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三澤屋

2005年03月20日
【店舗数:185】【そば食:340】
福島県南会津郡下郷町

高遠そば

福島県の山奥に大内塾、という有名な進学塾がある。ここは、全国の難関私立中学校の合格率が
いまいちすぎる出だしなので却下だ。近年まれに見るダメダメっぷりだな、我ながら。

大内宿(おおうちじゅく)。昔は会津西街道の宿場町だったところだが、当時の町並みをよく保存しているということで人気が高い観光スポットだ。昔風の民家が整然と道路脇に並んでいる町並みは、観光ガイドなどでよくお目にする光景だ。

古い町並みとして有名だが、この地を有名たらしめているものが他にも一つある。それは、「蕎麦」だ。大内宿がテレビや雑誌で紹介されるとき、必ず蕎麦が紹介される。なぜかというと、ここの蕎麦はビジュアルがものすごくインパクトが強いからだ。

長ネギ丸ごと一本を箸代わりにして、蕎麦を手繰る。

それは蕎麦のインパクトじゃなくて単にネギのインパクトじゃん、という気がしなくもないが、ともかく箸代わりにふっといネギが一本、供されるのが特徴だ。もちろん、箸代わりにネギを駆使しつつ、薬味が欲しくなったらネギにかぶりつけば良い。

ポッキーを箸代わりにポテトチップをつまみ、最後にポッキーを食べる、ということをやったことがある。ポテトチップは手に油がつくから、PCいじりながら食べるには向かない。だからポッキーだったわけだが、箸代わりのポッキーも食べてしまったら「何だかとってもエコロジー!」って気になって(大いなる勘違い)、とても爽快感があったもんだ。それと似たような感じなのだろう、恐らく。

大内宿は三澤屋、というお店が有名だと聞いていたので、三澤屋を目指す。

大内宿

大内宿は町並み保存のため、車両が進入できない。手前の駐車場に車を停め、そこから徒歩になる。ちなみに駐車場料金は普通車で200円。大内宿に入るための「入館料」みたいなものだ。

3月20日といってもここは山の中、雪がびっしりと残っていた。

もう少し寒い時期だと、民家の屋根の上にこんもりと雪が積もった景色がとてもきれいらしい。

民芸品を売るお店

民家のほとんどでは、道路側に面した縁側に特産品や民芸品を並べた「即席土産物屋」を営んでいた。そして、建物の中では蕎麦屋として営業、というスタイルがほとんど だった。

どの民家も、蕎麦扱っていた。ここも蕎麦、あそこも蕎麦、おや、あっちも蕎麦屋か。この集落だと、「単にカレーを食べたいんですけど」という方が難易度が高い。

ネギで蕎麦を食べるスタイルなのはこれからお邪魔する「三澤屋」の特権なのかと思ったが、他の店でも行われているようだった。「ねぎ一本で食べるねぎそば」なんていう看板が軒先にぶら下げられているお店もあった。確かに、この地にやってきて「単なる普通の蕎麦」を食べるのは何とも惜しい話だ。美味いかどうかはともかくとして、話のタネにねぎで蕎麦を食べてみたいところだ。

三澤屋

三澤屋は、よしずです巻きにされた建物だった。よしずのせいで、窓や縁側といった家の外観をかたちづくるものが一切見えない。

何だか、伝染病が発生して、隔離した建物みたい。

これから入ろうとしている飲食店に対して、ものすごい喩えをしてしまった。

この大内宿にある建物は、全て入り口が側面奥にあった。道路に面して入り口が用意されていない。独特の作りだ。三澤屋も同じで、ましてやよしずで建物が覆われているので、蕎麦屋には見えない。

高遠そば解説

蕎麦屋であることを示すために、立て看板が道路脇に用意されていた。

高遠そば

会津の殿様が信州高遠藩で育ち寛永20年会津藩主となって以来、大根おろしそばを高遠そばと言っております。

三澤屋ではそれに長ネギを箸がわりに用い薬味をかけてご提供させて頂いております。

おー、これだ、これだ。ネギ一本がどんぶりから突き出ている絵が描かれているし、これで間違いない。本日のお蕎麦、ロックオン。

のぼり

のぼりが立てかけてあったが、書かれている文章は先ほどの看板と同じ。

こんなに細かい字が書かれているのぼりは初めて見た。風にたなびいていたら、絶対に読めない大きさの字だ。

蕎麦工房 みさわやののれん

建物側面の奥に、よしずの切れ目があって、そこに白いのれんがかかっていた。どうやらここが入り口らしい。

蕎麦工房 みさわや

と書かれていた。蕎麦工房って大げさな。

みさわや店内

中にはいると、薄暗い土間には人がいっぱいひしめいていた。何だこれは。

あっけにとられてしまった。もう14時近い、お昼のピークは過ぎた時間だというのに順番待ちの大行列。蕎麦屋でここまで行列しているのを見るのは初めてだ。神田まつやよりも人の数が多い。さすがは観光地の有名店。

お座敷と板間にはいろりが切ってあり、いろりでは岩魚があぶられていた。客席数は結構あるようだが、たくさんのお客さんであふれていた。慣れない「ネギだけで蕎麦を食う」行為に手間取り、みな長っ尻なのだろうか。

しばらく客間を伺っていたら、どやどやと集団で人が席を立った。あ、なるほど、団体観光客のお昼ご飯会場としても使われているのか。道理で混むわけだ。恐らく、「会津若松と大内宿を巡る、歴史探訪の旅」とかなんとかのバスツアーで、企画の目玉の一つとして「大内宿・三澤屋でネギを箸代わりにして食べる蕎麦をご堪能頂きます」なんて事になってるんだろう。

旅行料金の中にここでの蕎麦代が含まれているらしい。団体客はお会計をしないでそのままお店を後にしていたが、店員さんが「ビールお飲みになった方いらっしゃいますか?お会計は別になります」と客を呼び止めていた。肝心のビールを飲んだ人はトンズラしてしまったらしく、添乗員さんが弱り果てていた。添乗員さんと店員さんが何やら今後の対応について協議していたが、結局添乗員さんが立て替え払いをしたようだ。おい団体客のおっちゃん。無銭飲食はいかんぞ。

そういえば、土間で自分たちの入店順がくるのを待っているお客さんの多くも、胸にツアー客を示すバッジがつけられていた。団体客ばっかじゃん、このお店。

急に不安になってきた。「観光地に美味い蕎麦無し」というのが今までの経験から導き出された持論だが、このお店の場合まさにそれが当てはまる。加えて、「団体客がひっきりなしにやってくる」お店となれば・・・味に期待するほうがむちゃってもんだ。いや、「ネギで蕎麦を食らう」というイベント性さえ楽しめればそれでいいんだけど、あんまりにマズイお蕎麦は勘弁願いたいところだ。ちょっとそわそわしてきたぞ。

「蕎麦工房」というのは、マシーンのように蕎麦を提供しつづけますよ、という意味だったり・・・するわけないよな、それは考えすぎだ。

囲炉裏

待つこと30分ほどで、中に入ることができた。白菜の浅漬けが供されるのが珍しい。

「高遠そばをお願いします」

と注文したら、「冷たいお蕎麦だけでよろしいですか?」と店員さんから聞き返された。他の人は、いろいろなものを注文しているのだろうか。それとも、この雪が残る寒い季節に、冷たい蕎麦を食う奴は変態なのだろうか。

でも、こちらは単にネギで蕎麦食えればいいです、というスタンスで暖簾をくぐっているので、「ええ、それでヨロシイです」と力強くかつニコヤカに解答。

そういえば、周囲のお客さんは焼いた岩魚を注文しているパターンが多かった。蕎麦食って岩魚ってちょっと合わない気がしたので、自分はスルー。

ネギ一本丸ごと!

大量のお客さんがいるのにも関わらず、結構早いタイミングで蕎麦がでてきた。5分も待たなかっただろうか。非常に大きなゆで釜が厨房にあるのだろうか。

ごとり、と目の前に置かれたどんぶりは、おお、テレビや雑誌でみたことがある、あこがれのネギそばではないですか。いやあ、ビジュアル的に相当インパクト有るなあ、これ。

どうだ、と伸びるネギ。焼き魚に葉しょうがが添えられる事があるが、それなんかと比べ物にならないくらい、「どうだ」だ。いや、参りました。素直にそのネギの自信満々っぷりに敬意を表したい。

今からこのネギで食べるんだぞ、と思っただけでわくわくしてくる。外観を愛でることができる蕎麦というのはうれしい。

太い蕎麦だ

蕎麦は、太めに切られていた。幅はけっこうまちまちで、ワイルドさが出て、この料理にはぴったりな感じだ。

蕎麦の上にはかつお節が乗っている。つゆには、大根おろしが混ざっていて、大根のしぼり汁も加えられている模様。

麺をネギに引っかけて食べる

では、早速。

・・・すくえない。もう一度。

しっぱい。

うーむ、これは難しいぞ。箸の場合は、「つかむ」という表現になるわけだが、ネギの場合は「ひっかける」という表現が正しい。麺の全長において、ちょうど中間地点のあたりにネギを通さないと、持ち上げたときにバランスが崩れて蕎麦がつるつるつるっと下に 滑り落ちてしまう。何だか、UFOキャッチャーをやっている気分だ。

白菜のおつけ物を食べるために、割り箸は各自に支給されている。食べやすさを考慮すれば、ネギは諦めて箸を使った方が良い。しかし、ここで普通に箸を使ってしまったのでは魅力は半減だ、無理してでもネギで食べないと。

周りを見渡すと、しばらくはネギを振り回して蕎麦と格闘しているのだが、途中で諦めて箸に切り替えている人が多いようだ。何やら苦笑いして、箸を神妙に使っている。

あくまでもネギにこだわりつつ、ようやくすくい上げた蕎麦をずずずぃ。

おっ、結構堅めの麺でおいしい。ぶっかけ蕎麦の形態なので、蕎麦の風味を純粋に楽しむことができないのだが、味はしっかり蕎麦を主張しているし、食べ応えある食感はまさに旅情と風情にマッチしていい感じだ。やるじゃん、三澤屋。

「へー」と感心しながら、ネギを駆使して蕎麦を食べる。そして、頃合いを見計らってネギにもかぶりつく。うう、辛いぜ。生のネギをまるごとかじりつくなんて人生初だ。

ネギ、調子にのってかじりすぎたら蕎麦が食べられなくなるので、バランスをとりながら食べ進める。蕎麦、蕎麦、ネギ。

しかし、そうしているうちに、だんだん耐えられなくなってきた。体内にある「辛さ我慢貯蔵タンク」がいっぱいになって溢れてしまったようだ。後半、辛くて辛くて仕方がない。よせばいいのに、ネギをばりばりたべているせいだろう。しかも、つゆも大根おろしのおかげで辛い。ネギを食べていなければ、大して辛いとは思わないつゆなのかもしれないが、ネギのおかげで味覚が敏感になってしまい、結構な拷問になってしまった。

最後は、ハンカチを片手に、涙と汗と鼻水を対処するので必死だった。いやぁ、食べ始めニコニコ、食べ終わりはぐったりという蕎麦は初めてだ。これはこれでいい体験をさせてもらったな。

そういえば、箸代わりのネギ、1本丸ごと食べちゃった。そりゃあ、辛くて悲鳴を上げるわけだ。

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