屋形船に乗る機会に恵まれたので、家族で乗ってきた。義母が上京したので、冥土の土産・・・と言ったら怒られるが、楽しい体験を提供しようと僕らが企画したものだ。
屋形船は決して交通の便が良い場所から出発するわけではない。なので、親孝行で父母を屋形船に乗せたいと思っているなら、できるだけ早いほうがいい。足腰が弱ってからだと、父母の気力体力がついてこなくなる。
屋形船、という娯楽自体、東京に住んでいる人以外は馴染がないものだろう。なのでざっと紹介すると、お座敷がある小型の船に乗り、だいたい2時間程度のクルーズに出港する。その間に船内で飲食をし、外の景色を楽しむというものだ。
昔の屋形船は一艘貸し切りが前提となる事が多く、会社の懇親会などでもない限り利用が難しい、敷居が高いものだった。しかし今では乗合船と呼ばれる、他のお客さんと一緒に乗るスタイルが普及し、利用しやすくなった。とはいえ、おひとり様を受け入れている屋形船があるかどうかは不明だけれど。
料金は一人当たり1万円強が相場、といったところか。席は畳のお座敷の船もあれば、掘りごたつの船もあるし、畳の上にテーブルと机を置いている船もある。どういう船が良いのか、船宿のサイトを見て検討すると良い。
僕は過去3度、屋形船に乗ったことがある。
初回は会社の同僚と乗った。これまで毎年恒例で行われていた社員旅行がその年から中止となり、かわりに屋形船に切り替わったからだ。これまで男しかいなかった職場だたので、社員旅行といえば泥酔した男共が「うおー」などと叫んでいるような宴会が定番だった。しかし女性社員が入社したため、さすがにこれまでと同じことはできない、となって、かわりに開催されたのが屋形船宴会だった。
このときは浦安から出発した。あんなところにも屋形船があるのか!と驚くが、結構浦安界隈にも船宿がある。なんでだろうと思っていたら、浦安には東京ディズニーランドがあるからだった。船は川を下って海に出て、沖に停泊。何がはじまるのかとおもったら、東京ディズニーランドの打ち上げ花火を沖からタダで見ることができる、という体験ができた。なるほどこれはいい。
残り2回は隅田川下りだ。東京で屋形船といえば、だいたいこのイメージが強い。
隅田川を下ってお台場まで行って、そこからまた隅田川を遡上して戻って来る。浅草から蔵前あたりの船着き場からの発着となる。
道中、たくさんの橋の下をくぐり抜けていくので飽きないし、右を見ても左を見ても有名な企業の本社ビルが建っていたり、ニュースに取り上げられるような建造物があったりする。東京観光としても優れているので、お金と時間に余裕がある人はぜひ屋形船の乗船をおすすめする。
今回利用した屋形船は、北品川から出るものだった。いしが予約したのだけど、最初北品川と聞いたときは「え?なんでそんな場所の船宿を?」と思った。ちょっと不便だからだ。でも、彼女が言うには、出発時刻の問題、空席の問題、揚げたて天ぷらが食べられる屋形船がいいという個人的希望を踏まえるとここになったのだそうだ。
屋形船では、揚げたての天ぷらが振る舞われることが多い。船の船尾に厨房があって、そこで天ぷらをせっせと揚げてくれる。しかし中には天ぷらを提供せず、豪勢なお刺身盛り合わせが出てくるようなところもある。
僕らはせっかくだから揚げたて天ぷらが食べたかった。なので、消去法で北品川となった。でも、北品川から出て一体どこへ向かうんだ、この船は?
品川駅から徒歩で20分弱、着いた船宿は運河の奥まったところにあった。
屋形船の中。
どの屋形船もそうだが、決まって屋根はとても低い。橋をいくつも通過するので、橋と船が激突しないようにするためだ。おかみさんいわく、温暖化の影響で海水面が上昇してきており、この船でも潮の満ち引きによっては通れなくなる橋が出てきているそうだ。
僕らが乗った船はテーブルと椅子の席だった。これなら、足腰に自信がなくなってきたご高齢の方でも少し安心。ただし、船なので若干は揺れる。2時間の宴席中あまり歩き回らないとはいえ、高齢の方は注意が必要だ。
なお、我が義母はまだ現役で働いていることもあって、その点は全く問題なかった。なにせ、この日は銀ブラなども含めて合計14キロくらい歩き回った。それでも平然としているのだから恐れ入る。
この日の屋形船は満員御礼。おかみさんがマイクで喋りながら各テーブルに「どこからきたの?」などと聞いていたが、大半のテーブルに外国から来た方が含まれていた。外国人オンリーのグループはさすがにいなかったが、「外国からやってきた仲間を屋形船でもてなす日本人たち」という構図があちこちで見られた。
やはり、一人1万円オーバーの会食となるので、客層は年齢がアッパー気味になる。若いカップルが楽しく会食、という光景は見られなかった。
屋形船の食事。
左下の器にはたけのこご飯が入っていて、写真右側のマスにはこの後天ぷらがどんどん運ばれてきた。
この屋形船の場合、料金の中に飲み放題が含まれていた。飲む人はガンガン飲めばいい。一方僕らはお酒を飲まない。そうなると、僕が頼んでもいないのにわんこそば状態でコーラが届けられ、飲んでも飲んでもおかわりがきた。目が行き届いているし、気がききすぎている。
「もうコーラは十分です」と伝えたら、「じゃあ、とりあえず念の為においておきますね」とダメ押しのコーラが一杯、卓上に届けられた。何がどう念の為なのかわからない。
で、そのコーラをつい僕が飲んだので、またわんこコーラが復活だ。
北品川から出港して、一体どこに行くんだ?と不思議だったが、船はそのまま隅田川を上っていき、スカイツリーのお膝元までたどりついた。そこで20分ほど錨を下ろして停泊したのち、川を下って北品川へ。
天気が良かったこともあり、夜景をさんざん楽しむことができて良かった。弊息子タケも、ソワソワしてご飯をバクバクとオーバーペース気味に食べたり、お座敷の外の舳先に出たり入ったりと楽しそうだ。その結果、途中で気分を悪くしてしまい、ゲーと食べたものをぜんぶ吐いてしまったくらいだ。
隅田川下りだけなら、東京水辺ラインという水上バスに乗れば体験できる。
https://www.tokyo-park.or.jp/water/waterbus/index.html
あくまでも公共交通機関なので、この東京水辺ラインは昼間しか運航していない。しかし、夜景を楽しみたいなら、予約制のナイトクルーズもあるらしい(大人2,400円)。屋形船で1万円は高い、という人はナイトクルーズでカジュアルに楽しむのも良いと思う。高いっちゃあ高いが、人生何度かの贅沢だと思えば、まあ許せる値段と内容だと思う。
(2024.03.23)
コメント
コメント一覧 (2件)
屋形船、まさかの乗合(?)なんですね。
てっきり貸切オンリーかと思ってました。時代劇のイメージが強いのかな。
さすがに定期運航はないと思うんですが、あまりにもお客さんが少ない時は予約してても欠航…なんてこともあるんでしょうか?
天ぷらわっせわっせ、読んでるとよだれが出てきますが
実際にやるとキツくなってきました。歳は取りたくないですね(笑
ティータさん>
結構いま、乗り合いの屋形船が多いみたいですよ。屋形船は数十名が乗れるのですが、そのキャパを埋めるだけの団体客さんがなかなかいないんだと思います。
屋形船、もっと旅行予約サイトみたいなところがあると良いのですが。検索条件で「スカイツリーが見られる」「天ぷらがでてくる」「昼」「乗り合い」「予算は1万円」などとチェックボックスを入れると、合致した屋台船が提示されるような。