そば茶屋 極楽坊

2002年09月21日
【店舗数:133】【そば食:231】
長野県上水内郡戸隠村

玉子焼き、ふきみそ松前漬、冷や奴、ざるそば、ビール

戸隠の蕎麦屋は、休日の昼間ともなればウンザリするくらいの行列ができる。特に新蕎麦の季節となる秋となれば、「ここは本当に長野の山の中か?」と疑いたくなるくらい、人が集まる。

そこまで行列を作るほど戸隠の蕎麦が絶品か?と問われると、「さあて、どうだろうね」とニヤリと笑ってそっぽを向くくらいだとおかでん自身は思うのだが、それでもやっぱり行列はできる。

恐らく、地区全体が「蕎麦のテーマパーク」みたいになっているというのが、蕎麦ファンのココロを惹き付けてやまないのだろう。また、長野市街から適度な距離感があり、「ちょっと高原ドライブに」と出かけるには非常に都合の良い位置関係にある。

しかし、そんな戸隠だが、さすが田舎・・・といっては失礼だが、夜が非常に早い。あれだけ昼間は栄華を誇っていた蕎麦屋も、17時をすぎるとバタバタと店を閉め始める。19時頃になると、街は静寂に包まれる。そもそも、長野から近いということもあって日帰り客が多いということと、宿泊する人は宿の食事が用意されているということで、蕎麦屋を遅くまで開業している意味があまりないのだろう。

極楽坊

そんな中、唯一夜遅くまでやっている蕎麦屋がある。今回お邪魔した極楽坊だ。この店だけは、22時まで営業をしている。朝は10時30分から開業している事を考えると、ものすごく頑張っているお店なんである。夜、戸隠で蕎麦を食べようと思うと、このお店しかない。

この日、コダマ青年と高妻山に登ってきたのだが、夕食はここで蕎麦を手繰るぞ、ということを決めていた。しかし、場所は「戸隠中社の裏手あたり」としか把握していなかったため、ペンション村界隈を徘徊して、迷子になってしまった。あたりは既に真っ暗。大通りではないので、街灯など存在しない。木々の隙間から漏れてくる、ペンションの明かりを凝視して

「おい、あれ・・・蕎麦屋に見えないか?」
「馬鹿いうな、あれは単なるペンションだ」
「あれれ?じゃあ、どこにあるんだ?」

なんてやりとりをしながら、車を進めた。ついには戸隠スキー場までたどり着いてしまい、漆黒の闇の中に放りだされてしまった。車のヘッドライトが暗く感じる。

「おっかしいなあ」と首を捻りながら、また中社の方に戻ってきたところで、ようやく大きな周辺地図看板がある場所にたどり着いた。ここで「極楽坊」の位置を確認し、ほうほうの体でお店へ。位置関係さえ把握できれば、お店はすぐに発見できた。入り口にこうこうと明かりが灯っていたからだ。しかし、この辺りは景観条例だかなんだかで、看板を出すのは自粛されているらしい。わかりにくいのはやむなし、といったところか。

このお店は、他の蕎麦屋密集地帯とは離れた場所にあり、なおかつ夜遅くまで営業しているということで何となく孤高の蕎麦屋、という印象を受けた。

店の名前が「極楽坊」なので、とりあえず記念撮影として店の前で合唱した写真をぱちり、と。

ドリンクメニュー

店の中に入ってまず驚いたのは、バーカウンターみたいなものが用意されていたということだ。

通常のテーブル席があって、ふすまで仕切れるお座敷席があって、そしてカウンター。

カウンターの奥には棚があって、そこにはウィスキーが並べられていた。ううむ、蕎麦屋っぽくないが、非常に馴染んでいる光景でもある。わざとらしさが全然ない。あそこで氷をカラカラ言わせながら戸隠の夜を過ごす、というのも悪くない選択肢だ。

メニューを見ると、ドリンク類だけでも結構な種類があった。「コーヒー」が置いてあることから、昼間は喫茶店としてもご利用くださいませ、という事なのだろう。と思いきや、ウィスキーやワインを置いているというのも面白い。ビールに至っては、大瓶、グラスビール、ジョッキビールの3種類を置いているというのも面白い。

ただ、悩ましいのはこの地が車でないとほぼ訪問することができないということだ。ここでお酒を飲んでしまうと、帰り道は酔っぱらい運転だ。いくら人通りが少ない田舎道とはいえ、さすがにまずい。

「キャンプ地に戻ってからあらためて飲むぞ」と堅くココロに誓い、誘惑を振り払いつつ蕎麦の注文をした。

5ボッチのそば

いくら「キャンプに戻ってからが本番の飲みだ」といっても、この蕎麦が夕食であることには代わりがないわけであり、蕎麦だけ手繰って帰るわけにもいかなかった。

玉子焼き、冷や奴、ふきみそ松前漬けなどを注文。

外はしんと静まりかえる、戸隠の高原に広がる雑木林。その中で、一軒家にわらじを脱いで蕎麦を手繰るというのは非常に気持ちがいいことだ。白熱灯ではない、赤みを帯びた照明が、一段と雰囲気をかもし出してくれる。この店は、ジャズでも流したらきっと似合うことだろう。

最後、蕎麦を手繰った。このお店は、5ボッチのそばがデフォルト盛りで、630円だった。「そんなに食べられません」という人は、2ボッチ減で200円引き。逆に、物足りないと2ボッチを足すと200円増しとなる。なんとも明朗会計・なんともユーザーフレンドリーな仕組みだ。

奥のお座敷では、何やら女性陣が5-6名、四方山話に花を咲かせていた。後から遅れてやってきた人もいて、「あらー、遅かったじゃない、忙しかったの?」なんて会話をしていたところを見るとどうやら地元の人らしい。旅館かペンションの女将さん達なのだろうか。夜遅く営業しているということから、地元の人たちのコミュニティとしても成立しているようだ。

同席していたコダマ青年は、この蕎麦を食べて「おかでんが蕎麦、蕎麦って言っている意味が何となく分かったような気がした」とコメントをしていた。みんながみんな、居合わせている人全員がにこにこしながら、ハッピーな戸隠の夜を過ごしていく。そんな、極楽坊であった。

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