ラッキーピエロ

ラッキーピエロ外観

ラッキーピエロ、という函館限定のハンバーガーショップがある。

決して広くはない函館市街に10店舗を数えるというから、結構な密集度合いだ。地元にすっかり定着したお店なのだろう。その特徴は、その他チェーン展開をしているハンバーガーショップと異なり、冷凍肉を使わなかったりボリュームが多い、という事が挙げられる。注文してから作り始める、ということからモスバーガーに近い形態だ。ファストフードではない、ハンバーガー屋。

「値段はモス並だが、味はモスより上」

というのが、ラッキーピエロ(以下「ラッピ」と略す)愛好者の弁。

ラッピの公式サイトの弁を借りると、

「背広を着たラグビー選手のようなハンバーガーだち。ガブッといくのがラッキーピエロ流。」

なんだそうで。要するにデカいということを言わんとしているのだろうが、それを「背広を着たラグビー選手」と形容するあたり、すごい。公式サイトは、このほかにもいろいろ味のある文章が目白押しなので、興味を持った方は一読をお薦めする。

何でも、「マクドナルドが函館に進出したが、ラッピのせいで敢えなく撤退となった」だの「ラッピに行くためだけに函館旅行をする人がいる」だの「函館出身のGLAYはラッピが大好きだった」といった話を耳にする。「函館以外では食べられない」という枯渇感も相まって、ラッピを知る函館以外の人は、このお店に強い憧憬を抱いているようだ。

そんな中、突然変異とでも言おうか、千葉県千葉市のみつわ台にラッピがひょっこりと店を構えているという。公式サイトによると、社長の親族が出店したお店であり、別組織別経営だという。とはいっても、メニュー構成は原則一緒で、函館の味をはるか関東の地でも味わえるわけで、ラッピの味を求めて、毎日遠方から客がやってくるのであった。

そんな一人・・・僕。

土曜日の朝、車を転がして千葉に向かう。のどかな郊外住宅地といった風情のみつわ台を走っていると、なにやら前方に怪しい看板が。うわ、周囲から浮きまくり。これが、ラッキーピエロみつわ台店そのものだった。

ハンバーガーを手にした、つぶらな瞳のピエロがにっこり。子供が見たら恐がりそうなデッサンだ。でも、このピエロがラッピのマスコットキャラクター。そういえば、マクドナルドも「ドナルド」というピエロをマスコットにしていたが(これも相当に気持ち悪い)、ラッピはドナルドに対抗しようとしているのだろうか?

店の外観は、遊園地のお店でこんなのありそうだよね、でも普通の住宅地の中にはこんなの見たこと無いぞ、っていう作り。場所によっては、自治体が定める景観条例に引っかかってしまいそうな看板だ。あ、なるほど。公式サイトには「ファストフードではありません。テーマレストランです」と書かれている。そうか、テーマレストランを標榜するから、「遊園地でありそうなお店」になっているわけか。

ダンディな男とハンバーガー愛好会金賞受賞の誇らしげな文字

ロードサイドには、なにやらダンディな男が紫煙とともにこちらを見つめている。

ひとくちほおばると、けたちがいのうまさが広がります。
読売新聞・北海道新聞・大阪朝日テレビ・STVテレビ・HBCラジオ・UHBテレビ・日本テレビ・レタスクラブ・るるぶ・食堂・旅行雑誌・味の店としてたびたび紹介されている味の名物店ラッキーピエロの自然志向派シェフの作る正真正銘の手作りの料理ハンバーガーはご注文いただいたその場で焼き上げるアツアツの手作りの味をじっくりとご賞味ください。グルメ派のあなたを心からお待ちしています。

なんて書いてある。政治家答弁みたいに、句点までが長い!そして、文章が微妙にいい味を出している。このお店、確信犯でいい味を出しているのか、天然なのかよくわからなくなってきた。「自然志向派シェフ」というのも面白いが、「グルメ派のあなたを心からお待ち」されているのも、いい味出している。

そもそも、この絵と一体何の関係があるんだ。絵のほうは、まるで映画「アンタッチャブル」の登場人物みたいなのに、実はハンバーガー屋の看板だという。道路を通り過ぎる車からはこの細かい文章はとても読めない。「あれ?今ダンディな男の絵が描かれていた看板があったぞ」「なんだろうね?」「さあ?スーツの仕立て屋かクリーニング屋じゃないのか?」で終わりそうだ。

もっと怪しいのが、この看板の最上段に誇らしげに書いてある「ハンバーガー愛好会金賞受賞」の文字だ。このハンバーガー愛好会って一体なんだ。本当かどうかわからないが、聞くところによると、これは函館の地元高校だか大学のサークルらしい。そんなところが「金賞」を贈呈したからといって、何らありがたみも権威もないわけだが、それを堂々と看板にしちゃうあたりがこれまた絶妙の塩梅だ。

ドライブスルーならぬドライブ路駐によるテイクアウトも可能

このお店は立て看板が好きなようだ。チョイ悪オヤジのすぐ近くには、看板で周りを威圧していたはずのピエロ兄さんが首を傾げて立っていた。

何々?「ようこそラッキーピエロへ 車までお持ちします」か。なるほど、ドライブスルーもやってくれるんだな、このお店は。とはいっても、スルーも何も、ドライブ路駐だこれだと。

それにしても、こういうピエロって「可愛い」と思えるんだろうか?僕が子供の頃、セサミストリートに出てきたキャラクターはみな「怖い」印象しかなかったが、きっと子供にとってこのピエロは怖い、夜夢では見たくないキャラだと思う。

この分厚い唇で、満面の笑みなのがこれまた気持ち悪い。ああそうか、ラッキーなピエロだから、うれしそうな顔をして当然なのか。

ラッキーピエロ メニュー1

ラッキーピエロ メニュー2

メニュー一覧。ハンバーガー14種類とカレー14種類がずらりと並ぶ。ハンバーガー屋にカレーというのは妙な組み合わせだ。ありそうで無い。でも、カレーというのはうどん・そばに次いで「何でもトッピングできちゃう料理」といえる。ハンバーガーの具をカレーに乗せてレパードリーを増やす、というのはいとも簡単な事だ。なるほどぅ、案外親和性が高いのかもしれない。

人気No.1メニューは「チャイニーズチキンバーガー」、以下「エビチリバーガー」「トンカツバーガー」「ラッキーエッグバーガー」と続く。そういえば、トンカツってハンバーガーとしてはありそうでないよな。何だかこのお店、「ありそうで無い」ところを微妙に突いているな。

ちなみに僕が軽く衝撃を受けたのが、「ハンバーガー」よりも安いバーガーが存在した、ということだ。その名を、「コロッケバーガー」と言う。マクドナルドをはじめとし、「ハンバーガー」はバーガー類の最底辺を支える、しかし全てのバーガーのベースとなる食べ物だ。それよりも安いバーガーがあった、というのはびっくりだった。そうかぁ、ハンバーガーパティよりもコロッケの方が安いかぁ。言われてみればそうだよなあ・・・。

ハンバーガー252円。コロッケバーガー231円。その差21円なり。

内装。チェーン店でない雰囲気が面白い

店内は、木目調な作り。チェーン展開のお店とは明らかに違う作りだ。規格化された内装じゃないので、喫茶店といった風情だ。

お昼時が近づいてきたということもあり、お店はひっきりなしにお客さんがやってきていた。マクドナルドのようにレジカウンターの前に「行列を前提とした広いスペース」なんぞ用意されていないので、行列はそのまま店の外へと伸びていた。

何しろハンバーグはデカイし、作り置きはしないしで調理に時間がかかる。できあがりを待つ人たちで店先はごった返していた。その割には、店内は比較的空いていたことを考えると、お持ち帰りにする人が多かったのかもしれない。

フライドポテト&グリーンサラダ

フライドポテトS(168円)と、グリーンサラダ(262円)。コーンが乗っていて、グリーンというよりもむしろイエロゥな感じになっている。パック詰めされたものではなく、ちゃんとお皿に盛りつけられていた。このあたりが、チェーン店ではないお店ならでは、なのだろう。

名物、チャイニーズチキン。フォークでどうぞ

こちらはチャイニーズチキン。ラッキーピエロの名物の一つだ。2ピースで157円。

こちらも、ヤマザキの食パンシールを集めたらもれなく貰えるような、真っ白な磁器に乗せられて登場。フォークも、プラスチックの安物ではない。

さてチャイニーズチキンなのだが、見た目単なる鶏の唐揚げだ。どれどれ、とかじりついてみたら、想定とは違う味が口の中に広がって「わっ」と思わず声をあげてしまった。

このてかりと色合いから、醤油で下味つけた和風唐揚げだなははーん、と思っていたのだが、全く逆の方角。甘い。あまっからい味だった。砂糖醤油で味付けした感じ。全く意外だった。

この甘辛くてややべたつくチキンがバーガーになって、人気No.1のチャイニーズチキンバーガーになるというわけか。うーん、結構くどそうな感じがするが、どうなんだろう。この日は、「単品で食べるからいいや」とチャイチキバーガーは頼まなかった。お持ち帰りにすれば良かったかな。

No.2人気というエビチリバーガー。海老がでかい!

こちら、連れが食べた「当店No.2人気」の呼び声高いエビチリバーガー。399円なので、全14種類のバーガー中最も高いメニューの一つとなる。同額でカルビヤキニクバーガーなるものが存在するが、なるほどカルビとエビチリは同列なのか、と海と山の食材の序列をかいま見た瞬間。

それにしてもエビでけぇ。「ラッピってハンバーグはでかいけどそれ以外はねぇ」と言われるのが何よりも悔しかったのか、エビまでもデカくせずにはおれなかったらしい。立派なサイズのエビがお城の石垣のように積み上げられている。うーん、ハンバーガーってのはいろいろな食材をパンで「挟む」食べ物だと思っていたのだが、この料理って、パンが挟むという任務を放棄してるぞ。エビのでかさに加えて、レタスもスプリングの役割を果たしちゃってるものだから、もう。平常時の高さで10センチは軽く越えているのではないか。

「食べにくいなぁ」と連れは愚痴を言いながら食べていた。食後、味について聞いてみたのだが「うーん、悪くなかったんだけど。エビチリのソースが多くて、パンに染みちゃってぐちゃぐちゃになっていたのが、ちょっとね」だ、そうで。なるほど、確かにそうだろう。でも、この外観を見てしまったら、判ってはいても注文したくなってしまう。それだけの美貌を持っていると思う。

No.3人気のラッキーエッグバーガー。これまたでかい!

おかでん注文の品、ラッキーエッグバーガー。367円なり。

とても大きなハンバーグに、「おいこれは地層か?」と疑いたくなるくらい、分厚い層をなすマスタードとマヨネーズとケチャップ。その上にはトマトの輪切りで、てっぺんには目玉焼き。うーん、こちらもでかいなあ。マクドナルドのビックマックを見るにつけ、「これ、女性はどうやって食べるんだ?」と思うのだが、ラッピの場合全部のバーガーメニューにおいて「女性はお行儀良く食べるのは無理!」な予感。

世の男性諸君は、彼女をラッピに連れて行けるようになるかどうかで相手との関係が分かるかもしれない。ラッピに連れて行けるということは、お互い身も心もさらけだせるような深い関係になれた、というわけで。一昔前に言われた「焼き肉の関係」というのと、一緒だ。・・・考え過ぎか?

ラッピの公式サイトに、社長のものと思われるラッキーエッグバーガーの思い出話が掲載されていた。

■小さな頃、家族で近所の洋食屋さんに、出かけるのが大の楽しみでした。
■私の定番はやはり今の子ども達と変わらず、ハンバーグでした。そして、その上決まってくっきり目玉 焼の乗ったもの。ふーふーいいながら食べ切れないくらい満腹になったのが昨日の事のように思い出されます。
■いまだにハンバーグにはめがなく、目玉焼きが乗っていなければ気がすみません。
■ラッキーエッグバーガーはずっしりと330g。

確かに。目玉焼きが乗っているハンバーグって、すごくリッチな気持ちになるしハッピーだ。原価で言えばたかが知れてるというのに、玉子というのは人を幸せにしてくれる。その気持ちが見事に表現されている文章だと思ったし、見事に体現したバーガーだと思った。そうかぁ、330gもあるのか。道理で、いい感じでおなかがいっぱいになるわけだ。

千葉県千葉市、みつわ台といえば都心から車で行ってもちょっと遠い場所にある。しかし、何かちょっと変わった食事をしてみたい、と思ったらドライブがてら遠出してみてはどうだろう。A級グルメでもないし、「巨盛り」の店で客を驚かせるような派手さもない。しかし、地味にいい味、楽しめると思う。

満喫してお店を後にしたら、店先の路上には関東一円からやってきたと思われるバイクが何台も停まっていた。ツーリング中の立ち寄りポイントとしても認識されているらしい。

次行く機会はいつになるだろうか・・・。当分なさそうな気がするが、次回は店頭食事+お持ち帰りの二段構えで大満喫してみたい。

※現在はこの店舗は閉店して存在しません。ご注意ください。

(2005.09.15)




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