手打蕎麦 ぐらの(04)

2004年06月12日
【店舗数:—】【そば食:297】
埼玉県入間郡大井町

野菜天ぷら、からみ大根、田舎そば、天の戸、石鎚

常連と化しつつある「ぐらの」。

毎回、詳細なレポをこのコーナーに掲載するまでもないと思うので、簡単に。

この日は、家を出発するのが遅くなり、お店に到着したのは20時40分だった。店員さんに「ラストオーダーは9時になっておりますので」と念を押される。お酒を飲まないのであれば、すぐに「俺のラストオーダー」ができてしまうのだが、いかんせんこちらはお酒を楽しみに訪れているという側面もあり、ラストオーダーはぎりぎりにさせてもらうことにした。

毎回訪れていると、酒肴が出尽くした感が漂い始めている。しかし、今回は季節限定の新メニューということで、からみ大根が用意されていた。

「からみ大根って、この季節のものなんですか?」

と店員さんに聞いてみたところ、

「いえ、そういうわけではないのですが」

といろいろ説明してくれた。どうやら、昨日ちょうどからみ大根が入荷したという事らしい。大根には春に種を蒔くものと・・・といろいろ説明して頂いたのだが、すいません、内容忘れてしました。今回の大根は春蒔きのものだ、ということは最低限理解したのでご容赦ください。

「お客さんによっては、新鮮な大根のほうがおいしい、って仰るんですよ。だからちょうどタイミングが良かった」

だ、そうな。すり下ろしたてのワサビが辛いように、新鮮な方がからみが強いのだろうか。お値段、250円。早速注文してみる。

出てきたからみ大根は、ややピンク色を帯びた色彩で見慣れない光景だ。大根=白、というのは必ずしも正しくないと知る。このからみ大根を少々つまみつつ、秋田の地酒「天の戸」をいただく。からみ大根は、そばと一緒に食べるよりもこうしてちびちびと食べた方が合うと、僕は思う。「辛味大根蕎麦」にすると、蕎麦の味が大根の鋭い辛さに負ける事が多いからだ。ああ、辛いなあと言いながら、お酒をあおる。

何しろ、今日はあと20分しかないのだ。・・・あ、あと10分か。いかんな、時間がない。野菜天ぷら、頼むんじゃなかったかな。なぜなら、からみ大根でいっぱい飲んじゃうから、野菜天ぷらでもういっぱい飲まなくちゃいけなくなってしまうから。

いや、飲まなくちゃいけない、って誰が決めたわけでもないんですけどね。ああ、すいません店員さん、「石鎚」頂けますか。

若い店員さん、ちょっと不安そうな顔をして、「お蕎麦どうされますか?」と聞いてきた。ま、そりゃそうだ、ラストオーダーまで7-8分のところでもういっぱいお酒を注文してるんだもんな、こりゃ長っ尻だと思われたに違いない。でも、ご安心を。そういう迷惑はお店にかけないので。こちらとしては、分刻み・秒単位でのスケジューリングで、蕎麦の注文タイミングとラストオーダー時間を計算に入れてあるのだから。

でも、「この人いつまで居座るのだろう」と店員さんを不安にさせちゃ、いけない。さっさと蕎麦を注文した方がいいだろう。じゃ、田舎そば、ください。

野菜てんぷらをぱりぱり頂きながら、「石鎚」を頂く。天ぷら、美味なり。お酒も、美味なり。

向かい側の席には、職場か何かのお食事会なのか、テーブルいっぱいに10名ほどの団体さんが和んでいた。生ビールがばんばん売れている。おかげで店員さん、ひっきりなしにビールを運搬していた。これだけを見ていたら、居酒屋の1シーンのように見える。

しばらくして、この団体さんはお酒を切り上げてお食事タイムになった。見ると、蕎麦を頂いている人はほとんど皆無で、みなさん丼もの、定食ものを食べている。天丼やらとんかつ定食やら。定食の人は、バンバン御飯のお代わりをしていた。ただでさえ忙しい店員さん、なかなか御飯のお代わりに対応できず、しまいにはお客さんが厨房に「ねぇ、御飯のお代わりまだぁ?」なんて聞いているありさま。これだけ見ていたら、定食屋の1シーンのように見える。

・・・蕎麦屋じゃないじゃん。

結局、このお店は蕎麦屋として素晴らしいんだけど、御飯ものを提供するお店としてもお客から好評ということなのだろう。そういえば、周囲を見渡すと、御飯もの食べているのと蕎麦を食べているのが比率でいったら3:7もしくは4:6くらいは居たような気がする。

ここの御飯ものメニューで登場する豚肉は、おいしい肉として「どっちの料理ショー」などでもよく紹介されていた「ゴールデンポーク」を使っている。そのため、豚肉料理の人気が高いのだろう。一度食べてみたい、とは思うのだが、蕎麦を食べずに豚を食べるというのはちょっと気が引ける。結局、いつまで経っても食べる機会がないような予感がする。
さて、最後に田舎そばをいただいた。よく品切れになっている、人気商品だ。今回はすんなりとオーダーが通った。初めて食べる。
味は・・・ええと、まあ、おいしいんだけど、粗挽きにしている割には強烈な野性味がないような気がした。つるつると食べられる食感も、ちょっと面白みに欠けるような。せっかくの田舎そばなんだから、もう少しボソボソした仕上がりでもいいような気がする。せいろにして食べるよりも、暖かいそばとして食べた方が、特徴が出ておいしいかもしれないと思った。

ま、そんなことはどうでもいいわけで、最後はそば湯でフィニッシュ。もう21時を回ってることだし、さっさとお店を後にしなければ・・・と、そば湯をずずずいとすすった。

あれ。そば湯、相当おいしいんですけど。

過去3回、それほど意識したことがなかったのだが、そば湯がめっぽうおいしい。いっぱい、形式的に頂いて席を立つつもりだったのだが、ついついもういっぱい、さらにもういっぱいと飲む羽目になってしまった。とろりとした食感が、つゆの味にからまってふくよかにうまい。

ああいかんいかん、お店の人に迷惑をかけとる、と気ばかりは急いたが、そば湯は急には冷めてくれない。結局、他のお客さんがいなくなるまで、そば湯をふぅふぅいいながら飲んでしまった。

お会計の際、

「すいませんね・・・最後になっちゃいまして。そば湯があまりにおいしかったから」

と言い訳めいた事を店員さんに言ったら、

「閉店間際のそば湯っておいしいですよね。今度いらっしゃるときは水筒を持参して、お持ち帰りにされては如何ですか?」

と言われた。そば湯を水筒に詰めてお持ち帰り・・・。おいしいそば湯なので、それはそれで魅力的な提案だ。

「それは素晴らしい、ぜひ今度やらせてもらいます」

とその場では答えたものの、後になってよく考えてみたら、家に持ち帰ってそば湯を頂いてもあんまりおいしくなさそうな気がする。やはり、蕎麦の食後にこっくりとそば湯を頂戴するのがおいしく、楽しい。家で、「目覚めの一杯」だとか「昼下がりのちょっとおなかが空いたときに」なんてタイミングで、おもむろにそば湯を水筒から取り出すのは馬鹿馬鹿しい。

ま、結論としては、もっと早くお店に到着するよう努力しなさいってこった。

お会計を担当した店員さん、「いつもどうもありがとうございます」と一言添えて僕を送り出してくれた。「いつも」というフレーズは、「まいどどうも」という飲食店の定型フレーズとは違って、明らかに「この人、時々ウチに来てる人だな」と認識されている事を意味している。

ほんの時々訪れているにすぎないのに、顔を覚えられてしまったということは、よっぽど素行が悪いのだろうか。「ああ、閉店間際にいつも一人でやってきて、お酒ばっか飲んでいるあの人ね」みたいな印象なのかもしれない。ま、事実だからしゃーないが。

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