室町 砂場

2000年05月23日
【店舗数:049】【そば食:097】
東京都中央区宝町

玉子焼き、焼き鳥、別製ざるそば、もりそば、ビール、お酒

この日は、半日で仕事が終わりだった。

特に何をする予定も無かったので、蕎麦屋に行ってみることにした。蕎麦屋さんは、平日お昼しか営業していないお店が結構多い。都心部のオフィス街にあるお店の場合、そういう傾向が強い。だから、半ドンの日こそ、蕎麦屋に行くべきだというわけだ。

※後注:昼営業しかやっていない蕎麦屋なんてのは東京においてはほとんどありません、勘違いっした(2012/12/26加筆)

同じ会社の蕎麦好きを誘い、室町砂場に行ってみることにした。このお店は、日曜日が定休日だ。土曜日が閉まっている日もある。平日昼に行ける機会があれば、行っとけ、というお店だ。

何しろ、明治二年の創業だ。老舗の風格と伝統の味を伝える店だ。

・・・おい、それはYahoo!グルメの受け売り文句だな、さては?

はい、すいません仰る通りです。

このご時世、世界中からいろいろな美食が次々と流れ込んできているわけで、「伝統の味」が必ずしも素晴らしいとは思わないが、美味いのであれば文句はない。そういえば、天ざるの発祥の地、と聞いたことがある。「えー、でも天ぷらとそばがたまたま並んだだけでしょ?」と思うが、当時はトンデモない事だったのだろう。今でこそ、蕎麦屋といえば天ぷらが置いてあって当然な風情だが、ぐらぐらと煮え立つ湯釜を用意してれば事足りる蕎麦屋において、天ぷら油を用意するというのはちょっとした革命だったに違いない。
※後注:蕎麦屋における天ぷらは歴史が古いです。室町砂場で天ざるが発明された以前から天ぷらは蕎麦屋の定番でした。これまた勘違い。

(2012/12/26加筆)
わかりやすい至近な例を持ち出すと、カレーライスの上にカツが乗ったのと同じだろう。カレールーを煮込む鍋さえあれば良かったのに、わざわざカツを揚げる鍋を用意しているわけで。

我ながらうまい喩えを持ち出したと思うのだが、どうでしょう?

・・・

イマイチな反応どうもありがとう。

では、別のたとえを持ち出すと

もうやめとけ。

はい、というわけで室町砂場なのです。神田駅周辺の道路は、JRの線路と直角に交わっていないので、慣れないと道に迷う。そんな中を、2-3分ほど歩けば、いきなりお店が現れる。回りがオフィス街なのに、そこだけひょっこりと和風な店構えなので違和感がある。そこだけ、取り残されたかのような感じだ。そうか、これが明治二年か。

適当に感心してみる。いい加減なもんだ、建物自体はそんなに古くないぞ。

ちょっと高級感というか、なんというか、ハナタレの若造であるわれわれが入店するには敷居が高そうなお店の構えだ。「重役の社員食堂」と形容されているお店だから、オーラが違うような気がする。

店内に入った。渋い店内。その中では、既に14時近いというのに、重役さんたちがひしめいていた。蕎麦相手にモガモガしているおじいちゃん重役、グラスに入ったビールの泡がすっかり消えていても、まだもてあまし気味の遠い目をした重役、紐タイがざるの上に乗ってしまい、どれが蕎麦でどれがタイだか分からなくなっている重役。

待て、それは単なるじいちゃんだ。重役ではないぞ。

年齢層高めのお客さんを眺めてみると、店内の大半がお酒を愉しんでいることに気が付いた。さすがに清酒をくいくい飲っている人は少なかったが、大抵のお客の傍らには、ビール瓶が寄り添うように置いてあった。どうりでみんながニコニコしているわけだ。

われわれも、周りの人に倣って、アルコールを頂くことにした。平日の昼間に頂くビールって、背徳的ですてき。今日だけは、「ビール」だとか「清酒」という言い方をやめて、「般若湯」と呼びたい気分だ。

おつまみとして、玉子焼きと焼き鳥をオーダーだ。いずれもおいしいが、玉子焼きが特にすてき。こういう玉子焼きを毎朝食べることができたら、悪魔に魂を

待て早まるな、それはいくら何でも言い過ぎだ。

まあ、ソレは兎も角、今まで食べてきた玉子焼きの中では、五本の手に入るできだった。・・・五本の手って、25本の指があるじゃないか!

それは冗談だが、5本の指に入る美味さでございました。これぞ、玉子焼き。ホテルの朝食バイキングに出てくる、「下から暖められているのに全然固まらない謎の半熟スクランブルエッグ」なんか、うそくさくて、怪しくて比較対象にならん。

ビールでやめとくつもりだったが、ついつい清酒を注文してしまった。うん、でも菊正宗を飲むと、俄然落ち着くね。歳の差関係なく、回りの重役?さんたちの空気に馴染むような気になった。

さて、お蕎麦を注文しよう。せっかくだから、天もりでも頼もうと思ったのだが、お値段が1,500円ちかくする事とを知って愕然。まあ、もともとどのお店でもお安くはない料理ではあるが、ちょっと高い。さすがに、酒を呑んで気分は重役のおかでんにおいても、財布だけはヒラ社員のままだ。天もり、また次回に取っておこう。せめて、主任だとか係長だとか、言われるようになってから注文しよっと。

で、頂いたのは別製ざるそば。あまりに量が少なくてびっくり。やっぱり重役の人たちはこの程度で満足なのか。あわてて、もりそばを追加注文した。味は、今となっては全然覚えていない。別製ざるはさらしな粉に玉子を混ぜたものらしい。もりそばは一般的な、蕎麦だ。

蕎麦屋としては満足度高かったが、ちょっとヒラ社員の僕らにとっては蕎麦の量が少なすぎた。「もう一軒、蕎麦屋をハシゴする?」

なんて不穏な事を言いながら、店を後にした。