萬盛庵

2004年08月27日
【店舗数:172】【そば食:312】
山形県山形市旅籠町

もりそば

鳥海山に登ろう、と思い立った。何年か前、荒天のため途中棄権した山だ。本当は八ヶ岳に登るつもりだったのだが、台風17号が接近中で雨の予報が出ていた。出発当日の朝、やっぱり天気が悪いということで断念。「では、北の山だったら・・・」ということで、いきあたりばったり、鳥海山に登ることにしたのだった。

行き当たりばったり、とはいっても住んでいる埼玉からはメチャ遠い。ひょい、と東北道にのって、ひょひょい鳥海山には到着できそうな気がするが、とんでもない。500kmを越える距離と、高速道路代金として9,000円近くの負担が待ちかまえている。とてもじゃないが、車で移動して「その日のうちに登ってくる」なんて事はできっこない。鳥海山の麓の酒田で前泊しなければならない。

でも、その日、酒田に移動しておしまい、じゃあ1日を無駄にしてしまったような気になる。それは悔しい。・・・だったら、山形市周辺で蕎麦でも食べあるいてみるか・・・ ? と、こういうわけだ。

思いつきの山行きに付随して、思いつきの蕎麦屋行脚。最近、こういう行き当たりばったりな企画ばっか。周到に準備することができなくなってきている ぞ、おかでん。

朝7時に「鳥海山でも行くかな」なんて思い立ったわけで、もう何しろ時間がない。山形の蕎麦屋を独自にリサーチなんてできないんである。だから、「もうどうにでもして」と、杉浦日向子著「蕎麦屋で憩う」をザックに投げ込んで、出発となった。自主性がなくて非常に恥ずかしいが、今回は「蕎麦屋で憩う」に紹介されたお店を後追いする 企画に決定。

まず一軒目は、「梅そば」というお店だ。住宅地の中にあるらしく、狭い道を走る事になった。カーナビ様々である。特に一人旅の場合、カーナビがないとお店探索は大変だ。

と、カーナビをひとしきり褒めたのだが、ナビ子さんが目的地だ、と自信満々に主張する場所には蕎麦屋が見あたらない。何だ、これは?

しばらく車でウロウロしてみたら、ようやくお店が発見された。何のことはない、ナビ子さんの指示は的確だったのだが、お店が非常にさりげな い構えだったために気づかなかったのである。何でこんな普通の住宅地の中に、蕎麦屋の名店と言われるお店があるのだろう?と思うが、それこそが山形蕎麦の特徴なのだろう。広島の住宅地のあちこちに、お好み焼き屋さんがあるのと一緒と思えばいい。 ・・・と思いますが、山形市民から「何もしらん癖に馬鹿言っちゃいかん」とオコラれるかもしれないので、断言は避けておこう。

で、車を停めようとしたのだが・・・駐車場、いっぱいだった。そこら辺に路駐しようかとも思ったが、道は狭いし住宅地の中だし、路駐なんてとてもじゃないが気まずくてできる雰囲気ではなかった。

諦めて、後にまた訪れることにした。2軒目に予定していた、萬盛庵を先に攻めよう。

萬盛庵は、山形の市街地の中にある。こりゃまた駐車場に難儀したらたまらんな、ということでお店から結構手前のところにあった有料駐車場に車を駐車。そこから徒歩5分ほど歩くことにした。

萬盛庵→

大通りを歩いていると、消火栓の表示看板に「萬盛庵→」の看板が用意されていた。おお、さすがは有名なお店だ、こういうところでちゃんとPRしてるのだな。今度は迷わなくて済みそうだ・・・

迷った!

まんまとやられてしまった。大通りから一本入ったところにお店があるのは分かっていたのだが、まんまと店を通り過ぎてしまった。「オカシい、通り過ぎたらしい」と元来た道を戻ってみると、そこに「萬盛庵」と書かれた建物が静かにたたずんでいた。うわ、見落としか。梅そばに続いて、2度目のミス。

萬盛庵

それにしても地味だなぁ。蕎麦屋って基本的に地味な建物だが、山形の蕎麦屋はそれ以上に地味って印象がある。回りの風景に溶け込んでいる、迷彩服みたいな感じがする。

店の前には、少量ながらも駐車するスペースは用意されていた。しまった、わざわざ車を手前の有料駐車場に停める必要は無かったか。

店に入ると、店はL字形の形になっていた。入口は、Lの字の両側にある。なるほど、道理で先ほど見た店構えが見慣れないワケだ。どうやら、今入ったところは裏口だったらしい。よく見かけるお店の写真とは異なっていたので、「ん?ひょっとしたら同名の別店舗か、支店かもしれない」とドキっとしてしまった のは取り越し苦労だったということになる。

昼下がりということもあり、お客さんはまばら。落ち着いてお酒を・・・いや、蕎麦だけですね、もちろん。悩むまでもなく、もりそば(600円)を注文。

このお店、えらく品数が多い。いろいろな蕎麦がメニューにあった。メニューの写真は撮影していないので、何があったかはあんまり覚えていない のが悔やまれる。ただ、イカしていたのが、お品書きの冒頭に「懐古(レトロ)の味から新味まで いずれ劣らぬ本格派」と書いてあった事だった。自信満々である。しかし、お品書きにおけるレイアウトの関係上、その文字のすぐ脇に「消費税5%込」という字が書かれていたため、本格派のカッコ良さがちょっとグレードダウンした感じがした。 消費税込の本格派かい!

あと、お品書きの後ろには、「切って切れるは蕎麦ならば 切っても切れない蕎麦と酒」という これまたイカした標語が書かれていて、お酒が紹介されていた。渋いね、これ。でも、酒肴のラインナップは少ないらしく、「お通し(800円)」だけが存在していた。お通しにしちゃ相当高いじゃねぇか、と思うが、季節の旬のモノを使った料理だという事なので、安居酒屋で出てくるような小鉢料理ではないのだろう。どんなものが出てくるのか気になるが、今回はお酒を飲めないのでぐっと我慢。

もりそば

さて、注文していたもりそばが届きましたよ。見た目からは美味いかマズイか判断できませぬが・・・では、早速蕎麦だけで。

うーん。

新蕎麦前の季節ということで、香りとか何とか言っちゃいけないんだろうけど、かすかに香る感じはすてき。新蕎麦季節に食べたらたまらんだろう、という予感がする。

しかし、何かね、それ以上に引っかかるんですよ、この食感と、後味。どこかで「あまり良くない思い出」と共に、心の片隅に残っている感じ・・・

なかなかこのデジャブ状況を解明することができなかったが、半分食べ進んだ頃になって、ようやく気が付いた。

あっ、立ち食い蕎麦「あじさい」のざるそばと食感が似てる!?

えええー?山形の名店と、立ち食い蕎麦屋に共通点がある?そんなの、ありえないと思うのだが。

でも、「あじさい」だ、と思うと妙に納得するところがあるんですよ、この食感。表面の感じとか、蕎麦をすすった後の後味とか。何でだろう。

麺をぐっと睨んでみると、どうもこの麺は手打ちではなく、機械打ちっぽい。そのあたりが、何か共通項を感じさせたのかも知れない。

うーん、「あじさい」じゃなくて、「富士そば」に似てるのかもしれないけど、どっちかなあ・・・まあ、いずれにせよ、そんな感じを受けてしまったのだった。

もうこうなってしまえば、残念ながらいくら「名店」であっても幻滅なんである。絶対的評価として、一般の人は「萬盛庵、おいしいね」と言うだろうが、おかでん個人で言うと、「ゴメンナサイ、あまり楽しくお蕎麦を頂けませんでした」と言わざるを得ない。

「なにを言ってるんだおかでん、お前は萬盛庵の蕎麦とあじさいの蕎麦を同列で語るほど、舌が靴べら並なのか」

と言われるだろう。自分でもそう思う。「きっと、『似てる』と思っただけで、実際に食べ比べてみると全然違う蕎麦なんだろうな」と理解はしているが、一度頭の中で「あじさい」というキーワードが浮かんでしまうと、もうその印象で固定されてしまって、どうにもならなかった。

萬盛庵、ごめん。そして、あじさいにも、ごめん。

蕎麦自体はおいしいと思うのだが、食感がおかでん好みではなかった。でも、もう一度新蕎麦の季節に訪れてみたい。きっと、今回の悪い印象を吹っ飛ばしてくれるような蕎麦に出会える・・・のかな?さて。

今度訪問した際には、店を出たときに思いっきり「マンセー」と叫ぶことができるだろうか?

お店の表側

店を出るとき、入店したのとは別の出入り口から出てみた。

あー、こっち側がよく写真で見かけてた、萬盛庵の外観だー。

大通りから見たお店の位置

(おまけ) ちなみに、大通りからはこういう位置関係にあります。 訪問する際は見落としのないように。大きな病院が大通りにあるので、それが目印になります。

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