山形手打ちそば もみじ

2006年06月23日
【店舗数:208】【そば食:376】
東京都豊島区南池袋

もり

蕎麦屋発見

所要で都電荒川線に乗った。東池袋四丁目電停で下車し、東京メトロ有楽町線に乗り換えようとしたら、ふと目の前に「手打そば もみじ」のオレンジ色の看板を発見した。

こんなところで手打そば?

すぐそばには首都高速5号線の高架橋。どっちかといえば殺伐とした雰囲気の場所だ。手打そばの店があるような雰囲気ではない。

しかも、間口が非常に狭い。青汁スタンドに毛が生えた程度の幅しかないような店構えだ。一体どんなお店なんだろう。

さらに、色づいたもみじをイメージしたのだろう、オレンジ色の看板が気になる。普通蕎麦屋というのは渋いのがお好みで、こんな明るい、派手な看板はあまりお目にかかったことがない。

怪しい。怪しすぎる。

特におなかが空いているわけではなかったのだが、気になってしょうがないので、しばらく店のそばで様子をうかがってみることにした。

高倉 軒

さらにあやしいのは、お隣のお店。

ラーメン屋なのだが、「高倉 軒」という名前だった。

しかも、「元祖とんこつラーメン」なんて書いてある。おいホントかよ。

本日のお薦め

入り口には、「本日のお薦め」などを掲載する用の黒板が出され、宣伝に一役買っていた。

さすがにここの店主も、これだけの外観だと胡散臭くてなかなか客が来ないと思ったのかもしれない。

東京にはない日本そば
・太めん(手打ち)
・コシがある
かけ550 もり550
その他色々お酒ございます450円

だ、そうで。値段は安い。この外観で、「もり900円」と書いてあったら絶対に入りたいとは思わないが、550円だったら「まぁ、地雷を踏んだとしてもダメージは少ないな」という気になる。にくい価格設定と言える。

あっ、気が付いたら、徐々に「お店に入ろう」という気持ちに傾きつつあるぞ。

先ほどからずっと、店の前のフェンスに寄りかかりながらこのお店を凝視していたので、向かいにあるレストランの従業員がけげんそうな顔をしてこちらを気にしている気配。やばい、変質者に思われてはいかん。入るならさっさと入らないと。

蕎麦食べ歩きの本

店の入り口には、蕎麦食べ歩きの本の割付とでも言うのだろうか、原稿段階のものが張り付けてあった。椎名町の蕎麦の名店「休屋」の次に、この「もみじ」が紹介されている。どうやらこの本、どこかの蕎麦好きな落語家さんが編纂した蕎麦本らしい。

権威主義というかなんというか、「休屋」の次に「もみじ」と記載されていたら、なんかちょっと安心してしまう。外観は怪しいけど、ま、いいか。入っちゃえ。

中に入ってびっくり。狭いとは思っていたが、本当に狭い。狭い厨房を囲むようにカウンタがあるが、そのカウンタでも4席しかない。そして、二人が向き合ってやっとのテーブルと、二脚の椅子。えーと、全部で6席か。もうこれで身動きつかないくらいのきゅうきゅう。

夕暮れ前というタイミングもあって、先客はいなかった。

ご主人にもりを注文して、しばし待つ。狭い店内なので落ち着かない気持ちになりつつ、待つ。

お茶と水

まず出てきたのは、お茶と水。かわった組み合わせだ。

ここから先、なぜか写真が紛失してしまったので存在しないのだが、お品書きを見るとそこそこ一品料理があるようだ。値段は300円前後と安かった記憶がある。ここで一献傾けるというのは非常に良い選択肢かもしれない。狭いお店であるが故に、友人と連れだって・・・というのには向かないお店だ。一人でまったりと飲んで、ちゃっと引き上げるのが良さそうだ。

お酒は、倉敷の地酒を取りそろえていた。親戚か何かがあちらの出身なのだろう。倉敷といえば森田酒造の「萬年雪」が有名だが、ここのお酒は森田酒造ではなかった。また別の酒蔵のもの。お試ししてみたかったが、まだこの後用事があったので自粛。

来客が無かったこともあり、厨房の火が落ちていた。このため、蕎麦をゆで始めるまでに少々時間を要したが、しばらく待っていると蕎麦が仕上がってきた。やや小降りな正方形のせいろに、うずたかく盛り上げられた濃い灰色の蕎麦。確かに、太めだ。そして、つややかにてかっている。歯ごたえが期待できそうなたたずまいだ。

早速一口手繰ってみる。ぐみ。ぐみぐみ。

うむ、もちもちしている、というかぐみぐみしているというか。一体何をどうすればこんなに力強く顎に抵抗してくるの、というくらいのもっちり感が迫ってくる。

あまりにもっちりしてるので、美味いか?と聞かれると「先生、何だか蕎麦を食べている気がしません。」という答えになってしまいそうな気がする。でも、こんなところにこんな蕎麦を出してくれるお店があるとは、意外であった。店主とおぼしき人は結構若く、若い感性で蕎麦を作るとこうなりました、といった感じなのだろう。

とはいっても、この狭い店内で手打をしているわけではなさそうだし、一体どこから蕎麦を仕入れているのだろう。一種独特の蕎麦で、他には余り見かけないタイプだ、ひょっとしたら自宅なんぞで打って持ってきているのだろうか?

何しろ、好奇心をかきたてられるお店であったことには間違いない。今度は、一人でぷらっと夜訪れて、倉敷の銘酒と酒肴で一献傾けつつ、最後に蕎麦でしめてみたいものだ。30分-1時間程度、ひょいっと立ち寄って飲んで帰る、というにはこの圧倒的な狭さは非常に向いているのかもしれない。

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