800円食べ放題の謎

六本木の美術館巡りをする際、お昼ご飯をどこで食べようか?と調べていた時に気がついたお店。中華料理店なのだが、ランチバイキングが800円で食べられるのだという。

嘘だろ?「ランチ定食800円」でも六本木物価なら安いと思うのに、「ランチバイキング」で800円?

ネットであれこれ調べたが、どうも情報があやふやだ。そもそも情報が少ない上に、古い情報や新しい情報が錯綜していて、バイキングがメニューにあるようなないような、どうもよくわからない。

ただ、場所は地下鉄六本木駅から六本木ヒルズの間の大通り沿いだ。雑居ビルの上層階にあるとはいえ、決してテナント料が安い場所ではない。どう考えても800円は安すぎる。中華料理というのは時には「原価計算できてんのか?」というくらい安くてボリュームが多いお店があるけど、ここもその系統なのだろう。とはいえ、どうにも解せない。

調べを進めていくうちに、以前「美貌の盛り」で紹介した「ケバブバー」と同じ建物だということがわかった。あの建物はどうなっているのか。ケバブから中華まで、全部安いではないか。

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怖いもの見たさで、その800円バイキングに挑戦してみることにした。800円という値段で一体何が出てくるというのだろう?

道中、あれこれ考える。

「冷凍シュウマイは出るだろうな、あと、もやし炒め。それから麻婆豆腐」
「鶏の唐揚げもありますよきっと」
「まあそうだろうけど、鶏の唐揚げだってバクバク食べられたら結構お店としては痛いぞ?せいぜい、鶏胸肉を使った唐揚げだろうな」

800円、というのは本当に厳しい価格設定だ。たとえば「鶏の唐揚げ定食」と称して、唐揚げ5個くらい、サラダ、御飯とお味噌汁で800円ですといわれても全然高いとは思わない。唐揚げ5個でさえそう思えるのだから、「食べ放題の中に唐揚げが入ってる」というのは一体どういうシチュエーションなのだろう?絶対、冷えて非常にマズい料理ばっかり並んでいるに違いない。そうでないと、理解できない。

・・・と期待に胸を膨らませつつお店に向かったら、お店はやっていなかった。エレベーターそのものがお店のフロアに停まらない。フロアごと閉鎖されているっぽい。

「やりやがった!原価計算できていないから、お店がつぶれたぞ!」

そのとき我々はそう思ったものだ。ほらいわんこっちゃない、と。六本木で800円バイキングなんて無理なんだ、と。

店頭

後日、別の用事でこのお店の前を通っていたとき、連れが「あっ!」と叫び声を上げた。

「やってますよ、以前行きそびれたお店」
「えっ?」

すっかりそのお店のことは忘れていて、この日はイタリアンとか食べようかねえ、なんて話をしていたところだったので、完全に油断していた。見ると、確かに店頭には見慣れない看板が出ている。あ、これが「原価計算できなくて閉店した」はずのお店の看板なのか。すいません、まだ全然営業してるじゃあないですか。

メニュー

確かに、「ランチバイキング800円」と書いてある。噂は本当だった。この看板が「ずっと出しっ放し」なら古い情報なのかもしれない。でも毎日営業の都度出し入れしているようなので、ここに書かれていることは本当なのだろう。おいやべえぞ、本気で800円バイキング、やっているらしい。

「これはもう運命ですね、食べるしかないですよ」
「そうだなあ」

心の準備はできていなかったけど、千載一遇のチャンスだ。次今度あらためて、なんて思ってスルーしたら、次営業しているとは限らない。

食べ放題のカウンター

お店に入ると、狭い店内はお客さんがいっぱいだった。しばらくエレベーター前の狭いスペースで立って待つことになった。その後、相席という形で客席に案内された。

お店の人からは何も「流儀」について説明はなし。ざっくばらんだ。我々は戸惑う。ええと、勝手に料理が並ぶカウンターに取りに行っていいのだろうか。いいんだな、きっと。

ホテルのビュッフェのように横長のテーブルに料理がずらりと並ぶスタイルではない。普通のテーブルに普通のお皿が並び、そこに中華料理が盛りつけられているスタイルだった。もちろん、ホテルのように「下から加熱されていて常に料理がアツアツの容器」なんてものには入っていない。

「大皿料理の店の中華版、だな」

と思う。

大皿といっても、客がわーっと料理を持っていけばすぐに料理がなくなってしまう。写真を見てもわかるとおり、カラになっているお皿もちらほらある。厨房では「少量多頻度生産」を行っているようで、常に何か調理を続けていた。一度にドカっと作って、それを随時補充するのではない。なくなった料理があれば、それを新たに大皿ひと皿分だけ新たに作る。

料理を確保

ひとまずこの時点でテーブルに並べられていた料理は一通り確保しましたの図。

「おいおい、かなり種類があるぞ」

ちょうどご飯が切れていたので、メシはなし。ご飯は、チャーハンが旅館などで使われるプラスチック製のおひつに入って提供されていたようだ。だったら白米はこの炊飯器の中にあるのかな・・・と開けてみたら、麻婆豆腐だった。あら、失礼しました。ついでに麻婆ももらっていきます。

これで800円は、かなり想像と違う。もっと冷凍食品感満載の、手抜き作り置き料理だと思っていたからだ。どれもちゃんと作られているからびっくりさせられる。

「具の種類、結構多いぞ?」
「そうですね、もっとシンプルな具でも料理として成立するんですけどね」

「肉野菜炒め」と称して、肉はほとんど入っていないアンド野菜はもやしばっかり、というお店は皆さん体験があるだろう。そういう「具のケチり方」はいくらでも存在するのだけど、このお店は手抜き感があまりない。ちゃんとちゃんと、料理が成立している。

料理1

「おっかしいなあ、肉なんかもふんだんに使われているんだよな」
「鶏肉が多い印象ですね」

言われてみればそうだ。料理全体を見渡すと、豚肉はちょろっと登場して、その他は鶏肉だった。牛肉の出番はなかったと思う。ブラジル産などの鶏肉を使ってコストを抑えているのだろうが、それでも薄気味悪くなるくらい安い。

肝心の味は、普通の中華料理店の味は確実にキープしている。安いからといって味に妥協があるという感じはない。

料理2

事前に話題になっていた鶏の唐揚げも途中から登場。れっきとしたもも肉だった。しかも揚げたてなので、これがまずかろうはずがない。いやー、揚げたて料理が食べられるだけ幸せ。

料理3

まだご飯ものにありつけていないんですけど、と料理カウンターを常にチラチラ見ている状況。これは他のお客さんもそうだ。厨房から一品ずつ、数分おきに新ネタの供給があるので、その供給があれば客がワラワラと立ち上がって料理の配給に預かる、といった感じ。

「新ネタ」は、これまで既に食べた料理という場合もあるし、「あれっ、これはまだ未体験だ」というものもある。どういうタイミングでどういう法則性で料理が出るのかわからないので、面白くもあるけど食べづらい。このお店の料理全体像が見えないから、「じゃあ唐揚げは3個でやめておいて、そのかわり春巻を2ほん」などと調整がきかない。

写真は上海焼きそば風の料理。豚肉、もやし、にんじん、玉ねぎが入っていることがわかる。具が4品も入っているなんて、縁日屋台の焼きそば(肉とキャベツのみ)よりもよっぽど良心的だ。

料理4

随分後になってチャーハンが届いたので、「既におなかが満たされてきているんだけどなあ」と言いつつもお椀一杯分もらってくる。

料理5

春巻。食べている途中で「あっ、写真を撮影してなかった」と気づいた。

アツウイ!

春巻を食べている最中のおかでん。

揚げたてなのでこんな顔になる。揚げたて、うまいうまい。

卓上に皿が積み重なっている。これだけ食べて800円だぜ?ありえないだろ?

追加で料理を取る

「もうそろそろいいだろう」と箸を置こうと思っていたときに、新作料理が出てきた。折角なのでちょっとだけ味見。青梗菜ときくらげと豚肉と玉子の炒め。

料理カウンター再び

お店を後にする際にあらためて料理テーブルを撮影したもの。入店時と品揃えが変わっている。

メニュー

夜になるとさすがにバイキングはやっていないものの、「飲み放題食べ放題」で2,980円と相変わらず無茶苦茶な値段設定で営業しているらしい。

安さの裏には必ず理由があるはずだ。どうもこのお店、厨房一人に客席一人の従業員2名で回しているようなので、それで安いのかもしれない。でも安すぎるな、ほんとうに謎だ。

不思議ゾーンとして、またいずれ訪れてみたいものだ。

小岩のお店

別の日、東京都の東端、江戸川区の小岩にもランチ食べ放題800円を謳う中華料理店がある、ということを知り訪れてみた。また中華料理か!どうなってるんだ中華っていうジャンルは。

てっきり六本木のお店が特殊なのだと思っていたが、案外800円バイキングというのは探せばあるものだな。

ここも事前情報がよくわからなかったので、とりあえず現地へ。

雑居ビルの上層階、という不便な場所ではなく、通りに面した一階の店舗でびっくり。

ここもランチ食べ放題

やはりランチ食べ放題をやっていた。60分の時間制限付きとはいえ、800円。ランチ定食もありながらバイキングがあるのだから不思議だ。

ここの料理の写真はうっかり消してしまったので残っていないのだが、やはり六本木のお店と同じような構成だった。大皿に料理が盛られて、テーブルに並んでいる。

こちらも、「所詮800円だからこの程度」という妥協感があまり感じられない。おなかいっぱい食べることができる。すごいなあ、もう。さすがにデザートの杏仁豆腐っぽいものは、「これは・・・杏仁は入っているのかな?」と疑わしい白い寒天だったけど。

「ナンおかわり自由」を謳う安くてうまいインド料理店が最近多いけど、それより強烈な「食べ放題800円中華」。今後こういうのが増えていくのか、それとも減っていくのかとても気になる。

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