「うしし」と「うへぇ」~行き当たりばったりの旅【鉛温泉】

2003年09月21日(日) 1日目

メチャ多忙のなか、なんとか4連休を確保した。9月という過ごしやすい季節に4連休!これは有効活用しなければなるまい、と鼻息荒くあれこれプランを立てる日々。

目論見は、あった。兄貴と山に登るという話が進展していたからだ。具体的な話は詰めていなかったが、尾瀬を2泊3日で巡るというプランがおかでんの頭の中ではできつつあった。

そんな中、兄貴に打診のメールを送ってみる。すると、帰ってきた返事が・・・

From: おかでん兄
To: おかでん
Subject: Re: GO

尾瀬とのことだが、ワタシは9/22出社せんといけなくなった。
1泊3日の工程ではちょっと不可能。

実はこの連休で利尻に行ってきた。
花の時期が終わったらしく、登山者はパラパラ。
たった1人で百名山の山頂に立つのは初めて。
周りは海、礼文島。なかなかよろしい

ぎゃふん、という擬音はまさにこのためにあるのではないか、ってくらい仰天してしまった。尾瀬に行けなくなったという事実よりも、この男が一人で利尻まで遠征していたという事についてあぜんとしてしまった。

一体何がどうなってそうなったのか、確認のメールを送ってみた。しばらくして帰ってきたメールは

From: おかでん兄
To: おかでん
Subject: Re: GO

> 利尻遠いな。
>
> 羽田→千歳→稚内(飛行機)
> 稚内→利尻(フェリー)
>
> か?

まず、9/10~9/17まで休みだった。
9/10に考えて決行。
その場その場で予定決定したので、飛行機代、宿代が高かった!

9/10 飛行機予約(特割1)
9/11 羽田~稚内(飛行機) 1時間30分程度

稚内の観光案内所で宿予約(高い!)

稚内~鴛泊(フェリー) 1時間40分程度

9/12 登山
鴛泊~稚内

稚内駅前の素泊まり宿にすべりこみ

9/13 レンタカー借りてウロウロ
9/14 汽車で札幌へ(何年か前に以前出張で泊まったホテル泊)
9/15 札幌~羽田(web割)

何だー、一人ぶらり気まま旅をしていた、というのか。ワイルドすぎるぜ、兄貴!

これで完全にこっちの予定は狂ってしまった。いや、狂ってしまったのは予定ではなく、判断能力だった。何しろ、あやつは「ふらりと北海道」に行ってきたというのだ。 予想外の攻撃に、慌てふためくおかでん。何かそれに負けない一発、噛まさないと。

「でも、利尻行かれちゃ、何やっても勝ち目無いよな~」

横でこのやりとりをウォッチしていたコダマ青年が、ニヤニヤしながら言う。

「勝てないねぇ、どうやっても。北方領土に侵入!とかしない限り、勝ち目ないぜこれだと」

何か焦りを感じながら、「日本百名山」のガイドブックをめくる。旭川まで飛行機で行って、大雪、十勝岳を攻めて来ようか・・・それとも、中標津まで飛行機で、雌阿寒、斜里岳か・・・

「おっ、おかでん北海道行きかい?」

またコダマ青年が首をつっこんでくる。

「うん・・・やっぱり、遠出している!って気にさせられるのは北海道だからね、あっちの山に登ってくれば気も晴れるかなと思って」
「でも、利尻には勝てないよなあ」
「余計な事を言ってはいかん。利尻と比べてはいかんのだよ」
「おかでんも利尻にのぼってきたら?」
「いやだ、後追いするのは」

ただ、どうも北海道行きというのも盛り上がらない。じゃあ、ということで今度は開聞岳とか韓国岳といった鹿児島方面の山のチェックに入っていった。

「あっれえ?おかでん何やってるんだよ、今度は鹿児島か?全然方向違うじゃん」

またコダマ青年だ。

「うー、どうも兄貴の旅行話を聞かされて、精神が乱れまくってるんだよー」
「だなあ、迷走してるよな。さっきは八甲田山をチェックしていたじゃないか」
「青森方面もいいかなあって。ただ、車で青森まで行くのは相当疲れるので、どうしたもんかな、と」

結局、一人で飛行機にのって北海道とか鹿児島に行くのはコストと思い出のバランスを考えて、割に合わないと判断がおりて却下。じゃあ、ってことでなぜか鳥取の大山に登ろうとしてみたり、讃岐うどんを食べにいこうとしたりと迷走はますますひどくなるありさま。

そんな中、「旅の窓口」で東北地方の空き宿を検索していたら、岩手県花巻の鉛温泉が一人旅の客でも受け入れてくれる事を思い出した。鉛温泉といえば、その重厚な建物が特徴的で印象に残っている。旅の窓口の感想欄では、みな一様にベタ誉めしているし、要望に対して全て宿の主人がコメントを記入しているということで非常に好印象だ。ならば、一人で温泉旅に行くというのも悪くはない選択肢かもしれないと思った。

できることなら、岩手県の山・・・岩手山か、早池峰(はやちね)あたりに登っておきたいところだが、あいにく天気予報は雨。ま、しゃーない、温泉マッタリ企画でいきましょうかね。

前日の23時過ぎ、旅の窓口経由で予約。1泊2食つき、税抜きで7,000円。安い。

温泉宿は、普通一人での宿泊客を嫌う。一人客でも四人客でも、一部屋を開放しなければならないわけで、それだったら部屋単価が高くなる複数人客の方がありがたいからだ。平日は一人客OKでも、土日祝日はNG、という宿も多い。また、一人客OKであっても、宿泊料金が数千円UPというところもある。

その点、この鉛温泉は湯治場の思想があるからか、休日だというのに一人泊OKだからありがたい。

と、いうわけで、東京出発6時間前にしてようやく目的地決定。今回は、岩手県鉛温泉にて1泊2日、これがターゲット。ええと、それ以外は全く何も決めてないぞ。

と、いうわけで、いきなり岩手県花巻市に到着。

ここにくるまで、東北自動車道を北上すること5時間。だらだらと文章を書くおかでんでさえ、スルーさせてしまうほど「何も無かった」5時間だった。

ついでに言うと、飯も食わずにもくもくと北上。

道中、「花巻」は「はなまき」と読むのか「はなのまき」と読むのか悩んでいたくらいしか記憶が無い。

で、花巻(はなまきと読むことが判明)、だが。

どうやら宮沢賢治ゆかりの地らしい、ということが分かった。・・・ってか、「宮沢賢治記念館に行きたいから花巻に行きたーい」っていうのが普通だろ、オイ。現地についてガイドブックを読んで、初めて気が付いてやんの。

とりあえず、花巻市街地を素通りして、宮沢賢治記念館に行ってみることにする。宮沢賢治ねぇ・・・。小学校の頃に読んだっきりで記憶が相当薄れている作家だな。働けど働けど、我が暮らし楽にならざり、だったっけ。

それは石川啄木ですが・・・

ああ、そうだったか。故郷のなまり恋しき停車場・・・

それも石川啄木。

あれれ。東北だと、どうしてもそっちのイメージが。「故郷の鉛恋しき」って、ほら、鉛温泉っぽくてちょうど今回の旅とジャスティスじゃないかと思ったのだが。

何か英語の使い方間違ってるぞ。ジャスティスって何だ、一体。ジャスト、じゃないのか、それを言うなら。ジャストにしてもやっぱり意味不明だがな。

ええと、話を真面目に戻すと、宮沢賢治といえば「風の又三郎」であり「料理の多い注文の店」・・・違った、「注文の多い料理店」であり、「銀河鉄道の夜」だったっけ。どれも、何か薄気味悪い作風って印象しかおかでんは持っていない。銀河鉄道の夜なんて、なんじゃそりゃーって読んでいて思ったもんだ。

だから、宮沢賢治にはこれっぽちも興味がない(きっぱり)。しかも、歴史だか国語の教科書に載っていた、宮沢賢治の顔写真がイマイチあか抜けていなかったのも印象を悪くした遠因の一つ。

でも、花巻に遠路はるばる来た以上、宮沢賢治をはずすわけにはいくまい。

宮沢賢治記念館

記念館の駐車場は満車だというので、記念館から少し離れたところにある「童話村」に車を停めた。童話村の入り口には、「銀河ステーション」と書かれたゲートが設けられていた。

「鉄郎さん、早く早く!」と慌てている車掌さんは・・・居なかった。あ、それは松本零二か。

売店

駐車場に併設されていた売店は、「銀河鉄道の夜」=「鉄道」のイメージから、貨車を改造したものだった。

・・・

いや、もう少し気の利いたコメントを言おうと思ったのだが、何も思いつかんかった。ふーん、って感じで。ネタとして何か弄れそうだと思って、写真を撮ったのだが。

周辺マップ

この辺りには、「童話村」「イーハトーブ館」「記念館」と、宮沢賢治関連の建物がいくつか密集しているようだ。目指す宮沢賢治記念館は丘の上に建っているため、童話村からフウフウ言いながら登っていかなければならない。

記念館への車道が分岐するところに風情のある蕎麦屋があり、ちょっと惹かれる。写真を取り忘れたので記憶が曖昧だが、

「当料理人が本場で体得した力と技の前では 屈強なグルメ戦士も負け犬同然」

みたいな事が書いてあったような、無かったような。とにかく、何やらおいしそうな雰囲気はあった。しかし、時は既に15時すぎ。ここで蕎麦を食べてしまうと、せっかくの宿の夕食が食べられなくなる。やめておこう。

・・・このあたりの節制をするようになったのが最近のおかでんなのだが、昔の、思いつきで暴飲暴食する姿を知るものからすれば「負け犬(ルーザー)」と感じるかもしれない。歳取ったなぁ、俺。

宮沢賢治記念館建物

10分強ほどかけて、丘のてっぺんまで登ってみたらそこの駐車場はまだ空いていた。なんでぇ、わざわざ徒歩で登ってくるんじゃなかった。「満車」の看板を信じた自分が馬鹿だった。

郵便局の臨時ハガキ販売所の横をすり抜け、記念館に向かう。入場料350円。安い。

しかし、中に入ってみて思ったのだが、うーん、何だこの記念館は。

やはり、作家の記念館って作りにくいのだろうか。

何しろ、「宮沢賢治は宗教に熱心だった」ということから、バーミヤンの石窟を紹介していたり、「地質学の先生だった」ことから延々と石とか地層の説明をしたり、銀河鉄道の夜つながりで星の説明をしていたり。宮沢賢治本人の話より、そういう「直接関係がない周辺の話」が多かった。

もちろん、その人の作風を作ったバックボーンを知るという事では重要な事なのだろうが、それほどその作家に対して思い入れが無い人からすれば、「なんのこっちゃ」となってしまう。かといって、今更付け焼き刃的に宮沢賢治の作品を読むわけにいかず、「はあ・・・そうですか・・・」とか言いながらひととおり見て回る。うん、個人的には面白くなかった。

教訓。こういう場所に行く際には、事前学習をある程度しておこう。行き当たりばったりの旅、さっそく弊害が出てきてしまった。

建物前で記念撮影

記念撮影だけはきっちりとやっておく。

9月下旬だけど、さすがは岩手。長袖を着ていないと、肌寒い。

ええと、これにて1日目の目的終了。あとは宿に向かうだけ。

おい、本当にこれでいいのか?わざわざ片道5時間かけて、僕ぁ何をやってるんだ?

いや、それを言ってはいけない。

山猫軒

記念館の駐車場内には、「注文の多い料理店 山猫軒」というお店があった。

中に入ると、山猫に食べられるので要注意だ。その割には、結構な人が出入りしていた。みな一様に、体中にクリームやバターを塗りたくってお店の中に入っていった・・・わけはない。

では、本当に店側からの注文が多いお店なのかもしれない。大阪の激安下着屋「ファンデ」みたいな。

鉛温泉に向かう

さて、本日のお宿である鉛温泉に向かおう。今回の旅で、唯一目的があるといえばこの宿に泊まるということだけだ。ここをきっちりと押さえておかなければ、何をしに花巻まで来たかわからん。

「旅ではあれもこれも」派のおかでんは、旅先でいろいろ見て回るため、常に宿に入るのが17時以降となってしまう。しかし今回ばかりは、16時過ぎにはチェックインできるようにするつもりだ。鉛温泉、今から楽しみだ。

・・・ああ、でも既に夕焼けがはじまっている。

「花巻南温泉郷」というアーチ

「花巻南温泉郷」というアーチが、出迎えてくれた。ここから先の道は、温泉が立て続けに現れてくる。

松倉温泉、志度平温泉、渡り温泉、大沢温泉、山の神温泉、鉛温泉、新鉛温泉。

ああこの地名を見て思い出した、昔、この辺りを行き当たりばったりで旅した椎名誠の紀行文を読んだ事があるなあ。宿を決めないで、花巻からバスで終点まで行って、その間に手頃な温泉宿を探して、折り返したってあったっけ。

次々と温泉を通過していく様はなかなか愉快。温泉によって特色があって、展覧会を見ているようだ。

鉛温泉藤三旅館看板

数分おきに温泉の横を通過しながら、目指す本日のお宿・鉛温泉藤三旅館にたどり着いた。

このお宿、「とうさんりょかん」と読むのかと思ったのだが、よく調べてみたら「ふじさんりょかん」が正解らしい。はい一つ賢くなりましたね?

さすが東北、ちゃんと「自炊部」と「旅館部」に分かれている。きっと、雪深い季節になったら、この辺りの温泉には農作業を終えた農家の方々が湯治にやってくるのだろう。昔ならではの温泉風景だ。

と、チェックインする前から看板だけで感慨に浸っていたのだが、この藤三旅館の醍醐味(だいごみ)っていうのはその建物にある。ほら、後ろになにやら赤い屋根が見えてきたぞ。旅館は川沿いに建っているので、道路から下ったところにある。

鉛温泉藤三旅館の古めかしい建物

じゃーん。

なにやら、古びた味のある建物が木々の隙間から見えてきた。これが、藤三旅館の「旅館部」だ。

写真では見たことがあったが、いざ実際に「ナマ藤三旅館」を目の当たりにすると、思わず「おおおぅ」と声が出てしまうし、ニヤけてしまった。

これをボロいというのは簡単だ。でも、これは味だ。こういう建物に風情を感じなくてはいかん。いや、嫌みでもなんでもなく、本当にそう思う。さてさて、宿泊が楽しみになってきた。

旅館部

旅館部の入口に立ってみる。

入口の上にある独特のデザインの屋根が印象的だ。赤松健の漫画「ラブひな」の舞台となった「ひなた荘」は、この建物を素材にしているという。なるほど、確かに漫画家がこの建物を見たら、何とか自分の作品に取り込みたいと思うのも無理はない。

ここでもまた、ニヤニヤしてしまう。いやぁ、外観でワクワクさせてくれる宿なんて、なかなかないもんだ。いかん、行き当たりばったりで来るような場所じゃなかったか。一カ月前から綿密に旅行の計画を立てて、指折り旅行当日が来るのを待った末に泊まるような場所じゃないのか、ここは。・・・そんな気さえ、した。大げさだが。

玄関をくぐると古風なスペース

入口に入ると、下足番みたいな人が(違っていたら失礼)いて、「予約していたおかでんですが」と伝えたら「あっ、旅の窓口でご予約されていた方ですよね?」と即座に返答してきた。直前になって予約を入れてきた、オッサン一人旅、ということで印象深かったのかもしれない。

「すいません、急な予約を入れちゃいまして・・・」

と恐縮しながら、靴を脱ぐ。

受付をしている間、あたりを見渡すとこんな感じ。

外見が深い味わいがある状況なので、中がこうやって新しい作りで、なおかつ古めかしい演出をしているとちょっと違和感がある。あれ、さすがに味わいがあるのは外観だけなのだろうか、とやや不安になる。

鉛温泉の由来

「鉛温泉の由来」が入口正面に掲げられていた。むむむ。

温泉の由来

今から500年前
当温泉主、藤井家の遠祖が高倉山麓に於て薪樵の折白猿が岩窟の中より出で桂の木の根元から湧出ずる泉で手足の傷を癒して居るのを発見、これが温泉の湧出であることを知り後、嘉吉3年の頃仮小屋を建てて一族が天然風呂として用いたと伝えられている。
因に藤井家の遠祖は

ここで面倒になったので書き写しはやめ。藤井さんちの家系の話が後半語られている。まあ、よくありがちな話やね、動物が傷を癒しているのを目撃っつーのは、なんてざーっと流し読みしていたら、最後の日付で面食らった。「天保12年9月」って書いてある。おい、この「500年前」というのは平成のご時世からみて500年前ではなく、江戸時代からみて500年前って事だったのか。ううむ、やってくれるぜ鉛温泉。

古さがある廊下

建物自体は大正時代だか昭和時代だかに作られたものらしいのだが、さすがに内装は外装ほど古めかしくはない。襖で仕切られていて鍵がない部屋なのかな、と思っていたのだがちゃんとドアになっていた。しかし、その作りは一昔前の国民宿舎を思い出させるもので、まあ悪くいえばボロいが、よく言えば ノスタルジックで面白い。

値段が安い上に一人旅なので、宿の人はそっけない対応をするのかな、と思っていたのだが部屋の案内に一人仲居さんがついてきてくれて、荷物持ちましょうか、なんて言ってくれた。あれれ、親切だなあ。

途中、仲居さんに「素晴らしい外観ですね」なんて水を向けてみたところ、「皆さん最初びっくりなさいますね」とニヤリ。「最初、外観を見て不安になるお客さんもいらっしゃるんですよ、こんな所に泊まって大丈夫なのか、って」

なるほど、「この古さが、味だ!」と喜ぶ人間でないと、あの外観だと引く人がいるかもしれない。

そして、仲居さんは「最近は『千と千尋の神隠し』みたいだ、っていうお客様が多いんですよー」なんて言っていた。よっぽど、「『ラブひな』の舞台になった建物だ、って言われません?」と聞こうかと思ったのだが、「ラブひな」というラブコメ漫画が果たしてメジャーなのかどうか、怪しかったので触れるのはやめておいた。

一人泊には十分すぎる部屋

一人旅だし、直前の予約だし、部屋には全く期待をしていなかった。四畳半くらいの部屋で、ホント寝るだけのような部屋であってもしゃーないかぁ、程度の認識だった。

しかし、仲居さんが「どーぞこちらになります」と案内した部屋は、本館3階(要するに最上階)の、川側の眺めの良い部屋だった。しかも、6畳部屋だ。

「え・・・?ここ、でいいんですか?」

思わず声を出してしまった。仲居さんは、「ええ、こちらをご利用ください」と何事もなかったかのような対応をする。特に仲居さんが胸を張って自慢しているわけでもないので、僕だけ特別待遇をしてもらっている訳ではなさそうだ。ううむ、ありがたい、というか恐れ多いぞ、ここは。

ご満悦で記念撮影

うれしくなってしまい、仲居さんが引き上がるや否や、部屋の中から外からウロウロしてしまった。 まるで、動物園の檻の中にいる猛獣だ。

今夜一晩は、この部屋を一人で独占できるのか!

何か、とてもうれしい。自分の人生振り返ってみると、一人旅の経験はあるけど「温泉旅館に一人で」という経験はない。普通、一人で泊まるといえば味もそっけもないビジネスホテルが相場だ。もしくは、ユースホステルみたいなところとか。

だから、こうやって一人で一部屋・・・しかも、自分が普段生活している家よりも広い・・・を占有できている、という事実に人生のヨロコビを見いだしてしまっているのであった。

危なく、「俺の人生勝ったも同然」と、この程度のシアワセで自分の生涯を総括してしまいそうになったが、ぐっとこらえる。そんな寂しい人生はイヤだ。

川を見下ろす

窓から外を眺めてみると、すぐ旅館の脇に川が流れていた。

おい、これって一番見晴らしがいい部屋を使わせてもらっているんじゃないか?

後になって「いやー、すいませんお客さん、ご案内する部屋間違えちゃいました。別の部屋にご案内しますんで」なんて宿の人に言われたらどうしよう、なんてちょっとだけチキンハートがドキドキ。

とりあえず、部屋の鍵締めちゃおうかしらん。仲居さんが入って来られないように。

館内案内図

部屋に備え付けてあった非常口ご案内。本館だけの紹介になっているが、よく見ると何か作りが変だ。部屋番号がヘンだ、おい、1から5はどこへ行った。しかも、あちこち妙な番号が歯抜けになっていたりしている。きっと深い理由があるのだろうが、開かずの間になったとか何とか、気まずい理由があったら非常にイヤなので、聞かないでおこう。

あと、1階フロントのすぐ横に厨房がある、というのもこの手の規模の旅館にしては面白い。やっぱり、古い旅館ならではの作りということなのだろう。

日本一深い岩風呂の案内

さて、いくら「六畳一間を独り占め」したからといって、ずっとこの本丸で籠城していたのでは意味がない。温泉に浸かりにいかねば。

ここは、「日本一深い岩風呂」と自称している、白猿の湯がある。湯船が深いので、立って入らないといけないらしい。確か、水深は1.2mほどあるらしいが、どこか別の温泉でそれ以上の水深の風呂ってあったような気がしなくもない。ああ、そうか、日本一深い風呂、ではなくて、日本一深い「岩風呂」、なのか。それだったら納得だ。

いずれにせよ、相当深いのは事実であり、宴会終了後酔っぱらってこの風呂に入ったらデンジェラスだ。人間、膝ほどの水深があれば溺死することが可能なわけで、1.2mなんて深さがあったら、しらふであっても危ない。プールみたいに、監視員を常時配備してなくていいのだろうか。

少なくとも、お子様は入りたくても入れない風呂であるのは事実だ。浮き輪が風呂場の隅に置いてあったら笑うが、さすがにそんなことはあるまい。

白猿の湯地図

その白猿の湯は、旅館部からてくてくと歩いて、お隣の自炊部との境目に位置していた。 二本の廊下に挟まれているというのも珍しいが、入口が二箇所あるというのも珍しいお風呂だ。

白猿の湯に向かう廊下

地図に従って廊下を進んでいくと、なにやら曇りガラスがあった。そのガラスの向こう側では、「カコーン」という、浴室独特の音が聞こえる。おや、このガラスの向こうが浴室か。

でも、なにやらはるか下から聞こえてくるような気がするぞ?

白猿の湯

「白猿の湯」と書かれた案内に従って扉をガラガラと開けてみた。あれれ、階段があってその下に風呂があるぞ。1階分くらい、階段を下りないといけない。 なにやら、秘密基地みたいだ。

小判型の湯船があって、それを中心に対角線上に階段と脱衣所が二箇所ある。男女混浴だ。

・・・まあ、男女混浴、といってもこんな風呂に女性は入れるもんか。そのため、夜の1時間は女性専用になっている。

風呂場から階段を見上げたところ

風呂場から階段を見上げたところ。この高さから、階段を下りてきて服を脱ぐことになる。

階段を下りている間、ずっと湯船に浸かってぼんやりしている人たちの視線を浴び続けることになる。

なにやら、宝塚歌劇団の気分だ。羽根つきの服を着込んで階段を下りなくては。

高い天井

この湯屋は、地下1階に掘り下げた形で湯船があって、廊下が1階にあって、屋根が地上3階くらいにあるので、結局4階分の吹き抜けになっている。だから、結構熱いお湯であるにもかかわらず、湯気が籠もらず視界は至ってクリア。湿っぽくもなく、居心地が良い空間になっていた。

何でこんな地下に湯船があるの、と思ったら、自噴式の温泉だかららしい。湯船の水面は、お隣の川の水面と同じ高さで、自慢の水深1.2mは川の水深と同じだそうな。

湯船

湯船に浸かってみる。

さすがに1.2mは深い。最初、そろりそろりと足を浸けてみたのだが、いつまで経っても底に足が到達しないので結構焦る。湯船のへりには段差が用意されていて、さすがにいきなりドボンと1.2mの深みに足をつっこむようにはなっていない。しかし、その段差を利用しても、やっぱり少々怖いものがある。

そろり、そろり。ああ、ようやく足がついた。ほっと一安心。

身長178cmのおかでんでも、直立でこんな感じ。みぞおちあたりまで水深がある。150センチ程度の女性だったら、気をつけをしてちょうど肩のあたりまでお湯に浸かる事になるだろう。

足元は、岩がごろごろしていて、その隙間から時々ぼこぼこっと泡が出てくる。わ、僕じゃないっすよオナラしてないっすよ、と動揺しつつも、どうやら不規則にお湯が吹き出ているようだ。溢れたお湯は全部湯船の外にオーバーフローしていた。

立ったまま温泉に浸かる事に何の意味があるんだ、リラックスできないじゃないか、という意見もあるが、解説によると「深い水深が、体に適度な水圧をかけ、マッサージ効果が期待できる」んだそうな。なるほど。しかし、結構な温度なのですぐにのぼせてしまい、風呂につかっている人よりも湯船の回りでのぼせた体を冷ましている人の方が多かった。むむむ、マッサージ効果に疑問符。

しかし、この温泉、非常に快適なのは言うまでもない。非日常的な空間であることも相まって、またもやニヤニヤしながら風呂にずるずると浸かっていた。どうも、今日はこの宿についてからニヤけていることが多い。

※写真は、誰もいない頃合いを見計らって写真を撮った深夜のもの。

白い猿がおまつりされている

風呂上がり、旅館内部を探検してみることにする。増設を繰り返したと思われる古い旅館ゆえに、「探検」という表現がふさわしいヤヤコシイ建物の作りになっている。

白猿の湯の隣に、その白猿がまつられているほこらがあった。あいにく財布を持ち歩いていなかったのでお賽銭はあげられなかったが、この白猿様に手を合わせると一体どんな御利益があるのだろうか。

温泉を発見できるようになる、とかそんな御利益だろうか。だとすれば凄い事だが。

自炊部の調理場

自炊部の方に歩いて行ってみる。

旅館部の作りとがらりと代わり、なにやら急に生活臭溢れる空間になってきた。

こちらは、自炊部の調理場。各自が持ち込んだ鍋やら米やらが置き去りになっていた。

自動ガス販売機

さすがにタダでガスを使わせるわけではなく、10円を入れると一定時間ガスが使えるという「自動ガス販売機」みたいなものが用意されていた。

ものすごい年期ものだ、錆びまくってるぞ。

廊下から自炊部

廊下から自炊部をみたところ。

自炊部の建物は、二列になっている。旅館部と同じく古い建物なのだが、旅館部よりも無骨だ。旅館部が「古いが味わいがある」建物なのに対して、自炊部は「古くて、それに見合ったボロさ」という印象。

コトバが悪くて、旅館には申し訳ないのだが、印象としてはそんな感じだ。決して貶めようとしているわけではないのだけど。

こちらの自炊部に泊まって、自炊をすれば一泊が1500円から泊まることができたはず。さすがに、安い。農作業を終えた農家の人たちが、一冬をこういったところで過ごすのだろう。一カ月過ごしたとしても、4.5万円だ。温泉旅館に滞在するということを考えれば、安い値段だ。朝から晩まで、あのお風呂に入ることができると思えば、言うことナシだ。

自炊部の廊下

自炊部の廊下。

各部屋の入口をのぞいてみると、一升瓶が並んでいたり、自分の家から持ち込んだらしい冷蔵庫が置いてあったり、洗濯物のかごが置いてあったりと様々で面白い。また、さすが自炊部だけあって、「長居しちゃるぞ」という覚悟が見え隠れして興味深い。

廊下のはるか先では、料理を載せた台車を転がしながら、旅館の人が夕食を配っていた。

この藤三旅館では、自炊部宿泊で、簡単な食事が付くセットも用意されている。値段は3,800円程度だったと記憶している。一泊二食で、その値段で温泉に泊まれるのだから信じられない価格だ。まあ、いろいろ気の利いたプランを用意していて、この旅館は本当にエラいと思う。

しかし、ただ今の時刻、17時30分。夕食、早いねぇ・・・。

やっぱり、ご年輩の方々が泊まる場所なので、早い時間に夕食を食べて、早く寝てしまうのだろうか。普通の旅館のように、「ご夕食は21時までに食べ終わるようにお願いします」という時間配分とは違うのだろう。

旅館部と自炊部の狭間にある警告

僕の場合、夕食は18時30分と聞いていたので、まだ時間に余裕はある。しかし、自炊部で夕食が配られているのを見て、何となく不安になってきた。

とりあえず部屋に戻ってみることにする。(こういう無意味にドキドキしてしまうあたりがチキン野郎と言われるゆえん)

白猿の湯を経由して旅館部に戻るが、その途中、看板が出ていた。

この旅館には、白猿の湯のほか、自炊部棟に1箇所、旅館部に2箇所の湯がある。自炊部の人は、この旅館部の2箇所のお風呂には浸かることができないらしい。なるほど、こういうところでもサービスの差別化が図られているということか。

旅館部の階段

旅館部の階段。

黒光りしている。毎日、丁寧に拭きあげているのだろう。

アトミック風呂

部屋に戻った後、やっぱり食事があるわけでもなく、やることがないので旅館部にある「白糸の湯」に行ってみることにする。

一人での温泉旅館泊、となるととにかく暇なんである。部屋に戻って、まったりとくつろぐのも良いのだが、同行の友とダベるということもできず、どうも落ち着かない。

しかし、うれしいことにここには風呂が4箇所もある。暇な時間を有効活用して、風呂に入りまくらないと。

さて、この「白糸の湯」だけど、別名が「アトミック風呂」だという。なんつーネーミングだ。大人しく「白糸の湯」にしておけばいいのに、横文字を使ったがためにえらくチープな印象になってしまった。

アトミック風呂内部

アトミック風呂内部。

白猿の湯というインパクトが強いお風呂に入ったあとは、何かどーでもいいや、って感じの風呂だった。タイル張りで、ウネウネとアメーバのようにくねった形の湯船。そして、前が殆ど見えない湯気。

写真を撮るために、しばらく脱衣場の扉を開放しておいて、湯気を抜いたあとに写真を一枚。

鉛温泉の夕暮れ

風呂に入ってのぼせている間、外はだんだんと日暮れになってきていた。

窓の外を見上げると、そこにはすごくきれいな、真っ赤な夕焼けが広がっていた。宿の内外、うろちょろしながら夕焼けの写真を撮りまくる。

一人旅なので、自分のやりたいと思ったことを、やりたいと思ったときにやれば良い。だから気楽だ。

しかし、この鉛温泉、あれこれとうれしい楽しいウヒヒヒヒ、な事があるため、一人旅故の気楽さよりも「このヨロコビを誰とも共有できないことが悔しい!」という気持ちの方が強かったりする。

とことん、岩手!

廊下の壁には、NHKのポスターが貼ってあった。

10月7日に、「おーい、ニッポン」という番組で岩手特集をするらしい。

わんこそばをニコヤカによそうおねーさん、苦悩の表情を浮かべるおにーさんの絵がなにやら面白かったぞ。

「いきいき わくわく わんこもり」

とキャッチコピーが書かれていた。

岩手=わんこそば、というイメージというのは、ガイジンが日本人を「メガネ、出っ歯、カメラを首からぶら下げている」という印象で見ているのと同じで、偏見なのかと思っていた。だから、むやみに「岩手といえばわんこそばでしょう!」なんて言うのは避けていたのだが、別にそんな遠慮はしなくて良かったようだ。

鉛温泉の売店

白猿の湯に隣接して、売店があった。

自炊部がある旅館に泊まるのは初めての体験だったので、売店にも興味津々だ。自炊部では既に夕食が始まっていたため、お客さんは皆無だったが、「どうもー」と言いながらのぞき込んでみた。

・・・うわ、これは凄い。雑貨屋とかコンビニエンスストアとか形容してもいいけど、ものすごい商品の取扱量だ。 野菜、果物、菓子、缶詰、飲み物、洗剤、食器、調理道具、調味料・・・ええと、一つづつ挙げていくのが面倒なので以下略。とにかくものすごい。ここにくれば、生活に必要なもの全てがそろうといった感じだ。

あまりに取扱量が多いので、1品目あたり1種類しか置いていないかとおもったら、決してそうではない。醤油は数種類の品そろえだった。コンビニよりも品そろえが良いんでやんの。不思議に思って、店番をしていたおばあちゃんに聞いてみたら、「醤油は人によって好き嫌いがあるから」との事だった。味の基本となる部分なので、こだわりが出るんだそうな。なるほど、長期滞在をしているからこそ、の発想だ。一日二日程度の自炊だったら、醤油の味くらい我慢できる。

商品がすごい数

通路を挟んで反対側にも売り場があるのだが、とにかく呆れるばかりだ。ハエたたきが売られていたり、洗面器が売られているのは序の口で、部屋の装飾品、「ドアを開けたときにカランカランと音を立てる木製の棒が何本もつり下がった飾り」、巾着袋、衣類、財布・・・。

そして、タバコも品そろえは立派。

売店での戦利品

これだけの品そろえを前に、何か買っておかないと勿体ないという気になってしまった。

結局、おばあちゃんお奨めのつけものと、珍しい鴨ジャーキー、そしてビーフジャーキーを購入。

夜、これで酒をちびりちびりとやるかね。

文豪のように温泉で執筆活動

戦利品を売店から持ち込んでも、まだ夕食まで時間があった。うむ、一人旅とはいかに広大な時間と闘うかというのも一つのテーマなのだな。

でもご安心を。今回の旅の目的の一つとして、「アワレみ隊OnTheWebの執筆を重点的に行う」というものがある。ノートパソコンを持ち出して、早速執筆開始だ。この後、夕食時にお酒が入ってしまうと筆が進まなくなる。今のうちに書き進めておかないと。

まるで文豪になった気分で、暮れゆく外の景色を眺めつつ、文章をしたためる。

・・・したためる、じゃないよな。カッコつけちゃったけど、正確には「タイプする」だな。

鉛温泉夕食

さーて、お待たせしました。夕食のお時間がやってきましたよぉ。

格安の宿泊費、しかも一人旅という事なので、当然のごとく食堂での食事かと思っていた。しかし、仲居さんは事もなげに「お部屋でのご提供になりますんで」と言う。これにはたまげた。

部屋食、というのは高級なお宿でやることじゃあないんですかいな、と。

もちろん、建物の都合で食堂が用意されておらず、食事は部屋食もしくは空いている部屋のどこかでご提供しますー、という安宿もあるのだが、こういう古い歴史を持つお宿だったら、当然のごとく「大広間で食べてください」とくるかと思っていた。意外、意外。またもやここで「うしし」と笑わずにはおれない。

しかも、出てきた料理がこれだ。一泊二食7,000円そこらのお値段で、ここまでちゃんとした料理が出てくるとは。もう何も言うことございませんです。恐縮して、お膳の前で土下座しそうになってしまった。

お飲物料金表

ちなみにこのお宿、飲み物が結構豊富に取りそろえられていた。「お飲物料金表」として、半ページに渡ってあれこれ書いてある。

部屋食は他人に気兼ねなく食事ができていいわぁー、っていうのは事実なんだが、一つ問題があるとすれば「お酒の追加注文がしにくいやんけ」という事だ。ちょっと興が乗ってきてもう一本、いやホントもう一本だけだってば、ってなったとき、わざわざ電話でフロントを呼び出したりしないとイカンというのはちょっと面倒。

だから、自分の本日の適量を見極め、早めに・そしてこころもち多めに注文しておかないと。

しかし今日は「多め」にしてはいけない。他人に気兼ねナシの一人旅だ、ここで酔っぱらってしまったらそのまま居眠りしてしまう。目が覚めたらもう夜明け、ってなったら、勿体ないお化けが出てくるぞ。せっかく岩手県まで来たのだから、岩手の夜を満喫しなければ。・・・というわけで、お酒は控えめに、ね。

結局、「わ、生ビールがお品書きにあった!」ということで生ビール(タンブラー)と、生酒を注文しておいた。これくらい頼んでおけば、過不足はなかろう。

生ビール

さて、待望の生ビールがやってきましたよと。いやぁ、旅館で生ビール飲むなんて思ってもいなかったので、またもやうししししと笑う。誰が見ているわけでもないが、手を口に当てて笑いをかみ殺す。そんな感じだ。「しめしめ」的な笑い、とでも言おうか。

他人からみれば、「30歳近くにもなって、一人で旅して一人で寂しく料理食べてほくそ笑んでいるキモいオッサン」なのかもしれんが・・・まぁ、そんな客観的事実は、ビールを飲んで忘れよう。

って、おい!お前、生ビールの横に瓶ビールが見えるけどこれは一体なんだ。お前、どさくさに紛れて注文しとったんかい。

いや、お巡りさん聞いてくださいよ、僕は確かに「生ビール」って注文したんスよ。でも、仲居さんが最初勘違いして、瓶ビール持ってきてしまったんですよ。僕が「あれ、生ビール注文したんですけど」って指摘して、初めて間違いに気付いたんですよ。でね、「あっ、すいません、すぐに生ビールおもちします」って瓶ビールを下げようとしたんで、「ああいいですよいいですよ、その瓶ビールも置いていってください、あったらあった分だけ飲みますから」って。だからこの瓶ビール、不可抗力なんですよ自分の意志じゃないんですよ信じてくださいよだからそれは

うるさい。結局、いつも通り・・・というか、いつも以上にお酒を飲む事になった、って事だろ。

はーい。

生酒に切り替え

で、その結果。

ビールを飲み終わって、生酒に切り替えた時点でこんな感じにでき上がっておりました。

ういー。

今日はもう、これ以上「文豪のふり」をするのは無理そうです。たんなるへべれけ野郎に成り下がってしまいましたです。

まいったな、台風接近中だぜ

しかし、単なる酔っぱらい温泉旅行で岩手県までやってきたわけでは決してない。隙あらば、早池峰に登頂するべく、登山用具は一式持参してあった。

ただし、現在まさに台風15号が接近中で、事実上無理だと思っていたのだが・・・最新の天気予報を確認。

ぬぅおわ。完璧にアウトやんけ。

台風がこんなに近いところにあったら、山の上は天気大荒れ。死にに行くつもりでも無い限り、やめた方が吉。先日、表銀座縦走でエラい目にあったばかりだし。

「やっぱ明日山は駄目かぁ」

と俄然がっくりきちゃって、そして「だったら今日酒飲んでもいいや」と諦めがついて、「もうこの辺でやめておこう」とリミッターをかけておいた生酒を再度解放。ぐいぐいと最後まで飲んでしまった。

映画をみて過ごす

食後、お膳を下げている仲居さんをぼんやりと眺めていたら、「ふとんを敷きにきましたー」と二人がかりでおっちゃんがやってきた。あらら。宿泊料金の安さから、布団を敷くのは自分でやるのかと思っていたのに、これまた驚きだ。どうもすいませんです、助かります。

しかし、こうやってお酒で陶然としているときに、目の前で布団を敷かれてしまうと・・・もう、寝ろといわんばかりの状況だ。

いかん、ここで寝たら勿体ないぞ。

テレビをがちゃがちゃやっていたら、大島渚の映画「御法度」が放送されていたので、結局最後まで楽しんだ。

居眠りするよりかは、はるかにマシな時間の過ごし方だった・・・かな。

河鹿の湯

ここで寝てしまっては無念至極、と酒びたしの体を清めに風呂に出撃した。こんどは、自炊部にある「河鹿の湯」という風呂だ。

お酒を結構な量飲んだはずだったが、「一人で温泉旅」であることに緊張し、「無駄な時間を過ごしちゃ駄目だ」と使命感に燃えていたからか、それほど眠たくはなかった。まだ元気だ。

肩で風を切りながら、ずしずしと自炊部を闊歩する。(←酔っぱらってる証拠)

自炊部は既に静まりかえっていた。夜も11時頃になれば、ここの宿泊客は寝てしまうのだろう。その代わり朝が早いのかもしれない。

洗面所

殿方と婦人の入口の分かれ目にあった、洗面所。

タイルで、何やら古めかしい。鏡の下に置いてある個人装備品と思われるコップや洗面器が、いかにも自炊部っていう感じだ。

河鹿の湯内部

河鹿の湯内部。ひっそりとしている自炊部同様、先客は一人もいなかった。

このお風呂、「清流・豊沢川展望風呂」というのが売りなのだが、夜なので当然展望も何も無い。

「・・・・・」

黙々と、風呂に浸かる。あの白猿の湯のインパクトを目の当たりにしてしまうと、・・・って、アトミック風呂の時と同じ感想。

気になるのは、男風呂と女風呂を仕切ってる白い板だ。何やらとってつけたような印象を受ける。昔は男女入れ替え制だったのか、それとも混浴だったのか。試しに押してみると、それほど分厚くもなくグラグラする。

ヌムゥ、この「薄い仕切り」に劣情を抱くワタシは駄目な人間なのでしょうか。

次に、温泉が噴き出ている岩を遠目に眺めてみる。あの高さに、自分の身長178センチを足すと・・・いや、目の位置は身長よりも10センチ程度低いはずだから168センチ・・・駄目か、足りないか。

一体何を考えているのだ。ばかもん。

でも、それくらいしか暇を潰す手段がなかったもんで。

適当にのぼせるまで浸かって、その後もう一度白猿の湯に出かけていって写真を撮って、深夜1時過ぎ就寝。おやすみなさい。

ああそうだ、夜中の12時過ぎに夫婦などで白猿の湯に混浴しようと思ってやってきた数組の皆様、ごめんなさい。僕が長湯していたので、諦めて帰ってましたよね。でも、それもまた人生です。精進しましょう。