台東区谷中にある、かき氷の有名店「ひみつ堂」。長蛇の列ができるかき氷店として特に有名なお店だが、さすがに寒くなってくると客足が鈍る。
僕は、むしろ客がいない冬こそチャンス!とばかりに、この時期にかき氷を食べる。暑い中、並んでまで食べたいとは思わないからだ。
「ひみつ堂」の売りは、ジャムのように濃厚なフルーツの蜜を氷にたっぷりかけることだ。「ブルーハワイ」をはじめとする、屋台のかき氷とは完全に一線を画する要素だ。
フルーツといえば夏場がシーズン。その時期になると、実そのものもかき氷の上に載るし、蜜としても果物が使われているメニューが登場する。そういうものは当然値段が高くなり、メニューを二度見してしまうレベルだ。
このお店は、1000円札1枚を握りしめて訪れても、何も食べるものがない。最低でも1,500円前後するはずだ。
旬のフルーツが使われたかき氷を食べたい、と思うなら、2,000円台中盤のお金を持っていないといけないし、メニューによっては3,000円超えとなるものも時折出現する。
お店は古い民家を改築したような、さりげない建物だ。店内はお客さんもギュウギュウ詰め、店員さんもカウンター内にギュウギュウ詰めの狭いお店で、ざっくばらんとした雰囲気。その雰囲気と、価格帯のギャップにびっくりしてしまう。
でも、これを「高すぎる」などと言うつもりはない。手間がかかっているのはよくわかるし、人件費がすごいのもよくわかる。さらに、冬は売上が下がるという季節性も考慮し、年間を通じてお店が維持できるような価格帯にしなければならない事情もある。
このかき氷の値段を払ってもいい、と思う人が食べればいいし、高い、と思う人は食べなければいい。それだけのことだ。
そもそもコロナ前からこのお店は頭抜けてお高いお店だったが、今では物価高騰もあって、さらに売価の高値更新を図っているように見える。
ある秋の日のメニュー。この日一番の高値商品は、「栗三昧2024」。お値段3,400円。
「たかがかき氷に3,400円?ありえないだろ!」と言うのは安直だ。「ありえない」と一刀両断する前に、「3,400円を払ってでも食べたいと思うお客さんがいる現実と、そこまでブランド力を高めてきたお店のこれまでの努力」に感服する。
「栗」という、「高くてもしょうがないよね」と客が思える食材を使っていることもあるが、だとしても3,400円はすごい。僕は手が出せない。
観光客なら、「一生のうちに1度食べられればいいや」という感覚で財布の紐が緩む。この商品もそういう類なのかもしれない。港町観光地として有名な場所の海鮮丼が少々お高くても、「せっかくだから」と払っちゃうのと一緒。
↑のメニューは比較的見やすいほうだ。時期によってはとても見にくくなる。
たとえばこれ。2024年夏のある日のメニュー。
良い意味でも悪い意味でも目移りしてしまう。用意されている蜜の種類が豊富なのに加え、どういうトッピングを氷に施すかという亜種メニューがいくつもあり、頭が混乱する。
自分の財力を気にしつつ商品選びをしつつ、メニューの多さに頭が混乱する。何を選んでも不安と後悔が残ってしまう。もちろん美味しいのだが、その美味しさの裏には値段の高さが伴っている。
いっそのこと、カネに糸目はつけない!食べたいものを食べる!と宣言してしまったほうが満足度が高い。でも、結局「お金はやや安めのものを選んで、本当に1番食べたいわけではないメニュー」となってしまうのが我ながら悔しい。
ちなみにこれは、お店の中でも安いメニューの一つ、「ロイヤルミルクティキャラメル」1,700円。
「ひみつ堂」はどのメニューもお上手なレシピで、果物系だけでなく「ミルクティ」のようなかき氷も美味しい。
美味しいんだが、この巨大なかき氷を食べているうちに「・・・フルーツ系のかき氷にしておけば、よかったかな」という気になってくる。
黙々とかき氷を食べているうちに冷静になってくるというか、我にかえるというか。
ひみつ堂に向けて家を出撃する際は、「よっしゃ、今日は一発景気づけにひみつ堂でガツンと!かき氷を!ドスンと!胃袋に!叩き込むぞ!」と鼻息が荒くなる。でも、いざかき氷を食べているうちに冷静になってくる。特に、ミルクティならなおさら。
フルーツを使っていないと、華やかさという点で劣る。そのため、「高いお金を払って、オレは何をやっているんだ」という気になってくるのだった。
僕個人の見解としては、ひみつ堂に行くならばおサイフを気にせず、フルーツ蜜のかき氷がオススメだ。圧倒的ボリュームの氷を食べきるまで、テンションが途切れずに済む。
これは冬になって始まった、ピスタチオを使ったかき氷。賑やかな飾りつけが楽しい。そしてこのお店のスペシャリテともいえる、いちご蜜が添えられているのも嬉しい。お値段2,200円。わおう。
ひみつ堂には何十回も通っているが、過去最高値を更新したかもしれん。
カアチャンには内緒にしておきたいのだが、冬のひみつ堂はグラタンメニューが登場し、これがまた相当に美味い。
グラタンを食べてかき氷を食べると相当ご機嫌な時間になる。約束する。でも、グラタンがだいたい1,600円くらいするので、かき氷とあわせると4,000円近いお金になるのだった。
「高いなあ」と思いながらグラタンを食べていたら、新しくやってきたお客さんが何か注文し、店員さんに5,000円以上を支払っているのが聞こえた(このお店は入店時に注文とともにお金を支払う前金制)。
二人で訪れているんじゃなくて、一人客だ。一人でかき氷に5,000円オーバー!びっくりだ。どんな人が頼んでいるのか気になるが、振り向くわけにもいかないので顔は見ていない。
でもこのお店はそういう光景が決して珍しいわけではなく、前回ひみつ堂を訪れた際も5,000円オーバー客がいた。
おそらく、お値段が高いメニューに、さらにオプションの追い蜜を何種類もつけて、さらにグラタンもつけているのだろう。
金持ちだから高価なものを食べ、庶民だから高価なものは食べられない・・・という時代ではなく、もはやわけがわからない混沌とした時代になってきた気がする。
さて、このお店が4,000円を超えるメニューを出す日は果たしてどれくらい先だろうか。そんなに遠くないのかもしれないし、「さすがに4,000円はやりすぎだろう」とブレーキがかかるのかもしれない。まったく先が読めない。
(2024.12.06)
コメント