「天ぷら食べ放題」は吉か凶か

気分的に何か冴えない。

しっかりしろ、自分・・・と、ガツーンと自分を痛めつけたい気分だった。

「そうだ、ロボット掃除機を買おう」なんて思い立ったけど、相談した友達から「やめておきなさい」とあっけなく諭された。そりゃそうか、猫や犬を室内で飼っているわけでもないし、わざわざ高い買い物をするまでもない。

そのかわりに出てきた憂さ晴らし案が、「天ぷら食べ放題に行って、天ぷらをしこたま食べよう!」だった。

昨年、東京足立区は北千住に出現したお店で、その名を「Gachi」という。開店当時は話題になり、あっという間に都内に数店舗を構えるまでに至っている。串カツブームだったころ、「串カツ食べ放題」のお店はあちこちで見かけた。セルフで串を取ってきて、卓上のフライヤーで揚げて食べるというスタイルだ。しかし、「天ぷら」を食べ放題にしているというのは聞いたことがない。

以前から気にはなっていたものの、「どうせ誘っても誰もこないだろうな。一人で行くようなお店でもないし、行く機会はなさそうだ」と勝手に思い込んでいた。しかし、いざ声をかけてみると、「いきます」と手を挙げた人が二人も。しかも、「明日行ってもいい」と即答。おもしれえ、じゃあ明日いったらあ、ということで行ってきたよ天ぷら食べ放題。

天ぷら食べ放題Gachi外観

おかでん、齢43歳。一緒につるんでいる友達だって、ほぼ全員がプラスマイナス10歳以内に収まっている。というか、僕より年上の人が中心だ。

そんな微妙なお年頃の人たちにとって、「揚げ物」というのは「胃がもたれる」「カロリーが気になる」「コレステロール値が・・・」とネガティブな言葉を導き出す存在だ。だからこそ、意を決するわけです。「食べられる時に、食べておこう」と。今の僕なら、健康診断で全く問題がないので大いに天ぷらを食べられる。でも5年後はどうか?10年後は?・・・自信がない。だったら今食べなくちゃ。

同行してくれたよこさん、おーまさんも年齢的な点で同様の危機意識はあったようで、「こういう機会じゃないと天ぷら食べ放題なんてやらない」といいつつ、背水の陣で臨んでいる。しかし、食べる前からみんな嬉しそうだ。やっちゃいけないと親に言われている事をやる、みたいな感じがするからだ。

Gachi店内

このお店の料金体系は

  • お試し天ぷらコース 天ぷら21種類+サイドメニュー15種類 1,980円
  • スタンダードコース 天ぷら27種類+サイドメニュー30種類 2,480円
  • 豪華天ぷら食べ放題コース 天ぷら33種類+サイドメニュー30種類 2,980円

で食べ放題となっている。これに+530円でソフトドリンク飲み放題、+1,080円でアルコール飲み放題を付けることができる。

・・・正直、どれを選べばよいのかよくわからない。しかし、3人でこのお店を訪れるからには、なんだかちょうどいい塩梅の品数ではある。なにが「ちょうどいい」って?そりゃあもう、全メニュー制覇ってことですよ!!

いっそのこと、このお店のもの全部持ってこいや、とするために「豪華天ぷら食べ放題コース」にしようかと思った。しかし、このお店がうまいのかそうでないのかもよくわからないし、「33種類の天ぷら」というのがさっぱり想像できない。多いのか、それとも少ないのか。

そんなわけで、松竹梅、でいうところの「竹」にあたる「スタンダードコース」を選ぶことにした。天ぷら27種類とサイドメニュー30種類、合計57種類の食べ放題だ。

事前にみんなで議論する。

「天ぷらって普段そんなにたくさん食べないから、どれくらいだと多いのかってさっぱり想像できないね」
「胃もたれするのが先なのか、満腹になるのが先なのか・・・どっちでしょうね?」
「いつまでも同じペースで食べ続けられるとは思えないけど、それが天ぷら何個目なのかがさっぱりわからない」

このお店の場合、天ぷらばかりではなくサイドメニューが30種類も用意されていて、それも食べ放題というのが驚異的だ。枝豆、スライスオニオンなどいろいろなメニューがあって、なんなら天ぷらそっちのけでそいつらで酒を飲んでもいいくらいだ。

「あっ、サイドメニューに馬刺しがある!」

まさかの「馬刺し」に興奮する。これ、原価はかなり高いと思うんだが、こんなのを食べ放題にして大丈夫なのだろうか?もちろん我々も食べるぞ、馬刺しを優先的に。

iPadで注文

北千住店は昼12時からやっているので、12時に北千住駅に集合。お店へ向かった。

このお店はiPadが卓上に置いてあり、注文は全てここで行うことになっている。おしぼりや取り皿の注文も、このタブレットで行う。

真っ昼間、ということで誰もお酒は飲まず、そのかわりにソフトドリンク飲み放題をつけた。さあて、何から頼もうかな。あ、そうか、「とりあえずメニューの上から順に全部」だったっけ。

こういうとき、物わかりがいい人がメンツの中にいると、絶対こう言って止めるだろう。

「途中おなかいっぱいになって、食べたいものが食べられなかったらよくないだろ?最初はまず食べたいものを頼むのがいいんだよ」

と。もちろんそれは正論。しかし、そんなことをやっていたら、どのメニューを食べたか・食べていないか後々に混乱する。そして、敢えて「上から順」という不自由な食べ方をしてこそ、達成感が得られる。これは一種の自虐的な企画なので、「快適な食べ方」なんて追求するのは邪道だ。

店員さんが補足説明をしてくれた。

「最初にスターターとして天ぷら盛り合わせをお持ちしますので、その後お好きなものを注文してください。注文できるのは一度に一人3品までです」

ああ、やっぱり制限はつくんだな。

で、このスターターがなんなのかが気になる。イモとかカボチャみたいな、腹がふくれる系のものばっかりだったら後々しんどくなるんだけど、さて。

スターター

うお。

「何が最初に出てくるんだろうねぇー?」

なんてわいわい議論をする暇なく、あっという間にスターターキットが届いた。オーダーしてからわずか1分。既に厨房では僕らの注文を見越して、天ぷらを揚げ始めていたらしい。

スターターに含まれているのは、海老、イカ、レンコンだったっけ?写真を見ても、全てきつね色の揚げものなのでよくわからない。いずれにせよ、「最初の一発目で満腹にさせてやる」というお店の意思はないことはわかった。ありがたい、さっそくいただこう。

「それにしても僕らさ」
「ん?」
「さっき駅前で集合して、わずか5分足らずでもう天ぷら食べ始めてるぜ」
「ははは」

5分足らず、というのは言い過ぎだけど、12時5分に駅前で全員集合して、今こうやって天ぷらが目の前に置いてあるのは12時12分。「最近どう?」という近況報告もしてなけりゃ、「さて、何を食べようか?」という作戦会議すらしていない。まだ腰が据わる前に、既に海老天をかじっている有様。早い。

サイドメニュー1

天ぷらは「一人3品まで」というのはわかったが、サイドメニューはどこまで注文しちゃってよいのだろう?何度も店員さんを往復させるのは悪いので、一度にがさっとオーダーしたいところだが・・・でも、「一度にオーダー」ってことは、30品ってことになるんだけど。

さすがにそれはテーブルに載らないだろう、ということで5品ずつオーダーしていくことにする。ボリューム感がさっぱりわからないし。

そんなわけで、メニューの上から順にポチポチ、とタブレットを押してオーダー。

しばらくして、キムチ、ピリ辛胡瓜、オニオンスライス、もやしナムルが届いた。3人前ではなく、1人前づつ頼んである。

味は濃い。ピリ辛胡瓜は、ねっとりと濃厚なタレがかかっていて、きゅうりのさっぱりさを打ち消すくらいの味付け。キムチも濃い。酒飲み向けに味付けがしてあるからだろう。

ああそうか、お酒を飲まない人であっても、ご飯を食べつつ天ぷらを食べるのか。だから濃い味付けのおかずってのはアリなんだな。僕らのように、「さあ全メニュー食べるぞ、上からお願いします」ってやっている「求道者」とは訳が違う。

僕らはむしろ、薄味希望。

馬刺し

馬刺し。こればかりは3人前を頼んでおいた。

にんにくしょう油で食べる、という味付けではなく、これも濃いタレがかかっている。なので、普段イメージする馬刺しとは味が違う。うまいか、と言われるとあんまり。

天ぷら2

舞茸天、チーズ天、さつまいも天

天ぷら3

ごぼう天、アスパラ天、オクラ天

ごぼうが柔らかくてうまかった。

サイドメニュー2

塩辛、酢もつ、白菜漬け

「酢もつ」とはどんなものか?と話題になっていたが、なるほどこういうものなのか。さっぱりしていて、天ぷらの合間に食べるには最適。

くせ者だったのが塩辛。わかっちゃいるけど、塩っ辛い。これ、酒を飲みながらか、大量の白米がないとさばけないぞ。

サイドメニュー3

冷奴、枝豆

枝豆がザルに盛られて届いた時には、一同思わず苦笑してしまった。天ぷら食べ放題!いざ勝負!と腕まくりしているのに、この居酒屋感満載な雰囲気よ。

天ぷら4

かぼちゃ天、なす天、かき揚げ天

サイドメニュー4

マヨ玉コールスロー、ポテトサラダ。

コールスローといっても、マヨネーズがしっかりかかっているので「さっぱり」はさせてくれない一品。ポテトサラダもしかり。

サイドメニュー5

サーモン

天ぷら5

ミニトマト天、パイン天

「パイナップルを天ぷらにするとは!」と驚かされる。もうこの世の中で、「とりあえず天ぷらにまだなっていない」食材って存在するのだろうか?なんなら、ドリアン天ぷらとか冬虫夏草天ぷらとかもありそうだ。

よこさんは

「最後にこのパイナップル天をアイスクリームの上に載っけて食べるんすよー」

と犯行予告。おう、アイスの上に天ぷら?それはまた斬新な。

サイドメニュー6

厚揚げ

「そうか、1個頼んだら当然こうなるよな」

サイコロ状の厚揚げが1個、コロンと出てきたとき思わず笑ってしまった。

サイドメニュー7

から揚げ

一方のから揚げは1人前で3個だった。

から揚げ大好きな僕は天ぷらの途中だけど嬉々としてこれを食べた。

「うーん、なんだかスカスカしてる。味がない、というか」
「大豆で作ったから揚げもどきみたいですねぇ」

そんな話をしながら、ふとメニューを確認して気がついたあっ、「鶏の唐揚げ」とは一言も書いていない!何を「から揚げ」にしたのかは、内緒だ。

天ぷら6

食べ放題メニューには「季節の天ぷら」というものもある。今日は春、ということもあって山菜がメニューに載っていた。山菜の天ぷらが大好物のおかでんさん、ウッキウキですわ。つい先日も自宅で山菜天ぷらを揚げたばっかりだ。

で、ふきのとう、うるい、こごみ。たらの芽もメニューには載っていたのだけど、注文しようとするとタブレットの画面に「売り切れ」の表示が出た。

「うお、この時間にしてもう売り切れなのか!」

どうやら、そもそも今日「たらの芽」の入荷はなかったっぽい。

サイドメニュー8

とうもろこし天

天ぷら7

穴子天、キス天、海老天

「あっ、しまった、スターターキットの中に海老天が入っていたのに!」

重複してしまった。まあ、海老天は美味いからOK。

サイドメニュー9

店員さんがやってきて、「フライドポテトは売り切れです」と申し訳なさそうに言う。タブレットではオーダーが通ったのだけど。

「山菜が品切れ、というのはわかるけど、フライドポテトが品切れとは!」
「一番在庫が切れなさそうな料理なのに」
「そして、原価が安くて客を満腹にさせることができる、最強の食材なのに、よりによって切らしてしまうとは!」

かわりにやってきたのが石焼マーボ。

その名の通り、石鍋がじゅじゅう言っている。おお、結構手間がかかってるじゃないか。

サイドメニュー10

水餃子(タレ)、水餃子(四川風)

サイドメニュー11

炊き餃子、だし巻き玉子

サイドメニュー12

あさり酒蒸し

天ぷら8

かにかま天、ちくわ天、きす天

サイドメニュー13

コーンバター

サイドメニュー14

ソーセージ鉄板焼

天ぷら9

「ラストオーダーです」

と言われて焦る一同。1時間半でラストオーダー宣告がくるらしい。あともう少しだ、えーい全部頼んでしまえ。

「満腹になる前に、胃もたれする前にラストオーダーが先に来てしまうとは」

まだ満腹というほどではない。しかし、だんだん義務感に駆られながら食べているのは事実だ。

「なんかね、何を食べても同じ味に感じるんだ」

どんなに食感が違っても、所詮は同じ油で揚げているわけだから。

餅天、鶏天、パイン(再)、ふきのとう(再)

サイドメニュー15

サイドメニューにはシメ系の料理も含まれている。

そば(温・冷)、ご飯

いやあ・・・蕎麦はまだしも、白米まで。

「えっ、ご飯頼んだんですか?」

卓上は、既にあらかたおかずになるものは食べ終わっている状態。今更ご飯で何を食べろというのか。ああ、塩辛がまだ残っていたか。

さすがに蕎麦やご飯を食べると、一気に満腹感が押し寄せてきた。うう、これはちょっとしんどいぞ。

サイドメニュー16

Gachiアイス

アイスの上にパイン天

で、パイン天をアイスの上に載っける人。

・・・うまいんだろうか、これ?

サイドメニュー17

「ははは、ケーキもあるのか・・・」

満腹なので、力なく笑ってしまう光景。

天ぷら10

そんな3人に朗報。まだ何かあげものがキター

「玉子天?」

しかし何やら茶色い。しかも、また味の濃そうなたれがかかっている。

食べてみたら、こいつが「照り焼きバーグ天」だったということに気がついた。

ごちそうさまでした

なんとか食べおわった。

品切れのもの、オーダーしそびれたものが若干あったけど、一応ほぼ全て食べたことになる。ういー。

長ーいレシート

お会計時、レシートの長さにびっくり。よくもまあここまで食べたものだ。

「胃もたれはしなかった!喜べ、我々の胃袋はまだ十分戦える!」

と喜んだのもつかの間、ずしっと胃に溜まった食べ物は我々を苦しめた。お店を出た後、腹ごなしに北千住を散策したのだが、全員まともに歩けやしない。揃いも揃って、ヨチヨチ歩きになっていた。大きな動作で歩くと、腹の皮が引っ張られて、中の胃袋を圧迫するからだ。3人とも若干猫背気味で、そろりそろりと歩くのがやっと。お陰で、後ろからやってきた自転車や歩行者の通行の邪魔になってしまっていた。すまんすまん。自分のことで精一杯で、後ろの気配なんて全く察知できなかった。

この後しばらく散策した後、特にアイディアがあるわけでもなく、お開きとなった。

全員、苦しみながらも、「若気の至りを今のうちにやることができて、良かった」と喜んでいた。健康だのヘルシーだの言ってないで、たまにはこういうハメ外しをやらなくちゃね。

今度は遠くないうちに激辛料理を食べにいくか、という話も出ている。今年はほどほどにハメを外していこうと思う。

ちなみに、よこさんは翌日の14時過ぎになって、LINEにこう書き込んでいた。

ようやくおなか空いてきましたよ(´Д`)

天ぷらを食べてから24時間、全くおなかが空かなかったらしい。さすが天ぷら食べ放題!

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