「ウエストポーチはダサいかも」とはもう思わない【PAAGO WORKS SWITCH】

2023年から百名山登頂計画を再始動し、僕は春から秋にかけて全国各地の山に登るようになった。それに伴い、山用ギアの買い替え・追加購入が多く発生し、「こんなに出費を重ねてよいのだろうか?」と良心の呵責を強く感じている日々だ。

ただ、体力の衰えを感じているこの歳になってくると、「装備品で快適さが増すなら、金をケチってはいけない」と思っている。パートナーのいしも、その考えには賛同してくれていて、「欲しいものがあったら買いな」と全権委任をしてくれている。

快適ではないギアのせいで山の中で疲労したり、事故を起こすというのは家族にとって最悪のシナリオだ。それを避ける合理性があるのであれば、何を買っても良いという状況だ。

今じゃ、いしの方から「そろそろゴアテックスのレインウェアを買い替えたほうが良いのではないか?」と提案してくるくらいで、僕がその値段の高さで尻込みしているくらいだ。

一方で、若者が多く歩いている山域で彼らの装備を見ると、目を疑うような軽装の人が多いことに気づく。年配の人ほど装備がデカくてモッサリしていて、若い人ほど軽装というのが昨今の特徴だ。トレランをやっていてウルトラライトな装備に夢中な人だけでなく、テントを担いでいるような人でさえ、軽装だ。

そういうのを見ていると、「安全を担保するために、荷物を増やす」方向に向かっている僕はどうも大きな勘違いをしている気がする。最近、登山雑誌をまったく読んでいないので時代遅れの発想になっているっぽい。

と、ネガティブなことを書いておきながら、今回は「2024年おかでんが買った山用ギアの中で満足度が高かった商品」を紹介したい。別にメーカーからおカネや実物を貰ったわけではないので、純粋にこの商品を紹介したいだけだ。

紹介するのは、「PaaGo WORKS」というメーカーの「SWITCH」という商品だ。

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それまでPaaGo WORKSというメーカーは見たことも聞いたこともなかったが、たまたまYAMA HACKだかどこだったかの山のWEBサイトで見かけたので、知った。日本のメーカーだということで、手裏剣がロゴになっている。

このメーカーは山で使うバッグや袋といったものを取り扱っているが、目に止まったのが「SWITCH」というウエストポーチだった。山で使うというより、日常使いで便利そうだったからだ。

というのも、ちょうどその時日常使いで使っていた無印良品のショルダーバッグが洗っても汚れが落ちないくなってきて、買い替えを考えていたからだ。

ウエストポーチは1990年くらいに猛烈に流行ったものだが、それ以降はダサい格好ということで敬遠されるようになったものだ。便利さとダサさは表裏一体の関係にあるもので、便利であったがゆえにダサ認定されてしまった。

とはいえ、両手が空くけどちょっとした荷物は携帯できる、という利便性の高さは(主に男性にとって)捨てがたく、派生形としてメッセンジャーバッグなる概念が登場したりもした。しかしこれもじきにダサ認定されて今にいたる。

一方女性はというと、サコッシュがオシャレっぽく見えたり見えなかったり、という雰囲気だ。

で、僕はというと、「もうダサいといわれてもいい、90年代に感じたウエストポーチの便利さを今、取り戻そうじゃないか」という決心をした。

そういう一歩を踏み出せるだけのデザイン性の良さと機能性の高さが、このPaaGo WORKSのSWITCHにはある予感がしたからだ。

このSWITCHの最大の特徴は、ポーチ部分とベルト部分がフックで連結されていることだ。その結果、普段遣いでも登山装備としても使いやすい工夫がされている。

4wayの使い方は上の写真に描かれているとおりで、特に「CHEST BAG」形態が特徴的だ。

フックからベルトを外してポーチだけの状態にし、そのフックを登山ザックのショルダーベルトについているDリングに引っ掛ける。片方の肩にポーチの重さの負荷がかからないので便利だ。

そして胸の位置にポーチがあって、気軽にモノが出し入れできるというのは快適だ。

早速SWITCHを導入して山に突撃。

この商品、サイズはM、L、XLと3種類がある。例のごとく、僕は実物を見ないでポチるので、どれがいいかをあれこれ情報収集して悩みぬいて、Lを選んだ。

結論として、Lを選んで正解だったと思っている。

Lだと、500mlのペットボトルが入る程度、というサイズ感になる。カタログスペックでは「容量:2L」ということになっているが、実際には2Lのペットボトルが入るような容量はない。ポーチという性質上、身体の丸みに沿ってポーチが曲がる。なので硬くて大きなものを入れるとなると、スペックよりもずいぶん小さなものしか入らない。

おサイフやスマホを入れて、飲み物を入れて、それでおしまい。それくらいのサイズ感だった。逆に言えば、飲み物を入れなければ、その分他のものをこまごま詰めこむことができる。

「大は小を兼ねるから、XLを買おうか?」とも考えたが、買わなくて良かった。山中でXLのSWITCHを装着している人に出会ったが、かなりなビッグサイズで、軍隊の衛生兵みたいだ、と思ったからだ。XLのサイズになると、一眼カメラを格納するニーズにも応えられる作りになっている。その分相当にデカい。

また逆に、Mサイズだと大したものが入れられない。せっかく買うなら、Lサイズくらいがちょうどいい。

写真に写っている僕は、「SHOULDER BAG」の形態でSWITCHを着用している。このあと夜行バスに乗ることになっていて、ザックはバスの荷物庫に入り、僕はSWITCHとともに一晩を過ごすからだ。

SWITCHの中に耳栓や空気枕を入れておいたので、快適なバス旅となった。なるほどー、山に行く時はザック1つで完結させないで、サブザックがあると相当便利だ。

登頂中は、この商品を買った目的であった「CHEST BAG」形態にしてみた。

写真を見るとわかるが、500mlペットボトルの頭がポーチの中から飛び出しているのがわかる。ポーチの容量としてはこんな感じ。

ちなみに中にはモバイルバッテリーとスマホが入っている。現代登山は、行動中ずっと登山用GPSアプリを動かし続けて現在位置の把握や遭難時に備えた対策が取られている。そのためスマホのバッテリー消費量がかなり多いので、長い行動時間だとスマホに追加充電を施す必要がある。

USBケーブルで連結された状態のモバイルバッテリーとスマホが胸元にある、というのはとても便利だった。スマホはちょくちょく手に取り、地図で現在地の確認を行ったり次の経由地までの所要時刻を調べたりする。なので、「充電中だから」といって手に取りづらい場所に片付けてしまうのは困る。

CHEST BAGモードがあるSWITCHならではの便利さだった。

ただ、この日と翌日にこのCHEST BAGモードを使ったっきり、それ以降はこのモードを使っていない。便利なんだけど、ザックを下ろして休憩しよう!というときに着脱が若干面倒に感じたからだ。特にこの日は自分にとってかなり重たい荷物で、ザックの上げ下ろしが負担だった。なのでCHEST BAGが邪魔に思えた。

ザックがミレー製だったというのも、CHEST BAGと相性が良くなかったかもしれない。ミレーのザックは細かい調整ができるようにと、バックルとベルトだらけの構造をしている。便利である一方、ごちゃごちゃしていて使いづらさもある。それにSWITCHのCHEST BAGモード、というのは余計ごちゃごちゃした。

なお、このSWITCHを買ったことによって、背中に背負うザックのサイズを1ランク下げられるんじゃないか、と思った。

物理的に2LしかないSWITCHだけど、小物があれこれ入り、また、それを取り出すのにいちいちザックを下ろさなくて良くなったのは運用上デカい。

蝙蝠岳登頂時の写真。SHOULDER BAGモード。

この山は主要縦走路から離れた場所にあるため、ザックを分岐にデポしてSWITCHだけの軽装で往復してきた。所要時間3時間強。水と、行動食と、アミノ酸などをSWITCHの中に入れた。

途中、広い稜線で行く先の登山道が見えないほどガスって、雨と風速15m超えの強風で立っているのがやっと、という状況に陥った。軽装で山頂アタックできるのは便利なのだが、このときは命の危険を感じた。

「やばい、こういう時に限って携帯の電波が入らないところだし、モバイルバッテリーもココヘリ(捜索ヘリを呼べる無線機)もデポしたザックに置いてるし、どうしよう」

と思ったものだ。

3時間以上かかるような場所に行くのに、荷物をデポするのはやめよう。でも、そういうこともできちゃうのがSWITCHの快適さのゆえんだ。

その翌日には、「WAIST BAG」モードでSWITCHを装着していた。

やっぱりなにかと、腰に装着していると便利だ。

この日は、「一本満足バー」をはじめとする行動食をSWITCHに入れていた。しかし、一本満足バーはこういうポーチにいれるにしてはかさばるサイズで、1日分の行動食すべてをポーチに収めるのは無理だった。他にもモバイルバッテリーなどが入っているし。

しょうがないので、隙間に詰め込んでおいた「ブラックサンダー」をこの日の主食にしていた。小さいので、隙間にぎゅうぎゅう押し込むことができる。

ブラックサンダーは以前から存在を知っていたけれど、食べたのは人生初。重量あたりのカロリーの高さは食べ物界の中でもトップレベルだ。まさに行動食向きなのだが、逆に日常のおやつとしては食べたくないと思った。ハイカロリーすぎて、太る恐怖を感じるからだ。

別の日はずっとSHOULDER BAGモード。

あまり格好良くないのだが、便利は良かった。WAIST BAGモードも悪くないのだけど、ザックのウエストベルトと場所がカブるため、着脱の際に若干ワチャワチャするのが嫌だった。また、ややベルトを緩めにしていると、急坂で前かがみになって腿上げがある動作の際にポーチと膝や腿がぶつかり、邪魔だった。そういうときは肩からぶら下げたほうがいい。

後日。これはWAIST BAGモード。写真には写っていないが、不自然に腹が出っ張っているのは、お腹にSWITCHが装着されているからだ。

雨が降っていたため、レインウェアを着用していた。SWITCHは一応水に強い生地を使っているようだが、チャックの部分など漏水する部分がある。防水ポーチとしては使えないので、雨天時に外に出して装着するのは難しい。

なので、お腹の下にSWITCH。カンガルーのようだ。

雨のときなんて、いつも以上にかったるくてザックの上げ下げをやりたくないのだが、SWITCHがお腹にあるので快適だった。水分補給はプラティパスを使っていてザックからでているチューブを吸えばいい。行動食はSWITCHの中に入っている。なので、8時間強の山歩きのうち、ザックを下ろす機会がとても少なくて済んだ。

あと他に、SWITCHのフックでザックから吊り下げて使う、というやり方があったり、ザックのウエストベルト部分に装着するというやり方もあるが、僕はまだそれを使ったことがない。TPOにあわせていろいろ使えるのはとてもいい。

というわけで、この商品は良いのでオススメ、とまでは言わないが、僕が2024年に買って満足度の高い商品だった、ということで報告しておく。

(2024.09.28)

コメント

コメント一覧 (2件)

  • ああ、やっぱりウエストバッグってダサい扱いだったんですね。
    というのもウォーキングの際、家に転がっていたウエストバッグ(それこそ一世を風靡していた頃の品。たぶん)をずっと便利に使っていて、それが破れたので次を探そうと思ったらぜんっぜん無くてですね、これが。
    入れるものといえばスマホと財布とハンドタオル、あとカギと蛍光タスキとミニサイズのLEDライトくらいなんですが、スポーツ用品店に辛うじてあるものだと意外と入りきらないか、もしくは大きすぎる。
    どうしてこんなにモノがないんだよ、と思ってたんですが、そういうことだったのか。
    自分の用途には「90年代に猛烈に流行ったアレ」がちょうどいいんですよね、ダサくっても。
    で、結局選んだのが、「コールマン ウォーカーポーチ ブラック」なる品。amazonで検索かけると、[コールマン] ウエストバッグ ウォーカーポーチ  なる名前でヒットします。
    記事で紹介されている品ほど多彩な使い方はできないですし、おそらく山登り用途としては容量が圧倒的に不足してると思いますが、「90年代(以下略)」に限りなく近いイメージの品。一応、ウエストバッグとショルダーバッグの2way使用です。
    自分の場合はショルダーバッグとしては使ってはいなくて、普段使い用には「[アウトドアプロダクツ] ショルダーバッグ ミニショルダー ミドルショルダー クラシック ロゴテープ ナイロン 斜め掛け」(amazonにおける品名)を購入して愛用してますが、この手の小さいショルダーバッグもウエストポーチと同じくらい絶滅危惧種なんじゃないかと思ったり。
    ダサかろうがダサくなかろうがラインナップだけはしといてくれよ、と思うけれど、売れないものを販売してても商売として成り立たないんでしょうから、仕方ないのかもしれないですね。

  • 一平ちゃん>
    便利なものほどダサくなる、実用的なものほどダサくなる。
    逆に言うと、おしゃれ=不便でもある。おしゃれで実用的、って難しい。しかも安い、って。

    でも、レトロ風なデザインの腕時計、通称「チープカシオ」がちょっとした人気になっているように、時代は回り回るので「今はダサい」ものでも自分で「これは良い」と思ったら大事に使い続けるのが正解なんでしょう。
    問題なのは、一平ちゃんの言う通り「買い替えようと思っても、売っていない」ということで。

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