謎の洋食五番勝負

短期集中食べ歩きマニアックス(その8)

洋食、という言葉にはいまいち馴染みがない。トンカツは洋食に入って、カツ丼は和食?とか、正直よくわからない。それもこれも、「実家住まいの頃=外食は殆どなし」「一人暮らし開始=外食とは酒を飲むためのもの也」という食生活だったからだ。いわゆる「洋食屋」というところは居酒屋としての利用は不向きであり、必然的に足が向かなかった。

で、いざ飲酒生活から足を洗ってみて、改めて「洋食」なるジャンルを扱っているお店を眺めてみると、変なメニューが存在することに気がついた。

そもそも「洋食」という世界が、欧米の食文化をジャパナイズした独自の世界だ。その換骨奪胎・・・とは言い過ぎだが、その過程の中で見慣れないメニューが登場しても何ら不思議ではない。今回は、そういうお店を巡ってみようと思う。

【01軒目】 盛り合わせコロペット@洋食ネスパ(人形町)

ネスパ

人形町にある「ネスパ」は、創業1949年のお店。ここでは「コロペット」という料理が食べられるというので訪問した。できるだけ先入観を持ちたくないので、名前が珍妙なメニュー、というだけでこのお店に飛びついた。具体的にどんな料理が出てくるのかは、まだこの時点では知らない。

コロペット、というとなんかトヨペットを思い出してしまう。ついつい、マイトガイ・小林旭の「自動車ショー歌」を口ずさんでしまうが、一体なんだそれ。

洋食屋が出すメニューなのだから、コロッケの亜流だろうということは想像が付く。そういえば、コロッケのことを「クロケット」とフレンチでは言うよな。あれ?じゃあ、コロッケって何語だ?

これで、そのまんまコロッケが出てきたら激しく拍子抜けだが、果たしてどうなのだろう?

メニューに書かれるコロペット

店頭に「一番絞り」の黄色い提灯がぶら下がっているお店。洋食屋だからといって、変に気取ってヨーロッパ「風」にしているというわけではないのだな。この気さくさが僕のような「洋食屋初心者」からすると嬉しい。

さて、店頭には黒板が置かれており、そこに目指す「コロペット」の説明が書いてあった。おお、相思相愛だな、こちらの狙いをちゃんと受け止めてくれているぞ。

初代主人 仲元中南により考案され、昭和24年の創業当時より商標登録されている、ネスパのオリジナル料理です。
エバミルクで作ったコクのある白ソースを肉や海老などの厳選された素材で包み、揚げたもの。
濃厚でありながらあっさりとした、なんともいえない舌触り。
他にはないネスパのコロペットをぜひ一度ご賞味下さい。

んー?要するに、大きい具が入ったクリームコロッケ、ということなのか?

「盛り合わせ」ということで、コロペットは海老・牛肉・豚肉・鶏肉の中から2つを選べるのだという。選べる、と言われても、一体どんなブツなのかよくわからない以上、何を選んで良いのか困る。とりあえず、記載されている順=おすすめ順である、と解釈して、海老と牛肉の盛り合わせを注文してみた。

コロペット盛り合わせ

盛り合わせコロペット(1,260円)

出てきた料理がこれ。あ、見た目はまさに「コロッケ」だ。海老の方はしっぽが出ているので、海老フライのようにも見える。さて、ここまでは普通のコロッケなのだが、わざわざ「コロペット」を名乗らせるだけの違いというのはあるのかどうか。

コロペット中身

牛肉のコロペットをナイフで切ってみたところ。

なるほど、クリームコロッケだ。しかし、クリームコロッケはとろけるなめらかさが売りだが、こちらの方はもう少しクリームがしっかりしている。そして、中には牛肉が食感を主張する程度の大きさで入っている。食べ応え十分。

クリームコロッケと同じかというと、確かにちょっと違う。こんなに具(牛肉)が主張するクリームコロッケというのは経験がない。へえ、面白いね。

コロペットというのは商標登録されているようだ。なので、この名前でこのメニューが提供されるのはここ「ネスパ」だけだ。オンリーワン、という食べ物を味わうというのは、なんだか楽しくなる。

(2014.02.23)

【02軒目】チャイナーライス@レストランコニシ(恵比寿)

コニシ外観

恵比寿にある洋食屋「レストランコニシ」。ここでは「クラブクロメスキー」というこれまた謎な料理があるという。

ここで思い出されるのが、フジテレビの伝説の料理番組「料理の鉄人」。フレンチの鉄人・坂井に対して、若手フレンチの集団「クラブ・ミストラル」が次々と刺客を送りこみ、「お前らの時代はもう終わりだ。世代交代だ」と煽っていたっけ。いかにもプロレス的演出で、プロレス者としては大いに楽しんだものだ。・・・で、「クラブクロメスキー」というのはその類いか?

クラブ、というのはカニのことなんだろう。まさか「部活動」という意味だとか今更なボケはしないぞ?でも、「クロメスキー」というのがわからない。「黒目好き」?・・・となると、「黒目好き部」という萌え女子大好きサークルがあってもおかしくないな。いや待て、そんなものが洋食屋のメニューになるものか。

ライス料理に気になるメニュー

お店に入ってみて、目指す黒目好きを探してみたが、どこにも見つけられなかった。カラーコンタクトをした人しかいなかった。いや、それは嘘だが、クラブクロメスキーがなかったのは事実だ。どうやら、日替わりメニューとして時々登場するだけのものらしい。で、今日はその日ではなかった、と。

恵比寿にさほど用事がない人生を送っている僕としては、いつ登場するかわからない黒目好きを追い求め、頻繁にこのお店に通うのはいやだった。他に何かないか・・・とメニューを眺めていたら、あれ?なんだこれ。

「チャイナーライス」。

英語では「CHINESE RICE」となっている。うーん、聞いたことがない名前だ。これはこれで気になる。まあ、チャーハンなんだろうなあという予感はするのだが、ひょっとしたら違うかもしれない。ルーロー飯みたいなものだったり、お粥だったりするかもしれない。対戦相手不在でフワフワしている状態だったので、ええいとこのチャイナーライスを頼んでみた。

チャイナーライス

あー。

案の定、チャーハンだった。洋食屋、ということでピラフに近いものだ。焼きめし、という表現の方がしっくりくる。

「やっぱり」という落胆した気持ちを覚えたが、これを食べてみたら結構うまい。というかかなりうまかったのですっかりご機嫌を直した。チャーハンといえば具はシンプルだが、このチャイナーライスはいろいろ具が入っている。それらを口の中でもぐもぐするのが、なんとも楽しい。これはこれでありだ。満足。

ただし、「このお店じゃなくちゃ食べられない」料理ではないな、これは。

後で「クラブクロメスキー」を調べて見たが、「カニクリームコロッケにベーコンが入ったもの」なんだそうだ。

(2014.03.14)

【03軒目】 チャーシューエッグ定食@とんかつ八千代(築地場内)

築地場内にある「八千代」は、とんかつの暖簾をぶら下げているけどその他全般に揚げ物がうまい店だ。すぐ隣が大行列のできる寿司屋で、最近じゃ日本人どころか外国人までが長蛇の列を作って並んでいる。平日朝9時の時点で50人以上並んでいるのだから、驚き呆れるしかない。で、僕はその脇をすり抜け、行列がいないこのお店に入る。

とんかつ八千代

一時、築地界隈で朝飯を食べるのを習慣にしていたので、このお店を訪れた事がある。一言言うなら、このお店のアジフライ最高。これまで、会社近くの居酒屋の定食ランチでアジフライ食べて、「揚げたてうめーッ」とか言ってたけど、ごめんなさいあんなの目じゃないです。骨皮だらけのアジっした。このお店のアジフライはふっくら肉厚で、ふわふわしている。こんなの目に毒、じゃなくて舌に毒だ。うますぎて他のが食えなくなる。

チャーシューエッグは曜日限定

毎度でもアジフライを食べていたいのだが、今回は「チャーシューエッグ」を食べることにする。これは「八千代」をとても有名にさせている名物料理で、今更紹介するまでもない鉄板だ。肉厚な豚バラ肉を巻豚にしてトロトロになるまで煮込んだそれは、「洋食界のラーメン二郎ブタ」と言われるほどだ。それに目玉焼きがついたひと皿が、「チャーシューエッグ」。さすがに煮込みに時間がかかるらしく、隔日でないとメニューに登場しない。

チャーシューエッグ定食

チャーシューエッグ定食(1,200円)。

で、チャーシューエッグ。味としては、ご家庭の朝食でおなじみ・ハムエッグやベーコンエッグと大差ない。しかし、大きな煮豚が使われていると、食い応えが全然違うのは言うまでもない。ホロホロと崩れる柔らかさの肉は、箸が止まらなくなる。そう、ハムエッグのように「ナイフとフォーク」は必要ない。箸で十分だ。

朝からかなりヘビーな料理。お腹いっぱいになる。でもここは築地、この地を職場としている人たちにとっては、これがディナーにもなりうるわけだ。ガッツリ万歳。

肉をかきこみ、会社に行ってきます!

(2014.03.20)

【04軒目】 ミカライス@洋食屋大越(東麻布)

大越外観

麻布十番からしばらく歩いたところのお店「大越」には「ミカライス」というメニューがあるという。なんだよそれ。美香さんが作ったライス?まさか。米料理である、ということは間違いないのだが、それが一体何者なのかさっぱりわからない。

何か深海魚の名前なんだろうか?それがフライにされてご飯の上に乗っかっている、というのを勝手に想像していた。イメージとしては、太刀魚みたいな白身魚。それがごろんと丼の上に乗ってる図。特に根拠はないけど。ほら、魚でホキとかそういう名前なの、いるでしょ。そんな感じで、ミカとかいてもおかしくないよな。

ミカライス

ミカライス(700円)。

おおう、そうきたか。ご飯の上に二種類のルーが合い掛けにされている。左は・・・カレーだな。で、右は?・・・ミートソースか!

つまり、ミートソース&カレーのライスだから、頭の一文字を取ってミカライス、というわけだ。これは想像がつかなかった。

なんでも、お客さんがスパゲティ用のミートソースもライスにかけてくれ、とわがまま言ったとかなんとか。確かにミートソースってうまいよな。ご飯にかけてまずかろうわけがない。いいぞ、いい組み合わせだ。でもありそうでなかったのは何でだろう。

ミートソースはさすが洋食屋、といった感じの出来で、どっしりとしたうまみがある、見た目どおりの濃厚な味。ご飯と一緒に食べると、ディナー!という気にさせられる。

一方のカレーは、これまた見た目どおりのライトな味。あまりスパイス感はなく、でもむしろミートソースとの対比でおいしく食べられる。

店内は、15時前だけどハートランドビールを飲みつつ揚げ物などを食べている人がちらほら。いい昼下がりだな、と思う。

おたすけマンマも気になる

ワンプレートワンコイン、というメニューがあるそうだ。その名も「おたすけマンマ」。500円なり。「少量ながら満足内容」と謳っているので、ぜひ実物を見てみたいものだ。次回もしこのお店を訪問する機会があれば、この「おたすけマンマ」を食べてみたい。

(2014.03.29)

【05軒目】 メンチ定食@ぽん太(代官山)

ぽん太

代官山の「ぽん太」は、とんかつ屋だ。金持ち感満載なショップが並ぶエリアとは外れ、ひっそりとお店はある。ここでは「メンチボール」なるものが食べられるという。

名前を聞くと、肉団子の事だよな?とすぐにわかる。別に何も珍しいことはない。いや待て、とんかつ屋で肉団子ってやっぱり珍しくないか?とは思うが、奇抜だとは思わない。でも、このメンチボールがちょっと特殊らしい。事前に写真を見てみたが、見た目はハンバーグっぽい。

驚きは特になさそうだけど、気になったついでに訪問してみた。

値段はどれもハイソ

お品書きを見てのけぞってしまった。桁が一つ違う、というのはあまりに貧乏人の発想なので言うのをやめよう。まあ、良い肉を使うとんかつ屋なら1,000円以上してもおかしくはない。しかし、それにしてもたっけぇなあ。単品で2,400円から、定食にすると2,900円からだ。お目当てのメンチボールもあったのだが、単品2,400円で定食は500円増しともなれば、さすがに躊躇せざるをえない。「すいません気の迷いでしたと言って、もっと安いメニューに切り替えたかったのだが・・・そんなものはない。一番安くて、2,400円でございます。うわあ。

腹をくくって、メンチ定食2,900円をオーダー。

メンチ定食

メンチ定食(2,900円)。

次なる試練は、料理が出てくるまでの時間。この後予定が入っていたのだが、いつまで経ってもメンチボールが出てこない。それどころか、厨房からは全く音がしない。揚げ物や炒め物独特の、「じゅう」という音がしないというのはどうしたことか。調理してるのか?気が気でならない。

時計と厨房を何度も見返しながら、苛立つ気持ちを抑えること20分くらいか。いや、もっと長かったか?僕より前の注文客はいなかったので、自分一人の料理のためにそれだけの時間がかかったということだ。

それでもちゃんと料理が出来ていたのには驚きだ。あれっ、どうやって調理したんだ?音がしなかったのに。

これがメンチボール

メンチボール断面

メンチボールとは、メンチカツの亜流だった。

フライパンを使い、低温でじっくり揚げるようだ。調理中であっても、厨房はとても静か。「じゅう」とか「ぱちぱち」といった油の音は皆無。肉は油でじくじくになっているんじゃないかと思ったが、そういうことはなかった。

とてもおいしいとは思ったが、それに見合わないとても高い値段。あと、次の予定が気になって気になって、慌てて食べたので値段相応には楽しめなかった。このお店は、このメンチボール以外のとんかつなどもこんな感じで低温じっくり調理らしい。時間に余裕を持って訪れないと、焦ることになるので注意。

臨時収入でもない限り、再訪は無理だ。今回は「せっかくだから」と無理して注文したけど。なお、この後タクシーを使って次の目的地に向かったので、ダブルで財布に負担がかかった。

(2014.04.04)

というわけで、ざっと5軒、いろいろ食べ歩いてみた。面白いものだね。洋食、というのはあまり馴染みがなかったのだが、これから機会があれば洋食屋を利用してみたいものだ。




ソーシャルリンク

広告