自衛隊銘菓

前話「萌えよ国防」で、陸上自衛隊広報センターの土産物について取り上げた。その流れを汲んで、今回は広島県の海上自衛隊江田島基地を訪れた際の売店の模様をレポートする。ただし、訪問したのは2007年4月であり、現時点でも同じものが売られている保証はないことを予めご理解願いたい。

売店には一般人も入ることができる

江田島基地は、第1術科学校、幹部候補生学校がある。つまり、幹部(=尉官以上)になる海上自衛官は必ずここにやってくるという、海上自衛隊の要だ。また、海上自衛隊の特殊部隊もここに所属している。なんで瀬戸内海なんかに?と思うが、第二次大戦までは海軍兵学校があったという流れを受け継いでいる。

ここは「広報センター」ではないれっきとした基地であるが、1日4回(平日は3回)、所定の時間に見学ツアーを開催している。ただし、自由行動は禁止。ドレスコードもある。アホ丸出しのラフな格好で行ったら、多分追い返されるので注意。

見学コースをひととおり回ったら、最後は売店とレストランが入居している「レクリエーションセンター」という建物に連れて行ってくれる。ここで自由解散。買物だけしたいんですけど、という人は門前払いされるので、見学コースを規律正しく見て回った人のみの特権だ。

炎の作戦

自衛隊売店のグッズには変なモノが多いというのは既報の通りだが、ここでもその流れは踏襲している。一体誰が企画立案し商品化するというのだろう。自衛隊の売店を利用する人なんて、非常に限られていると思うのだが。高速道路のサービスエリアなどで「○○に行ってきました」クッキーなんかを売るのとは訳が違う。

しかし、考えようによっては、現在自衛官は25万人、予備自衛官が6万人近くいる。合計31万人。その家族友人を考えれば、決して小さなマーケットではない。グッズを作ったら案外数が出るかもしれない。

そんなことを考えながらご紹介する一番目はこれ、「炎の作戦」。

「自衛隊オリジナルDANGO」だそうで、「激辛団子を取るのは誰だ?!」と挑発している。12個のうち2個、激辛団子が紛れ込んでいて外見上はわからないのだそうで。「ロシアンルーレット」と書かれているが、ここで敢えて「ロシアンルーレット」と記すのは、東西冷戦時代の仮想敵国を意識してのことかどうか真剣に考えてしまった。でも多分そんな深い意味はないな、これは。

「CODE NAME MISSION OF FIRE」と記されているのが馬鹿っぽくてよい。

炎の大作戦

「炎の作戦」の隣には、「炎の大作戦」という商品が積み上げられてあった。同じメーカーの商品。

こっちは「大作戦」なので、作戦規模が大きいらしい。というか、何だこの微妙に紛らわしい名前は。

「大作戦」と銘打っているだけあって、陸海空のそれぞれの戦闘兵器の写真がパッケージに掲載されている。激辛団子食べてあっはっは、ひっかかったー、なんて甘いもんじゃねーぞ、今度は本気だぞという宣戦布告か。

こちらは「激辛弾搭載」と書かれている。相変わらず激辛なのね。でも弾とは物騒な話じゃないか。さすが大作戦。

・・・だが、よく読むと「団子ロシアンルーレット式2/12」「饅頭ロシアンルーレット式1/6」という記述が。結局「炎の作戦」とやってることは一緒だ。じゃあ、何がどう「大作戦」なのかというと、きっと団子だけじゃなくて饅頭もついていて戦線規模拡大、ということなのだろう。

パッケージの裏にはこう書かれている。

●みんなで戦って戦って熱くなるには最適のお菓子です。
●まるで爆弾を食べるような実感が味わえるお団子とおまんじゅうの詰め合わせです。
●「今度の戦いはこれできまりだ!」隊長のあなたにはピッタリのアイテムです。盛り上げたいのなら炎の大作戦!受けること間違いなし!
●もちろん空腹時に召し上がっても大丈夫。
●楽しいロシアンルーレットです。宴会に、パーティーに、ご家族の団らんに・・・使い方は貴方次第!お団子からでもお饅頭からでもお好きな方よりお楽しみください。
※使い方次第で友情を失っても、当方では責任を負いかねます。

ふざけてるなあ。東急ハンズのパーティーグッズコーナーで売っていそうな商品だ。ノリが全く一緒。

「まるで爆弾を食べるような実感」と言われても、当方爆弾を食べたことも、実物を見たことも触ったこともないので全くわからないんですが。でも、「隊長のあなたにはピッタリのアイテム」と言われると、アワレみ隊隊長としては買わなくてはいかんのか。でも結局買わなかった。妙な脱力感がこの商品にはあって、購買意欲が湧かなかったからだ。

パッケージには「特許出願中」と記されている。一体なんの特許だ。特許というのは「技術」に対して認められるものであり、「激辛団子のロシアンルーレット」というアイディアだけでは特許は無理だ。「1/6の確立で激辛団子を封入する製造機械」の特許だろうか?気になって、特許庁のサイトで調べまくったが、結局該当するものは一件もヒットしなかった。どういう特許なんだ、おい。まあ、出願するだけなら誰でもできるから、本当に特許認定されるかどうかは別の話だ。

パッケージの表に「ATLAS-WEB」というコピーライト表記があったので、その点からも調査してみた。すると、このATLAS-WEBは個人サイトであることが判明。軍事、警察などの写真やレポートを掲載している趣味のサイト。この「炎の大作戦」は、そのサイトから写真を拝借してパッケージを作った事が判明。こんなもの、防衛省に相談すれば写真を貸してくれるだろうに。

潜れ!ぼくらの潜水艦ケーキ

さすがに激辛ロシアンルーレット団子じゃあ、子供は喜ばない。

子供向けの楽しい商品も用意してあるのが周到だ。その名も、「潜れ!ぼくらの潜水艦ケーキ」。潜水艦の形をした箱に入ったケーキだ。

ただ、こうやって見ると潜水艦っていまいち子供受けしないというか、武骨なデザインだな。子供って、変身したり合体したりする複雑なロボが好きなので、この潜水艦がウケるかどうかは謎。

潜水艦の中(想像図)

箱の中身。ケーキ1個ずつ包装されており、その袋には水兵さんの絵が描かれている。

そして、外箱の蓋の裏には艦内の断面図が描かれている。たくさんの水兵さんが窮屈そうに仕事をしているが、みんな笑顔でいじらしい。

機関室、指揮室、作戦室、乗務員室、燃料タンクと部屋が分かれている。

ただ、小さく「※これは想像図です。」と書いてあるのが突っ込みどころというか、脱力するポイント。

海上自衛隊の基地で売ってるんだから、「想像図」じゃなくてもう少しリアルに描けよ、と思う。もしくはこんな注釈つけない方が良いと思うんだが、つけておかないと誤解を招いてPL法が、なんてことになるんだろうか?まさか潜水艦がこんなシンプルな作りになっているなんて、誰も思わないって。「実物と違う!」なんてクレーム入れる人はいないから安心しんさい。

あと、このままだと「単なる水中に潜っているだけの鉄のかたまり」だ。魚雷関連の設備が一切描かれていない。まあこれは子供向けには向かない内容か。

元気バッチリ

こんなものも売られていた。「元気バッチリ」という箱。栄養ドリンクだ。

ここにも陸・海・空のやる気満々な兵器の写真。ただ先ほどと違うのは、こちらは各自衛隊から写真提供を受けていること。中身は兎も角、外箱は自衛隊(防衛省?)お墨付きのものだ。説得力が少しだけ、ほーんの少しだけ出てきた。

こんな火力演習中の写真を見せられたら、それだけで滋養強壮になりそうな気がする。しかし、虚弱体質の人は余計ひるんでしまいそうな気も。

元気バッチリの成分

この栄養ドリンク、製造元は「中国化薬株式会社」というところだった。どうみても食品メーカーの名前ではない。化薬?おい、栄養ドリンクかと思ったら中身はニトログリセリンでした、なんてことはないだろうな。箱の裏側に成分表があったので確認してみた。

結局、中身は栄養ドリンクとして一般的と思われるものだったので、当たり前ではあったがちょっとがっかり。タウリン1000mg配合。リポビタンDと一緒だ。

効能・効果の欄を見ても、特に面白い記載はなし。「肉体疲労・病中病後・・・」とありきたりな内容。「愛国心不足」などという効能は無かった。
この中国化薬、帰宅後に調べてみたらやはり火薬類を中心に製造しているメーカーであることがわかった。もともと、第二次大戦後に爆弾の解体処理をするところからスタートした企業で、今や各種火薬類のメーカーに発展している。もちろん、りゅう弾とか対戦車ミサイルなどの弾薬も作っている、軍事企業でもある。

そんな企業がなぜ栄養ドリンクを、と思うが、科学には疎い素人にはわからんレベルで何か相関関係があったのかもしれない。まあ、三井造船の子会社が発酵ウコン茶を発売しているくらいだし、楽天トラベル(旧:「旅の窓口」)が日立造船の子会社から産まれたわけだし、何があってもおかしくはないのだが。

パンの缶詰

パンの缶詰三種。3つで1,250円。

左から「プレーン」「おいも」「コーヒー」味。

パンの缶詰、というのはいまいち想像しにくいが、封を開けるとこの缶いっぱいにみっちりとパンが詰まっている。円筒形の形をしたパン、というわけだ。

保存食ならではのイマイチさがあるかと思いきや、予想を上回る美味さといううわさを聞いたことがある。

非常食として米を用意しておいたは良いが、いざ炊飯しようとしたら水がない・・・なんてなると困る。その点、パンの缶詰は便利だ。一家に1セットあっても良い商品かもしれない。ただし、1缶あたり400円以上もするのは相当にお高い。

あと、なぜか写真を取り損ねたのだが、「自衛隊オリジナルラーメン 標的」というカップ麺が面白かった。この「標的」は陸・海・空と3種類に分かれていて、味が違う。

陸上自衛隊はしょうゆ味。90式戦車が描かれた勇ましいフタで、「うまさ狙い撃ち!」と書いてある。誰がうまいこと言えと言った。

航空自衛隊はみそ味。戦闘機(詳しくないので機種名不明)の絵と共に、「うまさロックオン!」もうどうにでもしろ。そうか、だから「標的」というネーミングなのだな。

海上自衛隊はとんこつ味で、海上航行中の潜水艦の絵で「うまさ急浮上!」だそうで。じゃあ今まで「うまさ海の底!」だったのか。

このネーミングセンスとキャッチコピーの妙が、そそられる。ただし1個200円以上したと記憶しているので、買うのはやめた。ついつい買っても、しょせんはただのカップラーメンであるということを忘れてはいかん。

これからの自衛隊はPKO派遣などの国際貢献が重要任務になるわけだし、ここは一発「うまさは国境を越える!」なんてのも良いかもしれない。ただ、それだけ見たら越境して近隣諸国に攻め込む気だ、と国際問題にされそうな予感。やばいからこの案却下。

レストラン

このレクリエーションセンターにはレストランも併設されていた。

基地内のレストランだから、安くてがっつり食える系の料理がたくさんあるのではないかとわくわくして様子を見に行く。

レストランの料理サンプル商品サンプルを見ると、「スタミナ定食800円」や「幕の内(竹)1,000円」という表示が。案外高いし、お上品だ。

でも考えてみれば当然で、実際の自衛官は食堂があって三食支給されているわけだから、ここでは食べないはず。これはあくまでも外来者向けのメニューと価格設定というわけだ。

でも、ここで食事をする人はどれだけいるんだろう?確かに基地周辺には飲食店がほとんどないので、ちょうど昼時に基地見学をした人には重宝されるだろうが・・・。

その証拠か、「本日の日替わり定食は終了しました」の札が出ていた。売り切れるくらい人気なのか。それとも仕入れ数が少なかったのか、どっちだろう。

店頭にメニューが張り出されてあったので興味深く読んだ。すると、さすがは基地内食堂だけあって安いものは安い。トンカツ定食480円、焼き魚定食530円など。うな丼でも800円だから立派なものだ。ちなみにこのお店で一番高いメニューは幕の内(竹)及びカキフライ定食の1,000円だった。

面白いのは、午後5時以降はアルコールも提供しているということ。飲み放題付きで3,000円からのパーティープランもやっている。誰がここでパーティーをやるんだ?

自衛隊員はその任務の性質上、基地から外に出る際には上官の許可が必要(既婚者は除く)。基本的に基地の中で一日を過ごすので、基地内には居酒屋もある。それがこのお店なのだろうか・・・と思ったが、その割にはつまみメニューが見あたらない。隊員用居酒屋は別の場所なのだろう。

となると、ますますこのアルコールは謎。見学者が飲むのか。ボトルキープもできるってぇんだから大したもんだ、状況がよくわからない。秘密めいていて面白いな。

まあ、そんなわけでこの話にオチはないのだが、基地というのは非日常空間であり好奇心をかき立てられる場所であるのは確かだ。日本のいたるところに基地はあり、時々一般公開もしているので機会があると訪れると良いだろう。きっと印象的な体験ができるはずだ。

(2009.02.14)