メタボリズム建築のテンボーで食べ放題

何を言っているかわからない記事タイトルだと思うが、間違ったことは書いていない。

メタボリズムとは、1960年代~70年代にかけて設計された建物の様式の一つで、「新陳代謝する構造物」というコンセプトになっている。一番有名なのは、2022年に惜しまれつつ解体となった銀座の中銀カプセルタワービルだ。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%AD%E9%8A%80%E3%82%AB%E3%83%97%E3%82%BB%E3%83%AB%E3%82%BF%E3%83%AF%E3%83%BC%E3%83%93%E3%83%AB

コア・シャフトと呼ばれる木の幹のような建物の中央構造物があって、そこからせり出す形でカプセル状の部屋が連なっている。このカプセルは時代の変化に応じて取り外して付け替えることができるとされ(実際はアスベスト問題などでそれは難しかったが)、可変性と増築性を想起させるデザインになっていた。

中銀カプセルタワービル(跡地)からさほど遠くない場所に、今でも現役のメタボリズム建築がある。静岡放送・静岡新聞の東京支社として使われているビルだ。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9D%99%E5%B2%A1%E6%96%B0%E8%81%9E%E3%83%BB%E9%9D%99%E5%B2%A1%E6%94%BE%E9%80%81%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E6%94%AF%E7%A4%BE%E3%83%93%E3%83%AB

丹下健三のデザインによるもので、竣工は1967年。思わず「えっ?」と二度見してしまうデザインで、実用性そっちのけでインパクト勝負といった風情だ。こういう建築にチャレンジできた時代というのは、日本が豊かだった証拠だ。

で、この丹下健三は、静岡放送・静岡新聞の東京支社だけでなく、静岡市の本社ビルも手掛けている。

これがその本社ビル。東京支社の建物から遅れること3年、本人が丸くなったのかそれとも施主側の意向が強く働いたのかはわからないけど、マイルドなメタボリズムになっている。

ぱっと見、普通のオフィスビルみたいに見える。でも、よく見ると白い時計台となっているコア・シャフトから黒い外壁のオフィスフロアが突き出ている形をとっている。マッチ箱みたいにスッとした四角いビルにするのが一番効率が良いのだけど、コアにユニットがくっついた感が演出されている。

メタボリズムの流儀に則った建物は全国でみてもあまり多くないので、貴重な存在だ。

で、この静岡放送・静岡新聞本社ビルだけど、夜になるとなにやら上の階がこうこうと光っている。何事かと思ったら、そのフロアは展望レストランになっていて、一般客に開放しているのだった。その名も、「テンボー」。まんまじゃないか。

このお店のことは、たまたま静岡市をGoogleマップでジロジロ眺めていたときに知った。変な名前だな、何のレストランだろう?とおもったら、ビュッフェレストランであるという。ほう、食べ放題は大好きだ。しかも日本を代表するメタボリズム建築の中で食べられるとなれば最高だ。

ぜひ行ってみよう、ということになった。

1階の警備員さんに「レストランに行きます」と告げてエレベーターに乗って上に行く。17階の1フロアがテンボー。さらにそこから内階段で最上階の18階に上がることができるようになっているが、そこは静岡新聞の人たちの接待用フロアなのかもしれない。少なくともこの日は開放されていなかった。

このお店は、完全ビュッフェのお店ではない。メイン料理を1品選んで、あとはビュッフェとして好きなものをとってきてね!というスタイルになっている。

ディナーメニューは、2,255円から。(2022年9月時点。現在はもっと値上がりしているので注意)。

「メインを選んで残りはビュッフェ」スタイルは、結構差が激しい。サラダ程度しか自由に盛り付けられるものがないお店があったかと思えば、「これ、メイン料理なくても全然いいじゃん!」という目移りする品数と内容のお店もある。

このお店はどっちかな・・・?

答え。後者の「目移りするビュッフェ」だった。しかも相当に!!

これはすごい、質・量ともにエキサイティングなビュッフェだった。そうそうに「全種類を取ってちょっとずつ食べる」という僕の貧乏性がくじけるほど、あれこれ置いてあった。

もちろん、「シェフが自らローストビーフを切り分けます」みたいなビュッフェではない。でも、よくあるビュッフェの中ではかなりイイ部類だ。これは諸手を挙げて大感激。

飲み放題にすることもできて、その場合は料理の値段+1,500円。これは酒がはかどる。

テンボーという名前のとおり、展望がとてもよい。

この日は夜だったので、外が真っ暗でほとんど何も見えなかった。せいぜい、明るい大きな建物が見えるな・・・と思ったらパチンコ屋だった、という程度だった。展望が見たければ昼に行くのが良いだろう。

このビルは周囲に高い建物が全くない中、一つだけニョッキリ立ち上がっている。なので、テンボーという名前はダテじゃない。本当に展望が良い。

クラフトビールも注文できるようだ。

えっ、こんなにたくさん種類があるの?とびっくりしたが、一番左の「TODAY’S TAP」欄で常陸野ネストビールの「ゆずラガー」だけにチェックがつけられていた。あ、この中のどれか一種類が提供されますよ、ということなのか。

ビュッフェが豊富なので、メイン料理は実質的にサブの位置付けになる。そういう状況をお店側もわかっているようで、メイン料理のサイズはややこじんまり。でもそれでいい。

この日は義母といっしょにご飯を食べたのだけど、カッコつけることなくついあれこれ食べてしまった。それくらいエキサイティングだった、ということだ。とても満足しているので、また機会があったら訪れたい。

(2022.09.18)

コメント

コメント一覧 (3件)

  • zennさん>
    夜や屋内の撮影はもっぱらスマホ頼みの日常になりました。ブレることが多くって。
    スマホによる、わざとらしいまでのブレやコントラストの補正技術にはお世話になりっぱなしです。
    ただ、ガラス越しの夜景写真の場合、たしかにPLフィルターをかました一眼で撮影したほうが良かったかもしれませんね。(最近、PLフィルターに手を出しました)

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