「ドライレイヤー」という概念を導入し、我、薄皮を一枚被る

登山をやっていると、どんどん重装備になってくる。

トレーニングを日常的に行っていて、自分のコンディションをよく理解できている達人ならば、どんどん荷物は削ぎ落とされていくのだろう。トレランをやる人のように。

一方で、僕のように「トレーニングは殆どできていない。体重は重たい。歳はどんどん取っていく」という状況だと、己の不安要素や足りない要素をモノで補おうとする。

その結果、荷物が増える。重たくなる。むしろ、疲労感が増しているんじゃないか?と思うことがある。

登山の場合、山奥で疲労困憊したり怪我すると、大問題に発展する。何かあったらコンビニに駆け込めば良いとか、119番すれば良いという他の趣味・スポーツと根本的に違う。そのため、「万が一が起きないように」と考え始めると、きりがなくなってくる。

一昔前の登山中の僕の写真を見ると、全身ユニクロの服だったし、荷物は軽量だし、登山準備にさほど悩んだ記憶がない。しかし今は何を持っていこうか、何を置いていこうかと悩んでばかりだ。そして服装は上から下まで、登山用のウェアに身を包んでいる。さも、そういう服でないと山に登ってはいけないかのように。

服装や装備に金をかけられるだけ裕福になったわけではない。たぶん、可処分所得は昔のほうが多かったはずだ。でも、今の方が重装備なのは、自分の自信の無さをごまかすためだ。つまり、「老い」の証拠といえる。

そんな初老青年おかでんが今回導入した新しいアイテムは、「ドライレイヤー」というものだ。これまでにはなかった概念のもので、つまり「単に荷物が増えた」ことになる。えー。面倒だなぁ。でも、「ドライレイヤー」という概念を知ったとき、ちょっとした新鮮な驚きがあったので、買って試してみることにした。

ドライレイヤーとは、ファイントラック社が発売している、肌着の商品名だ。似たような概念の商品はミレーの「ドライナミック」を始めいくつかあるが、もっともメジャーなのがファイントラックとなる。

もともと登山は「レイヤリング」と呼ばれる、重ね着が常識だ。レイヤー1(ベースレイヤー)として薄手の吸湿速乾性のある肌着を着て、レイヤー2にフリースなどの保温性がある服、その上にレイヤー3としてソフトシェルやハードシェルといった防風性のある服を着る。

この基本コンセプトに追加するかたちで、レイヤー0としてごく薄手の肌着を着るというのが、ドライレイヤーの位置づけとなる。

この服そのものは汗を吸うという機能はなく、むしろ撥水機能を備えている。そのかわり、肌の水をレイヤー1の服に素早くバトンパスする伝達係を担っている。つまり、ドライレイヤーを着ているだけでは意味がなく、ドライレイヤーのすぐ上に吸湿速乾性の服を密着するように着用して、初めて効果が出る。

僕が現在持っている登山用の服は、その殆どが数年~長いものだと10年近く経っている。中には20年も使っているフリースもあったりする。そろそろ買い替え時だ。度重なる洗濯で縮んでいるし、そもそも僕自身が太ってサイズがあわなくなってきた。

そんな理由をかこつけながら、ドライレイヤーを買ってみた。お値段はパートナーには到底言えないようなものなので、こっそりとポチったくらいだ。この、手が透けて見えるような、薄手のシャツ1枚で6,000円オーバー。うわぁ。

これはあくまでも肌着なので、「わーい、高い服を買ったよー」と得意満面でこれを着て街を闊歩することはできない。なにせ、乳首が透けて見えるので、変態だ。なので、これに重ね着するためのベースレイヤーを追加で買ったら、合計で軽く1万円を超えてきた。高い。

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「こんな装備を買わないと、安心して山に登れない」と思っている自分に少しの情けなさを感じつつも、「お金の力で登山がラクできるんなら、どんどん活用しなくちゃ」という気持ちもある。

もちろん、「汗冷えしづらいです、快適な服です」という程度で登山がどれほどラクになるかわからない。パワードスーツを着用するならまだしも。

そういえば、パワードスーツというと大げさだけど、足に装着する人工筋肉的なものがもう市販されているんだよな。あれ、登山に使ったらどうなるんだろう。ラクなのだろうか?

いずれ、もっと歳を取ったらマジでこういう商品を僕は買ってしまうかもしれない。ラクしてスイスイ歩きたい、という欲望のまま。

【後日談】

というわけで、ドライレイヤーを着用して、その上にファイントラック「ドラウトクアッドジップネック」を着た状態で上州武尊山に登ってきた。

結論。暑い。

重ね着をしているので、どうしても熱がこもるようだ。空気の層が服と肌の間にできて、それが断熱材のように機能してしまい、日差しが照りつけると暑い。

ただし、さすがにドライレイヤーを着ているので、汗はベタつかない。その点は評判通り。夏に登山をしていると、汗で全身ドロドロになるものだけど、快適だった。・・・ドライレイヤーを着ている部分だけは。

この日は日差しよけで長袖を着ていたため、ドライレイヤーがサポートしていない二の腕から手首までの間が、汗でジットリして不快だった。また、当たり前だけど額からの汗はいつも通りポタポタ垂れるので、劇的に快適になったという実感がない。

おそらく、真夏よりも春や秋の方がドライレイヤーは効果を発揮するのだと思う。休憩後、ザックを背負った瞬間に背中がヒヤッとする「汗冷え」が解消されるはずだから。

【余談】

山用の服は、びっくりするくらい高い。重さや体積を気にしなければ、ユニクロのドライEXでいいじゃん、と思う。僕の場合、山用品といえばモンベルの商品群が値段のベンチマークになるので、ごくたまにモンベル以外のブランドの商品を見るとその値段に唖然とする。ノースフェース、マムート、パタゴニア・・・といったブランドのシャツって、7,000円~8,000円弱するのがザラだ。モンベルの倍以上だ。

僕は年会費を払ってモンベルクラブ会員になっていることもあって、できれば積極的にモンベルを使っていきたい。安いし、お店が近くて便利だし。でも、モンベルってよっぽど自分のブランドに自信があるのか、やたらと見せつけるようにロゴがデカい。なので、気がつくと全身モンベルのロゴだらけになってしまう。

モンベル、ユニクロを見習ってロゴを小さくするか外から見えないようにしてくれれば、僕はもっとたくさんお買い物をするんだけどな。モンベルが好きだからこそ、もうこれ以上モンベルを買いづらいという状況になっているのが残念だ。

(2024.06.24)

コメント

コメント一覧 (2件)

  • 記事に直接関係はないのですが、相変わらずの激務であろうに毎日の更新ご苦労様です。
    何気に見るたびトップの写真が変わっていることに驚かされています。極端な横長サイズなのでトリミングも工夫が要りますよね。
    それにつけてもアマゾンのセールなどで微妙な買い物をするときに「おかでんさんもああしてトライ&エラー(?)を繰り返しているんだから、俺もこれくらいはいいだろう」と無理やり自分を納得させているのは内緒。

  • zennさん>
    Amazonの買い物が当たり前になると、「思ってたのと違う!」という商品に対してだんだん耐性ができてきますよね?カチカチクリックすれば際限なく下調べができちゃうし、類似の品と対比できる。でもそういうのにもう疲れちゃって、「これでいいよ」と言いつつポチってしまう。だから、微妙なクオリティの商品が来ても、心穏やかでいられる。

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