2023年の夏、我が家は都内のお祭りにできるだけ参加しようとしている。
息子のタケが2歳になり、いろいろなものに興味を持つようになってきたから、彼の視野を広げたいという考えもある。そしてタケが「赤ちゃん」の範疇を超えたため、外出に対してハードルが下がったというのも理由の一つだ。
昔なら、抱っこひも、おむつ、ミルク、場合によってはベビーカーなど、装備品が多かった。でも今なら、場合によっては手ぶらで行くことも可能だ。外出前におしっこをさせておむつを新品に交換していれば軽装で済む。
ただ、メガシティ東京は本当に至るところでイベントが行われている。調べだすときりがないし、行き出すとどんどんなし崩し的に遠征してしまう。ほどほどのところで止めておかないと、まずい。
なにしろ2歳の息子がいるんだ。どんなに遅くとも21時までにはお風呂、歯磨き、それから完全就寝というプロセスを完了させたい。21時から逆算すると、子連れで行けるところは限られてくる。
この日訪れたのは、築地本願寺だ。「日本一美味しい盆踊り大会」という、盆踊りにもかかわらず「美味しい」を全面に打ち立てたイベントタイトルに非常に惹かれた。
築地本願寺を運営している浄土真宗本願寺派は、「葬式仏教」と揶揄されるような伝統的な仏教スタイルからの脱却を模索していて、この盆踊りもその一環だ。盆踊りを敷地内で開催することで信者が増えることは直接的にはないけれど、お寺に対して親しみを持つ、お盆という仏教行事に思いを馳せるきっかけとする、などで社会と仏教世界とを緩やかに接続させようとしているのだろう。
盆踊りが始まるのは19時からだったけど、それよりも早く現地入りする。なにしろ、家に退却する時間を考慮しなければいけないからだ。盆踊りそのものを楽しめる時間は短いが、それよりも「日本一美味しい」のほうを楽しもう。
結果的にその考えは正解だった。盆踊り会場の周辺には、築地場外市場にあるお店が屋台を出していたが、早い時間帯ならばスムーズに買い出しができたからだ。これが盆踊りが始まる頃になると、どのお店も長蛇の列で、あれこれ食べようという意欲が萎えたと思う。
境内には、テーブルと椅子もある。さすがにここはすでに埋まっていたが、このイベントに本気で参加する気満々な人は、早めにやってきて席を確保するととても快適だろう。川を挟んで橋一つ向こうの、勝どきエリアのタワマン住民ならばここへのアクセスは容易だしすぐだ。
僕らは、本堂に通じる階段のところに座った。境内を見下ろせる場所で、尻が痛いことを除けばとても快適な場所だった。でもこれも、早く到着したからこそだ。
ちなみに、↑の写真の奥に写っている近代的な建物も築地本願寺のものだ。カフェで「18品の朝ご飯」が食べられる場所だ。以前僕は朝8時過ぎにわざわざここで朝ごはんを食べたことがある。
とても良い食事だった。こういうのも、つくづく本願寺というのは上手だ。
盆踊り会場に並んでいる屋台は、築地場外市場を歩き回ったことがある人ならばおなじみのお店が見られる。
この「きつねや」は、もつ煮込みを売っているお店としてとても有名で、僕も何度も店頭で食べたことがある。
なので、「この盆踊り大会に来ないと食べられない料理」というわけではなく、朝に築地に来られるなら、ここからわずか100-200メートル離れただけのところで日常的に食べることができる。
とはいえ、やっぱり食べてみたくなるのが人情。頼もう。
どんなお店があるのか、一つ一つ説明しだすときりがないので割愛するが、どれも値段は手頃で、看板に偽りなしの「日本一美味しい」盆踊り大会だと思った。
どのお店の料理も丁寧に作られていて、雑なものがないというのは「ありそうで、案外ない」光景だと思った。
盆踊りの会場は、見たことがないほどの提灯で空が覆われていた。協賛がこれだけある、ということだ。
まるでランタンフェスティバルのようだ。
盆踊りが始まると、踊る人たちがやぐらを取り囲む。1重では足りず、その外周にもう1重、踊りの輪ができるという賑わいだった。
2020年にコロナが始まった際、僕は思った。「これで、コロナ前とコロナ後とで完璧に人との距離感とかコミュニケーションに断絶が生まれる。たとえコロナが収束しても、コロナ中の疎な対人関係は持続してしまうだろう」と。
しかしどうだ、コロナなんてなかったかのように人々は群れ、喋り、飲み食いをしている。実際僕自身、コロナってあったっけ?状態の気分だ。
コロナ患者を日々受け入れている医療従事者からすると「ほどほどにしておいてくれよ・・・」という気持ちがあるだろう。でも、こうも人の心がコロコロ変わるとは、まったく思わなかった。もう一度コロナが大流行したら、人はまた元の緊縮コミュニケーションに戻るのだろうか??
(2023.08.03)
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