神田まつや(06)

2004年11月16日
【店舗数:—】【そば食:322】
東京都千代田区神田須田町

焼のり、焼鳥、もりそば、ヱビスビール、お酒

久々の来訪だ。ほんと、久しぶり。何年ぶりだろう。

本当は、訪れるつもりは無かった。開店したばかりの「ラーメン二郎神田神保町店」に行くつもりだったのだが、手抜きしてうろ覚えだったお店の場所を勘違いしてしまい、「まだお店にたどり着かない、なぜだ」といいつつ気がついたら神保町から小川町を越え、秋葉原界隈にまで。

なかなかいい塩梅でご立腹してしまい、こうなったら酒飲んで帰るか、という気分になったのだった。この地で一人酒やろう、となるともうそれはダントツで神田まつやだ。こってりしたラーメンが蕎麦に化けるというのは、自分の脳内でその現実を受け止めるために相当な努力が必要だったが、なんとか変換OK。「焼き鳥食べてビール飲めばこってりしてるし、おなかも満たされるだろ?な?な?」となだめすかして、お店に突入。

それにしてもこの店はなあ、数年ぶりだというのに何一つ変わっちゃいない。生ビール始めました!とか、サラダそば始めました!みたいな事は一切していない。昔からあるメニューのまま。店の雰囲気もそのまんまだ。店員さんそのものは微妙に入れ替わりがあるのかもしれないが、相変わらずのフットワークの軽さだ。建物そのものはゆっくりとした時間の流れに包まれているんだけど、その中で働く人、お客さんの時間の流れは速い。

今日は待ち時間なく座ることができた。早速、焼き鳥などを注文する。

一人でこのお店に来ることは、数名でくるよりも楽しい。なぜなら、店全体のざわめきを愛でる事ができるからだ。いろんな人がこのお店を訪れる。そのごった煮な雰囲気が楽しい。狭い店内に、相席でぎゅうぎゅう詰めに押し込むために、否応なしに隣の人の会話が聞こえてくる。

隣では、天種1,700円なりを一人1品ずつ注文して、それで酒をあおっているオトーサンが二人で語りこんでいた。天種、美味そうだ。でも、1,700円はえらく高い。おかでんだったら絶対に手が出せない価格帯と言える。

このオトーサンの一人が、「いやぁ、最近忙しくってさ。ほら、食事すら満足にできないからさぁ、もうすっかり骨皮筋衛門になっちゃって」とかいって自分の腕を相手に見せていた。「骨皮筋衛門」という言い方はおかでんが幼少の頃にも使っていたが、こういうオトーサン世代でも使われている言葉だったということに静かに感動。なるほど、世代を越えた言葉だったんですね。

それにしてもアンタ、骨皮筋衛門っていう割にはふくよかな体してるんですけど。とてもじゃないが、骨と皮と筋だけとは思えない。大体、値段が高い天種食ってる時点でその名称を名乗るのは失格かと。

でも、話しかけられたもう一方のオトーサンは、うなずきながら「うん、そうだねえ。骨皮筋衛門だねえ」と返していたので、昔から比べると随分痩せちゃったのかもしれない。本当に痩せたんだとしたら、蕎麦なんて食ってないで肉食え。

視線を転じておかでんの正面に座っている、70くらいの母親と50くらいの息子のコンビの会話に耳を傾ける。こちらは、国宝の版画について、何やら会話をしているようだ。そのあと、歌舞伎の話題に移っていった。さっきの骨川筋衛門と違って、えらくアカデミックだ。

「ははは。いいねえ」

なんて、酔った勢いで笑いがこみ上げてくる。見上げれば、コチコチと音をたてて時を刻むボンボン柱時計。なんか、われわれの日々の営みをやわらかい目線で見下ろしているようだ。

そんな中を、時折店内に響き渡る「いらっしゃーーーーい」という店員さんの声。なんか、この空間そのものが無形文化財のような気がしてきた。酔っているからかな。

隣のテーブルでは、先ほどからずっと4名のオッチャン達が宴会をやっている。「おねーさん、焼き海苔追加ね」なんて言ってる。そういえばこのテーブル、一つ前の注文が焼き鳥、その前がにしんだったっけ。どんどんシンプルな酒肴に落ち着いていってるな。そろそろおなかがいっぱいになってきて胃袋のキャパが狭くなってきたか?

こんな人間観察をやりながら、蕎麦を手繰って帰った。ラーメン二郎を食べた時のような満腹感は、当然得られなかった。しかし、人間模様の観察で、それ以上の満腹感が得られた。

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