2001年11月23日
【店舗数:096】【そば食:180】
長野県諏訪郡富士見町
もりそば、あらびき、ビール
新そばの季節到来。ということで、つい3週間ほど前に「国道152号完全制覇」で長野を訪れたばかりだというのに、またもや長野上陸だ。アワレみ隊は確実に長野県の経済発展に寄与していると思う。
今回の「新蕎麦食べ歩き」企画は、数えることはや4回目。毎回10軒前後のお蕎麦屋さんを食べ歩いていることを考えれば、結構な数食べてきたことになる。
おさらいすると、
第一回:安曇野・戸隠
第二回:長野・小布施・飯山・黒姫
第三回:上田・小諸・軽井沢
とやってきたので、今回は「まだ未開拓ゾーン」を中心にお邪魔することにした。富士見→諏訪→開田高原方面、すなわち信州中南部を中心に据えた。
われわれは、中央本線の富士見駅を待ち合わせ場所とした。本日の一軒目は、富士見駅から八ヶ岳の広い山麓を駆け上がったところにある、「おっこと亭」というお店だ。
「おっこと亭」という名前は、すごく奇妙な印象を受ける。「男亭」?と勘違いしてしまうが、「おっこと」だ。何でこんな変な名前なんだろう、という疑念は、お店がある住所を見て理解できる。「諏訪郡富士見町乙事」。「乙事」と書いて「おっこと」と読む地名なのだった。「厚岸」を「あっけし」と読むのと一緒だ。ちょっと特殊な日本語の変形っぷり。
この乙事は標高1,000mの高原に位置し、八ヶ岳の火山灰の影響で非常に痩せた土地なのだが、蕎麦だけはよく生育できたという。そんなわけで、さりげなくこの周辺も蕎麦の産地として名高い。「さりげなく名高い」というのは変な日本語だが。
そんな地元産の蕎麦粉を使って蕎麦を打ち、客にふるまっているのが「おっこと亭」。交通の便は決してよくないところだが、お客さんはひっきりなしに訪れるという。「ほぅ、八ヶ岳山麓に蕎麦の産地が?」と気になったので、今回ツアーの第一軒目として選ばれた。
・・・実際のところ、「おっ、朝10時から営業してる!朝から一軒目に行けるのは効率いいじゃん。じゃ、ここにしよう」と決めただけなんだが。
とてもすがすがしくて気持ちの良い林の中に、お店はあった。車でないと訪れることができない場所なので、広い駐車場が用意されていた。お店自体も、結構広い。お土産物屋が併設されているし、要予約の蕎麦打ち道場もあるそうだ。
駐車場の傍らには、白いコンテナが据え付けてあった。壁面には、花満開の一面の蕎麦畑が描かれている。乙事の初秋の景色なのだろうか。
「玄そば貯蔵庫」
と書かれている。蕎麦の実はここで保管されているわけだ。
「予約状況に応じて製粉します」
と書かれてあるのが、素直というかなんというか、ほほえましい。普通、「毎日製粉してできたてをご提供いたします」なんて書くもんだけど、「予約状況に応じて」。毎日はちょっと負担が大きいので勘弁してね、ということか。
まだ朝10時過ぎということもあって、広い店内はまだがらんとしていた。
メニューを眺める。
もりそば、ざるそば、かけそばと記されている。そのほかにも、「きりだめ」というメニューもあるようだ。これは、木の箱に入れられてそばが出てくるということなので、要するに山形県の「板そば」みたいなものなのだろう。
ここまでは問題なかったのだが、メニューをひっくり返してみて、われわれもひっくり返ってしまった。
お飲物、これはいい。問題は「おつまみ」だ。
ポークウィンナ 400
あらびき 400
ベーコン 400
野沢菜 200
味付けきのこ 400
ぽ、ポークウィンナ?蕎麦屋でウィンナーが出てくるなんて見たことも聞いたこともない。しかも、単なるウィンナーだけでなく、あらびきまで用意しているとは。近くで作られているので、せっかくだからメニューに載せました、ということなんだろうが、このお品書きには衝撃を隠すことができない。
しかも、「ポークウィンナ」と「あらびき」をメニューに並べているというのもシュールな世界だ。ビアホールでもない限り、複数のウィンナを用意してるところなんてないぞ!?
「すげー」
「こ、これは頼むしかあるまい!」
一同、蕎麦を食べにきたんだか、ウィンナを食べに来たんだかさっぱりわからぬ。
「イヤ待て、ベーコンというのも捨てがたいぞ!?ウィンナならまだイメージできるけど、ベーコンって何だよそれ」
わくわく。
そっちの方が気になってしまい、本当は蕎麦は「きりだめ」で注文するつもりだったのに、間違えて何の変哲もない「もりそば」を注文してしまった。
「どうする?あらびきとポークウィンナ。あらびきだよな、やっぱり」
「男ならあらびきだろう」
よくわからないやりとりがありつつ、あらびきとビールを注文。
ビールは、「富士見高原ビール」というこれまた地元のビールだった。蕎麦をはじめとし、地元に拘り抜いているようだ。
待つことしばし、やってきました「あらびき」が。ビールには突き出しがついてきたし、そもそも箸休用のおつけ物も用意されていたので、特に酒の肴には困らない状態ではあった。でも、やっぱり「あらびき」という文字を蕎麦屋で見てしまったら、注文せずにはおれんじゃあないですか。
「シャウエッセンみたいな、モロ市販っぽいやつだったらどうする?」
なんて会話を、待っている間にしていたのだが・・・
うほっ、まんまシャウエッセン風なあらびきだった。素人目では、味もシャウエッセンと区別がつかなかった。いやぁ、シュールだなあ、蕎麦屋でこんなものを肴にビールを飲んでいるなんて。しかも、「蕎麦食べ歩き」のツアー初日の、一軒目でこれだもんな。
さてお蕎麦到着。
もりそば850円。ちと高めの値段設定であった。
いや、もうこの場合蕎麦なんて「どうでもいい」状態。あらびきのインパクトに圧倒されっぱなし。それ以上でもそれ以下でもない。ごちそうさまでした。蕎麦屋にして、蕎麦が負けた日であった。
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