『ミニサラダ、イタリアントマト レギュラー』
(群馬県前橋市元総社町)
群馬県は小麦の生産が盛んということもあり、うどんがよく食されていると聞く。しかし一方で、最近は高崎を中心にスパゲティも隆盛しているらしい。
その群馬において、気を吐くお店として著名なのが「パンプキン」というお店だ。関越自動車道前橋インターの近くにあり、そこではかなり量が多いスパゲティを楽しめるという。
私が特に興味を覚えたのは、一斤ないし二斤はあろうかというパンの中をくりぬき、それを容器としてスパゲティを詰め込んだ料理だった。当然パンの中にみっちりとスパゲティが入っており、その上にはホワイトソースでふたがされている。全部食べたら一体どうなってしまうのか、カロリーや胃袋の状況を想像するだに戦慄を覚える外観だった。
店舗は11時半からの開店だが、早めに訪れて待機した。というのも、このお店は人気店でありピーク時に行くとかなり待つことがあるらしいからだ。
料理の量が多いお店によくあることだが、当然調理に時間がかかるし、客が食べるのにも時間を要する。そのため、一度行列ができてしまうと、なかなか食事にありつけなくなる。
また、「食材切れにより本日終了」ということもお店によってはあるので、この手のお店には早い時間帯に行くのが望ましい。
勝手口から厨房の中が少し見える。
ふきんをかぶせられたバットが大量に並ぶ。麺は茹で置きしたものを使っているのだろうか?詳細は不明。
開店時には10名以上の行列となっており、開店しばらく後には満席になっていた。
客席はざっくばらんとした机と椅子。
厨房が見える席。
時折「なんだあれは?」という量の料理が目の前を通過していくので、とても楽しいポジション。
卓上のカトラリー類。
タバスコの瓶がとても大きいのは、量自慢のスパゲティ店によくある光景。で、手元に届いた料理の大きさを写真撮影で記録として残そうとするのだけど、大きさの対比としてこのタバスコ瓶を置いても何の役にも立たない。
パンプキンのメニュー。ものすごく品数が多く、目移りする以前に頭が混乱する。
私が頼もうと思っていたメニューは「イタリアントマト」という名前らしいのだが、その存在をこのメニューの中から探し出すだけでも苦労した。単なるスパゲティのジャンルではない扱いらしい。
このイタリアントマトに限らず、「パンをくりぬいて皿代わりにしたスパゲティ」にどのようなものがあるのか知りたかったのだが、どうやら「イタリアントマト」限定らしい。イタリアントマトだけがスパゲティの中でも突然変異種というわけだ。
他にも、「BIGハニートースト」「アラスカ」といったスイーツ系メニュー(パフェのようなもの)は、パンが使われているようだ。しかし、メニューを見ただけでは、「パンを使っている」ということはよくわからない。
ミニサラダ(100円)。
安さにつられて、サイドメニューとして頼んでみたもの。何の気なしに頼んだのだが、届いた実物を見てのけぞった。ミニを名乗る料理で、ここまでデカかった試しはない。
人物対比。
いくらキャベツの千切りが中心であるサラダとはいえ、100円で提供するというのは狂気の沙汰だ。既にこの時点で、このお店の荒ぶる魂が伺える。
同行者が頼んだ「下町風スパゲティ」。
このスパゲティは「レギュラー」「ラージ」のサイズとは別に、「SS」というサイズも選択が可能になっている。そしてこのスパゲティは「SS」。
「SS」でこのサイズ。
でも、驚いてはいけないのかもしれない。「ミニサラダ」があの量だったのだから。
しばらくして届けられた、「イタリアントマト」(980円)。
レギュラー。
ラージ(1,180円)もあるのだけど、どうやら3斤相当のパンにみっちりスパゲティが入るらしいので、今回はやめておいた。レギュラーでこのサイズ、というところで、遥かなるラージへの思いを馳せつつ今日のところはひとまず。
実物を目の当たりにすると、苦笑するしかない。今更感嘆の野太い声をあげると、店員さんから「一見さんがネタのためにやってきたのだな、食べきれるのかなこのおっさん」と軽んじた目で見られそうだ。それは恥ずかしいので、さも当然のようにお皿を受け取りつつ、内心では「うおおお」と叫ぶ。その折衷案として、「まいったなあ」という苦笑一つ。
大きさが伝わりにくいので、被写体をやや斜めに向けてみた。これで少しはサイズ感が伝わったかもしれない。
タバスコの瓶やお冷やのグラスと並べて撮影してみたが、それらが写りこむように配置すると、どうしても遠近法で比較対象が小さくなってしまった。なので比較として役に立たなかった。それだけデカくて図々しい料理、それが「イタリアントマト」。
無骨な外観だが、この中にスパゲティが詰まっていると思うとさすがに身が引き締まる思いだ。安易に食べられる量ではない。パンのサイズは1斤に留まらず、1.5斤くらいはあるだろうか?
どのように食べれば良いのか、わからない。
「食べログ」で事前にこの料理については口コミおよび写真を見ていたのだが、その写真はいずれも汚いものだった。おおよそ食べ物には見えない写真で、私はそのような状況にならないように気をつけたい。
「ふむ、それでは」
と神妙な顔つきで、イタリアントマトにナイフとフォークを突き立てる。スパゲティを食べるのに、「ナイフ」を使ったのは後にも先にもこれが初だ。
パンの端を恐る恐るナイフで切ったところ。
相手はパンなので、すっと切れるわけではない。焼けているとはいえ柔らかさが残っているので、あまりギシギシとナイフを動かすとパンが崩壊しそうだ。慎重に、さらに慎重に。
初めて食べた「イタリアントマト」の味は、単なるパンだった。
いつまでもパンを食べているわけにはいかない。スパゲティを食べるのが本来の目的だ。
意を決してパンを深くカットすると、中からトマトソースで和えたスパゲティが出てきた。これが「イタリアントマト」の全貌。
と、思ったら、中身が雪崩を起こした。
食べログでさんざん見た、私が「汚い」と評した光景そのものが目の前に再現された。なるほど、こうやってあの写真は撮影されていたのか。やむをえない。
「美貌の盛り」を紹介したかったのだが、見た目がかなり悪い。「ぼんち」の時に匹敵するレベルだ。
早くこの状況を解決しようと、ひたすら麺を食べる。
具は、時折エビが発見されたりして楽しい。何か、「古代遺跡の発掘調査」をやっているような気になる。
最後のほうになると、食べるペースがかなり落ちてしまった。
最初の頃はパンをむしゃむしゃと食べていたのに、後半はナイフとフォークで細かく刻み、一口サイズでようやく食べている有様。当初の想像通り、かなり重たい食事となった。
隣のテーブルでは「BIGハニートースト」を食べているお一人様男性がいたが、彼は涼しい顔でパンの中身のパフェ部分だけを平らげ、外側のパンを残して立ち去っていた。どうやら常連らしい。なるほど、外側は食べないという考え方もあるのだな。
一方、二つ隣のテーブルでは、「グラタンスパゲティ」を食べる若い男性がいた。これは冬に家族で鍋を囲む際に使う、陶器の大きな土鍋にホワイトソースおよびスパゲティがみっちり詰まったもの。量が多いのは当然としても、見るからに味に飽きが来そうだ。
恐るべきはパンプキンだ。このような料理を出すパンプキンは美貌だと思う。
(2016.07.16)
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