蕎麦 為楽庵

2007年01月28日
【店舗数:220】【そば食:393】
広島県広島市東区牛田

みそ豆腐、ざるそば、奏(ハーモニー)

牛田の町

広島に滞在していることを良いことに、最近はすっかり広島蕎麦屋巡りにいそしんでいる。食べ歩けば食べ歩くだけ、新しい「おっ、これは!」というお蕎麦屋さんに出会うので、楽しい。しかも、なぜこんなところに?という場所にお店があることが多く、あちこち探検するのも、オリエンテーリングのようで愉快だ。

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1990年代までは、恐らく広島の地において蕎麦はマイナーな食事だったはずだ。しかし、高橋邦弘氏が豊平に移住してきたからか、それともその他の要因なのかは不明だが、2000年に入ってからは新進気鋭の蕎麦屋が次々と誕生している。もともと、100万人を擁する政令指定都市の広島、一度根付き始めるとお店の数が増えるのは早いはずだ。ここしばらくは広島の蕎麦から目が離せない。

さて今回は、広島市街地から北東部にある牛田という住宅地に、「為楽庵」という蕎麦屋さんがあるという噂を聞いたので訪問することにした。遠いなあ、と思ったが、運動がてら食べにでかけた。

「30分以上もかけて、住宅地の中にひっそりとある蕎麦屋に蕎麦を手繰りにいく」というのは奇妙なシチュエーションだ、と我ながら思う。冬だからこそあり得るシチュエーションで、夏だったら多分無理だろう。汗びっしょりで、自らの脇の下から醸し出す芳醇な香りで、蕎麦を食べてるんだか、なんだか分からなくなってしまう。それ以前に、お店に到着するや否や「生ビールくらはい」とオーダーしちゃって、その後も「すいません、おかわりくらはい」なんて繰り返してしまい、蕎麦どころじゃなくなってしまう可能性大。

蕎麦屋が見つからない

それにしても、我ながら感心するくらい住宅地巡りをやってるなあ。蕎麦屋やーい、と路地の交差点毎にキョロキョロする動作が随分と板についてきた気がする。

東京界隈の蕎麦屋で、このように路地に分け入ったところにあるお店はそれほど多くないと思う。この差は一体なんだろう?広島の蕎麦屋は、自宅改装型が多い、ということがあるのかもしれないが・・・。たまたま、僕が最近訪れている店が「マニアック」だっただけなのだろうか。

ほら、今回のお店だって、表通りから一本入ったこんな感じの道を探索ですよ、ええ。

為楽庵

っとっと、あった。

蕎麦屋は看板で見つけるのではない、暖簾で見つけるのである。

最近、ワタクシが身をもって体得した格言ですな。蕎麦屋の看板は総じて地味だ。そして小さい。だから、暖簾で発見するしかないというわけだ。

このお店も、危うく見逃すところだった。自宅は2階にあり、1階を蕎麦屋にしたという自宅共用型店舗だ。

そのせいで、駐車場が入口脇にあるのだけど、車一台分のスペースしかない。その車の奥には、ご主人の自家用車が収納されている。

為楽庵の暖簾

お店の入口。

なかなか小じゃれている。単に自宅を改装しました、というのではなく、自宅を建築する際に、1階を店舗にするべくデザインされている。

為楽庵店内

中にはいると、案外これが広い。店内にいると、これが自宅ビルの一部とは思えない奥行きがある。

入口すぐには石臼が設置され、うんうんと唸って自家製粉をしている。店内は白を中心とした非常にシンプルなインテリアで、清潔感が溢れている。明るい色の木材を使った机、椅子も相まって、とてもさっぱりした印象。壁には柄つき香炉が飾ってあった。

こういう内装を見るにつけ、ああ、ここ最近オープンした、蕎麦好きが高じて蕎麦屋を開業した人かな、という予感がした。実際、後で調べてみたところ、ご主人は早期退職で脱サラして、高橋邦弘氏に従事して開業したんだそうな。

こういう話を聞くにつけ、高橋氏が広島の蕎麦業界に与えた影響が大きい事が分かる。

メニュー紹介

いかにも蕎麦屋、なんだけど、微妙に「蕎麦屋の定番」とされるセンスから外したところが所々に見られ、面白い。

例えば、テーブル脇にあるこのメニュー紹介。なんだか、蕎麦屋にありそうでない光景だ。

ちなみに「限定メニュー さらしなごのみ」と「冬季限定 辛味大根おろし蕎麦」の二品が現在のお薦めらしい。

「さらしなごのみ」って何だ、まるであられ菓子の「味ごのみ」みたいだ。解説を読むと、「更級蕎麦を木の実風味でどうぞ」と書かれている。おや、なかなかに興味深い蕎麦を打つのだな。でも、僕自身は変わり蕎麦は好きではないので、見なかった振りをして華麗にスルー。

お酒と肴

酒肴は、焼みそ、みそ豆腐、出し巻、板わさ、にしん煮、焼鴨。蕎麦屋の定番が並ぶ。焼海苔、天ぷらくらいあっても良いのではと思うが、天ぷらは厨房の都合でできなかったのかもしれない。蕎麦のお品書きでも天ぷら系のものは存在しなかった。

あと、せっかくの自家製粉をやっているのに、そばがきをやっていないのも惜しい。ただ、これは手間と体力を要する料理なので、意図的に外したものなのかもしれない。

・・・とかあれこれ思案するが、ちょっと待て。「みそ豆腐」って何だ。危うくスルーするところだった。「焼みそ」「みそ豆腐」とお品書きに並んでいたので、危うく見過ごすところだった。今まで「ごま豆腐」「そば豆腐」「高野豆腐」「男前豆腐」というのは知っているが、「みそ豆腐」というのは初めて聞いた。想像すらできない。

もろみみそが、豆腐の上にかかっているものだろうか?多分、そうだとは思うが・・・まさか、味噌を練り込んだ豆腐だったらどうしよう。いや、どうもしないけど。

これから出てくる料理をイメージできないまま、待っていたらやって参りました、みそ豆腐。一緒に注文した「奏(ハーモニー)」というお酒と共に。

みそ豆腐

みそ豆腐。

あれっ、味噌っぽくない。

なんだか、高野豆腐みたいな色をした消しゴム状のものが出てきました。

早速食べてみる。ねっとりとした食感は、アンキモもしくはクリームチーズ。味わいはチーズのような、味噌のような、ええと、ごめん、僕のボキャブラリーでは表現できない。甘いとも辛いとも、それさえ表現できない謎の味わい。こんなに「?」が頭の中をぐるぐる巡った料理は久しぶりだ。

この料理については態度保留。うまいともマズイとも言えない。食後、ご主人から「おいしいですよね!?」と聞かれたが、「はあ、そうですね」と生返事しかできんかった。

一緒に頼んだお酒についてきた板わさが、なんとも爽やかでストレートな味わいで良かった、と思ってしまったくらいだ。

ちなみにこのお酒、ご主人曰く「橋の向こう側(白島)にある地元の酒造メーカーのもの」なんだという。マンションの地下にある酒造所で、日本で一番小さな規模らしい。さっぱりしているが、やや渋みを感じさせる味わい。みそ豆腐があまりに「おりゃあああ」と自己主張をしてくださっているので、お酒が負けてしまった。ここは、広島の地酒一般的に多い、こってりしたお酒の方が良かったかな。

このお店のお酒の品そろえは、剣菱、綾菊、酔鯨、菊姫、八海山、そして奏。

ざるそば

お酒はそこそこに切り上げ、ざるそば(735円)を注文する。

出てきた蕎麦は、ややしっかりした太さを持つ端正な麺。早速手繰ってみたら、固めで「蕎麦だぞぅ」と口の中で主張する、がっちりした感じ。先日、「安庵」でふんわりした釜揚げそばの美味さに開眼してしまった僕にとっては、固すぎる印象を受けた。蕎麦の香りと味が、固い麺の中に閉じこめられてしまっているという見立て。ただ、これは人それぞれ。エッジの効いた蕎麦が好きな人にはこれくらいが丁度良く感じるだろう。

つゆは、ああ、翁系だなあと感じさせる配合。甘くて、辛い。なんともまったりとした味だ。ただ、達磨のつゆと比べるとややとがった感じがあり、それを長所と見るか今一歩と感じるかは意見の分かれるところ。僕はちょっと醤油が勝っている味の方は好きなので、このつゆも好きだ。

蕎麦を食べ終わる頃にご主人が「お代わりにしますか、それともそば湯にしますか?」と聞いてきた。お代わりを打診されたのは蕎麦屋で初めてなので(わんこそばを除く)、ちょっと驚いた。そういえば、思い返せば周囲のお客さん、みんなお代わりしてたっけな。このお店、ご飯物が置かれていないので、「満腹になろう」とするとお代わりという手段をとるしかないのだろう。

蕎麦二杯食べると、一般人の感覚からするとちょっとランチにしては高くついてしまう。1000円を超えてしまうからだ。しかし、お客さんはお代わりをし、ずずずっと蕎麦を手繰っているところを見ると、蕎麦が愛されている証拠なんだと思う。

内装、器、蕎麦それぞれにやる気を感じさせるお店。これで蕎麦がまずかったら「ああ、単に蕎麦好きが高じて蕎麦屋開いちゃったのね」と、インテリアがしっかりしているだけにトホホな印象をより強くしてしまう。が、このお店は基本をきっちり抑えている。だからこそ、今後の発展に期待したい。あれ、僕偉そうなこと言っちゃってるかな。すいません、そういうつもりはないんですけど。

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