量 vs. 恥じらい:二郎系ラーメンを食べる40代の葛藤

最近は、あちこちでいわゆる「二郎系」と呼ばれるラーメンを提供するお店がある。

一昔前、僕がラーメン二郎にハマっていた頃、ラーメンを食べる気まんまんで訪れたラーメン二郎が臨時休業だったりすると、ラーメン二郎を食べたい気持ちのやり場に困って途方に暮れたものだ。

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ラーメン二郎を食べる、というのは単にお腹いっぱいになりたいわけでも、ラーメンを食べたいわけでもない。ラーメン二郎を食べたいからラーメン二郎に行くのだ。他のお店でラーメンを食べて気が済むということはない。

それが、今では本家本元のラーメン二郎ではないものの、よく似たラーメンが食べられるようになった。便利な時代になったものだ。もちろん、ラーメン二郎の味を完全再現というわけでないけど、今の僕にとってはそれほど味の違いにこだわりはない。


先日、僕はラーメン二郎に似たラーメンを食べる機会があった。初めて入るお店だったけど、メニューを見て、僕は迷わず「大豚」を注文した。店員さんからは「量が多いですけど大丈夫ですか?」と聞かれたが、僕は迷わずに「大丈夫です!」と答えた。こういうときは自信たっぷりに、即答するのが正しいやりかただ。

後からやってきたお客さんは、店員さんから「当店は量が多いです。普通盛りで他店の大盛りくらいのボリュームがあります」と言われて、「ええと・・・じゃあ、大盛りはやめます」と答えていた。大量のラーメンを食べられる自信がないなら、勇気ある撤退は大事なことだ。

正直なところ、僕はこの歳になると大盛りを頼むことに恥ずかしさを感じる瞬間もある。でも、今の僕は刺激を求めている。テレワーク中心で刺激が乏しい生活を送っているので、大盛りや食べ放題にとても心がときめく。

太ってしまい体に負担がかかる、とわかっていても、ついつい大盛りを頼んでしまう。

僕の推測だが、COVID-19が流行って自宅でのリモートワークが増えた人の中で、生活習慣病にかかった人は多いと思う。「通勤時間だった時間が空いたので、その時間は近所をジョギングしている」という人がいる一方で、消費カロリーよりも多くのカロリーを食べてしまっている人は多いのではないか。

同様に、アルコール依存になった人も増えたのではないか、と思うのだが、そういう調査は存在するのだろうか?もともとお酒が好きだった人は、昼間っからお酒を飲みながら仕事をするようになってしまった人が絶対いるはずだ。「出勤頻度が減ったので、仕事帰りに飲む機会が減った」という理由で健康になる人の数より、「テレワークしながら飲んでしまい、それが癖になってしまった」人の方が多いのではないか、と思う。

僕自身、もし10年前に断酒していなかったら、たぶんテレワークをしながら飲むことをやっていたはずだ。オンラインミーティングの前に景気づけに一杯飲む、とかプレゼン終わりにご褒美で一杯飲む、とか。断酒していてよかった。


話がずれた。ラーメンに話題を戻す。

ラーメンが運ばれてきた。見た目は迫力満点の山盛りで、一瞬で身が引き締まる思いだ。なにせ、大盛りだけ他の人と丼のサイズも色も違い、厨房で調理中の時点から僕の丼が目立っていた。僕は店員さんに「大盛りでも大丈夫です」と答えた以上、完食は当然として、まったく危なげなく、できるだけ早く食べ終わってさっと席を立つスマートさを心がけるつもりだ。

ゆっくりしないで、早く食べよう。

気合を入れて箸を持ち、一口目を頬張ると、スープと太い麺が絶妙に絡み合って口の中で舞い踊る。思わず笑みがこぼれた。

しかし、食べ進むにつれて少しずつ手が痛くなってきた。

二郎系ラーメンでよくあることだが、重たい麺を箸で引っ張り出すことを繰り返しているうちに、手が痛くなってくるのだった。筋肉痛になりそうな痛みだ。箸を持つ手の小指から手首の間が痛くなる。

何度も箸を置き、手をぶらぶらと振って手に血行を取り戻しながら、根気よくラーメンを食べていく。

最後の一口を食べ終わった後、満腹感に包まれたが、ふと「本当に大盛りにする意味はあったのだろうか?」と自問自答してしまった。

人生の刺激を求めて大盛りを頼む。しかしその刺激のピークは注文したときであって、食べ終わったときにはすでにテンションが下がっている状態になっている。もっと、テンションが上がりっぱなしの心地よい食べ物を探したほうが僕にとって良さそうだ。

(2023.05.25)

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