元祖真田流手打そば 佐助

2001年02月10日
【店舗数:084】【そば食:163】
長野県上田市上田原

おにかけそば

佐助

この日三軒目の蕎麦屋は、「佐助」というお店を選んでみた。「人気味本」で発見したお店だ。言っちゃなんだが、掲載されている蕎麦の写真はそれほど美味そうな感じはしない。しかし、敢えてこのお店に向かったのは、「おにかけ」と呼ばれる郷土蕎麦料理が食べられるからだ。

こちとら、朝から蕎麦連食の身。三軒目で、そろそろ毛色の違うものが食べたくなるお年頃だ。毎回もりそばを食べていたんじゃ、体が冷え切ってしまう。

で、この「おにかけ」とは何か。人気味本の言葉を借りると、

山菜がたっぷり入った汁の中で、小さなかごで麺を湯がきながら食べる懐かしい味だ。

という料理だという。温かい料理、歓迎。それ、ぜひ食べたいです。何しろ、外は雪が積もっている信州上田の地。2月にもかかわらず、温かい料理を何一つ口にしていないというのは季節感に欠けるではないか。うむうむ。

カーナビの指示に従って車を走らせる。別所温泉方面に向かう街道筋に、佐助はあった。間口は狭く、ビルの一角に店が構えられていた。その様子を見て、三人とも一瞬、怯む。気合いの入った蕎麦屋独特の、ぴりっとした感じが店から感じられなかったからだ。何だか、入り口脇に出前用のカブでも置いてありそうな感じだ。こんなさりげないお店が、ガイドブックに載るような名店なのか。ううむ、侮りがたい。

「いや、単におにかけそばが珍しいから本に掲載されたんじゃないん?」

と身も蓋もない事を言う輩がいたが、黙殺。味が美味いに越したことはないが、郷土料理を体験するという事が今回の主目的だ。

と、勝手に目的を設定。万が一イマイチな蕎麦がでてきたとしても、これで精神的ダメージは未然に防ぐことができる。人間、打たれ強くならなくちゃ。

おにかけそば、1400円なり。結構高い。しかも、これにお銚子なんかつけちゃうもんだから、結局は2,000円近い費用がかかってしまっている。こんな調子でこの2泊3日のツアーで、一軒一軒蕎麦屋巡りをしようってんだから僕ってつくづく金持ちだ。

・・・いや、逆だ、散財しまくっていて、カネがたまってない貧乏人だ。

おかでん以外の2名は、さすがに名物とはいえ1,400円を払うのは馬鹿馬鹿しいと判断。普通のもりそばを注文していた。

さて、熱燗のお酒をちびりちびりと頂きつつ、待つことしばし。

「ああ、温かいお酒で体が癒されるねえ。さっきはビールだったからねえ」
「アルコールだったら何でもいいんじゃないのか?結局のところ」
「いや、そんなことはない。要はメリハリだよ君ィ。温と冷、陰と陽、男と女」
「何を言ってるのかワケがわからん」

おにかけそば

さて、おにかけそばがやってきました。

おお!?蕎麦屋の店内で、燃えさかる固形燃料を見るというのは初めてのシチュエーションだぞ。まるで旅館のお膳みたいだ。その固形燃料の上には、鉄鍋がデン、と身構えていた。ははーん、これが「おにかけ」の正体だな。汁をすすってみたが、しょうゆ味の鍋の味だった。この中に芋とかこんにゃくとかニンジンとか豚肉を入れて、いろり端で談笑してみたい。

蕎麦は?

ああ、そうだ。蕎麦がメインなんだっけ。えー?この汁に蕎麦ですかぁ?いや、味はマッチするとは思うけど、敢えて蕎麦をざぶんと浸ける必然性を感じないなあ。煮込みうどんだったら、まだ理解はできるけど。

料理そのものに「?」を感じつつ、ホッケーのラケットみたいなかご(とうじかご、と言うらしい)に蕎麦を入れ、鍋でしゃぶしゃぶとしてみる。

食べる。

うーん。なんかね、中途半端。当たり前だけど、蕎麦がぬるい。熱いんだか、冷たいんだかどっちかはっきりしてくれ!って印象なんですよ。では、ぐっと我慢してしばらくかごを鍋の中に入れっぱなしにしてみよう。・・・よし、食べるぞ。ずるずる。ええと、温かくなりました。でも、これだったら普通に、温かい蕎麦としてつゆをかけた状態で丼で提供してもいいような気がする。

わからん!この料理のベストポジションって、一体なんだ?

「かごに入れてしゃぶしゃぶするっていう行為が楽しいっていうだけじゃろ?」

という指摘があったが、そんなエンターテイメントで「郷土食」を名乗れるはずがない。昔はそんな余裕があったとも思えないし。

「面倒だから、鍋の中にそば全部入れちゃえ」

という声も挙がったが、それをやってしまうと1,400円払った意味が無くなってしまう。断固拒否した。そうしたら、

「あ、ちょっと待て。鍋の中に蕎麦入れるの待った。よく考えりゃ、わしらのそばをよ、こうやって・・・鍋につけたら、わしらもおにかけになるわけじゃん」

あ、なるほど。ということは、3人そろっておにかけそばを頼まなくて正解、というわけだ。たとえみんなが「おにかけそば、食べたい!」と思っていても、代表の一人だけがおにかけそばを注文しておけば問題なし。一つの鍋を、みんなで分け合えば良い。

ひょっとしたら、昔の信州人も今われわれがやっていることと全く同じだったのかもしれない。即ち、「鍋のつゆと具」があまり多くなくても、大量の蕎麦(主食)を食べる事ができるという生活の知恵。しかも、最初から鍋で蕎麦を煮ると煮くずれが発生してしまうが、食べる分だけかごに入れて暖めれば、そのような事態は防ぐことができる。

予想外なところで、郷土の歴史に触れた(?)佐助訪問であった。