番外編:すじコンを作ってみる

広島焼きではない。これがお好み焼きだ。(その4)

これが観音ねぎ

立春なので恵方巻きでも買ってみよう、と思いつきでスーパーに立ち寄ってみたら、懸案だった観音ねぎを発見した。

お前か!

世の中じゃ、「このたびはお騒がせをして大変にご迷惑をおかけしました。」という陳謝の記者会見があちこちで見受けられる。お騒がせしたら謝る、というのも変な話だが、こういう語句を使えば一応日本人は納得するらしい。その論法からいったら、おい観音ねぎ、お前とりあえず土下座して謝れ。さあ謝れ。

しばらくにらみ合いが続いたが、一向に謝る気配がないので、レジにてお会計をしたのち拉致連行して強制捜査に乗り出すことにした。絶対立件して起訴有罪にしてやる。

見た目は、東京界隈でよく見かける「細ねぎ」のミニバージョン。広島ではみかけないので一応解説すると、「細ねぎ」とは、長ねぎなんだけど一回り太さが足りない、ひょろ長いものだ。ただ、それよりもこの観音ねぎのほうがさらに二回り細い。しかし、青ねぎより太いし、絶妙な太さだ。

ブランドねぎらしく、この後いくつかのスーパーで見かけた時には必ず「観音ねぎ」と明記されていた。「広島県産ねぎ」とか曖昧な表現ということは絶対にない。その分、お値段も高め。この写真の一束で、190円くらいだったと思う。

母親に「ほら見てご覧、観音ねぎの特徴は、根元を藁で縛ってあることなんだよ。普通のねぎのように『JAナントカ』なんていうシールテープで束ねているんじゃないんだよ」と講釈を垂れていたのだが、後日別の店ではシールテープの観音ねぎを発見。うわ、恥ずかしいぞお前。

ただ、本場の広島市、しかも観音地区がある広島市西区のスーパーでさえ、観音ねぎを扱っていない店の方が多かった。需要がないのか、供給が足りないのかは不明だが、ご当地でもメジャーというわけではないようだ。ただ、丸ごと一本では置かれていないが、既に輪切りになったパック詰め商品としては売られている事が多いようだ。

※広島地区では、どの店でも輪切り青ねぎがパック詰めされて大量に売られている。東京では見たことが無い(か、あまり目立たない)ので、こっち方面の独特の文化なのだろう。多分、東京の方だと「ねぎは薬味だから、早く刻むと香りが飛んでNG」という価値観があり、刻んだ既製品を買うというのはあまりないのではないか?

この観音ねぎを発見して、急きょ本日の予定変更。本当は所用があったのだが、急きょ家にてすじコンを作ってみようと奮い立ったのだった。この観音ねぎがあれば、筋コンはさぞやうまかろう。外食でお好み焼き屋に行くのもいいけど、家でゆっくりすじコン作って食事をしたい。カウンター席のお好み焼き屋って、臨場感あるけどくつろげないんだよね。格闘技の特別リングサイド席みたいなものだから。

仕事に行ってくる、といって出かけていった我が子が、しばらくして意気揚々とねぎが突き出た買い物袋をぶら下げて帰ってきたのを見た母親は仰天。何をするんだ、と。

粋生ビール

すじコン。

要するに、「牛すじ煮込み」のことで、すじ肉とコンニャクを醤油味で煮込んだものだ。関東でも食べられるが、もっぱら西日本で愛食される料理。関東の居酒屋で出てくるものよりはるかにシンプルな具と調理法だが、それ故に気軽で低価なつまみとなり、愛されている。

広島では、「お酒も積極的に飲んでってください」というスタンスのお好み焼き屋によく置いてある。ただ、仕込むのに手間がかかるため、自宅改装型店舗でオバチャン一人がやっているようなお店に置いてある事はまずあり得ない。

紛らわしいものとして、「すじポン」という料理もある。これも広島のお好み焼き屋でよく見かける。「すじポン」は、これまた名前の通りすじ肉をポン酢で味つけしたもの。すじコンと名前が似ていて大変に紛らわしいが、別物だ。

使っている肉も違い、「すじコン」は肉部分がついているすじ肉を使い、肉肉しさがある。一方、「すじポン」は、純粋にアキレス腱の白い部分だけを使い、ぷりぷり感を楽しむ。味も食感も全然違うので、初めての方は注意。なお、両方がメニューに載っているようなガッツあるお店は見たことがない。大抵どっちか片方だ。

えー、写真は本文と全然関係ないけど。

観音ねぎを買ったついでに立ち寄ったお酒のディスカウントストアで、変なビールをケース買いしてきた。見たことも聞いたこともないビール。新種の第三のビールか?と思ったが、ちゃんと「麦芽100%」と書いてある。しかも日本製。ディスカウントストアでケース売りするくらいだから、大手メーカーと思われるが、なんじゃこりゃ?

箱を抱え上げ、あれこれ調べてみたら、ようやく正体判明。これ、「エチゴビール」社製の「粋生BEER」という商品だった。エチゴビールといえば、日本の地ビール第一号の会社として超有名だが、まさか広島のディスカウントストアでケース売りするほど販路を拡大していたとは。思わず買ってきてしまった。今回の調理実習はお昼だったので飲まなかったけど。

煮立たせる

帰宅後、早速調理開始。

・・・とはいかず、まずはネットでレシピ調査。実はおかでん、すじコンの調理法など全く知らないのだった。一応、すじ肉とコンニャク、観音ねぎがある。それ以外のものがいる、となったら俺涙目。いい加減すぎる。

ネットで調べてみたら、2-3時間は煮込まないと柔らかくならない代物だということを知った。今更だけど。そんなに時間がかかるんか。

「煮込まないと味が染みこまない」というなら、まあそれはいいやと思う。今日はとりあえず浅漬け状態で食べよう、明日頃にはいい味になってるだろう、と。しかし、すじ肉の場合「まずは2-3時間煮てからだ。話はそれからだ」と主張しとる。味つけ以前の問題。やあ、こりゃまいったな。そんなに煮ていたら、昼飯じゃなくて夕飯になっちまうぞ。でも仕方がない、これまでも固い牛すじを散々食べてきて、その食べたときの侘びしさをよく知っている。覚悟決めて今回は煮込みたいところだ。

なお、トリビアだったのが、「味が染みこむのは冷める時(またはぬるい時)」だという事。醤油やら砂糖みりんで味つけした後、コトコト煮込みゃ味がしみると思っていたので、目からウロコだった。実はそのやり方だと、逆に具が固くなってしまって仕上がりが良くないんだそうだ。へーへーへーへーへー。5へー頂きました。

牛すじを煮込む。実家のキッチンは200V、3.0KWのIHヒーターなので火力が強力。片手鍋程度の水ならあっという間に沸くのが素晴らしすぎる。しかも、噴きこぼれても火が消える事がないので、地獄の業火のようにぐらぐら煮てやった。どうだまいったか。

こんにゃくまみれ

隣のコンロでは、サイコロ状に刻んだこんにゃく(2種類使用)を軽く煮立たせ、あくぬきをしておく。

普段の調理でこんな一手間は絶対にしないのだが(というか、こんにゃくにアクという概念があることすら知らなかった)、なにせすじ肉が3時間かかるので、その間暇だ。これくらいやっておかないと間がもたない。

あと、東京の自宅は電熱コンロ1つだけなので、こうやって同時に複数の調理ができるのがうれしくって。ああ早く広いキッチンの家に移住したい。

こんにゃくを煮たら、水切りをして自宅待機しといてもらう。

牛すじを煮る

牛すじはしばらく煮こぼしたところでお湯を捨て、冷水で良く締める。

その際、汚れや脂分が表面に浮いてくるので、洗い流す。
確かに、すじ肉をもみ洗いすると手がぬめぬめになる。

一回だけではきれいにならないので、この作業を二度三度と。まあ、レシピによってこのあたりの回数はバラバラなので、自分の気が済むまでどうぞ、と。ただし、あんまりやりすぎるとすじ肉がボロボロになってしまい、最終的にがっかりするくらいの少量しか残らないハメになるんだけど。

プロになると、煮立たせる際に米ぬかなんぞも使うそうだ。さすがだな。たけのこのあく抜きと一緒か。でも、米ぬかを常備している家なんてそうざらにはいない。おかでん家も同様。米ぬかがない分、あとは力業で煮込むしかない。

じゃんじゃん煮こぼれさせるが、さっとぞうきんで拭けばすぐにきれいになるフラットパネルがIHヒーターの素晴らしいところ。移住するなら絶対IHヒーター装備の家にする、と心に誓った。・・・って、アンタ毎日煮込み料理を作り続ける気か?

牛すじコロッケ

間が保たないので、スーパーですじ肉とかと一緒に買ってきた「牛すじコロッケ」を食しつつビールをば。うまし、うましですよ。

しっかし、西日本の人はすじ肉好きだな。関東でも、もっと流行っても良い物だが、どうしてこんな美味い食べ物がまだまだ普及してないんだろう。コロッケに牛すじが入ってるなんて、ありそうでないでしょ?東京の方じゃ(もちろん、取り扱っている店はあるだろうけど)。

ただ、「お肉屋さんが作った・・・」というキャッチコピーはうさんくさいのでやめとけ。10年、20年前だったらこの言葉は十分シズル感があり、唾液を噴射させるだけの力があった。しかし今となっては、「ほうそうか。ではまずアナタが言う『お肉屋さん』の定義から語ってもらおうか」と逆に身構えてしまう。スーパーのお総菜売り場で「お肉屋さんが作った」なんてコロッケが売られていて、誰がワクワクするものか。そりゃ、スーパーには精肉部があるから、お肉屋さんを名乗ったもん勝ちだけど、本来そういう意味で使う言葉じゃないでしょ?

牛すじに鷹の爪を足す

いかん、いかんぞ。コロッケ2個で結構おなかにたまってきたぞ。すじコン、すじコンはまだか。

・・・当然まだだ。

三度目になる、水さらしと脂こそげおとし。ここまでに要した時間は・・・ええと、あれれ?どれくらいだったっけ。ビール飲み始めたからどうでも良くなってきた。コロッケでビールは結構酔うにゃあ。

ここで、待ちこがれてプルンプルンしていたこんにゃくmeets牛すじ。一つの鍋でイチャイチャしやがれこの野郎。犬でも食わねぇよ。俺は食うけど。

そうだ、唐辛子を入れなくちゃ。鷹の爪を2本ほど投入し、ここでまたしばらく煮込み。長い、長いぞ。どう考えても、ビールスタンバイしてから調理するシロモノじゃなかったぞ。作戦失敗ではないかおかでん。でも後にはひけぬ。進め、進め。

お好み焼きがスーパーのお総菜で売られているのだ

またしばらくのインターバル。どうすんだよ、おい。

一応、お好み焼きがスーパーのお総菜コーナーで売られていたので、買ってきてあるけど・・・。食べる、か。この時点で、ほぼすじコンをこの食事で食べるのは諦めムード濃厚。

広島のスーパーは、ある程度大きいところだと写真の通り、広島風のお好み焼きを売っている。肉玉そばで、お値段450円だから相当安い。お店で食べるのより一回りも安い。

だからといって馬鹿にできない味なのが、さすが広島クオリティ。なにしろ、そういうスーパーにはプロのお店さながらの鉄板がバックヤードにあって、びしばしお好み焼きを焼いている。わざわざお客に見えるように、ガラス張りで鉄板の調理模様が見えるようにしている店もあるくらいだ。

まさかお好み焼きのためだけに鉄板を導入したのか・・・?と心配になったが、お総菜コーナーを見渡すと、野菜炒めや餃子、ニラレバなどいろいろ「鉄板で調理しましたメニュー」があった。ああそうか、そういう活用法があるのね。

スーパー総菜とはいえ立派なお好み焼き

お好み焼き断面

まだホカホカしている奴を買って帰ったのだが、さすがにもう冷めている。電子レンジで加熱調理。

こうなるとお持ち帰り品の残念なところで、キャベツやもやしの水分がレンジ調理でしみ出てしまい、べちゃっとした仕上がりになる。こればっかりはお店でできたてを食べるしか、解決策はない。

あと、野菜類が相対的に少なく、焼きそばを食べている感覚に陥る品も結構ある。スーパーのお総菜お好み焼きはお手軽だが、当たり外れに注意。

広島市内に住んでいると、大抵は徒歩圏内にお好み焼き屋がある。だから、事前にTELして持ち帰りの予約をしておけば、それで事足りる。昔は持ち帰り用のお皿持参が原則だったが、最近じゃちゃんと容器も用意してくれる。スーパーで買う必然性というのは、実はあまり無かったりする。

煮込まれた牛すじ

いかん、おなかいっぱいになっちまった。ビール?もういらん。

おかしいな、観音ねぎ発見→活用したいぜ→すじコン作ろう、という動機で今こうして家にいるのに、何で全然関係ないものでビール飲んでる?なんでおなかいっぱいになってる?

しまった感ありありの状態で、ようやく牛すじが観念してやわらかくなった。味つけをする。

・・・えーと。料理酒がもう切れそうでした。どうしたもんかな。

ちゃっちゃーん。

調味料棚(あの、台所の足元にある、くるくる回るやつ)の中に、「すき焼きのたれ」発見。ビール飲んじゃってどうでもよくなったので、これ入れちゃえ。

ほら、あっという間に完成。どうだ。それっぽいぞ。

できあがった筋コン

一応、最後に簡単に味見。

うーん、甘い。というか、甘ったるい。やっぱりすき焼きのたれを使うのはやり過ぎだった。甘い上にべたつくし。まあ、いいや。本格的に食べるのは後日なので、また別途。もう酔って眠いのでこれから昼寝する。

・・・なんか、趣旨が最初からすごく変わった気がするが、まあいいや。

翌日、味つけをし直したら大層おいしくなった。

ただ、大きめの陶器に肉じゃがのように盛りつけてみたら、非常に貧相な見栄えだった。この手の煮込み料理は、小振りの椀にぎゅうぎゅう盛りつけるのが一番見栄えが良いのだろう。

時間はかかったが、基本的に「一口大に切る」「煮る」しかない料理。しかも作り置きができるので、これからはちょっと手が空いた時にはどんどん作ってみたい。ただ、東京じゃ観音ねぎは手に入らないけど。

(2010.02.03)




ソーシャルリンク

広告