スパティオ小淵沢 体験工房

2000年02月11日
【店舗数:—】【そば食:047】
山梨県北巨摩郡小淵沢

自作もりそば

体験工房

手前味噌、という言葉がある。自分で作った味噌は他人が何と言おうと一番うまい。そう思いこむ事だ。それと同じ事がそばの世界にもあるらしい。いわゆる、手前蕎麦ということか。

何がそんな気持ちにさせるのか?なぜ人は蕎麦を打とうという気になるのか?

飲食店でバイトをやっている奴は決まって言う。「事情知っちゃうと、ウチんとこの料理なんてとても食う気になれんなあ」と。料理の製造まで首を突っ込むと、どうしても見せるべきではない「暗部」が目に付いてしまう。その点、味噌や蕎麦というのはシンプル故に自信をもって勧めやすいのかもしれない。

あらかじめビール飲んでブースト

今回、わざわざ冬の小淵沢に乗り込んだのはこのそば打ち体験をするためであり、まさしくメインイベントなんである。さあキアイを入れて行くぞ、と鼻息が荒いのだが、なぜか鼻息が荒すぎて体験工房に行く前に甲州名物「ほうとう」を食べてしまった。とってもおいしゅうございました。もちろん、ほうとうを食べるからにはビールも一緒で、これはさらにおいしゅうございました。

昼間飲むにしちゃジョッキがデカいんじゃないかって?そりゃそうだ、「デカいの」って頼んだんだから。おかげでちょっといい気分。蕎麦ののし棒をブンブン振り回したい感じだ。とてもじゃないが真摯にそば打ちを学ぼうという姿勢ではない。

「スパティオ小淵沢」は、その名の通り日帰り温泉を中核とした複合的施設になっている。宿泊、レストランは当然のこと、「体験工房」を併設していて「ナイフ制作」「陶芸」そして「そば打ち」といった体験を楽しむことができる。

あごを突き出して麺を切る

「そば打ち体験」は、近所のおばちゃんが自らの技術をみんなに教えちゃる、という感じのアットホームな雰囲気だった。てっきり頑固そうな強面じいちゃんが「ほらッ、そこもっと力を入れてッ!」なんて叱責されつつひぃひぃ言いながらそば玉をこねるようなシチューションかとおもっていただけに、やや拍子抜けだ。

結局、「そば」は職人気質の気難しい世界なのだった。そば食い人種を自称しているおかでんでさえ、いまだそういうステレオタイプでそばを見てしまっている事実。何時の間に、僕らはそういう先入観を持つようになってしまったのだろう。

そば打ちは、ござが敷いてある厨房の床に座り込んで行われた。おばちゃんが、懇切丁寧に教えてくれて「これなら簡単」という気にさせられてしまう。しかし、蕎麦はそんなに甘くない。練り一つとっても思ったようにいかず、鉢の中をのたうち回る生地をおろおろしながら追いかける始末。知識ばっかで頭でっかちになっていてはイカンということを身を以て学びましたです、ええ。

アワレみ隊メンバー合作で作った蕎麦の完成形がこれ。全員が捏ねました、全員が切りました、そしてみんな責任は分担しようネ、誰か一人を貶めるのはやめようネということで全部一緒に 麺を混ぜてゆでました。太いのから細いのまで、選り取りみどりでござーい。

生まれて初めての手打ち蕎麦

本来であればちゃっちゃと捏ねてゆでてさあどうぞ、ってぇのがうまい蕎麦らしい。その点われわれの蕎麦はへたくそな人間が試行錯誤しながらハアハアいいつつ揉みまくって切り刻んでいるわけで、どう考えても旨いわけがない。ま、こんなところで作った素人蕎麦が旨かったら、蕎麦屋なんて商売あがったりだよなハハハ・・・なんて笑いながらできあがりを一口ずずずっ。

・・・あれ、旨いぞ。

「そんなはずはない」と、詐欺にでもあったかのように慌てて二口、三口。ずずっずっ。うーん、やっぱりこれはおいしいと思う。

「手前蕎麦」だから旨く感じているのかもしれない。ここで迂闊に「いやーおいしいじゃない!」なんて大はしゃぎしたら、実はもの凄く恥ずかしい事ではなかろうか。複雑な顔をしながら、残り3名の顔色を窺う。

「おいしいじゃない」 一同、美味いとの判断を下した。あれれ、やっぱりおいしいんだ。

神妙な顔で蕎麦を食べるアワレみ隊

粉は小麦粉:蕎麦粉が6:4。初心者向けということで二八そばよりも小麦粉含有量が多い。なのに、この香り立つ蕎麦は何?噛めばにじみ出てくる蕎麦の味は何?素人でさえこのレベルの蕎麦が作れてしまうということは、使っている蕎麦粉がどれだけポテンシャル高いかということだ。

でも、愕然としてしまったのはわれわれの蕎麦の美味さというよりも、「こんな素人の蕎麦にも負ける蕎麦をカネ取ってお客に食わせているプロがたくさんいる」という事実。一体蕎麦業界はどうなってるんだ。

前日訪問した「翁」のように、信念をもって蕎麦作りをしているお店が美味いのはある意味当然であり、納得できる。しかし、今回僕らが作った蕎麦は「今年に入って食べた蕎麦の中ではNo.2(No.1は当然翁)」であり、それ以外の蕎麦屋は素人に負けているということになる。

いや、素人が勝った・負けたという議論は間違っているんだろう。現に、僕らは麺はボロボロ、コシはイマイチな蕎麦を作ったワケだ。誉めるべきはこの体験工房が用意してくれた蕎麦粉、これに尽きる。

旨い蕎麦を食べたかったら、ここスパディオで自らそばを打って食え。これに尽きる。