月舎

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2000年02月14日
【店舗数:028】【そば食:049】
山梨県北巨摩郡長坂町

日本酒、巣ごもりそば、せいろ

この日の朝は陶芸教室で美とゲイジュツを追求しようではないかという話になっていた。しかし、美を創造するからには美を体験していなければならん、というわけのわからん理由から八ヶ岳にある展望台に行ってみることにしたのだった。結局、これがよく場所が分からず、うろうろしているうちに陶芸教室に間に合わず企画倒れに終わってしまった。

つまるところ美を体験できなかったし、創造することさえもできなかったワケで、こうなったら自棄食いしかない。幸いにして小淵沢は蕎麦屋が多い。ならばそば食いをするしかあるまいというワケだ。一気に世俗臭くなるけど、まあ人生そんなもんだ。

行く店は「月舎」という名前のお店。「げっしゃ」でも「つきしゃ」でもない。これで「つきや」と読むらしい。けったいな名前だが、何かしっとりとした名前がそそられる。この店を選んだ理由は単純明快で、「そば打ち体験館」に近い蕎麦屋を、というただそれだけ。でも、案外そういう何の考えも無しに行った店が名店だったりするのだから油断がならない。

目的地に近づくと、「月舎」という小さな看板が脇道に入れと矢印を出して誘導している。おお?誘導されている先には建物なんぞ見あたらず、あるのは雑木林に突撃していく砂利道のみ。一体どこにあるんだ?

がたんがたんと砂利道で車が揺すられながら疑心暗鬼になって雑木林を進んでいくと、またもや矢印が出て直角に曲がり、さらにもう一度曲がったところで建物がようやく見えた。まるで隠れ家だ、一般道から全くその姿を伺い知ることができない。

月舎

隠れ家といっても、陰気臭い作りになっているわけではなくペンションか別荘かと見間違うような作りの明るい建物。あんまり蕎麦屋という雰囲気はない。かろうじて入口に暖簾がかかっていることから食べ物屋であることが伺える。われわれは長坂の「翁」というへんぴなところにある蕎麦屋を既に体験していたので、この程度のへんぴさには驚くことは無かったが、確実にマニア心をくすぐるシチュエーションだ。他人に教えたいような、いややっぱり内緒にしておきたいような、そんなむずがゆい感じ。すっかりその外観と立地条件だけで期待が膨らんでしまった。こんな経験は初めてだ。

店に入ってオーダーを待つ間、こんな隠れ家にもかかわらず次々と車が砂煙をあげながらやってきていた。ひょっとするとわれわれが無知なだけで、この店は名店なのかもしれない。やばい、期待メーターが振り切れてしまいそうだ。

店は女性二人で切り盛りしていて、非常に珍しかった。一瞬「主人が腰痛のためダウン、代わりに奥さんが代役でガンバっている」というシナリオを想定したが、立ち居振る舞いを見ているとどうもそうでもなさそうだ。この二人がれっきとした店員らしい。ますますマニア心を擽るぞ、こりゃあ。

しかし、だ。オーダーしてから料理が出てくるまでに30分近くも時間がかかるというのは一体どういう事だろう?お昼前という時間帯のため、徐々にお客が増えて来たとはいえちょっと時間がかかりすぎだ。われわれの前に入店したグループに蕎麦がサーブされてから、われわれの卓上に同じ蕎麦が届くまでに10分以上かかっているというのはオペレーションに難ありと言わざるを得ない。くつろげる空間だから待つのは苦じゃなかったけど、ちょっと気にはなった。

このお店は田舎の蕎麦屋にしてはやたらと江戸前ナイズされたメニューで、しっかりとお酒を楽しめるように4種類のお酒と8種類の肴、4種類の漬け物が用意されていた。もちろん、おかでんとしてはそういうメニューを提案された日にゃ応じないわけにはいかず、「巣ごもりそば」をチョイス。800円也。お酒は銘柄がメニューに書かれているものではなく、単に「日本酒」と書かれているものをチョイス。単にお金が惜しかった為だが。

巣ごもりそば

巣ごもりそばというものを食べる事自体初めての経験なのでエラそうな事は言えないが、あんまりおいしいとは思えなかった。あんかけが単にそばつゆに片栗を混ぜただけではないのか、という感じだったからだが、もう少し何かでこくをつけた方がいいような気がした。巣ごもりそばという料理がそういうものなのかもしれないが、食べている側としては「堅やきそば」を外見上イメージしてしまうため、何となく物足りなく感じてしまったのだろう。唯一おいしいと思ったのは具の海老。ぷりぷりしておいしかった。そば?えーっと・・・。蕎麦って、揚げてしまうと美味いもまずいもないなあ。ぱりっ、ぽりっというその食感が楽しいだけという感じだった。

せいろ

さて、お待たせしましたせいろの登場。600円と、シチュエーションのマニアックさからするとえらく庶民的・良心的な価格に思わず拍手を送りたくなる。だが、肝心の味はどうか。うーん、うーん、うーん。

食べた直後に書かれた手記には、次のようにコメントされていた。

せいろは、ざらざらした感じ。粉っぽい。練りが足りなかったのだろうか?かろうじてそばの香りはするので、くそまずいという評価は避けるが、正直おいしくない。生粉打ちとせいろの二種類、そばはあるのだからせいろの方はもっとのどごしを楽しませる作りにしないとダメだろうに・・・。

とまあ、相当辛口評価だ。隠れ家的シチュエーションにくらくらしていたので、少々味が劣っていても「いや、これは美味い。さすがだ」と勘違いしてもおかしくない。にもかかわらず、はっきりとこの手記に「おいしくない」と書かれているわけで、よっぽどその時納得がいかなかったものと思われる。

一緒に同行した3人に確認をとったが、彼らもおいしくはなかったという。ということはたまたまタイミングが悪かったのか、それともこの店はもともとこういう店なのか。

味さえそこそこのレベルであれば、ぜひひいきにしたいお店だけに今回は「いい」「悪い」という断定的判断は避けたい。ひょっとすると、次に来た時には相当おいしいかもしれないし・・・。

後にwebでこの店をいろいろ検索してみたのだけど、「おいしかった」という評価をあちこちで目にした。どうやら日が悪かったらしい、と理解したい。



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