整形外科で医療用インソールを作った(お値段数万円)

半月後、整形外科で装具士なる人物と出会った。

理学療法士をはじめとするコメディカル界隈の人たちとは異なり、病院的な雰囲気ではない人だった。

身分証明書のようなものをちらっと見せてもらったところ、株式会社の会社名が記載されていた。あ、会社員なのか。

装具士とは、義手や義足、またはコルセットなど、整形外科領域で身体の不調があるところをフォローするパーツを製造する職人だと知った。

れっきとした国家資格であり、高校卒業後は専門課程がある学校に3年間通わなければならない。

これまで考えたことすらなかったが、たとえば義足を製造するだけでも相当大変だ。その人の足の長さに合わせてきっちりオーダーメイドで作らなければならない。カメラ三脚のように「高さの微調整は自由にできますんでー」という製品はまずありえない。ぴったりと金属や樹脂を加工することは、並大抵のことではないだろう。しかも、患者のフィーリングも考慮しながらの微調整が必要になるだろう。

それに比べて、インソールというのは装具士としてモチベーションが上がらないオーダーではないか?と勝手に恐縮してしまう。

それはともかく、さっそく装具士は箱を取り出した。ティッシュペーパーの箱みたいなものだ。中にはビーズのようなものが敷き詰められ、座った状態で裸足になっている私の足を掴み、そこにギュッと押し込んで足形をとった。ビーズがこぼれるかと思ったけど、こぼれることなくきっちり私の足形が取れた。へえ、こうやって取るのか。

ちゃんと直立不動の姿勢になってから、足を地面に垂直に乗せて足形を取る・・・なんてことはやらなくてよいらしい。プロというのは、素人にはわからないレベルで高度なことをいとも簡単にやるものなのだろう。

その装具士からも「ああ、確かに甲高ですね」と言われた。整形外科医からすでに言われているのでわかってはいたけれど、改めて装具士からも言われると残念な気持ちになる。

ただ、「インソールを作る」という、医療だかなんだか自分自身腹落ちしきれていないことに対して医者も装具士もGOサインを出しているわけだから、納得するしかない。

「これくらいの甲高なら結構ザラにいますよ。インソールを作らなくても大丈夫ですよ」と言われても、今さら引くに引けないだろうし。

僕は聞いてみた。

「このインソール、『治療』だと先生から聞いたんですが、治療だとすると、どこが目標になるのですか?ハイアーチの足をインソールで支えるだけでは、治療にはならないと思いますが」

すると装具士は答えた。

「これくらいのハイアーチだと、インソールでアーチを支えるだけでは駄目だと思います。なので、アーチを支えるというよりも、足が内側に傾きがちなのを補正します」

「内側、ですか?」

「ハイアーチの人の場合、つま先に体重がかかるので足首が内側に傾きやすいんです。足首は外側に曲がるよりも内側に曲がりやすいですから。その結果、おかでんさんは小指が押しつぶされた状態になって痛みが出たのです」

「なるほどーーー!」

これでとても納得がいった。そして、「治療」という言葉の意味がわかった。

「僕、テレワーク中心の生活を送っていて、あまり靴を履く機会がないんですけど、それでも効果はありますか?」
「靴を履くことで足が内側に流れない感覚を実感するようになり、しばらく使っているうちにだんだん正しい姿勢に慣れてくるので、効果はあると思いますよ。そうすると、靴を履いていない状態でも正しい姿勢や重心の取り方ができるようになってきます」

僕は、なんだか希望が持てた。足の指の痛みは一生付き合っていくものだと思っていたのに。

「今、膝や腰に痛みはありますか?」
「・・・いえ、ないですけど、何か関係ありますか?」
「ハイアーチの方は、だんだんO脚になったり腰に負担がかかるようになるんです」
「それは今のところまだないです」

助かった。40代のうちに外科領域の老後リスクを1つ対処できた。このまま放置しておくと、膝に水が溜まっただのなんだの、動くのがおっくうになる老後生活になっていたかもしれない。早めの通院で良かった。

装具士から言われたこととして、

  • 今後、靴を買うときはインソールを交換できる靴にすること。
  • インソールが出来上がるまで2週間かかる。
  • 費用はその場で現金支払いとなる(約40,000円)。
  • 領収書と医師からの指示書が発行されるので、それを健康保険組合に提出すれば70%が還付される。
  • インソール装着後、しばらくの間は違和感が出る。腰やお尻の筋肉が痛くなる、という人もいる。いきなり長時間使わないで、徐々に慣らしていくこと。
  • インソールを利用して1か月後に再度面談し、微調整が必要ならばその場で承る。
  • 今後インソールを新しく作りたい場合、保険適用の範囲ならば1年半間隔を空ける必要がある。

ということだった。

むしろ筋肉痛が出る、というのは歓迎だ。それくらい「これまでになかった身体の変化」が出るというのは、良い傾向の証明だからだ。

インソール完成が楽しみだ。

(つづく)

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