そば処 民宿 開山

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2002年10月06日
【店舗数:134】【そば食:233】
福島県南会津郡檜枝岐村

裁ちそば、はっとう

会津駒ヶ岳に登った。高層湿原が広がる、とても気持ちの良い山だった。別世界、とはこのことなのだろうと思った。

しかし、人間ってぇ生き物は現金なもので、下山している最中から蕎麦の事が気になって仕方がなかった。せっかく、「別世界」で「ココロ洗われてきた」というのに。

会津駒ヶ岳の登山口に位置する、檜枝岐村は「裁ちそば」が有名だ。・・・と知ったかぶりをするが、昔檜枝岐にやってきたとき、路上のあちこちに「裁ちそば」というのぼりが立っているのを見て初めて認識したのだが・・・

裁ちそばについては、店内に説明書きがあったのでそのコトバを借りよう。

裁ちそばの説明

「裁ちそば」について

当村は高冷地のため米は実らず、あわ・ひえ・そばなどが主食でありました。かつて裁ちそばの技術は村の女性達の大事な花嫁道具の一つとされた時代もありました。

つなぎ粉を一切使用しないために、折り畳むことができず、うすく延ばしたものを重ねて布などを裁つように切るところより「裁ちそば」と呼んでおります。

つなぎ粉が入らぬためゆでたものを長時間おきますとボロボロに切れてしまいます。素早く食する事がおいしくいただくコツとされています。

・・・以下略

要するに、麺の切り方が若干違うというだけであり、蕎麦であることには何ら代わりはない。「裁ち」なる謎の食材が練り込まれているとか、そういう怪しい料理ではない。

こういう田舎で独自に発展した蕎麦、というのはきっと迫力があるに違いないというのがわれわれの考えだった。何しろ、米がとれないから雑穀の蕎麦を食べていたわけであり、主食級に食のインパクトがないといけないわけだ。江戸前の「小腹を満たすための蕎麦」とは発展した文化の土壌が違いすぎる。

檜枝岐という土地は、本当に山奥にある。そういう土地柄の蕎麦だからこそ、食べてみなければというわけだ。

開山

ということで、下山してキャンプ場にテントを張ったら、そそくさと檜枝岐集落に繰り出したのであった。ここら辺、裁ちそばを食べさせてくれるお店は結構あるのだが、そのほとんどが民宿経営とセットでやっている。蕎麦屋単体としては収入が少ないのかもしれない。

だから、早めに到着しておかないと、蕎麦屋のスペースが「宿泊客の夕食宴会会場」となってしまうおそれがある。下山してテントでまったり、なんてしている暇はなかった。

集落に車を進めてみると、「開山」という蕎麦屋兼民宿が目に入った。このお店がおいしいのかどうかは事前リサーチをしていないが、この時間(16時過ぎ)に営業しているだけでもありがたい、早速入ってみることにする。

裁ちそば

注文するのは、もちろん裁ちそばだ。800円。ちょっと高めな気もするが、これは観光地物価なのだろうか?それとも、それくらいコストがかかってしまっているのだろうか?

檜枝岐はとりあえず「観光地」ではあるが、それ以前に「山奥の集落」であるわけで、そばで800円というのはちと高い気はした。でもまあ、おいしければ簡単にリカバリーできる値段ではある。

さて、待つことしばし、目の前にごとん、と黒塗りのドンブリが置かれた。裁ちそばの登場だ。

ドンブリに蕎麦が入っているという時点でうれしくなってしまう。こりゃあ、けっこうボリュームがあるぞ。やっぱり、主食級のインパクトがある。なるほど、このボリュームでこの価格なら納得だ。「高い」と言っていた前言、あっけなく撤回。

蕎麦を頂く前に、まずは外見をチェックしてみる。・・・ううん、特に普通の蕎麦と違いはないように見える。麺の太さに若干ばらつきがあるようだが、これはカッターナイフで画用紙を切るように蕎麦を裁つ作法の影響だろうか。それ以外は、これといった特徴はないようだ。麺が短いということもない。

では、さっそく。ずずずずっ。

あっ。

こ、これは美味い・・・。口の中に含んだ瞬間、暴力的なまでに広がる蕎麦の香り。噛むと蕎麦の味が口、鼻、喉を問わず押し寄せてくる。うわぁ、これは爆発的にオイシイぞ。

食べ応えや香りの感じは、よくある「田舎そば」なのだが、蕎麦から発せられる「俺は蕎麦だぞ」オーラの威力は過去食べてきた中で例がないような気がする。また、噛んだときに出てくる蕎麦の味は、店によってはひねた感じのものが結構あるのだが、ここの蕎麦は本当にピュアに蕎麦です!蕎麦だってば!と主張してくる。ああ、幸せだ。

普通、食べ進んでいるうちに蕎麦の香りに慣れてしまい、後半戦は香りがわからなくなってしまう。しかし、この蕎麦の場合、最後まで香りを楽しみながら食べることができた。

ちょうど季節が良かったのかもしれない。寒冷地なので、10月初旬とはいえ既に新そばを使っていたのだろう。いや、絶妙なるタイミング。山に登れば紅葉が楽しめて、下山すりゃあおいしい蕎麦を楽しめる。言うこと無しだ。

はっとう

檜枝岐の蕎麦料理は、他にも有名なものがある。

そばの天ぷら、そばすいとん、そば田楽・・・。その中でも、特に有名なのが「はっとう」だ。

はっとう、500円なり。

蕎麦粉と餅米を混ぜて、餅状にしたものにゴマと砂糖をまぶしたもの。お手頃なお茶うけになる。

「いやぁ、食後にはたまりませんなあ」などと言いながら、お茶を飲みつつはっとうを頂く。これまた至福の時。

ディスカバージャパン。高度に洗練された江戸前の蕎麦も楽しいが、こういう地域に根ざした蕎麦というのも楽しい。来年あたりは、「ご当地蕎麦巡り」なる企画を開催してみるのも楽しいかもな、とふと思った。

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