お台場で「からあげ祭」という、から揚げ屋台が並ぶイベントが開催されるというので行ってみた。から揚げは僕の好物だからだ。
とはいっても、若い頃ほど情熱的に「から揚げ最高!」とは思わなくなってきた。そんな自分が悔しい。オタクが30歳を過ぎたころから、自分が夢中だったものに夢中になりづらくなってくる現状に愕然とするのと一緒だ。僕も、老いなのかなんなのか、から揚げへの忠誠心が落ちていることが心底残念だ。
そんな自分を奮い立たせるためにも、訪れたイベント。
だいたい1店舗あたり800円程度でから揚げが売られている。それを4店舗、食べてみた。
さすが、フードトラックでお店を構えるほどのから揚げ店舗だ。味はスーパーのお惣菜コーナーのものとは雲泥の差で、あきらかにうまい。そして、短期間で何店舗も食べ歩いたので、お店ごとの味の違いが楽しめて良かった。
ガリガリした食感のから揚げが僕の好みだけど、しっとりしたやつも肉の旨味が口の中に充満していいよなぁ、などとあれこれ考えが改まるひとときだった。
でも、思った。
あっ、このから揚げはうますぎる、と。
うますぎて、くどい。1店舗800円分のから揚げを食べると、もう「美味しすぎるので、満足しちゃった」という気分になるのだった。こんな体験、初めてだ。
「から揚げを無限に食べ続けたい!」と思うのが僕という男の生き様でありたかった。でも、こういうお店のから揚げは、1パックを食べるともう十分という気持ちにさせるのだった。
美味しくなりすぎるというのも、困ったものだな。回遊しようという意欲が失せる。この日、この会場には6店舗のから揚げ屋台が出店していた。昔の僕なら、せっかくだから6店舗すべてを食べる!と意気込んだはずだ。でも、僕は4店舗を食べた時点で、「まあ、こんなものだな。もういいや」という気分になったのだった。
胸焼けして食べられなくなった、というわけではない。お腹がいっぱいでこれ以上食べる気がしなかったというわけでもない。単に、から揚げを食べたことにすっかり満足してしまったのだった。
むしろ、家に帰って、肉のハナマサで鶏肉を1kg買ってきて、自分でバサバサのガリガリなから揚げを揚げようかしら、と思ったくらいだ。つい揚げすぎて、肉がスカスカになっているような、できの悪いやつ。そういうのを食べたくなった、そんな美味しくて素敵なイベントだった。
(2024.04.26)
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