2004年03月04日
【店舗数:153】【そば食:275】
東京都中央区銀座
コロッケそば
苦節10年。
・・・いや、この出だしは間違ってるな。
(思い悩むことしばし)
駄目だ、イマイチいい口上が浮かばない。面倒なので、仰々しいセリフは省略。
何がしたいのかというと、蕎麦喰い人種としての活動を再開させたと言う事を、ぜひこのおかでん様の溢れる文才でしたためたかったんですわ。
何が「溢れる文才」だ、苦節10年、と書いただけで止まってしまってるやないの、というツッコミが8割、「文才が溢れ過ぎて、もうおかでんには一滴たりとも残っとらんぞ」という厳しい現実を突きつけてくる指摘が2割。まあ落ち着けオーディエンスよ。お前らなんかの意見はどうでもいいんじゃ(暴言)。
蕎麦喰い人種は、そもそも2000年限定企画のはずだった。コーナートップページに書かれているとおり、「2000年中に50店舗100食」を目指したものだったからだ。ただ、そこで蕎麦のおいしさに目覚めたおかでんは、以降も蕎麦屋に出没を繰り返した。しかし、だんだんそのペースは落ちていったのはご承知の通り。新規店舗開拓なんて、全然やらなくなってしまった。
これは、あまりに蕎麦喰い人種の更新待ち店舗が増えてしまって、恐れをなしたおかでんが「訪問控え」をしてしまったという裏事情がある。
「裏」な割にはやけにあっさり公開しちゃってるけど、いいのかな。
あっ、しまった。おい、そこのお前!今見聞きしたこと、みんなには内緒だぞ。・・・まあ、別に内緒にすることはないのだが、せっかくなので内緒にしておいてください。
この記事を書いている2004年3月17日時点だって、まだ公開されていない蕎麦屋訪問の記録は10以上ある。
・・・おい、数えるのが面倒だからといって、「10以上」みたいなざっくりとした数を言うな。
すいません手抜きをしてました。ええと、恐らく120くらいはあるんじゃないか、と。これだと毎日律儀に1店舗ずつ執筆したとしても、120日かかる。ざっと4カ月だ。しかし、まだまだ状況が好転する気配はないのだけど、最近久々に蕎麦喰い人種を連続して執筆して公開すると、なんだか楽しいのよこれが。120日分という借金も、この調子でいけば楽しく返済できるんじゃないか、と思ってきたわけですよ。「サイコロ2」の連載が足かけ3カ月間続いて、結構手間暇かかって疲れていたというのもあるのだろう。
そんなこんなで、この調子で蕎麦喰いを執筆できるんだったら、そろそろ蕎麦屋を積極的に訪問してもいいかな、借金を積み重ねてもいいかな、という気になってきた。
この味がいいねと君が言ったから3月17日は蕎麦喰い人種
意味不明。
そんなこんなで、蕎麦屋行脚を久々にやってみようというわけだ。そういや、最近うまい蕎麦を食べてないなあ。ずるずるっと、さわやかに蕎麦を手繰りたいもんだ。
久々に取り出した蕎麦屋のガイドブックを熟読しながら写真だけ斜め読みしていたところ(熟読しとらんじゃないか)、コロッケそばなる名物を出すお店が銀座にあるという。コロッケそばだって?てっきり、「とろろそば」と並んで立ち食い屋でしかみかけない特殊な蕎麦なのかと思っていた。まさか銀座の蕎麦屋でお目にかかろうとは。
がぜん興味が沸いてきたので、実際に食べてみることにした。よし田という、寿司屋か料亭のような名前も気になるところだ。よし、お昼休みに行ってみよう。
・・・面倒なので、話を端折ったんですが。ええと、有り体に白状しますと、この日は本当は銀座八丁目の「浅野屋」に行くつもりだった。しかし、地図を見ながら現地に向かってみたら・・・あらら?建物そのものが存在しないぞ。
番地を見間違えたか、と思ってひぃ、ふう、みぃと建物の数を数えてみたが(古い数え方だな)、どうしても浅野屋の住所だけが欠落している。ひょっとして、今工事やってるこれが、浅野屋跡地ではあるまいかモンゴイカ(c)恐るべきさぬきうどん、というわけで。
ちょうど道路を挟んだ向かい側に「小諸そば」があったので、「ひょっとしたら、『移転して名前を改名しました』なんてことは・・・」ととんでもない妄想を働かせてしまったが、さすがにチェーン立ち食い蕎麦屋に切り替わるなんて事はあるまい。何がどうなったのかは知らぬが、惜しいヤツを亡くしたもんだ。おいおい、勝手にお陀仏にしちゃまずいだろ。
そうやって路頭に迷っていたところ、「そうだ、この近くにコロッケ蕎麦が食べられるお店があるんだっけ」とタイミングよく思い出したのだった。この際、うまい蕎麦とかそんなのはどうでも良い。とにかく、この空腹をどうにかしてくれ、というわけで急きょ「よし田」へGO。
銀座と言えば、高級そうなお店ばっかりが並んでいてキラキラしとる、という印象を持ちやすいが、ひょいと渋いお店があったりする。さすがに銀座の目抜き通りに吉野家ができたときは「銀座よ、それでいいのか」と思ったが、もともとごった煮状態の町なので、こういうのも有りなんだろう。そんな銀座の中に、このよし田はある。
蕎麦屋だけあって、渋い。
遠くから、ひさしの上に掲げてあるお盆がよく目立つ。あまりの忙しさに、女中さんが窓からお盆を落っことして、引っかかったまま忘れてしまったんだろう。そそっかしいお店だ。
さて、お店に入ろう。
おい、自分でボケておいてツッコミ無しか。
いやあ、地味にボケたから勘弁してほしいんですけど。本当は、「アダムスキー型UFOが突き刺さって」とかそっちの話にしようかと(以下延々と続くので略)
いずれにせよ、お盆(正直、お盆なのかどうかも怪しい)が飾られているのは珍しい。蕎麦のこね鉢だったらまだ理解できるのだが、あれは一体なんだろう。酒屋で新酒ができたら、店先に杉玉をぶら下げる習慣がある。それと似たようものだろうか。「お蕎麦打ちあがってます。いつでもお盆でお出ししますよ」くらいのニュアンス・・・ううむ、強引だなその解釈は。
このお店、ショウウィンドウがあるからまだ蕎麦屋だという事がわかるが、ショウウィンドウ上の「よし田」のロゴだけみると、なんとなく寿司屋かうなぎ屋に見えてしまう。「し」の字を大きく、のたうった形で書いているのだが、それがウナギを描写したみたいに見えるし、寿司屋の湯飲み茶碗に書かれている「すし」という字にも見える。
謎のお盆にせよロゴにせよ、何やら怪しい。これは違った意味で楽しみだ。
店の中に入ると、おっちゃん二人が出迎えてくれた。片方は白衣を着ているけど、片方は私服だ。どうやら私服の方は大旦那さんなんだろう、多分。奥へどうぞ、との案内に従って、一番奥の席につく。あたりを見渡すと、お昼時直前だったために客はそれほど居なかった。しかし・・・左隣のおじいちゃんはビール飲みながら暖かい蕎麦をすすっとるな。ええと、右となりのおばあちゃんは、ざるそばを食べている。だけど・・・あーあー、蕎麦を持ち上げるのがしんどかったのか、肩がリウマチで動かなかったのか知らないが、ざるとそば猪口の間を麺が水平移動しとる。そして、つゆにざぶんとつかった麺は、そのまましわだらけのばあちゃんの口元へ。ベルトコンベアか、そりゃ。
※後になってわかったのだが、このお店の麺は非常に長いという特徴があるらしい。だからばあちゃん、悪戦苦闘した結果ベルトコンベアになってしまった模様。
店も年期が入って歴史を感じさせるが、客層も歴史を感じさせる。いやぁ、僕みたいな若造が居ちゃいけないんじゃないか、まだハナ垂れっすよアハハと思ったが、三十路を迎えてしまった昨今、若者ぶるわけにもいかない世代になってきたなあと急に鬱になる今日この頃いかがお過ご(以下略)
メニューを見るまでもなく、コロッケ蕎麦を注文。いや、入店して座席に着席しつつ注文。こういう歴戦の常連さんがたくさんいそうなお店だったら、こっちも「さも何度も通った事があるぞ」という振りをしておかなくちゃ。「ふっ、またコロッケそば頼んでしまったよ」と何の感動もないようなクールさを装い、お店の女性に一瞥をくれつつオーダー。
料理がでてくるまでの間、お品書きをしげしげとチェックしている。机の上に立てる、コンパクトなお品書きだ。表は、普通の蕎麦屋メニュー。コロッケそば、というのが異彩を放つ。って、あれれ。950円もするのか。高いなあ。
高い!と一度は思ったものの、よく考えてみるとこういう蕎麦屋で種物系の蕎麦を頼むと大抵このくらいの値段はする。だから決して高くは無いはずだ。しかし、どうしても「コロッケそば」と聞いてしまうと、立ち食い蕎麦屋のチープなメニュー・・・蕎麦だけじゃ腹が満ち足りないから、揚げ物で脂っ気補充、みたいな・・・を連想してしまう。このため、「あれ?950円?高い」と勘違いしてしまうようだ。頭の中に「高くて500円程度」という立ち食い蕎麦屋の価格帯が、チラチラしているからだ。
お品書きの裏には、一品料理のラインナップがずらりと並んでいた。正直、驚いた。店の風情としては、年期の入った普通の蕎麦屋。あまり酒を飲みつつひとときを過ごす、という事を是とするお店には見えなかったからだ。・・・まあ、隣にはビール飲んでご機嫌なおじいちゃんが座っているが。てっきり、そばをすすってすぐに引き上げる店なのかな、と。
しかし、その品そろえは結構すごいぞ。普通の蕎麦屋じゃないぞ、これは。一例を挙げると・・・
ええと。
すまん。大風呂敷を広げておきながら、忘れてしまった。でも、確か「さしみいろいろ」とか「まぐろ山かけ」「このわた」「西京焼き」なんてのがあったはずだ。
居酒屋じゃん、これだと。
ああ、そうか、夜は居酒屋になる「高田屋」や「プロント」みたいなものなのだろうか。そもそも、蕎麦屋の肴っていうのは蕎麦で使う食材を横展開したもの、というのが主流のはずだ。でも、どう考えても「まぐろ」ってぇのは蕎麦には入らない。西京焼きだって、何の魚かはわからないが、それ用に仕入れてきたもんだ。
昼は蕎麦屋、夜は居酒屋の二毛作店舗なのかどうかはどうでもいいが、いずれにせよ居酒屋的メニューを昼から楽しめるというのは良いことだ。早い時間から酒が飲みたい!というのであれば、こういうところでいっぱい、というのも悪くない。
ただし、恐ろしいことにこの酒肴メニュー、値段の記載が一切無かった。時価、って事なのだろうか。注文するとき、確認しながらでないと一体お会計がいくらになるのかわからない。後でびっくり、銀座価格!なんてことにならないことを切に願う。
さてお待たせいたしました、肝心のコロッケそば登場です。
そばの上にねぎと、コロッケが載っている。コロッケは、一つを食べやすい大きさに切ってあるのだけど、コロッケ1個としての形が崩れないように、最後の皮一枚のところで切り離されていない。
さっそく頂いてみる。
ずるずる。
あれ、おいしいじゃないですか、そば。失礼ながら、コロッケそばなんてイロモノを出すお店だから、蕎麦なんて全然期待してなかったんだけど。でもこれ、とてもじゃないけどけなすような蕎麦じゃあない。うん、うん。
とか言いながら、ココロはコロッケの方に傾倒しつつあり、正直そばの味はどうでも良くなっていた。さて、コロッケちゃんを食べてみましょうか。
さくっ
・・・すいません、うそつきました。今、擬音で「さくっ」と入れましたが、そんな軽やかな音はしません。汁に染みてますから。
もちゃっ
こら、実際そういう音だったかもしれないけど、幻滅するからわざわざ擬音を入れるのはやめろ。
ええと、難しいな。ま、それはともかく、食べてみてびっくりだ。コロッケというからには、ジャガイモをベースとした食べ物と思っていたのだが・・・これは何だ?一瞬、形容に詰まる。少なくとも、ジャガイモは入っていないぞ、これ。・・・しばらく悩んだ末、「ああ、鶏つくね団子だ」ということに気がついた。そういえば、そもそもこのコロッケ、パン粉で揚げてない。食べた感覚としては、なにかおでんの練り物を食べている感じ、かな。
老舗の定番メニュー、ということで昔まだコロッケがハイカラだった頃に生み出された蕎麦だったんだろう。当時の銀座に思いを馳せ、蕎麦をすするってぇのも小粋じゃあございやせんか。
そんなきれいなまとめ方、するの?いや、実際のところ、下足番みたいなポジションにいる店のおっちゃん2名と、対峙するような形で座席が向いているんですよこのお店は。だから、どうも監視されているような感じで、落ち着きませんでした。細かい気配りがお店はできるって事でメリットあるんだろうけど。
やや薄暗い店内の明かりも相まって、洞窟の中にいるような、外界から遮蔽された隠れ家的雰囲気があるお店だ。しかし、「監視」されてるというネジレた解釈を店員さんに与えちゃうと、がぜん「閉じこめられました」っていうシチュエーションに感じられてきちゃって、何かトホホな状態ではある。
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