2007年01月19日
【店舗数:216】【そば食:387】
広島県広島市西区横川
野菜味噌、そばがき天ぷら、ざるそば、宝剣純米魂心の袋絞り、天寶一中汲み純米
一年半ほど前、「もち月」という新進気鋭の蕎麦屋を訪問したことがあるが、そのお店が移転して新装開店したという噂を耳にした。とても良い印象を持ったお店なので、心機一転一体どのような新店になったのか大変に興味を持った。広島に仕事の関係で立ち寄る機会があったので、早速立ち寄ってみることにした。
場所は、JR横川駅から徒歩数分の商店街の中だという。以前、橋本町にお店があったときは相当にわかりにくい場所にお店があったのが強く印象に残っている。まるで隠れんぼをして、「さあ来店できるもんならしてみやがれ」と言ってるかのような地味さだった。今回も同じ店主のこと、わかりにくい外観に違いない。目的地とおぼしき場所に近づくにつれ、こちらは五感のアンテナをフル稼働させて蕎麦屋探索モードに入った。
あ、そうそう、お店の名前は「もち月」から「ふくべ三」に変わったらしい。なぜ名前を変えたのだろう?そもそも、「ふくべ三」って何だろう。人名・・・?「ふくべ」三号店?謎だ、謎過ぎる。ここのご主人は前岡さんというお名前なので、「ふくべ」とは全然関係ない。まあ、それを言ったら「もち月」っていう名前も何だろう、と不思議なのだが。
不思議、不思議と言いつつ自転車を漕いでいたらなにやら怪しいお店を発見。ビルの一階、ちょっと奥まったところに暖簾が見える。
ここ・・・かな?
あの暖簾はいかにも蕎麦屋っぽい感じがする。最徐行して接近を試みる。もし違っていたら、スィングバイ航法で急速離脱だ。
んー。
ぱっと見、やっぱりよく分からないお店だ。あ、入口脇に渋い茶色の看板発見。「ふくべ三」と書かれている。やはりここで間違いないようだ。
店先にメニューボードがあるから蕎麦屋と分かるが、メニューボードを意識して見ない限り何のお店だか分からない。この近所に住んでいる人でも、ここが蕎麦屋であることを知らない人は多いはずだ。
橋本町にあったお店からここに移転したのが平成18年秋。まだ開店してから日が浅い。
「商い中」の札に導かれて、暖簾を潜る。
中は、旧もち月と同じような、木材を主軸とした落ち着いた雰囲気のインテリアだった。カウンター席が数席あり、テーブル席もいくつかある。奥には中華料理でも食べるかのような円卓が用意されていた。
到着したのはお昼時よりやや手前、11時半だったのだが、結構な繁盛っぷりだった。早速地元に定着したようだ。
玄関。
店内はたたきになっているのだが、引き戸のところだけ石畳になっていて、ご丁寧に打ち水が施されていた。このあたりのセンスが憎い。ご主人、若いのに一体どうしてこういう渋い演出を思いつくのか不思議だ。以前のお店「もち月」も渋かったが、こちらもそれに負けず劣らず渋い。
内装費に相当お金がかかったんじゃないか、と他人事ながら心配になってしまうできだ。
びっしりと書かれたお酒リストの他に、壁には黒板が掲げられ、限定品と思われる清酒が書かれていた。地元広島のお酒を中心にセレクトしているのが好感が持てる。
そのお酒は、店入ってすぐのところに冷蔵庫があって保冷されていた。だだっ広いスペースに、冷蔵庫とむしろ。悪いことをした人をここに土下座させるためにあるのだろうか、と思わず不穏なことを考えてしまうむしろだ。
ひょっとしたら将来的にはここに自家製粉用の石臼でも置くのかもしれない。ちょっと冗長なスペースだ。
カウンターは小料理屋といった風情。店主はカウンター奥の、暖簾が下がった先にある厨房で忙しく調理を行っていた。カウンター内で調理をするわけではなさそうだ。
カウンターの上には、大きなゆずがディスプレイされていた。
さて、このお店にきたからにはお酒を頼まないと。宝剣と、野菜味噌350円を注文。
野菜味噌、というのは一体どんなものなのか分からなかったので頼んでみた。頭の中でイメージしたのは、「野菜スティックに味噌をつけて頂く」というもの。
しかし、出てきたのは、練り味噌だった。これは予想外。
予想外といえば、これが結構なボリュームだったということ。複数名でつまむには良いかもしれないが、一人でこれだけの量だと相当もてあます。一体お酒を何杯飲めばよいのやら。何しろ塩辛い食べ物だから、一口でお酒がぐいぐい進む。
その野菜味噌だが、どんな野菜が練り込まれているのかはよく分からなかった。刻まれたゆずが入っていて、非常に爽やかな味わいだ。口にした瞬間にゆずの香り、そして咀嚼して飲み込むと味噌の深い味わいが広がる。その後に、宝剣をくいっと。ううむ。店の落ち着いた雰囲気と相まって、なかなか良いひとときだ。
ただ、お酒の量は少ない。0.5合程度じゃないか、という量なので食と飲のバランスが難しい。
加えて、そばがき天ぷら900円を注文してたんだっけ。すいません、お酒追加でお願いします。
一杯でヤメるつもりだったのが、二杯になってしまった。
店内はお客さんが程良く埋まっていた。お昼のピーク時なのに、お酒飲んで長尻したり、そばがきという面倒な料理を注文しちゃったりとお店の迷惑になりそうなことに今頃になって気づいた。うっかりしていた。どピーク時に酒飲むとはイカさない奴め。申し訳ない。
なんだかそわそわしながら、そばがき天ぷらを頂く。
このお店、そばがき料理は4種類も用意しているという周到ぶりだ。ここまでそろえているお店はなかなか無いと思う。ノーマルのそばがきに加え、冷やしそばがき、そばがき天ぷら、そばがき煮込みといった料理がある。今回はそばがき天ぷらを頼んでみた。
まさか、でかいそばがきがどどーんと揚げられていたらどうしよう、と思ったが、出てきたのはダンゴ状のそばがきだった。揚げたての熱い奴をさっそくほおばってみる。
うほっ、これは美味い。粗挽きの蕎麦粉のざらつきが、とても食感を楽しくするし、表面のかりっ、さくっとした感、中のもっちり・ざらざら感の違いも楽しい。暖まっていることもあり、蕎麦の香りと味も深く強く出ていた。これは秀逸だ。しかも、揚げたことにより香ばしさも加わり、単なるそばがきよりも僕はこっちの方が好きだ。
店主!大好きだー
他人が聞いたら大いに勘違いされそうなことをココロの中で叫ぶ。
何もつけなくても、十分美味い。あえてつけるなら、つゆよりも塩の方が向いていると思った。しかし、これは酒肴の域を超えているなあ。かといってご飯のオカズってわけでもないし、メイン料理というわけでもないし。難しいところだが、いずれにせよ美味いものは美味い。
そういえばお酒だが、一升瓶からお酒を注いだ後、そのまま栓をして冷蔵庫に戻していたのが気になった。昔、「もち月」時代は、わざわざ一升瓶内の空気を抜いて、酸化を防ぐ配慮をしていたのだが・・・。
店内がお客さんでいっぱいになったら、申し訳ないので蕎麦を食べずに店を後にしようと思っていたのだが、間一髪超満員札止めにならずにお客さん数は推移し、晴れて蕎麦にたどりつくことができた。
ざるそば、700円。
店内の表示によると、東広島の蕎麦粉を使い、水は吉和の天然水、繋ぎの小麦粉は北海道産を使っているという。
・・・あれ?以前は生粉打ち蕎麦だったのに、方針転換をしたのだな。九一にて提供しているとのこと。
蕎麦の盛り方も以前と比べて方針転換していた。以前は、丁寧に蕎麦をボッチ盛りのように並べていたのだが、「ふくべ三」バージョンは普通に盛りつけている。簡略化が図られたのか。
蕎麦は、そばがき同様に粗挽きの粉を使用。ゆえに香りが強めに出ていて、蕎麦を食べてる!という気にさせられる。ただ、麺の太さがやや不そろいなこと、ずるずるっと手繰るにはちょっと長さが短いことがもったいないところだ。蕎麦の喉ごしをたのしみたい向きには方向性がちょっと違う。
また、そばつゆは冷えすぎていて、蕎麦の味を殺しかかっていたのが残念。
まだ新しいお店で試行錯誤の最中なのだと思う。まだ粗があるが、とてもポテンシャルの高いお店なので今後とも繰り返し訪問していきたい。
お店を出る時には大変に上機嫌な自分がいた。決して、お酒で酔っぱらったからだけではない。料理の美味さ、店内の雰囲気、従業員さんの愛想、どれもホスピタリティ溢れるお店だ。こういうお店がある横川が羨ましい。
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