高遠そば・甘味処 壱刻

2006年04月09日
【店舗数:206】【そば食:373】
長野県伊那市高遠町

生粉十割天ざる

高遠の桜は春の風物詩だ。高遠城の周囲は桜が咲き乱れ、ものすごくきれいだと聞いたことがある。前日、長野県は奥蓼科の温泉に宿泊していたわれわれは、「桜見物を兼ねて高遠の蕎麦屋でも開拓してみるか」とぶらりと訪れてみた。

しかし、車の少なさからイヤな予感はしたのだが、高遠に到着してみると桜はまだ二分咲き程度だった。山深い長野の春は、あともう少し先のようだ。しかし、日なたの桜をしばらくにらみつけていたら、見る見る桜の花が開いていくのがわかる。ちょっと来るのが早すぎたか。

目の前で、開花していく桜を見ているのは結構悔しいものだ。「あと1時間待てば開花します」というのなら兎も角、満開になるのは恐らく2-3日後。桜から「ざまーみろ」と言われているような気がして、歯がみする。

壱刻

ま、それは兎も角、蕎麦屋行脚だ。最近、蕎麦ともとんとご無沙汰していたので、久々の蕎麦屋訪問となる。まず訪問したのは、高遠駅と呼ばれるバス停の正面に位置する、「壱刻」というお店だ。鉄道が走っていない高遠にとっては、このバス停は街の中心。その真正面に位置するわけだから、「駅前一等地」のお店といえる。

構えは、古い蔵を改築したもので、まだ開店してから比較的間もない気配がする。

このお店を知ったのは、長野県のローカル情報誌「KURA」の「そばの新店」特集でこのお店が紹介されていたからだ。今日はこのお店と、もう一点「KURA」で紹介されていたお店をハシゴする予定。

到着は11時だったので、しばらく近所をぶらぶらして時間潰しをする。このお店の開店時間は11時30分だ。・・・と、気が付いたら店の前には行列が。うわ、開店前に行列ができる蕎麦屋だったのか、ここは。慌ててわれわれも行列に加わる。せっかく早く到着しておきながら、行列に並べずに食事が随分後になるのは悔しいことだ。

それにしても、人気のラーメン店やパチンコ店じゃあるまいし、蕎麦屋で開店待ちをすることになるとは思わなかった。しかも、東京などの都市部なら兎も角、高遠という小さな町で、だ。そんなに人気店なのだろうか?

そば・甘味処

面白いことに、ここは「そば・甘味処」なのだった。よく、「そば・うどん」というのぼりが立っているお店はみかけるが、「そば・甘味処」っていうのはありそうでなかった気がする。

お品書きを見ると、確かに、蕎麦のほかにお汁粉、ぜんざい、胡桃餅、抹茶が用意されていた。

営業時間はお昼の5時間だけ。結構強気な設定だが、以前夕刻の高遠に訪れた時、目抜き通りに誰一人歩いていなかった様を思い出した。夜だと商売にならないのだろう。

それを考えれば、開店前からこうやって行列を作っているお客の姿というのは、店の経営を考えなくてはならない店主にとって安心できる光景だろう。

お品書き

なんて呑気なことを考えつつ開店とともに店の中に入ったら、あっという間に店内がお客さんでいっぱいになってしまった。開店15分足らずで満席。その後にやってきたお客さんが満席のため入店を断念するといった事態になってしまった。大繁盛だ。

高遠には飲食店が少ない印象があるが、その影響もあるのだろうか?それとも、ここの蕎麦屋が絶品なのだろうか?

お品書きは至ってシンプル。二八、十割、天ざる、つけ鴨、高遠そば、かけ、天そば、鴨南蛮、辛味おろしだけだ。営業時間もそうだが、お品書きにおいても非常に潔い。観光地にありがちな、「家族皆様お楽しみくださいませ」的メニューじゃないのが惹かれる。

このお店の場合、「追加」と呼ばれるおかわりが750円に設定されていた。二八が800円であることを考えると、ほぼ同額の値段ということになる。お品書きには「二枚目を召し上がるときは、心ばかりですがちょっぴりお安くご提供いたします」と解説文がしたためられていた。お店からすれば、同量を出すのだから同額貰いたいところだけど・・・ということなのだろう。でも、二枚も食べてくれる、当店の蕎麦を愛してくれる人に感謝、ということなのだろう。

ただ、このあたりはお店によっていろいろ解釈があるようだ。「大盛り100円増し」で結構増えるところもあるし、300円くらいでもう一枚せいろが増えるお店もある。ラーメン屋の場合、大抵「大盛り100円」という暗黙のルールがあるのと比べると、蕎麦業界というのは規則性がないようだ。麺そのものに手間暇かかっているからだろう。

天ざる

つい数時間前まで、奥蓼科温泉郷の効能のキツい温泉に浸かっていたためだろうか?普通、天ざるなど頼まないのだが、今回はついつい頼んでしまった。同行していた連れも、同じく天ざる。お品書きには載っていなかったが、十割そばでの天ざるをお願いした。

隣のテーブルでは、お客がご主人に「桜そば、今日はないんですか?」と聞いていた。どうやら、この季節限定で桜の花びらを練り込んだ桜そばを提供しているらしい。ご主人は「ごめんなさい、今日は息子が熱出しちゃって・・・作っていないんですよ。昨日の残りでよければ」といって、お客さんに昨日の残り物の生麺を確認してもらっていた。

多くのお客さんは、高遠蕎麦を頼んでいたようだ。さすがに、地元の地名が冠せられている蕎麦に惹かれるということだろう。

蕎麦アップ

さて20分ほど待っただろうか、ようやくお蕎麦が到着した。

なるほど、開店前から行列ができるような蕎麦屋の場合、ファーストロットにありつけなかった場合は結構待たされることになるのだな、と納得。このお店の場合、同時に二名分の蕎麦をゆでているようだった。同時に5杯6杯と作るラーメン屋よりもどうしても効率が悪くなる。

ま、じっくりと待った分、出てきた料理は一層おいしく感じるもんだ。さあ食べようじゃないか。

滑り止めのある箸

味についてはあんまり記憶に残っていないので割愛。

面白かったのが、箸が滑り止め箸だったということ。こういうのが蕎麦屋で、いや、飲食店で見かけるのは非常に珍しかった。蕎麦の手繰り具合が良くなるかな?と思ってブンブン振り回してみたが、特に効果は感じられなかった。

食べている間もひっきりなしにお客さんがやってきた。あまり長居はしないほうが良いだろう。食べ終わったらさっさとお店を後にしよう。

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