2009年05月23日
【店舗数:238】【そば食:420】
長野県安曇野市穂高
せいろそば(二八そば)
安曇野蕎麦食べ歩き、さすがに3軒も回ると満腹感が押し寄せてくる。
同行者は「もう、食えんで」と音をあげた。
ただ、蕎麦というのは淡泊な食べ物故、ラーメンやカレーのようにどどーんと胃袋血糖値を圧倒する事はない。満腹とはいえ、何かのはずみでもういっぱいくらい食べることができるかも、という気はする食べ物だ。ええと、とりあえず次の店行ってから考えようか。
そこで、目にとまったのが「こねこねハウス」だ。手元の「信州そば」本では、なかなかに良い発色をした麺だったので、結構目立っていた。おかでんもさることながら、同行者も「おっ、このお店は・・・」とすぐに目をとめていた。ただ、「こねこねハウス」という名前がなんとも脱力系であり、どうしたもんか、というところではあった。
このお店、そば打ち体験もできると書いてある。だったら、腹ごなしにそば打ちをしながら、隙を見て蕎麦食べちゃうというのはどうか。同行者は「そば打ちやりたいねえ」とも言っている。まあ、それだったら行ってみよう。目にとまった以上しょうがないよな、行かないで後悔するより行って後悔した方がマシだ。
山麓線から山を下り、安曇野ののどかな田園風景に出る。観光スポットとして有名である大王わさび園に向かう途中に、お店はある。案内に従って進んでいく。途中、レンタサイクルでキコキコ走る女の子観光客集団などを追い抜いていく。
そんな中、こねこねハウス発見。まさに田んぼの中だ。
景観を守るために地味な外観だが、よく見ると結構デカいぞという建物、それがこねこねハウス。てっきり、こねこねハウスという蕎麦屋が存在するのかとおもったが、正確には蕎麦をメインとした食事を扱う「めん処穂高」と、そば打ち体験ができる「こねこね体験道場」の二つに分かれている。この二つの施設を総称して、「こねこねハウス」というわけだ。
こねこね体験道場は、そば打ち体験が所用時間1時間半で、一打3,800円。
このほか、長野ならではということでおやき体験もあった。こちらは所用時間1時間で1セット(12個)3,150円。
同行者は、そば打ち体験をオーダーしていた。おかでんは様子見。さすがに、毎年そば打ちは一人でやっているので今更手ほどきを受ける必要はないと思っている。
同行者によるそば打ち体験スタート。500gの七三蕎麦だった。
おかでんは横で写真撮影担当。
同行者も今までそば打ち体験は何度か経験があるが、通しで一人で打つのは今回が初めて。結構、これって貴重な体験だ。だいたいこういうのは団体で訪れ、3-4名で一つの鉢を争奪しながら打つ事になる。もうしっちゃかめっちゃかだし、自分の出番は断片的だし、終わってみたら「なんとなく蕎麦を打ったっぽい・・・けど・・・」という不完全燃焼感が漂うものだ。それが今回は一人でそば打ち。ゴージャス。ただし、それなりのお金がかかるが。
同行者は「いい蕎麦粉だなあ」と感嘆し、臭いをしきりに嗅いでいた。
なにやらUFOのようなものが窓側にずらっと並んでいるので見に行ったら、ホットプレートと、そのフタとなるボウルだった。ホットプレートがずらりと並ぶ様は壮観。何だこれはと思ったら、おやき体験用のものなのだな。
ちなみにこの体験道場で、同時刻におやきを作る人は居なかった。さすがにあまり人気がないようだ。
道場の壁には、ちょっと面白いメニューが。
かき揚げ、野菜の天ぷら盛りあわせ、海老の天ぷら。以上。
何かと思ったが、どうやらこれは「自分で打った蕎麦を食べます」という時に、トッピングで如何ですかという事らしい。なるほどそりゃ欲しい人は欲しいよな。
ひたすらこねこねやっている同行者。
「おい、一体いつまでコネコネしてりゃいいんだ?」と困惑する同行者。指導してくれるお母さんが、複数人の面倒を見ているためになかなか巡回に来てくれないのだった。さすがこねこねハウス。もっとよくコネろ、と。
こっちもそろそろ暇になってきたので、ローアングルから撮影だとか、三脚とセルフタイマーを利用した頭上から見下ろすアングルで撮影、などと無駄に創意工夫に熱心。
見下ろすアングルの写真は、「おお、何だか珍しい一枚になった」などと言って自己満足。
次の行程に進むまでしばらく時間がかかるな、と思ったので、すいっと道場を抜け出して隣のめん処に潜り込んだ。せっかくだから、めん処の営業時間終了(14:00)までに一枚手繰ってみよう。
お品書きをみると、二八のせいろそばが700円。十割もあって、そちらは900円。面白いのは、「大ざるそば」といって5人前のそばがラインナップに加わっている。3,000円だから、1人前×5枚とするよりも割安だ。しかし、話のネタ的な臭いの強い一品だ。なぜか安曇野界隈には、この手のドカんと盛った蕎麦があちこちにある。「気狂いざる」なんて名前がつけられていて。この地方独特なのだろう。別にデカ盛りだとかなんだといったウケ狙いの雰囲気はないので、きっとおもてなしをする際に大きな器に蕎麦を盛った、などという歴史があるのだろう。
で、おかでんは「せいろそば(二八そば)」を注文。さすがにここで大ざるを食べるほどのガッツは無い。
供された蕎麦は、写真で見た物とは色合いが違ったが、細く長く奇麗にそろった蕎麦で、手繰りがいのある見てくれ。殻は一切入っておらず、麺の表面に星は散っていない。色気、という点ではそれほど見るべきところはないが、とりあえず食べてみよう。
あ、これおいしいです、はい。こねこねハウスというユルい名前からは想像できないくらい、おいしい。さすが体験道場併設、というだけあって、手堅く美味い蕎麦だった。どこがどう美味い、と言われると難しいのだが、香り高く、歯ごたえのどごしよく、麺の均一性もあって手繰りやすい。欠点が無く、プラス評価を地道に積み上げていきましたという蕎麦だと思った。
蕎麦の香りも良かった。ただ、「あれ・・・この感じ、なんか自分が年末に打つ年越し蕎麦と一緒だな」と思ってしまった。鼻に抜ける感じが似ていた。先ほどまで体験道場にいて、その後蕎麦を食べているからだろうか。
このインプレッションを後ほど同行者にしたところ、「ということはいい蕎麦粉をこのお店も使っているわけだな」と言われた。ああ、なるほどそうなのかもしれない。
おかでんが年越し蕎麦に使っているのは、特上の蕎麦粉だ。趣味の自宅手打ち蕎麦には適しているが、コストを考えると商売用として使うには憚られる単価になっている。
そんな蕎麦粉をこの蕎麦で想起させられたのだから、なかなか良質な蕎麦粉を使っているということなのだろう。素敵だ。
さて、遅れてつゆをすすってみる。・・・あれ。一口で気がついた。この透明感、甘さ、辛さ、丸み。翁系の味だぞ。
うまくは形容できないが、翁及び達磨のつゆは独特な味わいだ。非常においしく、他店のつゆとは微妙に異なる。その絶賛っぷりはこれまでのお店訪問記録でいろいろ書いてきた通りだ。
でもまあ、味覚は鈍感な方だし、勘違いかもしれない、と思って器を見ると、あれれ?なんとなくこの器、翁にあるようなタイプなんですが。蕎麦猪口、徳利はどこでもありそうなものだが、薬味を載せている平皿が翁チックである。・・・気にしすぎだろうか?翁、と言うには、「蕎麦を盛っている器が全然違う」とか突っ込みどころがいろいろあるのだが。
ただ、ひょっとしたらこの安曇野には「安曇野翁」があるので、そこで修行した人がお店をやっているのかもしれない。違うかもしれないが。
デザートとして、別皿で蕎麦湯を寒天で固めて若干甘くしたものが出てきた。
蕎麦湯寒天固め自体はそれほど美味いものではないが、上に降りかかっている蕎麦粉を炒ったものが美味い。ぱりぱりして素敵な食感だった。
満足して体験道場に戻ると、同行者はまだそば打ちに明け暮れていた。ようやく延ばし終え、これから切るところ。まあゆっくりと頑張れー。こっちは満腹だ、しばらくおなかがこなれてくるまで時間稼ぎをしておいてくれるとありがたい。
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