痺れる料理をたべるたびに僕は後悔する

自分の過去を振り返ってみると、激辛料理が大好きだったのはストレス発散のための自傷行為だったのかな?と思う。僕のストレスが解消されると、辛い料理への欲求は薄れていった。

今、まさに僕は辛い料理への憧れがない生活を送っている。たぶん、この事実は喜ぶべきことなのだと思うが、一方で残念に感じることもある。辛い料理に向き合うときの高揚感が得られないからだ。

とはいえ、僕の日常というのは、ひたすらパソコンに向かう日々だ。忙しい日は、一日16時間働いてその後同じ部屋で5時間寝て、部屋の外に出るのは残りの3時間、ということがある。それが一週間くらい続くこともある。

こういうとき、気力と体力が必要だ。なので、いくらストレスが溜まっても激辛料理を食べたいとは思わない。なぜなら、激辛料理は気力・体力の両方を僕の体から奪うからだ。具体的にいうと、それを食べた翌日にお腹が痛くなって、トイレにずっと滞在することになる。

激辛料理の代わりに今月の僕を支えてくれたのが、汁なし担々麺だった。銀座にある、広島県のアンテナショップ「tau」の店内にあるお店で、広島名物の汁なし担々麺を食べることができる。

このお店の麺料理は、辛さを4段階の中から選ぶことができる。いつもの僕は、ちょっと遠慮しつつ、3番目の辛さを選ぶことが多い。

今回注文したのは、メニューの中で初めて気がついた「超山椒的汁なし担々麺 20倍」という料理だった。

辛さは普通で、痺れを演出する山椒が20倍入っている料理らしい。これは楽しみだ。

提供された汁なし担々麺はネギがたっぷりはいっていて、一見すると普通の担々麺に見える。しかしよく観察すると、大量の山椒の粉末が含まれていることに気がつく。

よくかき混ぜてから食べる。

うん、20倍という言葉に偽りはない。本当に強烈な痺れだ。口の周りがビリビリ痺れる。まるで電気が流れているようで、唇が細かく振動しているかのような錯覚を覚える。

最初はこの新鮮な驚きと食感をすごく興奮しながら楽しんだが、だんだん気持ちが落ちてきた。そうだった、山椒という食材は、少なくとも僕にとっては気分が滅入るスパイスだった。

僕は、辛くて痺れることで有名な四川料理が好きだ。しかし、好きだといってあまりにも本格的な、あまりにも地元民向けの四川料理を食べると、山椒が多く入っていて僕の気持ちが下がることが多い。そのことをすっかり忘れていた。

辛いものを食べると気分が盛り上がる。そして痺れる料理を食べると気分が下がる。四川料理はアクセルとブレーキを同時に踏んで走る自動車のようなものだ、と僕は感じている。

一方で、今回食べた「山椒20倍」の担々麺は、ギューッとブレーキを踏み込んだ状態の食べ物であり、僕をすっかり滅入らせた。美味しくて大満足する体験だったけど、気持ちは至って冷静、という不思議な食後のひとときを僕は過ごした。

(2023.11.07)

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