入船食堂

2000年02月11日
【店舗数:024】【そば食:044】
山梨県北巨摩郡小淵沢町

もりそば

入船外観

今日から、アワレみ隊小淵沢ツアーだ。二泊三日の予定で小淵沢を舐め尽くすつもりだ。でも、なぜこの寒い冬に小淵沢など行くのか?この旅行の事をを周囲に話すと、決まってそういう質問が返ってきた。そりゃそうだ、ああいう高原の旅情ってものは、夏の太陽を浴びながら、自転車をこいだり乗馬したりして高台からヤッホーヤッホー、と相場が決まってる。冬に行ったって、うすら寒いだけだ。冬にスイカ割り大会やるのと同じように旬ではない行為だ、と企画した我ながら思う。

なに、理由は単純だ。「社員旅行で、小淵沢に行ってそば打ちやって、温泉つかって日帰りっていうのをやった部署があるらしいぞ」というたれ込みを会社の同僚からキャッチしたからであった。そば打ち?温泉?いいねぇ。どちらも大好きですよ、ええ。・・・とまあ、ただ、それだけの理由。そうなればもう居ても立ってもいられない。季節は関係ない。「小淵沢」「そば打ち」とwebのサーチエンジンに入力し、ヒットした「スパティオ小淵沢」に電話し、さっさとそば打ち体験の予約を入れ ちまった。

当然、小淵沢以外にも全国あちこちにそば打ち体験ができる場所はあるのだろうが、それを調べるのも面倒だ。これも何かの縁だ、ということにしておこう。また、小淵沢のちかくには伝説の蕎麦屋と呼ばれて久しい、「翁」というお店がある。これもこの機会にぜひ行かなければなるまい。企画当初は蕎麦ツアーのつもりでは無かったのだが、なんとなくそばに始まりそばに終わるツアーになりそうな気配。

おかでんが小淵沢駅に到着した時点で、まだ他のメンバーは集結していなかった(現地集合だった)。「さてどうしたもんか」と、有名な駅弁「元気甲斐」を買うべきかどうするべきか悩んで、駅前をうろうろしていたら場に不釣り合いな電飾を飾った店を発見。何だ、これは。

窓ガラスにクリスマスツリー用の電飾が張り巡らされていて、それが真っ昼間だというのにチカチカ光っている。何の店なのかと看板を確認してみると、これが蕎麦屋なんだからひっくり返ってしまった。

小淵沢。ああ遠くまで来たもんだ、と寒風にコートの裾をなびかせながら電車を降り立った旅人・俺。いかにも田舎町という風情の駅前。これぞ、旅情。いいねえ・・・と、一人黄昏ている最中にこの電飾ときたもんだ。しかもそれが蕎麦屋じゃ、たまらない。「小淵沢」という地の利だったら、さりげない民芸風の店構えをすればそれだけで蕎麦がおいしそうに感じるだろうに。なのに、あえて電飾で勝負!このセンスには、激しく感激してしまった。嫌味でもなんでもなく、本心からそう思った。

でも、同時に「この蕎麦屋が旨いわけがない」という確信にも似た予感がしたのも事実だ。この店で蕎麦を食べるこたぁなかろう。やめて駅弁でも買って食べることにしよう。

「・・・もりそば、ください」
「あいよー」

すまん。意志が弱かった。電飾がちかちかする蕎麦屋で食べる蕎麦、という珍しいシチュエーションに負けてしまった。気がついたら、よりによって電飾が光る窓際に腰を下ろし、そばを注文している自分がいた。

もりそば

出てきたそばは、つゆの入った徳利がない。すでに猪口に辛汁が全部入っている状態になっていた。それはそれで構わないのだけど、ついでにネギまで汁の中に入っていた。おい、ちょっと気が早すぎるんじゃあありませんかい。自分の好きなようにネギを入れさせて欲しいんですけど・・・

まあ、既に居座っているおネギ様に「出て行け」というワケにもいかない。ならばしゃあない、わさびでも入れるかとわさびを探したら・・・ありゃ、わさびがないぞ。わさび無しのもりそばって、初めて見た。

どうも納得いかんなあと思いながらも、電飾ちかちかの下でそばをすする。この時の味を、あらためて文章化するのは何か申し訳ないので、当時書いたメモをそのまま転記する。

まずいそば。これだったら、そこら辺のスーパーでゆでそばを買った方がまし。
つゆも、当然まずい。

うーん、最近このコーナーで蕎麦の悪口ばかり書いているような気がする。おかでんがちょっと知識を身につけたものだから傲慢になってしまったのか、それともたまたまイマイチなお店ばかり 突撃しているのか。

でも、このお店は「電飾の下でそばをすする」というシチュエーションだけでも裏モノっぽい感じがして良い。うまい、まずいを超越している。普通ないですぜ、こんなシチュエーション。

さらに面白かったのが、このそばを盛りつけているせいろだった。すのこが、せいろよりも小さいために隙間ができてしまい、そこからそばがぽろぽろ落ちてしまうのであった。これもまた、しみじみとわびしく、しみじみと愉快だった。せいろからこぼれ落ちたそばを拾い上げながら、「いやあこのお店に来て良かった」と、ちょっとひねくれた気持ちで思った。

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