長時間立っていたり歩いたりすると、左足の小指が圧迫されて痛い、という症状が出るようになったので整形外科でオーダーメイドインソールを作った。単に靴のサイズがあっていないから足の指が痛むのだと思っていたら、骨格に問題があることがわかったからだ。

このインソールは、もちろん今でも使っている。
利用し始めてから数ヶ月が経つが、導入当初に足の裏で感じていたインソールの存在感は、今では感じる機会が減った。つまり、それだけ足がインソールの形や向きに合ってきたのだろう。つまり、僕の足は矯正が行われつつある、ということだ。
それでも、その日の体調によってはインソールの感触を強く感じることがある。どうも、子どもを抱っこしたり、重い荷物を持ったりして疲れてくると、インソールによってもたらされた足裏の正しいポジションが乱れてくる、ということが僕の経験でわかった。
GW中、実家に帰省する際に「ああ、疲れたな」と思いながら注意力散漫で歩いていたら、右足首を軽く捻挫してしまった。僕にとっての古傷で、捻挫を再発しやすい場所で要注意な場所だ。

この捻挫はオーダーメイドのインソールを履いている最中の出来事だった。幸い、その捻挫で腫れるほどの症状は出なかったが、痛みはしばらく続いた。これで、「オーダーメイドのインソールがあるからといって、足の不安が解消されるわけではないのだな」ということを知った。
また、ここ最近は毎月のように山を歩いている。その際、登山靴にもオーダーメイドインソールを入れているのだけど、むしろ足に悪影響ではないか?という気がしてきた。
寒い季節は標高200m程度の低山ハイクに終始していたので気にならなかったが、5月に入って1段階ギアを上げて標高1,000メートル超えの山に登ってみたら、また足を軽くひねってしまった。
これは僕の姿勢に問題があるからだけど、オーダーメイドのインソールはクッション性能に重きを置いていないため、下山時にズドンズドンと衝撃が足にかかり続けたことも原因だ。この日は日帰りの短めの行程だったからよかった。いきなり縦走をやっていたら、僕は山の真ん中でケガをしていたかもしれない。
そうか、やっぱりオーダーメイドインソールを登山に使うのは無理があったか。登山靴にはそれなりのインソールがあったほうが良さそうだ。
なお、登山靴に標準で備わっているインソールを使って山に行くこともやってみたが、オーダーメイドのインソールに慣れている身としては、何か物足りないというか、不安にさせられる感覚だった。

市販のインソールを買うだなんて、僕のこれまでの人生で考えたことは一度もなかった。
インソールを変えると、登山に限らずあらゆるスポーツでパフォーマンスが上がるというのは想像に難くない。とはいえ、お金を払ってまでインソールを手に入れるか?と言われると、僕は否定的だった。だって、インソールってもともと靴の中に入っているものだし。
しかし、結果的に買うことになった、というのは自分が老いてきた証拠だ。
「良いものを、お金を払ってでも導入する」といえば聞こえは良いが、実態としては「自分の老いによる体調の悪化を、ツールの導入でごまかす」ということだ。
思い返せば、まだ僕が若い頃の登山は、上から下までユニクロで買った服を着ていたものだ。今ならそれは考えられない。少しでも軽いものを、少しでも速乾のものを、などと機能性重視で服を選んでいる。要するに、お金で自分の不都合を解決しているということになる。ただし、単に「全身ユニクロ」だったのが「全身モンベル」に切り替わっただけだ。
購入したのはこれ。SIDASというメーカーの「3Feet Action」というインソールだ。

これは登山に特化したインソールではないのだけど、いろいろなスポーツに適合するインソールらしい。
この手のインソールは、高いものになると2万円近くする。自分が履いている靴よりもインソールの方が値段が高い、という逆転現象が起きる場合もある。
もし僕が安いインソールを買ったなら、もともと登山靴に内蔵されているインソールと大差がなくがっかりする可能性が高い。かといって、値段が高いインソールが自分の体に合っているかどうかわからないし、そもそもインソールに多額のお金を払いたくない。
ということで、いろいろな商品を探していくうちに、5,000円前後くらいの価格帯のものを選ぶのが良いのかなあ、という相場感を勝手に自分の中で作って、そこから選ばれたのがこの商品だ。
市販インソールでも、スポーツ用品店に行って足を測定してもらった上でその場で作るイージーオーダータイプのものが存在する。予め用意されているインソールに専用の機械で熱を加え、測定した足の形にフィットさせるのだという。
そのやり方に僕は心が惹かれたが、選ばなかった。というのは、僕の目的は「足の重心や負担を正しい位置に導く、そんなインソールを買う」ことだからだ。自分の足を測定し、自分の現状の足に合わせた形のインソールを作ったら、むしろ足の状態が改善するどころか悪化するのではないか?という不安があった。この不安が妥当なのかどうかはわからないけれど、僕は積極的にスポーツ用品店に行く気にはならなかった。

この商品は登山専用というわけではない。それでも僕がこれを選んだのは、「3 Feet」、つまり足の形状にあわせて3パターンの商品ラインナップを用意していたからだ。
3パターンとは、甲高の人、標準的な人、扁平足の人のことだ。
僕のようにハイアーチと呼ばれている人向けに、わざわざ「HIGH」というモデルが用意されている。これはありがたかった。あと、30日間利用してみて、効果に納得しなかったら返品・返金ができるという制度もありがたい。
ハイアーチの人向け、といっても、アーチの高さは人それぞれだ。自分の足にフィットするかどうかは実際に使ってみないとわからないので、とりあえず使ってみてから今後使い続けるかを考えてみよう。

さすが、「たかがインソール」でお金を要求するだけある商品だ。横から見るとすごく頑丈な作りをしているようだ。
でも、これを見ると「土踏まずをサポートしている」というよりも、「かかとのクッション性を高めている」ように見える。

実際にインソールを梱包から取り出したところ。
これを見ると、インソールにおいていかにつま先が重要ではないか、というのがよくわかる。かかとから土踏まずにかけての立体構造に対し、つま先はペラペラだ。
僕が整形外科で作った医療用インソールも、つま先はペラペラだった。なので、インソールというのはこれが当たり前なのだろう。
横から見たら、とんでもなく土踏まずとかかとの部分が盛り上がっている。これ、本当に足にフィットするのか?と心配になる。
しかし、このインソールを上から見ると「ああ、そういうことか」と心配が解消される。というのは、自分のかかとがインソールに覆われるようになっているからだ。横からみて分厚く見えるのは、あくまでもインソールの縁の部分であって、かかとそのものがこの分厚さだけ浮き上がるわけではない。

インソールに自分の足をはめてみたところ。
見てわかるように、僕のかかとの半分くらいがインソールで覆われている。まるで靴のようだ。
一方、このインソールが土踏まずのアーチを支える力を持っているかどうか、というのは実感があまりなかった。歩き続けているうちにだんだん実感するのかもしれない。

僕がこれまでインソールに抱いていたイメージは、
- かかとは衝撃吸収のためのクッション素材が入っています
- 土踏まずの部分にインソールの出っ張りがちょうどぴたっと収まるようになります
という構造のものだった。しかし、このSIDASを見ると「土踏まずのアーチ形状をインソールがぴったり追随する」という形ではないことがわかる。土踏まず部分が盛り上がっているのは事実だけど、それと同時に足の外側も盛り上がっている。かかと部分も足がインソールに包まれるような構造になっている。つまり、足の裏を正しい位置でホールドし、動いている際に重心がブレないようにする働きを持っている。
しばらくSIDASのインソールを履いてみて、とても納得することがあった。それは、「足首というのは縦横自由に動く関節で、変な癖がついていると足裏、膝、腰など体中のあちこちに変な負担がかかるのだな」ということだ。僕は単に足の捻挫予防と、足指にタコや魚の目ができる足の裏の力加減が課題だと思っていたのだが、それらは足首の向きの癖に起因することを学んだ。足の裏を意識するよりも、足首を意識するのが正解なのかもしれない。
医療用インソールを履いていて、日によってインソールが足裏に当たる場所が違って感じることがある。インソールの凹凸は当然変わらないので、自分の体調によって足裏の重心が動いていることになる。そのことを、インソールを作ってくれた装具士に話したら、「足の裏は足首という点で支えているものなので、当然そういうことがあります」と説明してくれた。
その話を聞いたとき、よく意味が理解できなかった。でも、このSIDASの大げさな形をしたインソールを履いていると、装具士が言っていたことがよく分かる。「足首という点」をインソールで安定させると、足の裏全体が安定する。

今使っているトレッキングシューズ、モンベルの「マウンテンクルーザー400 BOA Men's」28cmに最初から入っているインソールと比較。
ちなみにSIDASのサイズは「27cm-28cm」のものだ。
見比べてみると、当たり前だけどモンベルのインソールが薄いことがわかる。

上:SIDAS、下:モンベル。
モンベルのインソールが薄いといっても、横からみればある程度立体加工されていることがわかる。SIDASの方がわざわざ別売りのインソールだけあって、ド派手に足裏のサポートをしている。
このサポートが自分に合うのかどうかは、しばらく履いてみないとなんともいえないところだ。だって、何も考えずにトレッキングシューズを買って、履いて、登山をするときは写真下のインソールだ。このインソールでも、「まあ、こんなものだろうな」と特に不満は感じないだろう。それに比べて、写真上のSIDASインソールは非常に立体的だ。これが違和感となるか、それとも効果的に感じるのかは人によって大きく差が出そうだ。
30日の保証期間が終わるまでに、このインソールを使って長時間のトレイルを実行してみたいと考えている。しかし、台風が接近したり梅雨のせいでなかなか山に行けていない。仕方がないので、子どもを保育園に送り迎えするごく短距離だけに採用しているけれど、まだちゃんとした結論が出せないでいる。しかし、多分満足だと思う。
(2023.05.25)
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