そば処 銀座 いけたに

2000年03月14日
【店舗数:039】【そば食:071】
東京都中央区銀座

合盛そば

銀座7丁目といえば、夜になるとネオン街となり、ビルの壁にはBar、クラブといった文字が浮かぶ看板が明るくきらめく。路上駐車している車といえば、黒塗りの高級車だったりする。

そんな町の中に、そば屋があるという。まあ、これも例の「そば屋で憩う」の受け売りなんだけど。いい加減杉浦日向子本の言いなりになるのはやめたいのだが、まだ蕎麦喰い人種として経験も知識も浅いために仕方がない。とりあえず本に紹介されているお店を行脚することで、経験値を高める事を優先させよう。

いけたに外観

地図を片手に昼の銀座を探索していたら、あったあった、「そば処 銀座いけたに」。店名が独特の字体なので、一瞬躊躇してしまったが、ここに間違いない。ただでさえ、そば屋っていうものはこじんまりして目立たない存在。銀座のようなきらびやかな世界だと、なかなか見つけるのが困難だ。

さて、店に入ってメニューを見てみる。せいろ800円。生粉打ちや田舎そばは1,100円。うわあ、高いなあ。銀座という立地条件だからか?いや、せいろ800円はまだ「普通」と呼べる価格帯なのに、何で生粉打ちと田舎は300円増しなのだろう。イマイチ納得できぬ。普通、田舎って普通のせいろと同じ値段で提供していないか?

もうこの点で疑心暗鬼になっていたのだが、まあ物は試しだ、どっちの味も確認しなくちゃ批判も絶賛もできぬ。両方が味わえる「合盛りそば」を注文してみた。お値段は・・・うわぁ、1,500円だって。ランチにかけるお金としてはちょっと行き過ぎの感がある。これでまずかったら、どうしてくれよう。貧乏人おかでん、ぴんち。注文直後からドキドキしっぱなしだ。

そのそばが出てくるまで15分かかった。一体何をやっているんだろう?お客の数はそれほど多くないし、オーダーがたまっているようにもみえないのだが・・・。いやいや、これも修行のうち。銀座でそばを食べるというステイタスを考えれば、これしきの待ち時間は何のその。

・・・と、心にもないことを考えてみたりする。

メニューをつらつらと眺めていて気がついたのだが、一品料理は夜にならないとやらないらしい。もったいない話だ、昼から積極的にいっぱい飲ませようという事はしない、というわけか。まあ、場所が場所だけにお酒で長っ尻されても困る、という事情があるのかもしれない。昼は、ただひたすら蕎麦をすすれ!というお店、夜になれば一品料理やお酒も出す居酒屋的なお店。両面があるということか。まるで「そじ坊」みたいだ、と喩えたらいけたにに怒られるか?

さて、お待たせしました、っていうかお待たせされまくりやがりました、合盛そばがやってまいりました。さあ食べさせて頂こうじゃありませんか。その1,500円ってそばを(もうこの時点で、「1,500円」という値段だけにしか注意が向けられていない状態だった)。

合盛そば

ん・・・。あれれ。

焼き物の皿にそばが盛られていて、一風変わってますなあ。・・・違う違う、そんなのは二の次の話だ、量がえらく少ないぞ、これ。これは乳児の離乳食ですか?っていうのは言い過ぎかな、でもそう思ったんだから素直に文章にしておこう。

そりゃあ凝ったお皿に盛りつけるよなあ、懐石料理みたいにちみっとした盛りにしてこそ見栄えが良い皿だもん。これをせいろに盛ったら、量の少なさが際だってしまうに違いない。たったこれだけの量で1,500円を取るということは、きっと相当いいそば粉を使っているのに違いなかろう。蕎麦なんて、そば粉と小麦粉と水だけでできる料理。そば粉が高級じゃないと、とてもじゃないけど説明がつかないお値段だ。

でも、一口もすする前から何か味は読めていたって感じ。値段が馬鹿高のそば屋で、その値段相応のそばが出てきた試しがないからだ。例えば、神田まつやにいけば600円でおいしいもりそばを食すことができる。では、今回1,500円のそばはまつやの2.5倍おいしいのか?といえば絶対そんなことは無いわけだ。では、せいぜい1.5倍程度はうまくなっているのか?といえばこれまた違う。蕎麦の世界ってのは「いやあ、高い値段を払っただけあっておいしいわぁ」って、値段と味に相関関係があまり無いから面白かったりする。逆に、高いそば屋ってのはその期待感を激しく裏切る事が多々あるわけでして。

さて、肝心のこの合盛そばなんだけど。ううむ、やっぱりコストパフォーマンスは決してよろしくなかったなあ。

歯ごたえ・のどごしに関しては、両種類共に「絶品」「ブラボー」と言える心地よさだったんだけど、肝心の「そばの味」「そばの香り」が全然しないのにはちょっと困った。人間の五感のうち、「触覚」「視覚」は1,500円の価値大あり。ありがとう、おめでとうと店の人にはお礼申し上げたい。しかし、しかし・・・「味覚」「嗅覚」がイマイチでは、気の抜けたビールと同じだ。これは残念。今度はお店の人に「敢闘賞」を進ぜたい。

恐らくタイミングさえ合えば素晴らしく美味なそばに出会えるのかもしれない、そんな期待を抱かせるのは事実。しかーし、1,500円という値段に対してどうしても不信感を抱いてしまうのと、実際今日食べたこのそば自体がイマイチだったという事実は捨て置く事ができぬ。罰として、一緒に出てきた刻み海苔(これがえらく大量にある。どういう食べ方を店は想定しているんだ?)と薬味をばっさばっさとかけて食べた。まあ、そういうことです。

後で「そば屋で憩う」を読み返してみると、「夜でもやってるそば屋」ということと(23時までやっているらしい)、「お酒の種類が豊富」ってことばっかりが書いてあった。肝心のそばについてのほめぜりふが全然ない。うーん、そういうことだったのか!?