中華ロール

パンのオオムラ

昔は、街角にヤマザキパンのお店があちこちにあったものだ。朝、親からおつかいを頼まれて、「6枚切り」とか「パンの耳がない8枚切り」とかお店の人に注文するのは子供心にドキドキさせられたものだ。がま口財布に小銭を持ってのおつかいは誇らしく、そして自分の食欲に直結する楽しいひと時だった。

今は殆どそういうお店は消えてしまったけど、その代わりに「ベーカリー」と呼ぶべきパン屋が増えている。あれ、一般名称は何なのだろうな。昔は「焼きたてパンの店」という俗称があったけど、あんまりふさわしくない気がする。惣菜パンの店、というのも違うし、さて。

それはともかく、華やかな種類豊富なパンを売るお店がもてはやされる傍らで、渋いパンを売り続けているお店というの今では人気だ。むしろその渋さがいい、といった感じだ。

コッペパン屋で、注文を受けてからコッペパンにマーガリンだの小倉だのジャムだのを数種類塗って1個200円程度、みたいなお店が結構ウケたりしている。なるほどそれは僕も食べたい。「塗るもの」の数だけパンの種類は豊富に作れるし、いろいろ食べ比べる楽しみもある。さらにコッペパンは安い。

今回見かけたお店は、古い商店街の中にあったパン屋だ。コッペパン屋ではないけど、対面販売の見るからに年期が入ったお店。これを「渋い」といわずして何という。

ショーケースのパン

ガラスケースの中にパンが並んでいる。そしてパンはステンレス製のバットの上に並べられており、なんだか寒々しい。今のパン屋の大半が、籐の籠に盛り付けてあったり、温かみを演出しているというのにこのビジュアルは衝撃でさえある。一昔前の共産主義国家を彷彿とさせる。

ガラスケースの下には「自家製 焼きたて」と書いてある。でも焼き立て感を全く感じさせない、冷え切った印象のディスプレイはむしろ今となってはかっこよさすら覚える。

ハムカツが名物のようだ。1個135円。それ以外のパンも、135円だったと思う。どれもびっくりするくらい安い。ハムカツなら、200円くらい取ってもばちは当たらないだろうに、と心配になる。コッペパンだけで135円にしようぜ。ハムカツを足して250円でどうだ。

いや、「どうだ」じゃねぇよ。人の商売に余計なお世話だ。

中華ロール

ハムカツとかクリームパンとか食べてみたかったが、さほど腹が減っていたわけではない。そもそも135円で安いのは大変に結構だけど、味の想像はつくわけだし。

そんな中、「中華ロール」というパンだけはどうしても気になった。なんだそれは。

外観は、クリームパンのように見える。野球のグローブ型だ。何がどう中華なのだろう?よくわからないので、買って食べてみることにした。お値段135円税込だし。

肉まんの中身と一緒

なるほどこういうことか。

中に入っていたのは、肉まん・・・別名中華まんの具だった。なるほど、だから「中華ロール」なのか。納得。

いや待て、では「ロール」ってどういう意味だ。これは全然巻いていない気がするのだけど。

うるせぇ、細かいことはいいんだよ、黙って食え。

味ですか?うん、おいしかった。おいしかったんだけど、パンで食べるよりも肉まんで食べたほうがやっぱり美味いんじゃないかと思うんだけどどうなんだろう。

でも、「冷めた肉まんはべちゃついてあんまりおいしくないけど、パンなら冷めてもおいしい」という点ではパンとしてこれを食べるメリットがあるのかもしれない。

そんなことを考えつつ、神妙な顔をして食したある日の昼下がり。

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