以前、豊洲のランチビュッフェが安かった話を書いた。

物価の高い豊洲にしてはオアシスだ、とさえ思ったくらい安かった。
記事を書いた2023年当時、平日昼間の45分限定メニューが税込1,099円。
45分は相当あわただしいが、男性の一人飯ならこれで十分だ。僕はけっこう満足した。
ただし「平日限定」で、しかも巨大商業施設・ららぽーと豊洲の3階という立地。
サラリーマンにはお昼休みをオーバーしてしまう難所だ。
そんな事情もあって、なかなか再訪の機会がなかった。
ところが今回、久々に行こうと決意したのは――妙に気になる広告が届いたからだ。

「【今が旬!!北海道産じゃがいもが食べ放題!!】10/8迄!バラエティー豊かな食べ放題『グランビュッフェ ららぽーと豊洲』にてホックホクな『北海道産じゃがいも』が登場!北海道の大地の恵みをぜひご堪能ください!」
えっ、と広告を二度見した。
北海道産と聞けば、鮭とかイクラとか、せめて新玉ねぎとか――そういうものを想像する。
なのに推してきたのは「じゃがいも」だった。二度見どころか、三度見である。
だって、じゃがいもなんて典型的にお腹にたまる食材だ。
食べ放題で大量に取るべきものではない。多くの客もそれをわかっているはずなのに、あえて店側が「じゃがいも」を売りにする。
じゃあ、よほど特別な料理でも出すのか?と思ったら、「マッシュポテトのミートグラタン」と「ナチュラルカットポテトフライ」。
・・・マジで?と、三度見確定。
いや、僕もこの2品は大好きだ。だが「好き」と「ビュッフェで腹いっぱい食べたい」は別の話。
むしろ「少しだけ楽しむもの」カテゴリーに属する食べ物だ。
そんなメニューを推してきたニラックス(このお店の経営母体。すかいらーくグループ)はすごい、と心底思った。
怖いもの見たさで「これは行かねば!」とスイッチが入った。
じゃがいもを食べるかどうかはさておき、このフェアをやっている現場に立ち会いたかった。時代の生き証人として。
とはいえ、フライドポテト目当てに豊洲へ――しかも仕事の合間に行くのは、正直腰が重かった。
多忙を理由にずるずる先延ばしにしていたところへ、追い打ちのように新しいお知らせが届いた。
じゃがいもフェア終了(10/8)の翌日から始まる次のフェア。

「無限ドーナツ&ホイップクリーム食べ放題」
すげえええええ。
これまた、原価は安いが腹にたまるメニュー。
それをあえて売りにしてくる営業姿勢に、純粋に痺れた。嫌味でも皮肉でもなく、心から感心した。
で、改めて思った。「やっぱり現地に行かなきゃ。生き証人として。」
とはいえ、ドーナツを無限に食べる気にはなれない。
なので、じゃがいもフェア開催中に時間をつくり、豊洲へ突撃した。
ちょうどその頃の僕は、連日深夜1時とか2時まで働いていた。倒れそうな時期だったのに、だ。

前回の記事でも書いたが、「グランビュッフェ ららぽーと豊洲」は表向きのコースだと税別1,499円から。
ランチとはいえ、フルスペックで楽しもうとすると税別3,699円と、なかなかの価格帯になる。

一方、裏メニュー的に「平日限定45分一本勝負」でよければ、税別1,099円の「エキスプレスコース」が存在する。
今回も当然これを選ぶことにした。
昔は「税込1,099円」だったのに、今は「税別1,099円」。
地味に値上がりしている。

以前は「スイーツとドリンクはエキスプレスコースに含まれない」というルールがあり、水を飲みながら黙々と食べて、食べ終えたら退店、という流れだった。
ところが今ではさらに厳しく、「サラダバーは専用の小皿で1回盛り切り」という新ルールが追加された。
スタンダードコース以上の人たちは、大皿に好きなだけ盛れる。
しかしエキスプレス組は青い小皿オンリー。なんだか少しわびしい。
もっとも、45分しかないのだからサラダをもりもり食べている時間もない。これはこれで合理的だと思う。
それにしても興味深い。手の込んだ料理よりも、生野菜のほうが原価が高いということなのだろう。
「野菜より主菜を食べてもらったほうが儲かる」という発想。時代である。
昔のように「ご飯をたくさん食べさせれば原価率が下がる」時代でもない。
なにしろ、今やお米そのものが割高になってしまった。
これからのビュッフェは、うどんやパスタなど小麦粉系メニューが主役になるのかもしれない。
あっ、そうそう。肝心のじゃがいも。
店内のビュッフェカウンターでは、さりげなく、あくまで普通の顔をして並んでいた。
特に「フェア開催中です!」という高揚感もなく、いつも通りの風景。
そりゃそうだ。グラタンもフライドポテトも、ビュッフェ界では定番中の定番、珍しくもないメニューだから。
とりあえず食べてみたけれど――まあ、こんなものだよね、という感想しか残らなかった。あとは他の料理をあれこれつまんで終了。
「歴史の生き証人」になるはずだったのに、特別なドラマも起きず、静かな昼下がりに終わった。
昔のやんちゃな僕なら、「お店からの挑戦状だな!よし、最初から最後まで、じゃがいもだけ食べ続けてやる!」なんてアホな企画を本気でやっていたと思う。ゼロ年代なら、きっとそうしていた。
でも、今の僕にはそんな気力もないし、この令和のご時世にそんなことをしたら「悪ふざけ」か「痛々しい人」と思われるのがオチだ。だから、やろうという気にはならなかった。
・・・時代の流れ、ってやつだ。
(2025.10.08)

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