やぶ屋 花巻総本店(01)

2003年09月22日
【店舗数:149】【そば食:263】
岩手県花巻市吹張町

ざるそば、すいとん

鉛温泉旅行の帰り、せっかく岩手県までやってきたのだからわんこそばでも挑戦してみようという気になった。
花巻市でわんこそばを食べさせてくれるところはどこか・・・と、ガイドブックを調べてみたら、「やぶ屋総本店」という店が見つかった。何でも、宮沢賢治もこの店を愛し、 足繁く通っていたお店だという。

宮沢賢治がグルメだったかどうかは知らないので、彼が贔屓にしようがどうしようがこっちの知ったこっちゃない。というか、関係者の方々に叱られる事を覚悟で暴言を吐いちゃうと、あの肖像写真を見る限り田舎のオッチャン然としていて、うまいモノを食べ歩いていたって感じはしない。

実際に宮沢賢治はこのお店で天ぷらそばとサイダーを頼むのを常としていたらしい。はっきりいって悪食だ。それを注文するほうもするほうだが、お品書きに加えているお店もお店だ。

きっと、当時は相当ハイカラな飲み物だったのだろう。だから、「うわ、キモい趣味」と一刀両断して宮沢のとっつあんの人格を否定してはいけない。いけないのだが、やっぱり変だぞアンタ 。

さて、そのやぶ屋だが、ご当地花巻では相当有名なお店らしい。なにしろ、カーナビで調べたらビシイッとこのお店が表示されるのは当然としてナビで「詳細情報」を表示させると、お店のおねーさんに「もっと食わんかコラ」とわんこを迫られている 観光客の写真付きで解説文が出てきたくらいだ(カロッツェリアの場合)。

でもこの文章どこかで見たことがある、と思ったら手元にある「るるぶ」と同じ文章だった。どうやらるるぶとカロッツェリアは提携していたらしい。新発見だ。

そんなこんなで、ナビの画面上にまでわんこばの写真を見せられた日にゃ、もうこっちとしても我慢できんわけですよ。遠野で昔話の舞台となった場所をウロウロするより、広大な暗黒大陸と化しているこの俺の胃袋を蕎麦で埋めてくれよナビ子さん!というハートフルでピースフルな気持ちに包まれる小春日和の昼下がり。※ナビ子さん:カロッツェリアのカーナビで、音声案内をしてくれる女性キャラクター。

遠野から釜石の方にでて、男らしいリアス式海岸で男らしい海の幸を男らしくがっつりと食べる、という男づくしのグルメ人(びと)になる予定を急きょ変更し、花巻に引き返していざ、「やぶ 屋」へ。

やぶ屋

ナビではエラそうに詳細情報を表示してくれた割には、地図上に指示された地点は 微妙にずれていた。どうなってるんだナビ子。けろりとして「目的地に到着しました、案内を終了します」って勝手に仕事を放棄しちゃいかん。

しかし、周囲を見渡せば、そこにはまごうことなき「やぶ 屋」のお店がそびえ立っていた。うわ、でかい。

4階建てのうんk・・・いや、茶色のビルで、なにやら小学校を連想させるデザイン。そして、本来ならば大時計がはまっているべき場所に「や」印の屋号が。こ、これはひょっとしたらわんこ御殿ならぬわんこ店舗なのだろうか。わんこで財をなし、店を大きくしていき、今や学校の校舎みたいなわんこビルが建つ。危ない、あともうすこしで外観の色から、ついつい う●こビルと言いかかってしまった。紛らわしいったらありゃしない。

きっと、あのビルの中では、毎日「うう、もう食べられない」というわんこそばにチャレンジするお客さんたちのうめき声と、その感情を逆撫でするような「はいもっと」「はいどんどん」というお店のおねーさんのかけ声がこだましているのだろう。考えるだに恐ろしい。ドキドキもんだ。よし、僕もその一人になろうかね。

やぶ屋店頭

わんこビルを回り込んで、駐車場から店の表に行く。店の前には、「花巻名物わんこそば」という看板が待ちかまえていた。「どうだ、わんこそばで勝負するかアンタ」とさりげなくこちらを挑発していてgoodだ。

しかし、「やぶ屋総本店」と書かれた金色の看板と、入口脇にずらりと並ぶ商品サンプルが、大型店舗ゆえの「俗」の部分を強烈に主張し、若干気分が落ち着かないのは事実。うまい蕎麦=大型店舗では滅多にお目にかかれない、という経験則が既におかでんの頭にあるので、こういう入口の様を見ていると尻込みしてしまう。

しかし、考え直してみれば、わんこそばで「絶品」の蕎麦が出てくる必要はないやん、というわけで。もう、この際味はどうでもいい、とにかく胃袋のサイズ分だけ蕎麦持ってこいや、という事でよろしく。

大きく深呼吸して、気合いを入れてから店に入る。入口すぐのところにレジがあって、その向かいには待合い席がある。どうやら、わんこチャレンジの順番待ち用のスペースらしい。恐るべし、わんこそば。行列作って食べるもんだったのか。まあ、確かにわんこの給仕をしてくれる店員の数は限られているわけで、店中のあちこちでわんこが始まってしまうと店員が いくら居ても足りない。待たされるのは当然といえば当然だ。こういう仕組みも、わんこ未文化圏である東京から来たおかでんにとっては新鮮な驚きだ。

しかし、その知識の無さが致命傷を招いた。待合い席のところには、「わんこそばは2名様以上となります」と書いてあるではないか。なんと、単独のお客さんには提供していないメニューだったのだ!ぐはっ。

考えてみれば、確かにそうだ。一人のお客さんに、一人の給仕さんが着くとなるとこれはもう人件費かかりすぎだ。やっぱり、数名のお客さんに対して一人の給仕さん、という配置にしなければイカンのだろう。一人じゃ、駄目かぁ・・・。

しかし、インチキダンディズムの権化・おかでんとしてはここで狼狽してしまっては格好が悪い。ましてや、「だったらいいや」とお店を後にするのはもっと格好が悪い。だから、全く何食わぬ顔をしつつ普通の席に座った。はるか遠くに、わんこそばチャレンジシートを眺めながら。ああ、わんこそばの威勢のいい声が聞こえるよ。恨めしいぜ、畜生。

座った席は入口のすぐ脇にした。これは、「ひょっとしたらおかでんと同類の単独チャレンジャーが現れるかもしれないから」だ。そういう人間を見つけたら、すかさず「相乗り」を持ちかけよう、という算段だ。しかし、昼下がり14時過ぎという事もあって、そんな奴は一人もいやしない。そうこうしているうちに、店員が注文を取りに来た。

駄目モトで、「わんこそば・・・一人でチャレンジ、やっぱできないですよね?」。否定文で疑問形の言葉を発している時点ですでに負け犬(ルーザー)だが、仕方がない。すると店員、即座に「はい、二名様以上からお受けしておりますので」とつれない返事。むむむ。「二人分のお金を払うから、一人でチャレンジさせてくれや」とあともう少しで言いそうになったが、「二人分のカネ払った怪しい男が、一人でわっさわっさとわんこそばを食っていた」というのは端から見るとすげぇ気持ち悪いのでやめておいた。

「ざるそばと・・・ひっつみを」

苦し紛れに、ひっつみを追加注文しておいた。ひっつみとは、岩手県の名物の一つで、要するにスイトンだ。おかでんとしては蕎麦に期待していないので、せめて地元の名物を、ということでギリギリの妥協線だった。しかし、店員さんは「はい、すいとんですね」と一般名称をさらりといい、伝票に「すいとん」と書き込んだ。あらー、なんだかちょっと悲しい。

ざるそば

わんこそばコーナーの歓声に悔しがりながら待つことしばし、そばがやってきた。むむむ。この蕎麦は見るからにまずそうだぞ。立ち食い蕎麦屋で出てきそうな麺だ。ということを言ってはイケナイ。若造、何を偉そうな事を言うか、だ。何しろ、この蕎麦屋は僕の人生よりも数倍長く営業をやっているのだ、不遜な態度ではいかん。

しかし、これで美味かったらウルトラCだ。(あっ、また敵を作るような発言を・・・)

まずは、海苔だけをわさわさと食べる。海苔とセットで蕎麦を食べても、味がわからない。そして、海苔をあらかた片づけたあと、いよいよ蕎麦に。

ずずずっ。

危ない、わんこそばじゃないんだ、一気に食おうとしてはいかん。

・・・ええと。見たまんま?

おっと、コメントがやばいぞ。名誉毀損で訴えられるぞ。気を取り直して、つゆだけ飲んでみよう。ずるずる。ううん、これ以上コメントは避けよう。

それぞれ一口ずつでどんな味か分かったので、後はもう遠慮はいらない。麺をどぼんとつゆにつけてずるずると頂くことにした。
ずるずる。
あれ?案外美味いぞ、これ。
蕎麦単体だとイマイチだし、つゆ単体でもイマイチだ。しかし、二つを一緒に食べると、なんとなく美味いんでやんの。もちろん、蕎麦の香りが、だとか味が、とかそういうこ難しい話を言い出すとキリがないのだが、食べ物として味わうと、なんかいい組み合わせって感じ。あれれ、あれれといいながらずずるると食べてしまった。
ただ、「なんとなくおいしい」ということで、「おいしかった」と断言できない辺りが怪しい。でも、蕎麦ってそういうのでいいのかもしれない。昼下がり、何も考えずにそばをずるずるすすって、やあおなかいっぱいになったな、とかいいながら店を引き上げる。そんな気楽な感じで。

すいとん

しばらくしたら、すいとんも出てきた。どんなものかと思っていたが、鳥のダシがよく出た、あっさり味の汁だった。うむ、これはこれで良いのだが、蕎麦を食べながらだとちょっとバランス悪いな。一体これはどうやって食べればいいのだろうか。お酒のつまみにするわけにはいかないし。ゴハンがあったほうが良かったか? いや、練った小麦粉が主食代わりになるはずだから、これはこれだけで食べるべき料理なのか?ええと、ええと。

ジャンボとんかつ

なんだか煮え切らない気分で店を後にしたのだが、入口脇の商品サンプルにあった「ジャンボとんかつ」を食べれば良かったのではないか、とやや後悔。実は、わんこそばを食べられ ない事が分かったとき、蕎麦を食べるのを諦めてこの「ジャンボとんかつ」を食べようかとも思っていた。しかし、お品書きに「ジャンボとんかつ」という名前が見あたらなかったので、注文を見送っていたのだった。

そんなジャンボとんかつの見た目のボリューム感に負けてしまったざるそばというのも残念至極なのだが、結局わんこそばで わっさわっさと食べる蕎麦っていうのは、ざるそばとしてじっくり食べるには向かない蕎麦のかもしれない。TPOをわきまえていないオーダーだったのだ、諦めろと自分を慰めて、東京への5時間のドライブを開始した。

ちくしょう、改めて盛岡でわんこそばをチャレンジしないと。

どうやら、このやぶ屋も盛岡支店については一人でわんこそばにチャレンジできるらしいし。やっぱりわんこそばは盛岡か。そういえば、平泉でわんこそばにチャレンジして、失敗したという経緯もあるしなー。