見ろ!これがリアルな四川料理だ

晴晴飯店外観

上野といえば、どうしても美術館や動物園がある公園側や、アメ横がある南側に目が行きがちだ。台東区役所がある東側、または東北方面というのはあまり知られていないゾーンとなる。
商業ビルが立ち並ぶエリアだと思いきや、案外飲食店があったり、マンションが建っているのでびっくりさせられる。

そんな中、こじんまりと存在するお店がある。四川料理店、「晴晴飯店」という。

この日、僕はとびきりの麻婆豆腐を捜し求めて、御徒町から延々と歩いてここまでやってきた。御徒町にあると聞いていたお店が廃業していて途方にくれたからだ。第二候補としてたまたまこのお店をセレクトしただけだ。口コミ評価は高いようだけど、僕にとってはまったく未知のお店だった。

リアルな成都?

「ややややや!」

店頭で、思わず声を上げてしまった。

初めてのお店に入るときには随分警戒する僕は、お店に到着してもすぐには入店しない。一旦お店を素通りしつつ店内の様子を伺い、Uターンして戻ってきて看板を眺め、店頭においてあるメニューを吟味し、数分間悩む。

そのルーティンをやっている最中に、このお店の怪しさに気がついたので思わず声が出てしまったのだった。「やや!」ではない。「や」が5つもつく、最大級のビックリだ。

というのも、写真付きで紹介されている麻婆豆腐の料理名が、「プレミアム麻婆豆腐」となっていたからだ。驚いた!麻婆豆腐に「プレミアム」とか「ノーマル」っていうのがあるのか!

どうやら、本場四川風にしてあるのが「プレミアム」で、そうでない麻婆豆腐もあるよ、という二本立てになっているらしい。

それだけじゃない。他のメニューもなにやら怪しい。「リアル回鍋肉」「リアル青椒肉絲」・・・

どうやら、このお店は本場の味にこだわっていて、日本人に媚びない四川そのものの味を出してますよ、というのを強調したいらしい。だからといって、「リアル」という名前が料理名につくというのはびっくりだ。前田日明に顔面を蹴りを入れられた長州力の心境、とでも言おうか。

しかし、その下には「本場の海老チリ」「成都担々面」という料理名も並んでいて、なんでもかんでも「リアル」がつくというわけではないようだ。「リアル」が冠される法則性は、謎。

それだけじゃない。このメニューの上にキャッチコピーが書かれているのだけど、これもまたすごい。

リアルな成都(四川省)のリアルな料理(四川)

ここでもリアルが!という驚きと、漢字のルビに漢字が書かれている、というのも驚きだ。しかもルビにこれでもか、と四川を強調している。よっぽど四川にこだわりがあるらしい。

コイツぁ期待がもてそうだ。いいぞ、いいじゃないか。

ジャパニーズ麻婆豆腐は、自宅で丸美屋でも使って作ってりゃいいんだ。僕が外食で求めているのは、ガチでマジでリアルな麻婆豆腐なんだよ。よっしゃー。入店前に当たりクジ確定ー。

成都オールスター3品セット、だって!?

お店はとても混雑していた。平日19時半くらいの入店だったが、一階席二階席ともにいっぱい。入店時に店員さんに、「ご予約の方ですか?」と聞かれたくらいだから、このお店を夜に使うには予約をしておいたほうがよいのだろう。

偶然空いていた、四人がけの席に一人で座る。なんだか申し訳ないので、とっとと食べて早くお店を出よう。その点、酒を飲まない人というのはメシ時間が短くて楽だ。昔の僕なら、「折角だからビールを」と頼んで、中華を肴に長居したことだろう。中華料理は全般的に酒の肴として優れている。安くてうまい。

さて、何を頼むか。もちろん麻婆豆腐が目当てなので、「プレミアム麻婆豆腐」を食べるつもりだった。しかし、おいちょっと待て、壁に「新発売 成都オールスター3品セット」というメニューが出ているぞ。

またここでも「オールスター」という英語が出てくるのが面白すぎる。ここの店主はアメリカ人だろうか?いやそんな馬鹿な。

何がオールスターなのかというと、麻婆豆腐、水餃子、担々麺というおかず3品にライスとスープ、ザーサイがついているといういたれりつくせりの組み合わせだ。それでお値段1,080円なのだというから、すばらしくお得だと思う。麻婆豆腐がどうやら「プレミアム」バージョンではないようだけど、これは気になる。これはうまそうだ。予定変更、これでお願いします。

それにしても、料理の写真にピカーンと光る☆を加えているのはやめろ。ますます面白いじゃないか。見たことがないぞ、メニューの料理写真にこういう加工を加えているのって。

メニューあれこれ

「四川城のおすすめ」と書かれたメニューがあった。ひょっとしてこのお店、昔は「四川城」という店名だったのかもしれない。リニューアルして店名が変わったのだろうか?

なぜ麻婆豆腐は「リアル麻婆豆腐」という名前にならず、「プレミアム麻婆豆腐」になるのか、法則性がわからない。

麻婆豆腐の創始者である「陳婆さん」のひ孫から直接レシピを教わった、「陳麻婆豆腐店」の元料理長から習った、という。なんか、「友達の友達はアルカイダ」みたいな遠い親戚筋だ。

しかも、陳建一が推奨するピーシェン豆板醤を使っています、とか書いているので、なんだか軸がブレている気がするけど大丈夫か?そういうのも含めて、面白い。

何がどうプレミアムなのかというと、豆腐のグレードが上がって、肉は豚肉ではなく牛肉を使っているのだそうな。

こういう細かいツッコミはさておいて、どれも激しくうまそうだ。唐揚げに麻婆をかけた「麻婆唐揚げ」なんてうまいにきまってるし、海老とチョリソーの乾鍋なんて、酒飲みにはたまらないだろう。こりゃあ、今回「オールスター」を食べても全然物足りないな。何度か通わなくちゃ。

成都オールスター3品セット、だって!?

そうこうしているうちにやってきた、「成都オールスター3品セット」。おおう、うまそうだぜ。どれも小さなお椀に入っていて、ちょっとずつあれこれ食べたいという人向け。トータルでは結構ボリュームがあるけれど、女性であってもご飯の量を減らせば楽しく食べられると思う。

担々麺

成都担々麺。いわゆる汁なし。水菜が上にのっているのが珍しい。

麺は若干太く感じる。

麻婆豆腐

ミニ麻婆豆腐。

プレミアムではない方。辛さとしびれはそれほどではないけれど、見ての通りジャパニーズ麻婆豆腐とは違う作りになっている。もちろんうまい。これがプレミアムだと言われても、初めての人ならわからないかもしれない。

ネギが刻んで乗っているので、リアルな麻婆豆腐ではないのは明らかだけど。

水餃子

ミニ李姐餃子。

水餃子4個。すでにたれにドボンしている状態。

からさ調整用

卓上調味料として、花椒が置いてあった。「開放厳禁」と書かれた赤いシールが張ってある。香りがすぐに飛ぶので、使ったらすぐに蓋を閉じろ、ということだ。花椒の香りにこだわっているお店ということで、嬉しくなってしまう。これだけでも大正解のお店だと思う。

料理はどれも美味しかった。上野駅からちょっと歩くのと、ふらりと立ち寄って飛び込みで入店するのが難しいかもしれないのは残念だけど、ぜひとも通いたいお店だ。

晴晴飯店外観

・・・と思ったら、そのわずか2日後に再訪する機会があった。早い、早すぎだよ。嬉しい誤算で、このチャンスは大歓迎だ。

僕としてはまったりと再訪機会をうかがうつもりだった。でも、このお店の看板に書かれた「リアルな成都」を個人のフェイスブックに紹介したら、面白がってくれる友達がいて、ぜひ一緒に行きたいと誘ってくれたのだった。だったら、ということで訪問。

土曜日の20時半頃だっただろうか?予約はしていなかったけど、席は空いていた。座れるときは座れるようだ。

リアルな料理

何を食べたか、記録をとっていないので写真の紹介だけ。

初訪問のお店、特に僕が興味を持っているお店ではできるだけメニュー写真を撮影したい。後で何を食べたのか、それがいくらだったのかを思い出すためだ。別にスパイ活動をやっているわけじゃない。

しかし、中国料理店においては、メニューがあまりに分厚くて料理数が多いので、その意欲が失せる。今回も、メニュー写真を撮るのは諦めた。

チャーハン、かなりうまし。

リアルな料理

リアル回鍋肉だったかな?これは。

キャベツを使っていない。

リアルな料理

改めて成都担々麺。

リアルなメニュー

本日一番のヒット作、挽肉と四川漬物炒め。

「成都市民には当り前すぎる家庭料理です」という解説がいちいち面白い。「何?お前らそんなことも知らないの?」ハイ、全く知りませんでした!っていう感じ。

リアルな料理

で、これ。

パラパラした食べ物なので、ポロポロこぼれて食べにくい。しかし、とてもうまいのでこれは次回もまた頼みたい。

リアルな料理

これはなんだっけ。忘れた。

唐辛子がゴロゴロしているように見えるけど、このお店はそんなにしびれと辛さがキツいわけではない。「おいしそうだけど、辛いものは苦手なので・・・」という人でも食べられる。

リアルな料理

これはリアル青椒肉絲。

「えーと、どこがリアルなんだろう?」

三人がかりで首をひねる。麻婆豆腐や担々麺のように日本バージョンでは随分アレンジされてしまっているものはわかりやすいのだけど、青椒肉絲ってよくわからない。そもそも日本版青椒肉絲ってアレンジされていたのか。

肉?

それとも、ピーマンと思わせておいて、実はこれが万願寺唐辛子だった、とか・・・いや待て、万願寺って言っている時点でそれは日本風であり、リアルではないぞ。

リアルな料理

最後、待望のプレミアム麻婆豆腐がやってきた。

豚肉を使っている麻婆豆腐と違い、牛肉なので若干そっけない味になっている気がする。豚の油からでる甘みがないからだ。でもそれがむしろ引き締まった料理に仕立て上げ、これはこれでうまい。

さっきから「うまいうまい」としか形容していないけど、まあ、中華料理っていうのはそういうものだ。くどくどコメントしないで、豪快に食べて豪快に飲んで、笑って仲間と喋ればいいと思う。いずれにせよ、ハズレ料理が一つもない、かなり良いお店だと思った。

また次も遠くないうちに訪れたい。そんなお店が一つ増えた。