整形外科で医療用インソールを作った(お値段数万円)

足の型取りから2週間後。インソールが出来上がったので整形外科に受け取りに行った。

袋から取り出されたインソールは、「おっ?」という見栄えだった。正直、若干戸惑った。だって、もっとクッション性が高くて分厚いものだと思っていたから。

真っ黒なインソールは地味そのもの。早速試し履きしてみようということで、今まで履いてきた靴から取り出したインソールよりも心細い作りだ。

しかしこれが医療用インソールの、医療用たるところだ。必要な部分を重点的にグイッとフォローする、それに特化しているというわけだ。

インソールを靴に入れて履いてみると、なるほど確かにこれまでのどの靴とも感触が違う。具体的には、足の外側部が突き上げられているような感覚がある。土踏まずよりもやや外側の部分だ。「えっ、そこを持ち上げちゃっていいの?」とびっくりする場所をピンポイントで持ち上げている。

ここが持ち上げられることによって、ほんの僅かに内股気味になる。

ちょっと歩いてみて、この事実に愕然とした。つまり、僕が今後も呑気に登山とかをやっていたら、いずれがに股で膝を痛めていた、ということだ。

今回、幸いにして膝が悲鳴をあげる前に足の小指が悲鳴を上げたのでダメージが少なくて済んだ、と言える。

インソールを裏返してみると、市販品ではないので色気がまったくない出来になっている。ウレタン的な黒い素材と白い素材とを重ね合わせているのがよくわかる。

そしてそれらを接着しているテープらしきものも、処理されていない状態でむき出しだ。

オーダーメイド感が出ていて、むしろワクワクする。一見雑に見える仕上がりこそが、職人手作り感が醸し出されていていい。

どのあたりがオーダーメイドならではなんだろう?と思って観察していたら、びっくりした。あっ、足のサイズが右と左とで違う!形も若干違う!

なるほど、型取りしているんだから当たり前だろ、と言われそうだが、インソールで左右差があるということに今さらながら驚いた。

昔の自分はシャツやスーツはデパートでイージーオーダー品しか着ていなかった。金持ちだからではない。体格が既製品とうまくあわなかったからだ。

毎回採寸して仕立ててもらっていたのだけれど、その際、手の長さが1センチちょっと左右差がある、と言われた。そんなことがあるのか!と驚いたものだが、店員さんいわく別に珍しいことではないらしい。

手ですらそんな状態なのだから、全体重がかかる足の裏はもっと左右差があるはずだ。なるほど、インソールのオーダーメイドは理にかなっている。

クッション性は僕が履いていたスニーカーのものよりも低い。特につま先方面が薄いので、「長時間履いても疲れにくい」という機能性を追求するものではない。

横から見ると、外側部の足中央からかかとにかけて分厚く作られている。これはクッションというより、足の裏を持ち上げて内股方向に向かせるための作りだ。

生地が薄いので、インソールを靴から出したり入れたりしていると変に折れ曲がって傷んでしまいそうだ。むやみに靴の掛け持ちはしないほうがよさそうだ。

このインソールを使って、三浦アルプスと呼ばれる三浦半島にある山々を縦走してきた。所要時間は6時間強。これでも小指が痛くならなかったのだから狙い通りだ。細かいアップダウンが多い低山縦走だったけど、ちゃんと足裏をフォローできた。

ただし、脛の外側、お尻、腰の筋肉がその日の夜から筋肉痛になった。普段と違う筋肉で姿勢をコントロールしていたらしい。


しばらく使ってみて不思議だったのが、履いている時々で足の裏の感じ方が変わるということだ。

このインソールのファーストインプレッションは「外側部が突き上げられて、内股気味になる」というものだった。しかし、履いているうちに「ちょうど土踏まずのアーチがフォローされている」と感じることもあった。日によって、時間によって感じ方がまちまちだ。

そのことを1ヶ月後に再開した装具士に伝えたら、

「足首を軸に重心は変わるので、その時々で感じ方が変わるのは当然」

とのことだった。なるほど。

これまで自分の足の裏がどのように体重を受け止めていたか、あまり意識したことがなかったのでこれは新しい発見だった。

ある日このインソールをメンテナンスしよう、とウェットティッシュで拭いていたら、これまで見ていなかった凹凸がくっきりと見えて「おお!」と思わず声が出た。

見ると、真ん中あたりにたんこぶのような出っ張りがある。え、「足が突き上げられている」ような感覚の正体って、これだったの?

正体がわかると大したことがないと思えるけれど、このわかりやすい出っ張りが日によって足の裏での感じ方を変えるのだから不思議なものだ。

ネットで探すと、「ハイアーチ」用のインソールは市販品でもあれこれ売られていることを知った。しかしその多くが「土踏まず部分が持ち上がっている」のと、「クッション性向上でアーチの負担を減らす」ことを主眼としている。僕が無学なままこういったハイアーチ用インソールを買っていたら、当然そういう買い物をしていたはずだ。

今とは違うアプローチになっていたはずで、その場合問題が解決しなかったかもしれない。今回医療用インソールと出会えて本当に良かった。

なお、「真ん中のたんこぶみたいな出っ張り」が備わっている市販のハイアーチ用インソールも存在する。

しかしながらこの出っ張りは、オーダーメイド品であっても日によって触れている感覚が変わる繊細なものだ。市販の「ざっくりS/M/Lサイズ」みたいなくくりで売られている商品だと、「サポート」はできても「矯正」は難しいかもしれない。

これまで使ってきたトレッキングシューズのインソール。

初めて取り出した。これまでシューズの外側はお手入れしてきたけど、そういえばインソールを外したことはなかった。

見ると、イエティの足形なのか?というような楕円形のインソールだった。

日本人の足の形を意識して作られたモンベルのトレッキングシューズだからだろう。

これを見ると、過去6年くらいの僕の歩みの癖がわかる。たとえとして使うのは信者の方からすると不謹慎で申し訳ないが、僕はこれを見て聖骸布を思い出した。うっすらと透けて見える足形。

これを見ると、「そりゃ足の小指が痛くなるよな」と納得する。小指スペースが足りていないのが足形からわかる。モンベルのシューズでさえこれなんだから、足がもっと細長い欧米人向けブランドの靴なんて僕が履いちゃ駄目だってことだ。たとえばNIKEとか。

ぞうりのようなデザインのインソールなので、無芸な奴なのかとはじめは思った。

横から見ても、さほどダイナミックな作りには見えない。

しかし地味にしっかりとした作りで、クッション性が高い。特に足の真ん中からかかとにかけてしっかりと作られているのが特徴。

はっきりいって、医療用インソールで山歩きは違った負担が発生する。クッション性がほとんどないからだ。

長時間のトレイルだと、膝がやられてしまいそうだ。

医療用インソールは治療が目的なのだからどんどん履いて歩いたほうがいいけれど、平地の街歩き向けだろう。縦走登山をするなら、治療はいったん中断して、ちゃんとしたトレッキングシューズのインソールを使ったほうが良いだろう。

6年使ったトレッキングシューズのインソール。親指の付け根あたりが、強い圧迫と擦れによって削れているのがわかる。クッション性があるインソールでさえこれなんだから、医療用のインソールだと足にもインソールそのものにもダメージが蓄積されそうだ。安くない買い物なんだから、医療用インソールはいたわったほうがいい。

足指の痛さが解消されれば、登山がずいぶん楽になる。これからの登山シーズンに向けて、身体のバランスを整えていきたい。

(2023.02.18)

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