越後十日町そばがんぎ 三田店(01)

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2000年03月06日
【店舗数:036】【そば食:068】
東京都港区三田

かき揚げそば(冷)

がんぎ外観

仕事の帰りがけに慶応大学の近くを歩いていたら、「そばうどん」と書かれたのぼりが道路脇ではためいているのに気づいた。

いや、正確に言うと、数メートル通り過ぎた後になって「あれれ、さっき蕎麦ののぼりが立っていたような」と気づき、あわててきょろきょろと辺りを見渡したら背後にあったという具合で。

視覚神経から思考回路に到達するまでの時間たるや、恐るべき遅延だ。ギガバイト、テラバイトのご時世で恥ずべき遅延だ。畜生。

こんなに鈍感なのだったら、きっと過去に女の子からの意味深なモーションに気づかずにやり過ごしてしまった事は1回や2回じゃ収まるまい・・・いやすいません妄想でした。ツッコまれる前に自らをツッコんでおきます。 こら、調子に乗るな、自分。

過去この道は何度も通った事があったのに、何で気づかなかったのだろう。ああ、でもこれは・・・地味だなあ、少なくとも、外見から蕎麦屋とうかがい知るのはちょっと難しい。看板も、暖簾も、店の外に出しているお品書き表も、全てがビルの壁の色に近いのである。カメレオンか、おのれはと突っ込みたくなる。しかも、「がんぎ」という店名なものだから、ますます何屋だかわからない。自らの存在を隠蔽したいんだろうか。隠れ家的蕎麦屋なんだろうか。

実は、中にはいると扉が「からんからん」と軽やかな音がして、奥には訳ありな感じの無口な髭のおやじが「・・・いらっしゃい」とグラスを磨きながらこちらを一瞥して、バックにはスタンダードジャズがゆるやかに流れていて・・・いかん、ますます妄想してしまった。今日はどうも調子が悪いようだ。

それはともかくとして、小心者の僕は自動食券機が店頭に置いてなかったら、とてもじゃないが中に入る勇気はなかった。少なくとも、立ち食い蕎麦屋が持つ活気、威勢の良さ・・・ってのはこの店からは感じられなかったからだ。食券機の値段を確認して、特に怪しい商品だったりべらぼうに高かったりしないことを確認の上、かき揚げそばをチョイスして入店した。

入り口にはいると、 典型的な立ち食いそば屋のたたずまい。ウナギの長屋状態で、壁に向かってカウンタがある。そして奥に厨房。蕎麦屋というよりはファストフード店みたいな近代的厨房設備が見える。店は全体的に小ぎれいだ。まだ新しいのだろうか。

ここまでは普通の立ち食い蕎麦屋だ。しかし、異様なのはカウンタの目の前に一升瓶がずらり、と並んでいらっしゃるではありませぬか。どゆ事でござんしょ? 〆張鶴、越の寒梅・・・そうか、地元の銘酒を取りそろえたな。立ち食いのくせに粋な事をしおる。では早速ご相伴に・・・あれれ、まだお仕事が残ってたっけか。未練たっぷりの流し目を一升瓶にくれてやりながら、断念。

それにしても、立ち食い蕎麦屋で一献、というのはなかなか見慣れないシチュエーションだ。「そじ坊」みたいに、「昼間は蕎麦屋、夜は居酒屋」という二毛作展開をやっているのかもしれない。これは、ぜひ夕方にお邪魔しなくてはなるまい!

しかしだ、営業時間を見てみると閉店時間は20時半だった。さすが立ち食い蕎麦屋、いくら酒が飲めるからといって長っ尻は無用ということらしい。さっと飲んでカエレと。

まあ、そんな事はどうでも酔い。じゃなかった、良い。うう、いかんいかん毒されとる。

ええと、僕はあくまでも蕎麦を食べに来たのである。蕎麦、食べさせてもらおうじゃないか。ってことで立ち食い蕎麦の定番、かき揚げそばを頼んでみた。なーに、はなっから味に期待しちゃいない。だから、気楽に・・・て、ちょっと待て。厨房に居るお店の主人、オーダーが入ってからおもむろに生麺を取り出し、ゆではじめたではないか。驚いた!立ち食い蕎麦屋で「モスバーガー方式」・・・即ち、オーダーが入ってから作り始めるファストフードの事だ・・・をやってるのは初めて見た。もうこれだけで感激しちゃって、味なんてどうでもよくなっちゃったくらいだ。

さすが生麺からゆでただけある、たっぷりと3分も待たせたあげくに出てきた麺は、緑色がかったものだった。一瞬、かんだやぶそばのクロレラ入り麺を思い出した。ああ、そういえば「十日町そば」と標榜するんだから、これは布海苔でつないだへぎ蕎麦なんだなとしばらくして納得。ゆでたてだから、麺がつやつや輝いている。うん、ゆでたてだと麺がニコニコしとるな 、と解ったような解っとらんようなコメントを垂れつつ、ずずずぃと一口。

蕎麦の味が口にしたな、と思った瞬間ふわんと広がる蕎麦ファンタジー。ようこそ蕎麦の国へ。

いやぁ、こりゃ素晴らしい。蕎麦だ、これが蕎麦だよお前ら!と道行く見知らぬ人に丼を押しつけて説教垂れたくなるような蕎麦の存在感。しっかりとした腰はゆでたてならではだし、その腰以上にしっかりとにじみ出てくる蕎麦の味。蕎麦は香りが高ければそれで良しなのかと思ってたけど、とんでもない。味わい深い蕎麦というのもまた、いいものだ。立ち食い蕎麦ってのは、比較的蕎麦の味がワイルドに表現されている麺が多いけど、ここの蕎麦は洗練された・・・っていっても説明しづらいな、ええと、なんとなく雑味っけの少ない蕎麦の味っていうんですかね、があるって感じ。いや、良い哉良い哉。

正直、感動した。ボリュームも一般的な量の1.5倍近くあったし、言うことなしなんである。隠れ家的蕎麦屋は当たりが多い。なんとなくそういう気がしてきたぞ。今日はたまたま発見できたから良かったけど、きっと良く通る道や街にだって、こういう隠れた美味処があるに違いない。ああ、そういった「埋もれたお店」に思いを馳せると、いくら胃袋があっても足りなさそうだよ。

この店で酒なんてどーでもいいや。また蕎麦を食べに来よう。今度は、暖かい天ぷらそばで麺、つゆ、天ぷらの渾然一体ハーモニィを楽しませてもらわないと。なにしろ、これだけ美味くて410円は信じられませんぜ。



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