利庵

2004年03月06日
【店舗数:156】【そば食:278】
東京都港区白金

じゅんさい、せいろうそば、熱燗

春闘総決起集会に顔を出してきた。

今こそ怒りを力に変えて勝利をつかみ取ろう、なんて高らかに謳われていたこの集会。何のことはない、各組合からの動員要請を受けて「しぶしぶ」参加した人ばっかりで盛り上がらないことこの上ない。怒っているどころか、仲間と談笑して笑い声さえ聞こえてくる。集会としては1万5千人ほど集まったようだが、翌日のマスコミでは「ジーコ、日本サッカー代表監督をやめろ」デモ数十名規模、のほうが取扱が大きいくらいだから微笑ましい。唯一盛り上がっていたのは政治家のセンセイ方で、参院選に向けて格好のPRタイミング!と気合いを入れていた。なんのこっちゃ。

そんな気合いが入らないまま、気合いの入らないデモ行進。原宿のオサレな通りを、交通の邪魔をしながら練り歩いていてホント回りの皆様に申し訳ないと思った。デモ行進に視線を奪われてしまい、前の車にオカマを掘ってしまった車もいたし。

アホ臭くなって、昼飯からビールを飲んで仲間と解散。しかし、日はまだ高い。このまま帰ったら、非常に不毛だろう。故に、蕎麦屋を開拓してみることにした。

竹やぶ恵比寿店

お目当ては、竹やぶ恵比寿店だったのだが、そのお店の住所には、何屋だかわからん飲食屋(あ、食べ物屋というのは雰囲気で分かる)が店をやっていた。

うーん・・・これは蕎麦屋ではなさそうだなあ・・・。何度もあたりをうろうろしてみたが、どうもこの場所しか考えられない。「竹やぶ」といえばニューウェーブ蕎麦の旗手、とまで言われるお店。ひょっとしたら「日替わりでお店の名前を変えます」なんてやっとるかもしれん。むむ、でも「王笑」って店の名前は蕎麦屋としては、ちょっと。

王笑・・・おうしょう?ああ、何だ餃子の王将か。じゃあ、焼き餃子をとりあえず。あと生ビールもよろしく・・・おい、そんなわけあるか。

ひょっとするとリニューアルして店名が変わったのかもしれないが、確たる証拠が無いので店内に侵入するのはやめておいた。

しかし、ここで諦めて帰るわけにもいかないので、さらに歩いて、白金の利庵に行ってみることにした。白金のオサレな町並みを、とぼとぼと歩く。ううむ、周囲には結婚式の二次会でーすといった人達やら、何やらちょっとだけハイソっぽい人たちがいる。一人でとぼとぼ歩くには向かない街だぜ。

利庵

利庵は、非常に地味な外見で白金の町中にたたずんでいた。あまりに地味で、意識していないと通り過ぎてしまう外観だ。暖簾と、店名を記した看板があるので商売をやっていると分かるが、それでも何屋だかわからない。普通の民家に見える。大体、店先に鉢植えが置いてあるんだぞ。こんな家、ちょっと古めの町並みの街にいくらでもありそうだ。しかし、蕎麦屋としてはこういう外観の方がポイント高い。

中に入ってみて驚いた。ピーク時には行列ができるお店だ、と聞いてはいたのだが、確かに16時近いというのに結構な客数だ。そんなにここの蕎麦はうまいんか。そりゃ結構なことで・・・。

しかし、何か違和感があるな、と思って客を眺めてみたらある事に気が付いた。ああ、若いカップルが数組、客として混ざっているのだな。普通、蕎麦屋なんて若い男女がデート途中に寄るような場所ではない。ましてや、このお店は、古い民家っていう渋い風情のお店であって、ニューウェーブ系でも何でもない。なのに、なぜカップルがいるのか謎だ。立地条件が成せる技・・・なわけないよな。「この辺りを散歩中にたまたま小腹が空いたので立ち寄りました」って事で入店するような外観では、ない。

きっとこの辺りを紹介するワカモノ向け雑誌記事や観光ガイドに、利庵が紹介されていると思われる。しかしな、ワカモノよ。蕎麦なんて渋い食い物をデートで食べたって盛り上がらないぞ。ほーら、案の定今さっき入店したばかりのカップルが、座席に座ってしばらくメニュー見てそわそわして、注文しないまま帰ってしまったぞ。その傍らでは、「出汁巻き玉子」を注文しようとしているんだけど、「だしまき」という読み方がわからずにちんぷんかんぷんなオーダーをしちゃっている兄ちゃんがいるし。「でじるまき」って何だ。ちゃんとその謎の料理を翻訳していたおばちゃんは凄いと思った。結構そういう間違え方をする人、いるのだろうか。

一人客ということで、おかでんは店内真ん中の大机に座っていた。ぐるりと円周沿いに10名ほど座ることができる。途中で、お客さんが3名やってきたので「隣の席に一つずれてくれ」と店員さんに言われた。席の移動を依頼されたのは、ラーメン屋以外の飲食店では初めての経験だ。まさか蕎麦屋で言われるとは思ってもいなかった。どうやら、2名以上のお客を大机に通すときは、角にそのお客を配置することにしているようだ。もちろん快く席を移ったが、非常に事務的に「席を移ってくれ」と言われたのは「あれれ?」という印象を受けた。きっと、この店が持つ「古い民家が持つ暖かみ」といった風情とのギャップで、違和感を強く感じ たのだろう。愛想の良いオバチャンが「すいませんねえ、どうもご迷惑をおかけしちゃって」と言いそうな雰囲気のお店だから。

内装は、鉄金具がたくさんある家具・・・ええと、仙台箪笥っていうのかな、が並んでいた。ほの暗い店内の明かりもあいまって、落ち着きを提供してくれる。ただし、お客さんが少なければ。・・・いや、違うぞ。お客さんが少なくともやっぱり何か落ち着かない。ああ、なるほど、客さばきをする店員が4名もいるじゃないか。目いっぱいお客さんが入っても30人たらずの店内なのに、4名は多い。案の定、やることがなく立ちつくしているありさまだ。そんなこんなで、こっちを監視されているようなプレッシャーを受けた。

さらに気づいたことは、ちらりと箪笥の奥に見える厨房では、5名もしくは6名が働いていた。おい、ここの店員は一体何人なんだ。人件費かけすぎじゃないのか。

マクドナルドのバイトみたいに、30分刻みで店員を増やしたり減らしたりするのがムツカシいのはわかるが、昼下がりのこの時間に総勢10名もの店員が居るのは壮観というかやりすぎというか。まあ、店の経営方針なんだろうから、お客がとやかく言う事ではないが。

しかし、お客さんの大半が玉子焼きを頼んでいる状況であり(後で知ったのだが、このお店の名物だそうな)、おそらく厨房の1名は玉子焼き専任になっているのだろう。手間と人手がかかるのである程度の・・・

一生懸命弁護しようとしたけど、面倒なのでやめた。

じゅんさいを肴にお酒を頂いた。何だかくつろぐような、くつろがないような。このお店を絶賛している人の気持ちは分かるし、けなす人の気持ちも分かる、そんな中途半端な立場で、せいろうそばを頂く。うまい。ごちそうさま。

いやね、何かもう、蕎麦の印象よりも、店とそれを取り巻くエトセトラの方が気になっちゃった訪問だった。蕎麦は香りが上品で、コシ良しつゆ良しでおいしかったと思うが、おまけって感じ。

わざわざ目黒から歩いて訪問しよう、とは思わない。もう少し客足が少ないと、隠れ家的満足感で非常に心地よいひとときが過ごせそうなのだが。

あ、そのときはぜひ、店員さん少な目で。落ち着きませんです・・・。

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