2000年11月03日
【店舗数:060】【そば食:130】
長野県南安曇郡穂高町
天ぷらそば(カキ揚)
アワレみ隊安曇野蕎麦屋行脚は、4軒目に突入した。
あすみの後、大王わさび園に出かけ、「ほうほう、先ほどまで食べていたわさびはこうやって植わっているのかねキミイ」と知識を身につけ、ついでにわさびソフトクリームだとかわさびコロッケでさらにカロリー摂取を惜しげもなく敢行した。
常念、今日最後のお店だ。蕎麦屋行脚をする上で、営業時間というのは非常に重要だ。夜はやっていない、とか中休みがあって昼下がりは営業していない、というところは数多い。何軒かを食べ歩こうとすると、「今、近くで営業しているお店はどこか」と店名リストと地図と営業時間とを照らしあわせる必要がある。ただ単に営業してればいいという問題でもない。それは、「胸がでかけりゃ、どんな女でもいいッスよ」とのたまう馬鹿な男と一緒だ。飛び込んだ蕎麦屋がまずかったらたまらない。涙で蕎麦が塩辛くなりそうだ。
その点、この常念は19時30分まで営業しているのでありがたい。名前は以前どこかで聞いたことがあるので、有名なお店なのだろう。これだけの蕎麦激戦区で「有名なお店」ということは、さすがにマズくはないだろう。
日が傾いてきた頃、お店の駐車場に車は滑り込んだ。なにやら、お店は土塀に囲まれた広い家だ。古い民家のようだ。後になって聞いたのだが、築100年を越える江戸時代の民家をそのまま蕎麦屋にしたらしい。
「何か、どきどきするな」
と、慣れないシチュエーションにどきどきしながら表玄関をくぐって庭に入る。庭もまあお広いことで。池まであるぞ。えーと、入り口は・・・ああ、ここか。来る人を拒むかのような、くぐり戸になっていた。みんな、泥棒に入るように身をかがめながら、中に入る。ついつい、足音を立てないように気を遣ってしまう。違う違う、こっちはお客だ、何も遠慮はいらない。
ほどなく店員に見つけられ、ほうきを持って追いかけられた・・・わけはなく、席に通された。
お座敷席なのだが、俗に言う飲食店でいうところの「お座敷席」とは違い、もうそのまんま民家のお座敷だ。一体何畳あったかは忘れたが、相当広かった。その中には床の間もあるし、壁には誰かの写真が額に入れて飾られてるし、おっと仏壇もあるぞ。何だか、人んちにあげてもらった感が凄くする。お店といえばお店なんだけど、どうも落ち着かない。
「えーと、予行演習しておいたほうがいいか。あの、え、えとですね。娘さんをボクに」
何の予行演習だ。でも、そういうかしこまった気分にはさせられた。
お品書きは、扇形の木版の表裏に書かれていた。もりそばが470円、ということで非常にお安い。お庭の維持管理費で費用上乗せしていてもおかしくないが、感心するほどリーズナブル。おっと、ざるそばも同額だ。ということは何だ、海苔はサービスか。凄いね。店によっては、刻み海苔がのっかるだけで100円高いところがあるというのに。
裏面は、酒肴となる一品料理と、飲み物が書かれていた。なかなかな品そろえだ。清酒だけでも4種類も用意されていた。
おっ!生ビールもあるじゃないか。しかも大生が!
ごくり。
思わず生唾を飲んでしまったが、さすがに本日3軒でお酒を飲んできたが故にもうお酒は勘弁だ。体が一斗樽みたいになってきた。ビールも、お酒もギブ。
視線を転じて一品料理を見てみたら、これが結構面白い。岩魚の刺身があったとおもったら、かじか料理なんてものがある。おっと、お値段は「時価」だと。蕎麦屋で「時価」という文字は初めてみた。そして、その横には「蜂の子」の文字が。長野の人は蜂の子、ざざ虫を食らうというが、長野のスーパーでも見かけたことがない。せいぜいイナゴのつくだ煮程度で、食べられない事が非常に残念であった。でも今回、いよいよ蜂の子とご対面できそうだ。もちろん、即決でオーダー。400円というお値段も、想像より安い。
あと、注文はしなかったが、ここにも「馬さし」のメニューが。しかも、「馬もつ」まであって、さすが馬の本場(?)と感心。
しばらくして、蜂の子登場。右側の小鉢は、きのこ。これは300円。
うわ、蜂の子、うじ虫みたいじゃないか。というか、うじ虫じゃん。「みたい」じゃない。
見た目、相当美味そう。・・・じゃなかった、相当気持ち悪い。
なるほど、絶対に食べられない人がいるというのは理解できる。こりゃえぐいわ。
「蜂の子はネ、海が周囲にない地方に住んでいる人にとっては貴重な蛋白質として重宝されたんだよ」
とか蘊蓄をかたるつもりだったが、実物を目の前にして黙ってしまった。
まあ、でもこれが現代日本で料理として残っているということは、美味いという人もいるわけだ。見た目のグロさだけで食わず嫌いするのはもったいないので、味わってみることにした。
何人かは「オレ、やめとく。これは食べられない」と根を上げていたが、残りの人間で小皿の上の蜂の子をつつく。
「これ、一粒一粒つまんで食べるのが正解なのか?」
「下に敷いてある大葉でがばっと巻いて一口で全部食べるというのは?」
「うわぁ、想像しただけで・・・」
味は、水飴としょう油で味付けしてあるのか、甘辛い味。以上。まあ、あまりおいしいものではない。でも毛嫌いするほどでもない。
そうそう、報告を忘れていた。
蕎麦ができあがるのを待つ間、お茶請け・・・というか、突き出しというか、たくわんが出てきた。これをぽりぽりやってなさい、という事らしい。
面白い。長野県北部にいけば、野沢菜がサービスで提供されるというのは聞いたことがあったが、この地でもそれに近い「蕎麦屋文化」があるのだな。
東京だと、お酒を頼んだら簡単な酒肴が着く蕎麦屋はあるけど、蕎麦を待つ間に漬け物が供されるというのは聞いたことがない。
それにしてもものすごくいい発色のたくわんだ。
さすがにこの日、4軒目になると「もう冷たい蕎麦は勘弁」という気になってしまった。このお店の蕎麦をシンプルに味わうためには、ぜひもりそばにしたかったのだが、食指がどうしても動かなかった。天ぷらそば(カキ揚)670円をオーダー。
このお店の場合、天ぷらそばはもう一種類あって、そちらは海老で、870円。
「カキ揚」という書き方がされているので、「ひょっとしたらあの牡蠣が出てくるのでは?」と淡いネタ的な期待を抱いたのだが、さすがにそんな事は無かった。よく蕎麦屋でお見かけする「掻き揚げ」が当たり前のように載せられた丼がやってきた。まあ、牡蠣フライがもし蕎麦の上に乗っていたら、それはちょっとやりすぎ。
東京の立ち食い蕎麦屋さんで天ぷらそばを食べたら大体400円前後。んで、このお店ではこれだけの店構えとこれだけのボリュームで670円だから安いと言えるだろう。
4軒目にしてこの蕎麦のみっちりと詰まった感は、さすがに胃袋がびびった。
大して蕎麦が好きでもないのに、こちらの道楽に付きあわされている連中も、今日4軒ともに不満の声を挙げずにつきあってくれた。ありがたい友を持ったもんだ。
彼らは、大王わさび園での蕎麦ソフトで食欲が復活したのか、もりそばを勢いよくすすっていた。
これもなかなかのボリューム感。
最後、玄関先で記念撮影。もう外は日没だ。今日は全員で4軒の蕎麦屋を巡り、おかでんは新宿での「課外授業」があったので一人だけ5軒の蕎麦屋に首を突っ込んだ。
いや、よく食べたもんだ。でも、何軒か食べ歩いてみると、比較対象ができるので「なるほど、あのお店と比べてこっちの方が」といろいろカンガエさせられる。これは面白かった。
明日は、戸隠の蕎麦屋巡りとなる。そして、夜には自分たちで蕎麦を打つ予定もある。まだまだ蕎麦三昧は続く。
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