両側から迫ってきて、緑のアーチだ。うっそうと茂ったこの先に一体どんなカタルシスが待っているのだろう。

さすがに「←すぐ上」といっても結構歩くんだろう、と覚悟していたら、案外呆気なく開けた場所に出た。この丘、想像以上に低い。で、その開けた場所の先にお店あったー。

ここにも、周囲の空気を全く読んでいない、ありえん行列が。

でも、この行列がなかったら、正面の建物は倉庫か養鶏場か、と見間違えていたに違いない。いくら建物に「うどん」の看板が掲げられていても、にわかには信じられない。

店としても客心理を分かってか、暖簾が入り口にぶら下げられている。うどん店ですよ、という無言のPR。今まで食べてきたうどん店は暖簾なんて無かった。

お店のメニュー

5月の新緑を愛でつつ、ゆっくりと進む行列に並ぶことしばし。いい加減新緑に愛想が尽きた頃になって、店内に入ることができた。

このお店はセルフスタイル。カウンターには天ぷら類がたくさん並んでいる。天ぷら祭りだ。ええと、どれにしようか。

あ、その前にうどんを頼まないと。

このお店のメニューは、かけうどん、湯だめうどん、しょうゆうどんの3種類×大小2種類で構成されている。あとは、お好みで天ぷらなんぞをどうぞ。

おっと、待った、かけうどんはメニューがさらに細分化されているぞ。「ひやひや」「ひやあつ」「あつあつ」なんて呪文のような事がお品書きボードに書かれている。マニアックな立地に、マニアックな符号。ディープだ。

ただ、この「ひやあつ」のような呪文を使っているのはこのお店に限らず、讃岐地方ではところどころで見受けられるそうだ。ちなみに、麺もだしも冷たいのが「ひやひや」、麺が冷たくてだしが暖かいのが「ひやあつ」、麺もだしも暖かいのが「あつあつ」という意味になる。「ひやあつなんて、結局は暖かいだしで麺も暖まるんだから意味ないじゃん。しかもだしはぬるくなるし。」と思うが、麺のコシだとかなんだとか、他のモノとは微妙に違うらしい。店によっては「あつひや」もあるそうだから、奥が深い。

しょうゆうどん小+ちくわ天

おかでんが選んだのは、「しょうゆうどん小+ちくわ天」。これで300円。ちょっと高いのは、うどんが200円するからだ。今までのお店と比べると高めの価格設定。「おっ、高いな」と思うが、それでも「200円」だからな。物価感覚が狂うな、ディープうどん店巡りをやっていると。

ちなみに誤解なきように言っておくと、香川県は全てのお店のうどんが一様に廉価なわけではない。うどん店間の競争は激しいだろうが、かといって一玉100円程度で提供しているお店はごく一部。今回われわれが訪れているような、「本当は製麺所だったんだけど便宜上飲食も提供してます」タイプのお店だとうどんが安い。「うどん屋でーす」とバーンと営業しているようなお店だと、100円なんかで採算取れまっかいな。300円、400円は平気でする。そりゃ当然だな。

ちなみに、ひやひやなどのだし系を注文しなかったのは、先ほどの谷川米穀店でうどん本来の美味さに開眼したからだった。ここは、味付け程度の醤油で食したい、と思ったわけ。その割には、ちくわ天乗っけてるのはなぜだ。いや、だって、セルフの店だとついついお会計順番待ちしている間に目の前の天ぷらに目がとまるじゃあないですか。

後で知ったが、このお店の名物というか人気メニューはゲソ天だそうだ。しまった。ゲソ天にしておけば良かった。

うどんを頂く。うむ、見た目通り角が立っていて、それが心地よい。麺は腰が強く、みっちりしているけどもちもち。おいしい。

[8軒目 長田うどん 仲多度郡まんのう町]

山内うどんを後にしたわれわれ一同総勢7名は、山を下りまた讃岐平野に戻ってきた。

長田うどん

次の「長田うどん」は、ディープなお店とはいえない一般店だ。しかし、このお店は釜あげうどん一本で勝負する自信に満ちたお店で、特に評判が高い。

特に栄えている場所ではないが、なぜかこの長田うどん周辺にはうどん店が10店舗もあり、県内随一のうどん激戦区になっているそうだ。特に、長田うどんが一角を占める吉野交差点は、交差点に「長田うどん」「小縣屋(おがたや)」「柳生屋」の3軒があり、「恐るべきさぬきうどん」などでは「満濃うどんトライアングル」と呼ばれている。

ちなみに、小縣屋はお客に大根が丸ごと一本供されることで有名。うどんができあがるまで、この丸ごと大根をすり下ろして大根おろしを作って待つことになる。これはこれでディープで大変に興味深かったのだが、「釜あげうどんの元祖」とも言われる長田うどんの魅力に負けた。

交差点に面してあるようなお店だ、駐車場も立派。40台停められるというんだから相当広い。なぜか、駐車場にはソテツが植えられていて、違和感ありまくり。ただ、この40台キャパシティの駐車場がいっぱいになっちゃってるんだから凄いことだ。あぶれた車は県道に路駐してる。大繁盛だ。

長田うどんに並ぶ

そういうわけで、当然お店に入るのは行列。席数90と、相当広いお店ではあるが、それでも結構待つ。まあ、そりゃそうだな、40台の駐車場がいっぱいで路駐にあぶれているということは、少なくとも100名以上は来店しているだろうから。

このお店のメニューは、「釜あげ(小・大・特大)」「冷やし(小・大)」「たらい(小・大)」の3種類。あと、サイドメニュー。天ぷらやおでんは存在せず、いなり寿司、ちらし寿司などが取り扱われているのがちょっと珍しい。

われわれは、人数が多い上に「たらい、って面白いな」ということで「たらい・大」を注文。ダライ・ラマじゃないぞ。たらい・大だ。2,000円なり。

釜あげは、ゆでおきの麺を使わない。注文が入ってからゆで始める。ゆでたての麺を楽しむ食べ物だ。ちなみに、ゆでおきの麺をお湯に浸して供される料理は「湯だめ」と言う。そんなわけで、事後精算やセルフではなく、先注文の先払いだ。

たらい・大

15分ほど待っていたら、われわれのたらい・大ができあがった。なるほど、仰るとおりまさにたらいにうどんが泳いでます。

早速食べたいところだが・・・ありゃ、席が空いていない。

ここで作戦失敗に気付いた。一人一人が「釜あげ」を注文していれば、バラバラになっても空いている席に座れば良い。しかし、このデカいたらいの場合そうはいかないのだ。こちらは7名もいるので、まとまった席が空かないと座れないし、食べられない。

また、「釜あげ」といううどんの特性が災いした。かけうどんやしょうゆうどんの場合、丼を片手で持ち、もう片手は箸だ。立ち食い可能。しかし、釜あげの場合「ゆで上がった麺が入った丼」「だしを入れた猪口」「箸」の3パーツで構成されている。たとえ「たらい」ではなく「釜あげ」を注文したとしても、これまでのお店のように立ち食いは無理。

しばらくの間、われわれは広い店内だけどお客でごった返して狭苦しい場所においてたらいを持って立ちつくす羽目に。他にも、「既にお会計を済ませて、うどん待ち・空席待ち」の人がランダムに店内にいる。うかつにしていると、いつまで経っても座れない。

途方に暮れてしまったが、お店の人の配慮もあってなんとかテーブル一つ確保。ただ、その時点でうどんができあがってからすでに10分近く。その間、ずっとうどんはお湯の中で泳ぎまくっていたわけであり、すなわちうどんがどんどん伸びてしまっているわけだ。あちゃー。

うどんを食す1

テーブルには、ネギとすりおろし生姜の容器。あと、七味と胡麻があったかな?だしは、「長田うどん」と大きく焼き付けられた徳利・・・というか、陶器の瓶から猪口に注ぐ。

うどんを食す2

うどんを食す。

ざるそばのように、「麺の全てをだしにつけないのが通」のような流儀があるのかどうかわからん。とりあえずどぶんとだしに浸けてずぞぞーっと豪快にすすろう。なにしろ、6名で一つのたらい内のうどん争奪戦だ(ジーニアスは食べ疲れのためこのお店は欠席)。のんびりしてると、自分の取り分が無くなる。

従来の「つゆ」ではなく、「付け汁」なので、当然味付けは濃いめ。だしはいりこ、かつお、こんぶで構成されているとか。今までとは違った味わいで、良い気分転換だ。

それにしても惜しいなあ、時間が経過した麺は「もちもち感」を残しつつも、ちょっとけだるい昼下がりの様相。やっぱり伸びてた。釜あげうどんの最大の売りは、「水で締めないので、麺本来のもちもち感が楽しめる」ことだ。それが損なわれつつあるのは致命傷。なんとも惜しい。

うどんはおいし。ただ、ベストな状態で食せばもっと美味かったんだろうと思うと、なんとも悔やまれる。

[9軒目 山下 善通寺市与北町]

宮武うどん

9軒目は、金比羅さんからそう遠くない「宮武うどん」を目指した。「西の横綱」とまで絶賛される事があるお店だ。

しかし、店の前を素通り。

何でだったっけ。今この文章を書いているのが、既に7年も後の話なのでなぜスルーされたのか覚えていない。タイムリミットが迫っていたということもあるが、だからといって「横綱」と闘わないで誰と闘うというのか。恐らく、GW中ということで休業していたんだと思う。あんまり自信ないけど。

いずれにせよ、われわれはうどん巡礼の最後に予定していた「うどんの山下」に直接向かうことになった。ぶっかけうどん発祥の店として全国的に名高いんだという。

山下

ん?ぶっかけうどん?

瀬戸内海を挟んだ対岸の岡山県倉敷市に、「ぶっかけうどん ふるいち」という有名な店がある。そこも「ぶっかけうどん元祖」を名乗っていたが、どっちが正しいんだろう。まあ、「麺にだしをぶっかけて食す」という食べ方はシンプルなので、どこが元祖というのは決められないと思うが、どうか。大抵元祖論議というのは紛糾したまま決着は出ないモノだ。あまり「元祖」には気にしないで、食べることにしよう。元祖だから美味いとは限らないもんね。

いや、でもこの「山下」は美味いことで評判なわけであり。

んー、「元祖=昔ながらの製法=時代遅れ=今の人の味覚にマッチしない」、という法則は無いんですね。中にはこの法則が適用されまくってる商品もあるけど。

とにかく、うまいらしい。でも、今までディープなお店を巡ってきたわれわれからすると、長田うどん以上に「非ディープ」なお店が、ここだ。

外見:普通のロードサイド店。正直、風情や「ディープな味わい」が皆無、外観で食欲は湧かない
味の予想:まあ、一見客相手にしてるんだろうな、味には期待薄

「さあ、せっかく香川県に来たんだから、昼は美味いうどん食おうぜ」と車中会話をしている時にこのお店を発見しても、多分事前知識が無いと素通りしてしまうだろう。今までの店は「気がつかなくて素通りする」パターンだが、このお店の場合「あんまり美味そうじゃないから素通り」という新手のパターンだ。お店の人ごめんなさい。でもそう見えちゃうんだもの。とんだところに伏兵発見。

うまい蕎麦屋も、「幹線道路沿い」「店が広い」「駐車場広い」だとNGな事が多い。それと同じ。しかし、全てがNGじゃないところが奥の深いところだ。逆ディープ、というかなんというか。

山下店内

客席は結構広い。ただ、ここも今までのお店ほどではないが混雑していたので、各自バラバラに座ることにした。

セルフっぽい店構えだが、ここは一般店ということが並んでいるうちにわかった。椅子に座ってると店員さんがオーダーを取りに来る。いざ、自分の番になると、なんだか偉い人になった気分になった。

メニューはとても多い。うどんレストランといった風情だ。ざっと列挙すると、

ぶっかけ、釜あげ、冷やし、ざる、かけ、わかめ、山菜、きつね、月見、天ぷら、肉、山かけ、カレー、釜あげ天ぷら、天ぷらざる、醤油、山いもぶっかけ、天ぷらぶっかけ、湯ぬき天ぷら、湯ぬき、湯ぬき玉子

カレーうどん

と、まあこれだけある。製麺所併設のうどん店とは毛色が全く異なっているのがよく分かる。ここは、「製麺の片手間にうどんを食わす」のではなく、「うどんを食わす。」のだ。それにしてもメニュー豊富だな。

ジーニアスはカレーうどんを注文していた。「おい!カレーうどんは確かに美味いが、うどんの味がわからなくなるだろ!?」と驚いたら、「いやモウ、ボクね、うどんの味に飽きちゃったの。ちょっと違う味が欲しいナーと思ってたら、ちょうどカレーうどんがあったから」だ、そうで。

山いもぶっかけうどん

そして、ちぇるのぶは「山いもぶっかけうどん」をオーダー。とろろそば、というのは良く見かけるが、とろろうどんというのもあり得るのだな。しかし、麺のコシだか山芋のねばりだかが渾然一体となってしまいそうだな。食べている途中喉を詰まらせて窒息しないことを願う。

ぶっかけうどん

おかでんはやはり「元祖」であるぶっかけうどんを食さねば。とはいっても、こちらもややうどんに食傷気味。そりゃそうだ、これで8店舗11玉目だ。そんなわけで、天ぷらが載っている「天ぷらぶっかけ」をリクエスト。

ぶっかけるだしは「酒」としたためられた巨大とっくりから注ぐ。本当に酒が入っていたら相当の衝撃だが、さすがにそういうことはなかった。無事だしが丼に沈殿。

早速食してみる。

むぅ、むむむむ。

箸を持つ手に力が入る。併せて、左手の丼を持つ手も力が入る。

これは相当な弾力。もちもち、という表現を使うのは多分違うな、グミを噛んでいるような抵抗感。食いちぎろうとしても、なかなかしぶとい。ためしに、歯で噛んだ麺を箸で引っ張ってちぎろうとしたが、むぃーんと麺が縦方向に伸びた。相当な粘り腰だ。今まで食べ歩いてきた中でも一番の弾力だと思う。

加ト吉の冷凍讃岐うどんが美味とされているが、あれはコシを出すためにタピオカが入っているからだという。しかし、こちらは小麦粉と塩水のみで作られた、異様なまでのコシ。引っ張って良し、噛んで良し、味わって良しだ。表面はつるつるなのに、どうしてこうもねっとりとした中身ができるのだろう。不思議だ。

本物 釜上げうどん 四國館

うどん食べ歩き、これにてタイムリミット。行けない店もあったけど、それは想定のうちだ。ほぼ目的は達成できたのではないだろうか。

最後、山下の駐車場で「終了記念」の記念撮影をすることになった。すると、

「あれー?」

畑の向こうに体育館のような大きな建物があり、そこには「本物 釜上げうどん 四國館」という看板が出ていた。

それだけなら良いのだが、四國館という文字の横には赤字で(四国八十九番所)と記されているではないか。

八十九番札所をバックに記念撮影

「うわぁ、俺たちの巡礼はまだ終わってなかったよ!」
「八十九番札所があるなんて、反則だ!」

と頭を抱えるやら、大笑いするやら。

時間と胃袋に余裕があるなら、しゃれであの店に行っても良かったのだが、両方ともリミット。なんだか最後でこの一週間のオチを付けられた感じになりつつ、苦笑いしながら記念写真に収まったのだった。

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