蕎麦切り あしゃぎ

2005年08月17日
【店舗数:197】【そば食:356】
広島県広島市安佐南区

もり蕎麦、あぶり地鶏、作りたて豆腐、雪下香梅

最近、広島の蕎麦屋が熱い。らしい。多分。恐らく。あんまり確証はないのだが、「熱い」と言うことにして置いた方が話題展開上盛り上がるので、そういうことにしておく。問答無用。

お好み焼き文化な土地柄の広島では、今まで蕎麦屋不毛の地であった。2000年当時、広島の蕎麦屋「たつ吉」を訪問したときの記事にはそのあたりの事がつらつらと書かれている。

しかし、ここ数年で状況はがらりと一変した。豊平に「翁」の高橋氏が移住した時期を前後して、ニューフェースな蕎麦屋が登場するようになった。高橋氏の影響があったのか、それとも単なる偶然なのかはわからない。しかし、大なり小なり広島人において「蕎麦」に対して関心を抱かせたのは間違いないだろう。おかげで、意欲的な蕎麦屋が出店しやすくなったのは事実だと思う。

そんなわけで、今回2005年夏の広島帰省では、新しくできた蕎麦屋を巡ってみようと決めた。ターゲットは、

「女性主人が切り盛りするお店:もち月」
「広島のど真ん中に誕生:ひろしま翁」
「5年ぶり再訪問・広島における本格蕎麦屋の先駆け:たつ吉」
「毎度おなじみ:はっぴ
そして、今回取り上げる「あしゃぎ」だ。

まさに、「蕎麦屋巡り」という名前にふさわしい数。いつの間にか、広島市内でもこれだけの気になる蕎麦屋ができてきた。しかも、ここ数年の間に、だ(たつ吉除く)。まあ、100万人を越える人口を抱える政令指定都市なので、おいしい蕎麦屋が束になって存在したって何らおかしく はない。しかし、今までそんなお店が少なかったのが現実だ。あっ、古くから営業していた広島のそば屋さんごめんなさい。だから、この蕎麦屋躍進事情は とても楽しみなんである。今後どういう展開を見せるのか、注目して見ていきたい。

さて、今回広島蕎麦屋巡りの一軒目に選ばれたのが、まだ開店してから1年も経っていないという新店「あしゃぎ」だ。このお店は、広島に潜伏中の諜報部員からのたれ込みでその存在を知った。

いろいろwebで下調べしてみると、なんとも面白そうなお店だ。市街からちょっと外れた、静かな住宅地の中に忽然と姿を現す、という立地条件がまずマニア心をくすぐる。しかも、その店に至るまでの道幅が非常に狭く、大きな車だとまず接近を拒まれるという。素晴らしい!営業する気があるんだか、無いんだかさっぱりわからんではないか。これぞ蕎麦屋の鏡!・・・なわけはないけど。

で、そんな苦労の結果たどり着いた先には、外観からして男前な蕎麦屋が待ちかまえているというんだから、わくわくさせてくれるじゃあないか。こういう、宝探し的なお蕎麦屋さんに行くのって、結構好きだ。味なんて二の次だ。二割程度、味の評価はおまけしちゃう。

この「あしゃぎ」を紹介するサイトは、そのいずれもが「こんなところに隠れ家発見!」的な驚きと喜びと興奮に包まれていた。しかも、肝心の蕎麦もなかなかイカすという。これでまずかったらそれはそれである意味イカすのだが、「マズい蕎麦屋が無謀にも客がこないような立地条件に出店」というのをなま暖かく見守るというのはあまりいい趣味じゃない。美味い蕎麦屋がすごい立地条件にある・・・ビバあしゃぎ。

ほら、もうこの時点で興奮してしまっている自分がいる。早いぞ、ちょっと喜ぶのが早すぎるぞ。落ち着け。まずは自分の目と舌で確かめてからだ。

あしゃぎに向かう道は狭い

現地でお酒を飲むことを当然のように考えていたので、最寄り駅から延々と数十分歩いてお店に向かうつもりだった。しかし、幸いな事に車を出してくれる上に酒を飲まないという神な人が現れて、おかでんは謹んでその人の車の助手席に身を沈めた。

webサイトであれだけの熱狂が伝えられていたので、お昼時になるとお客で店内がごった返すかもしれない。お酒を飲んでくつろいだら、お店の邪魔になるおそれがある。ならば、ということで開店時間である11時30分にすぐ入店することにした。

太田川放水路沿いの道から、山側に入っていく。このあたりはなだらかな山の斜面になっていて、一軒家の民家がだらだらと続く地域だった。

「山の中にぽつん、とある蕎麦屋っていうのは長野の方にいけば結構あり得るけど、何だ?あしゃぎってこんな感じの民家の中にあるのか」
「そうですよ」

既に前日、下見を済ませてカーナビに目的地登録をしてある運転手は事も無げに答える。

「いやー、でもこんなところに蕎麦屋がある、なんて信じられんな。誰があしゃぎの存在を世に広めたんだ?」

全くもって不思議なんである。この住宅地、ラーメン屋があったとしても不思議だが、渋い蕎麦屋なんてあるようには到底思えない。店のご主人は「確かな腕さえあれば、どんな辺鄙なところでも客は呼べる」という信念の人なのか、それとも単なる楽天主義者なのか、さっぱりわからない。・・・でも、現実的にはこうやって、埼玉県民のおかでんがお店を目指しているわけだ。結果としては大成功というわけだ。

対向車が来ると困る

それにしても道幅が狭いんですけどー。

広島ではよくある道路事情。

(1)まず道路がありました。
(2)道路の脇に、団地ができました。
(3)さらにその横に団地ができました。
(4)沿線住民が増えて交通量が激増したのに、道幅を広くするのを忘れていました。朝夕大渋滞。

それと同じ状況なのかはともかくとして、車一台しか通れませんよこの道。対向車が来たら鬼バックするしかないんですけど・・・と思ったら、ほら対向車が来た。

あしゃぎの看板発見

数々のトラップをくぐりぬけているうちに、「あしゃぎ→」という看板を発見。おお、世間と隔離した修行僧的なお店というわけではないのだな。とりあえずお客の誘導はしてくれるんだ。

それにしても、このお店を世に広めた「口コミの元祖」って一体誰だ。ご近所の方だろうか?飲食店が世に知られていく情報伝達プロセスというのを、ぜひ調査してみたいと思った。真剣に。

あしゃぎ

さすがに前日下見を済ませている人間が隣で運転している以上、「本当にここかよ」という疑心暗鬼な気持ちは起きなかった。とはいっても、この住宅地ドライブに一体どのような終止符が打たれるのか、全く想像ができなかった。

「あそこです」

運転手が目の前の建物を指す。おーっ、こ、これがあしゃぎかぁ。

・・・民家だぞ、普通の。

てっきり、蕎麦屋として建物を造ってあるのかと思ったが、実際は田舎でよく見かける民家だった。あ、ちょっと待った。民家の玄関とは別のところになにやら看板が出ているぞ。ははーんなるほど、民家入り口とは別にお店入り口があるんだなここは。

どうやら、もともと民家として住んでいた家の半分を蕎麦屋スペースに改築した模様だ。なるほど、こんなすごい立地条件に蕎麦屋が出現した意味がなんとなくわかった。

あしゃぎ駐車場

開店時間の11時30分前だというのに、車が次々とやってきた。このお店、車でないと訪れるのが困難。周囲を見渡しても、あれだけの狭い道路なので路駐というわけにはいかない。駐車できずに入店をあきらめる・・・なんて事態にもなりかねない。来店時には、極力相乗りがお勧めだろう。

あしゃぎ看板

お店を開店した際に新たにこしらえたと思われる階段で石垣を登る。白壁には、「蕎麦切りあしゃぎ」と書かれた新しい木の看板がぶら下がり、来店者に「大丈夫、ご安心ください。間違いなくここは蕎麦屋ですから」と宣言してくれる。

さあ、早速入ってみよう。

入り口は、とってつけたような印象がある。おそらく、家を蕎麦屋仕様に改修した際に、壁に穴をあけて新設したのだろう。

あしゃぎ店内

中に入って、思わず「おおおおお」と野太い歓声をあげてしまった。

すごい。まさか、あの外観からこう来るとは思わなかった。

相当広いスペースを確保している。民家と共存、とはいえ、惜しげもなく蕎麦屋にその面積を差し出してしまっている。駐車場側は全面ガラスの引き戸、そして裏庭側にも大きなガラスが埋め込んであり、とても開放感がある。明るい色のフローリングも相まって、ものすごく開放感を感じさせる。

「すごいすごい」

と言いながら、思わず店内の写真を撮りまくってしまった。なんともはや、フォトジェニックな内装なんである。

あしゃぎの広い空間

店内はL字形のつくりになっていて、裏庭側には6人がけの席が3つ、そして駐車場側には大机を取り囲む形で座席が並んでいた。そのいずれも掘りごたつ形式になっていて、女性でも気兼ねなく座ることができる。

よくみると、天井が非常に高い。建物の梁が向きだしになっていて、思わず見上げてしまう。このお店、シンプルな作りだけど非常に味わいがあって良い。一人で来店しても、時間を持て余すことはなさそうだ。梁のごつごつを眺めているのも楽しいだろうし、庭の景色を愛でるのも良い。お酒をいただきつつ、静かに時間を過ごせそう・・・そんな想像をしてしまう。

もっとも、お客が多くないという前提で、だが。例えば子供がこのお店にお客としてやってきたらどうだろう。きっと、この広い板張りがうれしくて仕方がないはずだ。絶対に、処狭しと走り回るに決まってる。こんな状況では落ち着けない。

ま、子供連れの家族がこんな渋いお蕎麦屋さんにやってくるかどうか。広島人はまだ蕎麦に馴染みがない食文化なので、「高くて腹にたまらない」蕎麦屋に家族連れがやってくるということは当分無いと思う。

あしゃぎお品書き

壁には、「本日の蕎麦 福岡県丸岡産 在来種」と張り出されていた。日によって蕎麦の産地を変えるらしい。結構こだわってるんだな。さすがは、こんなところに出店するだけある。それなりに腕に自信があるってことだろう。

こだわり、といえば卓上にはメニューとは別に変なファイルがおいてあった。何だろう、と思って開いてみると、「当店のお蕎麦と食材のお話」と題した冊子になっていた。要するに、お店で使っている食材一つ一つのうんちくBOOKだ。

・・・

いや、ぺらぺらとめくった程度ですがね、こういううんちくを延々と語るのってどうかなあと思うんですが。いい料理を提供するための熱意、っていうのはよく判るんだけど、正直くどい。蕎麦好きが世の中で疎まれる最大の理由が「通ぶる」事なんだけど、まさにこれがそれ。

「いやでもおかでんさん。壁やメニューに書かれるよりかはいいんじゃないですか。興味がある人だけ見てください、というようになってるんですから」

なるほど、確かにそれはそうだ。そういう観点で言えば、非常に好ましいうんちく開示と言えるだろう。食材の安全性、とか食材が持つストーリー性に関心を持つ人は最近増えているわけだから、知りたい人はこのファイルをご覧ください、というわけか。今後の蕎麦屋におけるうんちく開示の新しいスタンダードになり得るか?

スタミナそば

「夏期限定メニュー スタミナそば」という手書きのメニュー半紙が貼り付けられていた。風鈴の絵が涼しげだ。こういうのを一つ一つ、テーブルごとに手書きで書いているのだからすごい。愛情を感じる。

スタミナそばとはなんぞや?とオーダーをとりにきた女性店員さんに聞いてみたところ、

「オクラと、メカブと、キムチとアボカドが乗っているお蕎麦なんですよ」

とさらっと言う。おい、待て。それはえらくアバンギャルドな創作メニューですな。外観からは、美味い蕎麦を求道する愚直なまでにストレートな蕎麦屋かと思っていたのだが、結構挑戦的ではないか。そもそも、「スタミナ」という名前が蕎麦屋メニューに出てくること自体見たこと無いが、「キムチ」は驚きだ。しかも、とどめをさすように「アボカド」っすか。このお店、一体何をたくらんでいるんだ?実はご主人、相当な知能犯とみた。・・・あ、何も悪いことやってないけど。

「もり蕎麦を食べてもまだおなかが空いているようなら、追加注文しよう」ということにして、とりあえずはパス。

それにしてもなぜキムチなんだろう・・・?そういえば、単品メニューにも「キムチ」ってあったな。一体ソレは何とあわせればいいんだ。ビールか?お酒か?なんかすごく違和感があるんだけど・・・。おそらく、「これぞ!」という逸品を見つけたので、メニューに載せたんだと思うが、何だか変てこだ。

ちなみに、このお店の単品メニューは次のとおり。至ってシンプルだ。

梅ごはん(粗挽き蕎麦を煎り、梅と炊いた香ばしいご飯です) 150円
あぶり地鶏(おかやま地鶏) 500円
作りたて豆腐(豆乳とにがりを合わせて当店で作りました) 300円
蕎麦味噌(信州・三年味噌に蕎麦の実と三河みりんを合わせた焼き味噌です) 300円
キムチ(無添加国産白菜キムチ) 300円

・・・やっぱり、キムチだけ浮いてるぞ。ぬぅ、気になる。今になって考えてみれば、ここまでアッピールしているからには注文しなくちゃいけなかったのだが、注文しなかった。くそう、失敗した。何だか不気味で、「見なかったふり」をしてしまったあるよ。

酒肴のオーダーはオーソドックスに「あぶり地鶏」と「作りたて豆腐」を。お値段は非常に押さえ気味というのがうれしい。

冷酒が涼しげで良い

お酒のラインナップは、生ビール、清酒、芋焼酎、蕎麦焼酎の4種類だった。

・・・生ビール?

あれ、瓶はどうした。

驚いたことに、このお店は生ビールしか取り扱いがなく、瓶ビールが存在していなかった。こんなお店、見たことも聞いたこともない。普通、逆だろ。

このお店、細かいところでつっこみ所満載だなあ。微妙に蕎麦屋の常識を覆してくれる。おそらく、こういうのも全てご主人による確信犯的作為なんだろうけど。

ただ、ご主人はさらに上級編なツッコミどころを用意してくれていた。しかも、生ビールの欄で。

メニュー抜粋

生ビール(麒麟一番絞り)
グラス 400円
ピッチャー(1.8L) 1800円

「搾り」を間違えて「絞り」にしているのはまあ単なる誤字だからいいとして、「ピッチャー(1.8L)」??ちょ、ちょ、ちょっと待て、まるで居酒屋じゃないかこれだと。大衆的な蕎麦屋ならともかく、こういう「こだわりの蕎麦を出すお店」でピッチャーなんて冗談でも想像したことがなかった。こりゃ一体なんだ。

呆気にとられるわれわれ二人。

「夜は予約制で、コース料理を出すというからそこで使われるんだろうな」

ということは判るのだが、でもピッチャーっすか。蕎麦屋で、ピッチャーを持ったオッチャンが「まあまあ」「あれっ、飲んでないンじゃないスか?」なんて言いながら膝ですり寄り、くみつ汲まれつをやるというのか。うわ、想像できねぇ。

「そもそも、このお店車じゃないと来られない場所っすよ。ピッチャーなんて出したら、運転手まで全員飲んじゃいそうな」

うーむ。

あまりの変化球に、対応できず固まってしまった。ピッチャーがある、と事前にわかっていれば「よーしよーし、今日は蕎麦屋でピッチャーをぐいっと飲むぞ」っていう腹づもりになるのだが、現地でこんなのを見せられたらアドリブがきかない。面白味もなんともなく、清酒を注文してしまった。

くそう、後の祭りだが、ここは「キムチ」で「ピッチャーの生ビール」を飲んで、締めに「スタミナそば」を食べるのが正解だった!惜しいことをした。

さて、そのお酒だが、雪下香梅という銘柄だった。300mlで600円。お安いのでナメてかかったら、ラベルを見ると「大吟醸」と書かれていた。えー、大吟醸で300mlで600円?あり得ない安さだ。思わず、

「おい、ということは1mlで2円って事になるぞ?すごいよな」

と同行者に賛同を求めたが、相手は「はぁ」と生返事をするだけだった。まあ、そりゃそうだ。

青くて、ちょっとひねりがかかったようなガラス瓶は一輪挿しにも使えそうだ。思わず、写真をとる際には庭が写りこむように配置してしまった。

あぶり地鶏

おかやま地鶏を使用した、あぶり地鶏500円。「えっ、これが500円?というくらい量が少ない」という事前情報をキャッチしていたが、確かに小さい。横に添えられたカイワレと比較してもらえば、そのサイズがわかると思う。

ただ、味は至って濃厚で鳥の味わいが詰まっている。見た目のサイズの2倍は、鶏肉な感じがした。意味不明なたとえだが。

味噌漬けにしているようで、それで味が引き締まっているのだろう。ただ、味噌のせいもあって結構塩辛い。少量とはいえ、食べ進むうちにちょっと辛さが気になってきた。通常の鶏肉感覚でぱくぱく食べるものではなさそうだ。

作りたて豆腐

作りたて豆腐300円。

「そのままでも食べられますが、お好みにあわせて醤油を少量垂らしてください」

と指示を受ける。そのまま食べてみたがなかなかな味わいだった。舌に残るえぐみは、天然にがりを使っているからだろうか?

お塩

せっかくの豆腐なので、お店の人に「お塩をいただくことはできますか?」とお願いしてみた。醤油を使うより、豆腐の甘みが引き立ちそうだ。

てっきり、食卓塩がでてくるかと思ったら、なにやら小皿に塩が盛られて出てきた。おや、この塩は何だ。グラニュー糖みたいな感じだぞ。

豆腐につけるまえに、なめてみる。・・・塩辛くない。おそらくこれも、こだわりの天然塩なのだろう。

豆腐につけて、食べてみる。・・・うーん塩辛くないので、豆腐の味が引き立たなかった。良い塩というのも時には役に立たない事もあるのか。

地鶏蕎麦

おかでんがお酒と肴を楽しんでいる間、もう一人のところには蕎麦が到着した。地鶏蕎麦900円。見ると、先ほど一品料理で出てきた地鶏が、そのまま皿盛りの蕎麦の上にのっかっていた。もり蕎麦が650円であることを考えれば、250円であぶり地鶏を食べる事ができるので非常にお得だ。

ただし、蕎麦という非常に延びやすい料理であるがゆえに、

「上の地鶏を肴に酒を飲み、その後に蕎麦を平らげる」

というのは事実上無理だ。悩ましいのぅ。

ちなみにこの地鶏蕎麦、ぶっかけになっとりました。

もり蕎麦

さて、お酒を飲み終わったのでお蕎麦を注文だ。安心しろ、お酒は一本で切り上げた。もり蕎麦650円。

こちらも皿盛りだが、さすがにちゃんと猪口が用意されていた。薬味は葱と大根おろし。おや、わさびをつけないんだな。味が変わる、ということで嫌ったか。

蕎麦アップ

アップ写真。最近こういうアングルで撮るの、増えたな。

大抵ボケちゃってるので、資料的価値も何もないんだけど、まあ自己満足の世界で。

ずるずる。

うん、おいしい。ふんわり、やさしい蕎麦の味と香り。確かにこれだと、わざわざ車を転がしてここまでやってくる価値がある。

麺がとても細いんだよな。連れは「まるでそうめんみたいだ」と形容したが、確かに、普通イメージする蕎麦よりははるかに細い。これだけの切り幅で麺切りができるということは、ご主人の腕が推し量られる。とはいっても、この細さは個人の好き嫌いが分かれるところだろう。

ちなみにおかでんは、「ちょっと細すぎっすよ」と思った方。薫り高い蕎麦なんだけど、ずるずるっとすすり上げてからの香りの残留時間が短い気がした。やや太めの麺だったら、口の中でかみかみするので、そのときにまた香りが広がる。しかし、この細麺だとそれがあまり感じられないような。

退店時、女性店員さん(ご主人の奥さんであることが判明)とちょっとだけ話をしてみた。このお店はご主人の実家だったらしい。なるほど、だからこんな立地条件なわけだな。「でもすごいですよね、こんなところにお店出して客来るのか?って不安になりませんでした?」とズバリな質問をしてみたら、「おかげさまで最近はネットとかの口コミでお客さんが来てくださって。うち、全然宣伝なんてしていないんですよ」という。やはりそうだったか。グルメ雑誌などにタイアップ料払って記事にして貰ったりはしていないのか。それでもお客が来るというのだから素晴らしいことだ。

「もっと何度もお邪魔したいんですけどね、住んでいるところが遠くって。次は年末にでもお邪魔します」
「あ、ぜひお越しください。昨年は開店が年末だったこともあって、大晦日は夜通し営業していたんですよ」
「あっ、それいいですね!年越し蕎麦をつつきながら蕎麦屋で朝を迎える!いいなあ」
「今年はどうなるかわからないですけどね。お正月も営業していると思いますので、ぜひお越しください」

何とも意欲的なお店なんである。これまた感心させられた。

とても気持ちの良いお店だし、お蕎麦はおいしかった。しかし、気になる点としては「ご主人の視線」がどこを見ているのかわからない事だった。キムチがあったり、ビールピッチャーがあったり、アボカドがあったり。意欲的で、新しい事にチャレンジしていこうという気合いを感じるのだが、何かの弾みで変なベクトルに舵を切ってしまうような危うさを感じた。気が付いたら、居酒屋みたいになっていた、なんて。

いろいろな意味で、今後広島に帰省する都度定点観察したいお店だ。

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