なだ万厨房 池袋三越店

2000年10月08日
【店舗数:055】【そば食:120】
東京都豊島区東池袋

大もり

なだ万といえば、高級料亭として名高いお店だ。TV番組「料理の鉄人」で一時「和の鉄人」を名乗っていた中村孝明氏も、このお店の出身だ。そんなお店の料理は、当然われわれ庶民の口に入ることはない。きっと、宝くじが当たった人か、偽札を製造した人か、アラブ石油マネーを持っている中東の皇族か、裏庭でポチが鳴くから地面を掘ってみたら金がザクザク出てきた人くらいしか、その暖簾をくぐることはないだろう。・・・ま、それは冗談だが。

いずれにせよ、そんな料亭がデパ地下でお店をやっている、と言うことを聞いた時はちょっと面食らった。案外庶民的じゃん、と。低価格層のお客もビジネスターゲットとしたいなだ万の思惑なのか、それともデパートが己のステイタスを上げたいためになだ万を誘致したのかはわからないが、いずれにせよ「へぇ、あのなだ万がねぇ」というサプライズはある。ちょっとぜいたくな行楽弁当やお総菜を買ってみるには、たまにはいいかもしれない。

そんななだ万のデパ地下ショップ「なだ万厨房」が、蕎麦を提供しているという。お持ち帰りの蕎麦ではなく、イートイン方式だというから興味深い。ただでさえ狭いデパ地下で、イートインとは気合いが入っている。一体どんなお店なのだろうか。幸い、池袋三越地下ということで、池袋駅からは地下トンネルで繋がっている。雨の日も安心だ。ちょっとのぞきに行ってみよう。

デパ地下は誘惑がいっぱい。お弁当やお総菜が通路脇に山積みになっていて、あれもこれも、欲しくなってしまう。ああ、自分の胃袋と財布が無尽蔵だったら、ここにある食材を全部食べ尽くすのに!とココロから思う。

・・・胃袋が無尽蔵でも、肝臓がやられるぞ、おい。

そんな雑多な空間のなか、なだ万厨房はたたずんでいた。ぱっと見ると、ごく普通のお総菜屋さんだ。煮付けをはじめとする和食の総菜と、お弁当が売られている。しかし、その傍らが待合室っぽい作りになっていて、10席程度ではあるが、座って食事ができるようになっていた。ははーん、蕎麦はここで食べるんだな。

蕎麦に限らず、お弁当を買ってここで食することもできるらしい。なかなか気が利いている。ただし、周りはデパ地下独特の騒がしい雰囲気。せっかくの高いお弁当をここで食べるのもどうかとは思うが。

待合室的食事スペースは、さすがに狭い。ベンチ状の長いすと長机で構成されていて、うかつに奥に座ってしまうと、人をかきわけないと出られなくなってしまう。実際、おかでんが蕎麦を手繰っている時、奥に座っている人が外に出ようとしたので、おかでんが一度席を立って通り過ぎるのを待ったという事があった。やはり、デパ地下なりに制約が大きいようだ。

お品書きを見ると、大中小の3種類のもりと温かいそばがあり、そして辛味大根そばも大中小あるとのこと。他には、2,000円くらいするお弁当(おみそ汁付き)。おかでんは、大もりを注文。

待つことしばし、出てきたそばは見目麗しきものだった。きりりと冷えた冷水でしめておらず、優しい感じのする口当たりだ。うん、こういうのも悪くない。時々、思いっきり氷水でしめたために、コシは強いんだけどちょっとやりすぎでは!?という蕎麦に出会うが、物事には節度が必要ですな。ただ、ここの蕎麦の場合、生ぬるく感じてしまう程度にやさしく締めていたため、食べ進むうちに「もう少し冷えていても良かったかも?」という気にはさせられた。

麺は、口に含むとふゎぁん、と蕎麦の香りと味が嫌みなく広がる。決して強くは主張してこないが、お上品な感じで心地よい。貴婦人という感じ、って形容したら俺って馬鹿ですか?ああそうですか。食べるときは勢いよくずるずるっとすすりあげて、鼻から息を抜くときはゆっくりと、というのがこのお店のベストな食べ方ではないか、と食べ進むうちに気がついた。ずるずるずるっ。・・・ふぅぅぅぅぅ。

変なヤツだ。

つゆは、さすがは料亭の味、とでも言うべきか。かつおがきりりと利いた味で、「おっ!」と思わず目を見開いてしまう威勢の良さ。おいしい。なんだかくすんだ味がするそばつゆが多い中、ここのつゆはスパーンと気持ちよく味覚・嗅覚に訴えかける。結構好きです、この味。

と、まあ、ここまでの記述では相当ベタ褒めしているようだけど、じゃあ今後もこのお店に頻繁に通いますか、と言われると・・・滅多に訪れることがないような気がする。そばもつゆも美味かった。でも、なんか障子一枚隔てているかのような、なにかぼんやりした印象なんですよこれが。しんみりと「ああ、うまいなあ」という感じではなく、何か博物館で、ガラスケース越しに「ほぉこれがうわさの美味いそばか」と閲覧している感じ。何でだろう。

恐らく、蕎麦そのものの問題というより、立地条件に依るところが大きいのだろう。半分開放的な飲食スペース、そしてその周囲に立ち並ぶお総菜屋。こんなところで蕎麦に集中、できませんや。「純然たる蕎麦屋」として、町中に店を開いたら、またちょっと違った評価になりそうな気がする。

この後、もう一軒の蕎麦屋をハシゴする予定だった。しかし、先月デジカメが故障して現在修理中の身分。これ以上蕎麦屋訪問をしまくっても、写真が撮れないのはつらい。よって、なだ万厨房前のお総菜屋で「晩飯用」として総菜を買いあさり、退却した。